ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

五和ダム

2022-05-31 23:00:00 | 熊本県
2022年5月21日 五和ダム

五和ダムは熊本県天草市五和町城河原の内野川水系古道川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
大河がない天草諸島では古くから水源を小中小河川やため池に依存してきましたが、各河川は流域面積が小さく慢性的な用水不足に悩まされてきました。
天草下島北東部の旧五和町では、1979年(昭和54年)に県営かんがい排水事業五和地区が着手され、その灌漑用水源として1985年(昭和60年)に竣工したのが五和ダムです。
運用開始後は五和町土地改良区が管理を受託し約240ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
さらに2002年(平成14年)には当ダム東方約2キロに五和東部ダムが完成し、2ダム合わせてた受益農地は500ヘクタールに拡大しました。

ダム下流から遠望
ダム下のコンクリート建屋は調圧水槽。
堤体向って右手(左岸)に洪水吐が見えます。


リップラップには草木が繁茂し、もはやロックだかアースだかわからない状態。
グーグルの空撮写真ではきれいに草が刈られているんですが、直に見るとここ何年かは手が入ってない様子。


草まみれの堤体とは裏腹に洒落たデザインの管理事務所。


左岸の横越流式洪水吐。


洪水吐導流部
こちらも草木が覆いかぶさっています。


竣工記念碑はもちろん金箔仕様。


天端から洪水吐を望む。
叩きは石張り。


総貯水容量は57万立米。


どこを探しても取水設備が見当たりません。
上流面のこれが取水設備?


右岸から
天端は車両通行可能
下流面には木が伸び始めています。5月だからではなくもう何年も手入れしてない様子。


上流面の草も負けてはいません。

天端中ほどのパイプが取水設備なのか?そこだけが謎のままの五和ダムです。

2684 五和ダム(1819)
熊本県天草市五和町城河原
内野川水系古道川
37.1メートル
173.3メートル
570千㎥/561千㎥
五和町土地改良区
1985年

五和東部ダム

2022-05-31 16:00:00 | 熊本県
2022年5月21日 五和東部ダム

五和東部ダムは熊本県天草市五和町城河原の内野川水系横尾川にある灌漑及び上水道用水目的のロックフィルダムです。
大河がない天草諸島では古くから水源を小中小河川やため池に依存してきましたが、各河川は流域面積が小さく慢性的な用水不足に悩まされてきました。
天草下島北東部の旧五和町では、1982年(昭和57年)に県営かんがい排水事業五和地区によりで238ヘクタールの農地を受益地として
五和ダムが建設されました。
五和東部ダムはその2期事業ともいえる県営かんがい排水事業五和東部地区の灌漑用水源として2002年(平成14年)に竣工しました。
事業には水道事業者として当時の五和町(現天草市)が事業参加し、運用開始後は五和町土地改良区が管理を受託し約260ヘクタールの農地に灌漑用水を供給するほか、天草市五和町に上水道用水を供給しています。

まずはダム下へ
右手が洪水吐斜水路からの水路、左手が放流設備からの水路になります。


洪水吐斜水路と減勢工
下流からフィル堤体を一望できる場所はありません。


右岸ダムサイトを市道が通っています。
堤高33メートルですが、ダム下が土捨て場として盛土されたため見た目は15メートルほど。
リップラップは一部草が生えていますが、土地改良区管理の農業用ダムとしてはきれいな方です。


天端は車両通行可。


上流面。
対岸の建屋が管理事務所


天端からは正面に雲仙が望めます。
天気が良ければいい眺めなんでしょう。


総貯水容量は73万9000立米。


斜樋をズームアップ。


左岸の横越流式洪水吐。


アングルを変えて
ここから2枚目写真に流下します。


九州ではおなじみ、金箔仕様の記念碑。

竣工当時の受益農地は256ヘクタールで現在は262ヘクタール。
過疎化や高齢化による離農で受益農地が減少する農業用ダムが多い中、わずかながらも増加している点は注目に値します。

3185 五和東部ダム(1818)
熊本県天草市五和町城河原
内野川水系横尾川
AW
33.3メートル
170メートル
739千㎥/720千㎥
五和町土地改良区
2002年

楠浦ダム

2022-05-31 08:00:00 | 熊本県
2022年5月21日 楠浦ダム

楠浦ダムは熊本県天草市楠浦町の方原川上流部にある漑及び上水道用水目的のアースフィルダムです。
1963年(昭和38年)に農林省の補助を受けて着手された県営土地改良事業楠浦地区の灌漑用水源として1966年(昭和41年)に竣工しました。
なお現地記念碑では1967年(昭和42年)竣工となっています。
同事業には水道事業者として当時の本渡市(現天草市)が事業参加し、運用開始後は楠浦町土地改良区(現在は本渡改良区)が管理を行い、管内農地への灌漑用水及び天草市楠浦町への上水道用水の供給を行っています。
上水道向け取水量は日量5000立米と旧本渡市向け水道の主要貯水池となっており、農業ダムと言うよりは上水ダムと言う側面の方が強いようです。

天草市楠浦町から県道278号線を約3キロ西進すると楠浦ダムに到着します。
楠浦町はミカン栽培が盛んで県道わきのみかんを模した『映柑湖』の石碑が目印です。


天端へは車両の乗り入れはできませんが、徒歩での立ち入りは特に規制されていません。


県道沿いに建つ管理事務所。


左岸の横越流式洪水吐
緩やかにカーブを描いています。


洪水吐越流部の脇にシャフトがついています。
これが取水設備?
ちなみに斜樋などは他には見当たりません。


洪水吐斜水路。

提体に階段がついています。
こちらも規制がなかったので下りてみました。
堤高32メートルとアースフィルとしては結構な高さ。
池と呼ぶよりダムの方が妥当ですね。


洪水吐斜水路を見上げます。


こちらは調圧水槽。


調圧水槽から伸びる水路管が洪水吐を跨ぎます。


映柑湖と名付けられたダム湖は総貯水容量106万8000立米。


2663 楠浦ダム(1817)
熊本県天草市楠浦町
方原川水系方原川
AW
32メートル
139.1メートル
1068千㎥/969千㎥
本渡土地改良区
1966年

上津浦ダム

2022-05-30 23:00:00 | 熊本県
2022年5月21日 上津浦ダム

上津浦(こうつうら)ダムは熊本県天草市有明町上津浦の上津浦川本流上流部にある熊本県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の小規模ダム事業である
生活貯水池事業の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、上津浦川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、天草市有明町への上水道用水の供給を目的として2004年(平成16年)に竣工しました。
天草上島では唯一の補助多目的ダムです。

クレスト自由越流頂1門、自然調節式オリフィス1門の特に特徴のないゲートレスダムです。
ダム建設に合わせてダム下は『ホタル広場』として整備されましたが、今は草が繁茂しかなり荒れ気味。利用者もほとんどないという県ダムではよく見かける情景。


左岸から下流面。


選択取水設備が堤体内に設置されており、突起物がないすっきりした上流面。


天端からは海が見えます。
対岸は天草下島、その背後には島原まで遠望できます。
手前側の建屋は当ダムから水を供給する浄水場。


ダム湖は総貯水容量は46万7000立米と生活貯水池ダムならではのサイズ
集水面積1.2平方キロのうち直接流域は半分の0.6平方キロ
残り半分は山の北側の支流からの導水に依ります。
左手に見えるのが導水路吐口と導流路。


湖面に浮かぶのは曝気装置。


天端には堤体内に設置された取水設備や曝気装置の操作機器が並びます。


洪水吐導流部と減勢工
右手は放流設備
エンドシルの下流左岸側が『ホタル広場』ですが、上から見ると緑一色。
自然に回帰しつつあります。


右岸から下流面。
対岸に管理事務所がありますが平時は職員の常駐はないようです。


上流から。


3054 上津浦ダム(1816)
熊本県天草市有明町上津浦
上津浦川水系上津浦川
FNW
54メートル
205メートル
467千㎥/440千㎥
熊本県土木部
2004年

教良木ダム

2022-05-30 19:00:00 | 熊本県
2022年5月21日 教良木ダム

教良木(きょうらぎ)ダムは左岸が熊本県上天草市松島町教良木、右岸が同市松島町内野河内の教良木川水系祝口川にある灌漑及び上水道用水目的のロックフィルダムです。
大河がない天草諸島では古くから水源を小中小河川やため池に依存してきましたが、各河川は流域面積が小さく慢性的な用水不足に悩まされてきました。
1972年(昭和47年)に農水省の補助を受けた県のかんがい排水事業教良木地区が着手され、その灌漑用水源として1976年(昭和51年)に竣工したのが教良木ダムです。
事業には水道事業者として当時の松島町(現上天草市)と倉岳町(現天草市)が事業参加し、運用開始後は教良木土地改良区が管理を受託し約500ヘクタールの農地に灌漑用水を供給するほか、上天草市松島町および天草市倉岳町に上水道用水を供給しています。

ダム下流にある巨大なコンクリート構造物。
実はこれが調圧水槽。


調圧水槽の裏には、ダムの取水設備から続く水路鉄管。


ダムの左岸を県道54号有明倉岳線が通りアプローチは簡単です。
リップラップには草が伸び、見た目はアースダムのよう。


天端は車両の通行ができます。
左手の建屋は管理事務所。


右岸の横越流式洪水吐
洪水吐上流側に取水設備があるんですが、水位が高く水没しており視認できません。


管理事務所そばの事業説明板
これがあるとダム建設の経緯がわかりやすいんですよねー。


洪水吐脇上流面にある竣工記念碑。
九州ではおなじみ、金箔仕様の記念碑ですが半ば草に埋もれています。


横越流式洪水吐。


洪水吐と上流面
上流面は草もなくロックフィルダムだとわかります。


左右両湖畔に親水公園があります。
こちらは右岸から遠望した堤体。
ダム湖は総貯水容量139万1000立米と離島としてはなかなかの規模。


こちらは左岸県道わきの公衆トイレ。
鳥をモチーフにしたユニークなデザイン。


2673 教良木ダム(1815)
左岸 熊本県上天草市松島町教良木
右岸      同市松島町内野河内
教良木川水系祝口川
AW
29.3メートル
108メートル
1391千㎥/1371千㎥
教良木土地改良区
1976年

西河内ダム

2022-05-30 15:00:00 | 熊本県
2022年5月21日 西河内ダム
 
西河内(にしごうち)ダムは熊本県上天草市姫戸町二間戸の神代川水系西河内川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
ダム便覧には1970年(昭和45年)に当時の姫戸町の事業で竣工と記されており、現地記念碑にも『西河内かんがい排水事業 発注者姫戸町長・・・・』と刻されています。
町単独事業とは考えづらく、農水省や県の補助を受けた事業で建設されたものと思われます。
管理は姫戸町が行っていましたが、現在は町村合併で誕生した上天草市が引き継いでいます。

上天草市二間戸から神代川沿いを約1.7キロ西進すると西河内ダムに到着します。
クレスト自由越流頂2門の農業用コンクリートダムらしい簡易な作り。
ダム右岸下流側に放流設備がありますが、草が深く接近はおろか撮影もままなりません。


少しアングルを変えて。


左岸ダムサイトの記念碑。


上流面は木が茂り、これが精いっぱい。


天端の立ち入り制限はありません。
完成当初はダム湖を周回する道路も作られたようですが、今は右岸側が廃道状態で行き止まり。


親柱上流側のダム銘板。

下流側には『昭和55年3月完成』の銅板。


総貯水容量はわずか2万2000立米。


提体やや右岸側に取水設備があり、これはそのハンドル。


自由越流頂。

3299 西河内ダム(1814)
熊本県上天草市姫戸町二間戸
神代川水系西河内川
17.5メートル
68.8メートル
22千㎥/16千㎥
上天草市
1970年

石打ダム

2022-05-30 12:00:00 | 熊本県
2022年5月21日 石打ダム

石打ダムは熊本県宇城市三角町中村の波多川水系八柳川にある熊本県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
波多川は小河川ですが下流域を中心に洪水被害が多く、また旧三角町では上水道水源を地下水に依存していたことから安定した水源確保が求められていました。
1979年(昭和54年)に波多川総合開発事業が採択され波多川への多目的ダム建設が決まりました。
しかし波多川本流にダム建設適地がなかったことから支流の八柳川へのダム建設が進められ、1992年(平成4年)に石打ダムが竣工しました。
石打ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、波多川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、宇城市旧三角町への上水道用水の供給を目的としています。
集水面積3.9平方キロのうち八柳川は2.1平方キロに留まり、残りは波多川からの導水に依っています。
バブル真っただ中の建設ということで、ダムには不相応な資料館を備えており管理事務所ともども著名デザイナーによる斬新な建屋となっています。
またダム建設に合わせ、最寄りのJR三角線に『石打ダム駅』が新設され、JRとしては唯一ダム名が駅名となっています。

堤高38.5メートル、堤頂長256メートルの横長ダムです。


ダム下から
ゲート中央部の堤頂がバルコニーとして前後に張り出しています。


下流から
クレスト自由越流頂3門、その右手(左岸側)に自然調節式オリフィスを備えたゲートレスダムです。
ゲート上が前後に張り出しているだけで大量生産型のゲートレスダムとは一線を隔す個性的な姿に見えます。


宇城市三角町は温州みかんの産地として知られ、ダムのモニュメントもみかんをモチーフにしています。


天端は車両の通行ができませんが、右岸の車止めが外されています。
しかし対岸では車止めがあるため、進入しても対岸で折り返し。


石打ダムの売りの一つ、石打ダム資料館
熊本アートポリス参加プロジェクトで建設された斬新なデザインが特徴で特に円形ガラス張りの展望室が目を惹きます。
一方で建設時期がバブル期ならばこその建築物ともいえます。
付随施設が同事業に参加したダムとしては八代市の氷川ダム(再)があります。


同様に熊本アートポリス参加プロジェクトで建設された管理事務所。


天端から減勢工とダム下流の眺め。


ダム湖は総貯水容量120万立米。
貯水量の約半分は佐多川からの導水に依ります。


取水設備はヒンジアーム方式の表面取水。


ゲート上のバルコニーにはイラストの陶板が張られるとともに、『ミカンの花咲く丘』の楽譜と鉄琴が枯れています。
いかにもバブル期、余計なものにお金を使う余裕があった時代のダムです。


上流面。


ダム最寄り、JR三角線の『石打ダム駅』
ダム建設に合わせ、地元負担で新設されました。
JR線でダム名が駅名となっているのは全国でもここだけ。



2682 石打ダム(1813)
熊本県宇城市三角町中村
波多川水系八柳川
FNW
38.5メートル
256メートル
1200千㎥/1130千㎥
熊本県土木部
1992年

寺内ダム(元)

2022-05-30 06:00:00 | 福岡県
2022年5月20日 寺内ダム(元)
 
寺内ダムは福岡県朝倉市荷原の筑後川水系佐田川にある水資源機構が管理する多目的重力式コンクリートダムで、いわゆる『あさくら3ダム』の一つです。
筑後川は九州最大の河川で古くから流域の水源となる一方『筑紫次郎』の異名を持ち日本屈指の暴れ川となっていました。
1964年(昭和39年)に『筑後川水系水資源開発基本計画』(フルプラン)が採択され、以降筑後川水系では水資源開発公団(現水資源機構)による河川総合開発が進められることになりました。
同公団はまず1972年(昭和47年)に筑後川水系小石原川に江川ダムを建設、次いで1978年(昭和53年)に完成したのが寺内ダムです。
寺内ダムは水資源機構法(当時は水資源開発公団法)による多目的ダムで佐田川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、両筑平野土地改良区への特定灌漑用水の供給、福岡地区水道企業団福岡県南広域水道企業団等への上水道用水の供給を目的としています。
寺内ダムの流域面積は51平方キロで有効貯水容量1600万立米、一方江川ダムの流域面積は30平方キロで有効貯水容量2405万立米と集水域と貯水量にギャップがあるため、ダム建設と同時に寺内ダムから江川ダム下流の小石原川へ寺内導水路が建設され2ダムが連携した運用が開始されました。
しかし、それでも年間5200万立米の水が無駄になっていましたが、2021年(令和3年)に江川ダム直上に小石原川ダムが完成し、併せて佐田川から江川ダムへの導水路トンネルが建設され、3ダム連携の効率的運用が可能となりました。

一方2017年(平成29年)の九州北部豪雨を契機に2022年(令和4年)に国土交通省は『筑後川水系河川整備計画』を変更、これに併せて翌2023年(令和5年)に寺内ダム再生計画が着手されました。
具体的には非常用洪水吐の改造により総貯水容量及び有効貯水容量を増加、さらに利水容量から洪水調節容量への振り替えにより治水能力の増強を図るものです。
事業の詳細については下記リンクをご覧ください。

ダム湖畔には水のテーマパークである『あまぎ水の文化村』が設置される一方、ダム下は桜の名所として知られており、ダム湖の『美奈宜湖(みなぎこ)』はダム湖百選に選ばれています。 

ダム下流から
向って左(減勢工右岸側)に放流設備があります。


洪水吐は非常用のクレストローラーゲート2門と常用の高圧ラジアルゲート1門。


令和4年5月からこのフェンス内で草刈り担当として『ヤギ』が飼育される予定。


左岸から下流面とゲートピア。

ゲートの上流側
非常用洪水吐のローラーゲートが2門、その間には常用洪水吐の予備ゲートが見えます。


右岸湖畔に並ぶ取水設備と艇庫・インクライン。


洪水吐斜水路と減勢工
下流には九州屈指の穀倉地帯両筑平野が広がります。


ダム湖は美奈宜湖 
総貯水容量1800万立米でダム湖百選に選ばれています。


天端は車両通行可能。


ダム湖百選のプレート。


上流から
左岸ダムサイトに管理事務所があります。


(追記)
寺内ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2430 寺内ダム(元)(1812)
福岡県朝倉市荷原
筑後川水系佐田川
FNAW
83メートル
430メートル
18000千㎥/16000千㎥
水資源機構
1978年
◎治水協定が締結されたダム
---------------
3719 寺内ダム(再) 
福岡県朝倉市荷原
筑後川水系佐田川
FNAW
83メートル
430メートル
19030千㎥/17030千㎥
水資源機構
2023年 再生事業着手

小石原川ダム

2022-05-27 20:00:00 | 福岡県
2022年5月20日 小石原川ダム

小石原川(こいしわらがわ)ダムは福岡県朝倉市江川の筑後川水系小石原川にある水資源機構が管理する多目的ロックフィルダムで、いわゆる『あさくら3ダム』の一つです。
1964年(昭和39年)の『筑後川水系水資源開発基本計画』(フルプラン)採択により、筑後川水系では水資源開発公団(現水資源機構)により河川総合開発が進められることになりました。
同公団は1972年(昭和47年)に筑後川水系小石原川に江川ダム、1978年(昭和53年)に佐田川に
を建設しますが、同年発生したいわゆる『福岡大渇水』により福岡市では時間指定断水が287日間に及ぶ異常事態となり、新たな水源確保が緊急課題に浮上しました。
これを受け公団は寺内ダム直上の小石原川に新たな多目的ダム建設を採択、その後の社会情勢の変化や公共事業見直し機運の高まりなど紆余曲折はあったものの、2016年(平成28年)に本体工事が着手され2019年(令和2年)に小石原川ダムが竣工しました。
小石原川ダムは水資源機構法による多目的ダムで、小石原川の洪水調節、安定した河川流量の保持と不特定灌漑用水への補給および渇水時の緊急放流、福岡県南広域水道企業団への上水道用水の供給を目的としています。
またこれまで佐田川は流域面積が大きい一方、寺内ダムの貯水能力が少ないため年間5200万立米の水が無駄になっていましたが、ダム建設に合わせて佐田川から江川ダムに通じる導水路トンネルが開削され、江川・小石原川・寺内3ダムが連携した効率的ダム運用が可能となりました。

江川ダムから奥秋月湖沿いの国道500号を東進、途中の分岐で旧道に入ると小石原川ダム直下に到着します。
ダムの完成から間がなく、ダム下の整備も訪問直前に完成したばかり。
堤高139メートル、堤頂長558.3メートル、堤体積870万立米と九州屈指の規模を誇るロックフィルダムです。


洪水吐導流部はカスケードで、大規模ロックフィルダムとしては殿ダムに次いで2例目の採用となります。
左手のトンネルは取水設備からの放流口。


左岸から。


リップラップ。


ダム左岸の山はコア山として伐採されました。
ダム完成後に改めて植林が進められ、シカの食害防止のために苗木にはビニールが巻かれムーミンのニョロニョロのよう。


天端から。


令和あさくら湖と命名されたダム湖は総貯水容量4000万立米。


右岸(向かって左)に取水設備と繋留設備が並びます。
取水設備は『側壁なし円形多段式ゲート』という型式で、戸当たりをレール方式にするため側壁が不要になり、コスト削減が可能となりました。


天端は車両通行可能。


洪水吐斜水路を見下ろします。


巨大な横越流式洪水吐
でも作りはシンプル。


繋留設備。


取水設備とダム上流面。


(追記)
小石原川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

3062 小石原川ダム(1811)
福岡県朝倉市江川
筑後川水系小石原川
FNW
139メートル
558.3メートル
40000千㎥/39100千㎥
水資源機構
2019年
◎治水協定が締結されたダム

江川ダム

2022-05-27 15:00:00 | 福岡県
2022年5月20日 江川ダム
 
江川ダムは福岡県朝倉市江川の筑後川水系小石原川にある水資源機構が管理する多目的重力式コンクリートダムで、いわゆる『あさくら3ダム』の一つです。
筑後川は九州最大の河川で古くから流域の水源となる一方『筑紫次郎』の異名を持ち日本屈指の暴れ川となっていました。
治水については筑後川上流部への松原ダム下筌ダムの建設や下流域の分水路建設などにより一定の成果が上がる一方、利水については農水・上水・工水と多岐にわたる上に福岡・佐賀・大分・熊本4県の利害調整が必要なことから、1964年(昭和39年)に『筑後川水系水資源開発基本計画』(フルプラン)が採択され、以降筑後川水系では水資源開発公団(現水資源機構)による河川総合開発が進められることになりました。
そして農林省が進めてきた両筑平野用水事業を引き継ぎ、筑後川水系での同公団最初のダムとして1972年(昭和47年)に竣工したのが江川ダムです。
江川ダムは水資源機構法(当時は水資源開発公団法)による多目的ダムで、両筑平野土地改良区約4500ヘクタールへの灌漑用水の供給、福岡市・朝倉市・福岡地区水道企業団福岡県南広域水道企業団等への上水道用水の供給、朝倉市への工業用水の供給を目的としています。
また利水放流を利用した両筑江川発電所で最大1110キロワットの利水従属発電を行っています。
1978年(昭和53年)には江川ダムの南方3.5キロの佐田川に寺内ダムが竣工するとともに寺内ダムから小石原川へ通じる寺内導水路が開削され2ダムの連携運用が開始されました。
さらに2021年(令和3年)には江川ダム直上に小石原川ダムが完成し、併せて佐田川から江川ダムへの導水路トンネルが建設され、3ダム連携の効率的運用が可能となりました。

江川ダムは国道500号線沿いにあり、アプローチは簡単
ダム下への道路入り口にはフェンスがありますがこれは害獣防除用、立ち入りは規制されていません。


堤高79.2メートルのトップにはクレストラジアルゲートが3門
赤いゲートが際立ちます


右岸にホロージェットバルブがあり、径間が異なるバルブを2条備えています。
江川ダムは洪水調節機能がないため放流設備はラジアルゲートとバルブだけ。


国道からも何カ所かダムが望めますが、木が邪魔ですっきりとは見えません。


水利使用標識
もとは農林省(現農水省)の両筑平野農業水利事業がベースになったダムです。
かんがい面積は約4500ヘクタールにも及びます。


ダム湖は『上秋月湖』
ダム湖百選に選ばれています。


右岸から
提体は右岸側で『へ』の字に屈曲しています。
天端は車両通行可能。


洪水吐導流部と減勢工
エンドシル右手に両筑江川発電所があります。


ダム湖は『上秋月湖』
総貯水容量2532万5000立米でダム湖百選に選ばれています。


左岸から下流面
対岸に管理事務所があります。


左岸上流から
ダムが屈曲しているのがよくわかります。


ゲートと取水設備をズームアップ。


ダム湖上流にある佐田川からの導水路トンネル吐口。
佐田川は流域面積が大きい一方、寺内ダムの貯水能力が少ないため年間5200万立米の水が無駄になっていました。
導水路トンネルの完成により江川小石原川寺内3ダムが連携した効率的運用が可能となりました。


(追記)
江川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2424 江川ダム(1810)
福岡県朝倉市江川
筑後川水系小石原川
AWI
79.2メートル
297.9メートル
25326千㎥/24054千㎥
水資源機構
1972年
◎治水協定が締結されたダム

花宗溜池

2022-05-26 22:00:00 | 福岡県
2022年5月20日 花宗溜池
 
花宗溜池は福岡県八女市黒木町本分の矢部川水系本分川にある灌漑及び上水目的のアースフィルダムです。
1934年(昭和9年)の大干ばつを受け、矢部川流域では灌漑用貯水池築造機運が高まり、1937年(昭和12年)より県営事業として花宗溜池建設が着手されました。
しかし戦争激化や戦後の混乱を受けた物資・人員不足から事業は長期化、着工から15年目の1952年(昭和27年)にようやく完成に至りました。
総貯水容量329万立米は農業用溜池としては西日本屈指のスケールで、現在でも福岡県最大規模を誇り、管理者の花宗用水組合を通じ矢部川流域約1500ヘクタールの水田に灌漑用水を供給しています。
また2009年(平成21年)からは福岡県南広域水道企業団により上水調整池としての利用が開始されダムの目的はAからAWになりました。

池の西側を走る国道442号線から堤体を望むことができます。
住宅地の背後に聳える高さ30メートル弱の堤体はかなりの存在感。


ダム下の底樋
御影石が積まれた立派な樋門です。


天端は車道
堤頂長は300メートルを越えます。


上流面。


右岸の斜樋。


総貯水容量は328万9000立米と溜池としては福岡県最大規模
とんがり帽子の立派な取水塔は福岡県南広域水道企業団により2009年(平成21年)に建設され、以来の花宗溜池は農業用貯水池のほか同企業団の上水用調整池として活用されています。


洪水吐は堤体からは離れた左岸上流側にあります。

洪水吐越流部の切欠。
鋼製起伏ゲートがついています。


右岸の竣工記念碑。
着工以来15年の年月をかけてようやく完成に至った困難の道のりが綴られています。


右岸の斜樋。
カバーに覆われシャフトは見えません。


斜樋から見た上水用設備。
ダム愛好家の訪問記などではこれを灌漑用の取水塔と記す記述が多く見られますが、こちらは福岡県南広域水道企業団による上水用の取水排水設備です。


2402 花宗溜池(1808)
ため池コード 402101003
福岡県八女市黒木町本分
矢部川水系本分川
AW
29.3メートル
320.6メートル
3289千㎥/2580千㎥
花宗用水組合
1952年

深迫ダム

2022-05-26 14:00:00 | 熊本県
2022年5月20日 深迫ダム
 
深迫ダムは熊本県上益城郡益城町小谷の緑川水系妙見川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
1984年(昭和59年)に農水省の補助を受けた熊本県の事業で建設され、管理はおおきく土地改良区が受託しています。
グーグルの空撮写真を見ると貯水池全体が阿蘇火砕流による透水性が高い地質対策と思しきなラバー製の遮水シートで覆われ独特の風貌です。
ただ、ダムの敷地全体がフェンスで厳重に囲まれその風貌を間近で見ることはできません。
唯一ダム南側の道路から樹林越しに天端と貯水池の一部を見るのみです。

撮影場所が左岸になり天端左手が下流面、右手が上流面になります。


ズームアップ
対岸に横越流式洪水吐がありその向こうに管理事務所が見えます。
あちらには竣工記念碑などもあるようです。


貯水池全体が遮水シートで覆われています。

今回は羽田―熊本便を使って来県しました。
着陸態勢時に窓からダムを俯瞰できたようですが、残念ながら爆睡中のため見逃してしまいました。
農業用ダムの場合、管理する土地改良区にお願いすると見学が許可されるケースがままあります。
次回熊本来県の際には事前に管理者の大菊土地改良区に交渉してみようと思います。

2670 深迫ダム(1807)
熊本県上益城郡益城町小谷 
緑川水系妙見川 
 
 
19メートル 
241メートル 
1268千㎥/1172千㎥ 
おおきく土地改良区 
1984年

小布勢溜池

2022-05-04 10:00:00 | 新潟県
2022年4月24日 小布勢溜池
 
小布勢溜池は新潟県佐渡市西三川の西三川川水系西三川川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1932年(昭和7年)に小布勢水利組合の事業で竣工と記されているのみで詳細は不明です。
現在は小布勢土地改良区が管理し、約80ヘクタールの水田に灌漑用水を供給しています。

西三川地区金山集落から西三川川(金山川)沿いを約1.5キロ遡上すると小布勢溜池に到着します。
池の手前700メートルほどにチェーンが掛かりこの先は徒歩。

まずダム下へ向かいます。
堤高は18メートル、右手のパイプは洪水吐から伸びています。


底樋管。


田植えの早い佐渡では4月から水田に水が張られます
底樋管からは『ごぼごぼ』音を立てて水が湧き出ています。
洪水吐からのパイプは越流した水も利水利用しようという意図のようです。


左岸から見た天端。


左岸の洪水吐
堤体に切れ込みが入り、コンクリートで固めただけの簡易な洪水吐。


洪水吐導流部。


上流面。


総貯水容量37万2000立米の貯水池
約80ヘクタールの水田に灌漑用水を供給します。


右岸から
天端には大量のワラビが生えていますが、すでに長けていました。


右岸の取水設備。
2枚目写真の底樋管


0731 小布勢溜池(1806)
ため池コード 152240173 
新潟県佐渡市西三川
西三川水系西三川川
18.2メートル(ため池データベース 18メートル)
60.1メートル(ため池データベース 60メートル)
372千㎥/372千㎥ 
小布勢土地改良区
1932年

竹田川ダム

2022-05-03 20:00:00 | 新潟県
2022年4月24日 竹田川ダム
 
竹田川ダムは新潟県佐渡市竹田の国府川水系竹田川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
佐渡は離島としては珍しく広大な農地を有する一方、水源となる河川はいずれも流域面積が小さく雨水の河川流出が早いため、慢性的な用水不足に悩まされてきました。
これを受け島内各河川で農林省(現農水省)の補助を受けた農業水利事業が進められました。
小倉川および竹田川流域では1956年(昭和31年)に県営用水改良事業国府川左岸地区が着手され、両河川を水源とする灌漑用水の整備が進められました。
そしてその灌漑用水源として小倉川ダムとともに1967年(昭和42年)に竣工したのが竹田川ダムです。
運用開始後は国府川左岸土地改良区が管理を受託し、佐渡市真野地区及び畑野地区の約200ヘクタールの水田に灌漑用水を供給しています。

佐渡大規模農道から竹田川沿いを南に遡上するとダムに到着します。
残念ながら下流側からの撮影ポイントはありません。
左岸洪水吐に架かる橋。
入り口にはチェーンが掛けられ『進入禁止』と書かれています。
土地改良区に問い合わせると車両進入禁止であり徒歩については問わないとのこと。


横越流式洪水吐
手前の導流壁の形が独特
奥には取水設備の機械室があります。


洪水吐導流部
このまま竹田川として流下します。


洪水吐と上流面。




機械室のプレート
長井式自動温水取水装置!!ググっても何も出てきません。
その後の改修でどうやらフローティンアーム方式の取水設備に置換したようです。
その改修工事の施工は昭和64年1月ですが、昭和天皇崩御は1月7日なので7日しかないんですが…


貯水池側からの洪水吐
佐渡は4月から田植えが始まるためほぼ満水。


天端両岸にはガードレール
今は廃道寸前ですが右岸湖岸に道路が続いています。
下流面には草が茂り、ロックかアースか見分けがつきません。


総貯水容量90万3000立米のダム湖。


これが取水設備
藤津川ダム佐和田ダム同様フローティングアーム方式取水設備。


0755 小倉川ダム(1805)
33.4メートル
101メートル
903千㎥/880千㎥ 
国府川左岸土地改良区
1967年

新穂ダム

2022-05-03 13:00:00 | 新潟県
2022年4月24日 新穂ダム
 
新穂(にいぼ)ダムは新潟県佐渡市上新穂の国府川水系国府川上流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
佐渡市南東部、国中平野東端に位置する旧新穂村は古くから開拓が進み、朱鷺の里として知られる農業地帯です。
しかし水源となる国府川や大野川は流域面積が小さく雨水の河川流出が早いため、慢性的な用水不足に悩まされてきました。
そこで1943年(昭和18年)に『新穂村土地改良事業』が着手されその水源として着工されたのが新穂ダムです。
しかし戦争の激化や終戦後の混乱により事業は遅延、戦後『県営かんがい排水事業新穂地区』に引き継がれ、1958年(昭和33年)に新潟県最初の農業用ダムとしてようやく竣工しました。
完成後は新穂村土地改良区が管理を受託し、約850ヘクタールの水田への用水供給が開始されました。
しかし、昭和後半以降の圃場整備等により新穂ダムの用水不足が顕在化します。
そこで県は新たに農水省の補助を受けた『かんがい排水事業新穂第2期地区』に着手し1991年(平成3年)に当ダム上流約1.5キロ地点に新穂第2ダムが完成します。
これにより新穂ダムの用水不足は解消、現在では両ダム合わせて約900ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。

左岸から
堤高33.2メートル、堤頂長236.2メートルの横長ダムです。
天端や中段にはツツジが植えられています。


ダム下から
ダム下広場は桜とツツジが見ごろの4月5月のみ開放されますが、訪問時は桜は散りツツジは蕾という残念なタイミング。
読みづらいですが堤体に『ニイボダム』と書かれています。


分水ゲート
奥に斜樋からの底樋門が見え、このゲートで2系統に分水されます。


新穂地区はトキ保護センターが置かれた朱鷺の里として知られています。
新穂ダム各所にトキの装飾やモニュメントがありさながらトキのダム。
こちらは親柱。


洪水吐に架かる管理橋の欄干。

左岸の洪水吐導流部
ダムには1500本の桜が植えられていますが、訪問時はすでに葉桜。


天端は徒歩のみ通行可能
こちらにはツツジが植えられていますがまだ蕾・・・・。


4月5月のみ開放されるダム下広場
正面には大佐渡山脈が一望できます。


総貯水容量140万9000立米の貯水池
上流1.5キロには新穂第2ダムがあります。


右岸の斜樋
シャフトは7本。


上流面はコンクリートで護岸。


横越流式洪水吐
越流部手前にずいぶん土砂が堆積しています。




ダムサイトのトキのモニュメント。

0746 新穂ダム(1804)
新潟県佐渡市上新穂
国府川水系国府川
33.2メートル
236.2メートル
1409千㎥/1242千㎥ 
新穂村土地改良区
1958年