ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

温根別ダム

2023-12-21 17:00:27 | 北海道
2023年10月23日 温根別ダム

温根別ダムは北海道士別市温根別の一級河川天塩川水系犬牛別川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
温根別地区は水稲と大豆を中心に営農が展開されてきましたが、融雪が遅く栽培期間が短いうえに灌漑設備が未熟なため、収益性が低く抜本的な農業水利支援が求められていました。
これを受け1972年(昭和47年)に北海道開発局により国営かんがい排水事業温根別地区が着手され、その灌漑用水源として1985年(昭和60年)に竣工したのが温根別ダムです。
運用開始後は温根別土地改良区(その後の土地改良区統合により現在はてしおがわ土地改良区)が管理を受託し当初は約1500ヘクタール、現在は1082ヘクタールの田畑に灌漑用水を供給しています。
事業全体も同年完了し、灌漑設備の整備により営農の集約化・合理化が進捗しました。

士別市中心部から国道239号線~道道251号線で約21キロ、車で20分超で温根別ダムに到着します。
直近の改修で新調された洪水吐の白いコンクリートが際立ちます。


堤高33.7メートル、堤頂長178メートルのロック堤体。
北海道のロックフィルダムでは珍しくリップラップはロック材が剝き出し。


水利使用標識
受益農地約1082ヘクタールのうち水田が738ヘクタール、畑地が343ヘクタール
畑地は大豆栽培が大半で水利権は5月~7月の灌漑期のみ配分されています。


対岸からさらに林道が続くため舗装された天端は車両通行可能。


総貯水容量931万2000立米の貯水池
訪問時は灌漑期が終わり水は抜かれています。


北海道でよくみられる赤いトラスの取水塔
灌漑用ですから表層取水。
取水塔の左下には土砂吐ゲート


天端からダム下を望む
左手は洪水吐減勢工
右手に放流設備があり下流で合流します。
ダム下に通じる管理道路に規制はありませんが、草が覆いクマが怖いので立ち入りは自重。
正面の山には大きな地滑り跡、この辺りは蛇紋岩質で地滑りが多い地域です。


放流設備をズームアップ
灌漑用水は犬牛水別川に放流し下流の取水堰で取水されます。
この時期は流入量はそのまま放流されます。


左岸の記念碑。

定礎石。


洪水吐斜水路と減勢工
直近の改修で新調されたためコンクリートが白い。


横越流式洪水吐。


左岸から上流面
水が抜かれているので普段水没している上流面の構造がよくわかります。


右岸の事務所を遠望
ちょっと見づらいですが事務所わきからインクラインが伸びています。


洪水吐そばの慰霊碑
農業用ダムで慰霊碑は珍しいのですが、建設にあたり殉職者が出たんでしょうね?
合掌。


水が抜かれた時期には貯水池の上流側でダム湖に沈んだ集落の遺構が見れるそうで、むしろ廃墟マニアには有名なスポットです。
今回、足を延ばしたかったのですがこの後サンルダムの見学が控えていたのでパスしました。

(追記)
温根別ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0123 温根別ダム(2025)
北海道士別市温根別
天塩川水系犬牛別川
33.7メートル
178メートル
9312千㎥/8590千㎥
てしおがわ土地改良区
1985年
◎治水協定が締結されたダム