ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

南椎尾調整池

2024-05-31 08:00:00 | 茨城県
2015年12月04日 南椎尾調整池
2024年 4月22日
 
南椎尾調整池は茨城県桜川市真壁町椎尾にある水資源機構が管理する灌漑目的のロックフィルダムです。
少雨に加え台地上に耕作地が続く茨城県南西部では古くから用水確保は困難を極め慢性的な水不足に悩まされてきました。
一方首都圏のベッドタウンとして人口が急増、さらに交通網の整備などを受け工場の進出が相次ぎなど都市用水の需要も高まり、新規の水源確保が喫緊の課題となっていました。
しかし、当地を貫流する鬼怒川・小貝川・桜川には新規水利権を配分する余裕はない中、霞ヶ浦開発事業によってダム化され、利水容量に余裕のあった霞ケ浦が着目されます。
そして霞ヶ浦から筑波山を貫通して茨城県南西部に導水する『霞ケ浦用水事業』が水資源開発公団(現水資源機構)によって着手されました。
同事業には農林水産省、茨城県農林水産部、茨城県企業局が事業参加し2004年(平成16年)に竣工、霞ヶ浦から茨城県南西部15市2町に灌漑・上水道・工業各用水を導水する壮大な用水事業が完成しました。
このうち農林水産省による『国営霞ヶ浦用水農業水利事業』の灌漑用調整池として水資源開発公団と農林水産省の共同事業で1991年(平成2年)に建設されたのが南椎尾調整池です。
南椎尾調整池はつくば市の桜川左岸地帯に灌漑用水を供給する神郡幹線を通じてつくば市の桜川左岸地帯への灌漑用水の供給および基幹線水路のタイムラグ調整を目的としています。

霞ヶ浦用水事業の詳細については下記リンクをご覧ください。

霞ヶ浦用水イラストマップ
(出典 水資源機構霞ヶ浦用水 パンフレット)

 
南椎尾調整池には2015年(平成27年)10月に初訪、霞ヶ浦用水管理所見学に併せて2024年(令和6年)4月に再訪しました。
掲載写真はすべて再訪時のものです。
また見学会については

下流から遠望 
水資源機構管理のダムらしく堤体には『つくし湖』と書かれています。

 
右岸駐車場わきには筑波トンネル掘削の際に使用されたベルトコンベアが展示されています。 


天端は2車線幅で舗装されていますが、車両は進入禁止で徒歩のみ開放。

 
天端からの眺め
奥の山並みに至るまで、眼前に広がる農地はすべて霞ヶ浦用水の受益地です。

 
貯水池のつくし湖は総貯水容量56万立米
左奥に筑波山が聳えます。

 
見た目はアースフィルのようですが、ダム便覧の型式はロックフィル。
堤高27.4メートル、堤頂長400メートル。

 
正式名称である南椎尾調整池よりも貯水池名である『つくし湖』の方が一般にはよく知られています。
さらに国土地理院地形図では『つくし湖調整池』と表記されており、左岸の石碑にもつくし湖調整池と刻されています。
ややこしい。


隣には霞ヶ浦用水の事業説明およびつくし湖(南椎尾調整池)の諸元表・断面図
ここには傾斜コア方式のフィルダムと表記。

 
洪水吐導流部。

 
横越流式洪水吐
洪水吐内では木が茂っています。

 
つくし湖右岸にある南椎尾調整池分水工を遠望
霞ヶ浦用水筑波トンネルの出口で、ここで基幹線水路と南椎尾調整池に貯留する水を分水します。
向かって左にゲート、右手には水位計。

 
その南椎尾調整池分水工を間近で。
手前には『霞ヶ浦用水 筑波トンネル』の石碑。

 
霞ヶ浦用水断面図
管理所に隣接した霞ヶ浦揚水機場から約56メートル揚水したのち、自然流下で導水します。
(出典 水資源機構霞ヶ浦用水パンフレット)

 
基幹線水路は貯水池湖底を潜りサイフォンで導水されます。
一方、有効貯水容量52万8000立米のうち神郡幹線向け容量が44万立米、基幹線水路のタイムラグ調整容量として8万2000立米が配分されています。
ということで調整池の主目的はつくば市桜川左岸地帯への灌漑用水の供給となります。

 
筑波トンネル吐口
ネットはゴミ防止かと思いきや、釣り対策用
道路からフライフィッシングで釣りをするバカがいたようです。

 
貯水池側から見た分水工。
向かって左が神郡幹線向けゲート、右が放水ゲート。


ゲートをズームアップ
神郡幹線向けゲートにはフラップがついています。

 
分水工の対岸(左岸)には取水工
つくし湖に8万2000立米配分されたタイムラグ調整容量の取水工となります。

 
神郡幹線の取水用斜樋。

 
以上が南椎尾調整池についての記載です。
ここからは霞ヶ浦用水の基幹施設を紹介します。
こちらは茨城県かすみがうら市の霞ヶ浦西岸にある霞ヶ浦揚水機場。
左手が手が霞ケ浦になります。

 
揚水機場の内部
揚水用ポンプが8台並び奥5台が農水用、手前3台が都市用水用となります。
ポンプ8台の総出力は約2万5000キロワットで最大毎秒10.3立米の水を103メートル揚水する能力を持ち、完成当初は東洋一の規模を誇る揚水機場でした。

 
こちらは小貝川を基幹線水路が跨ぐ小貝川水路橋
農水と土地用水用の水管が2本並び、サイフォンで小貝川を跨ぎます。

 
今回は霞ヶ浦用水管理所にお邪魔し事業のレクチャーを受けたのち職員様帯同で南椎尾調整池を見学しました。
南椎尾調整池の場合、池だけを見てもその機能や役割についてはほとんどわからず、霞ヶ浦用水事業全体を見て初めてその存在意義が理解できます。
やはり、ダムは点ではなく水の流れに沿って線や面で見ないといけないことを再確認する好機となりました。

2999 南椎尾調整池 (0078)
茨城県桜川市真壁町椎尾 
利根川水系霞ヶ浦
27.4メートル
400メートル
560千㎥/522千㎥
水資源機構
1991年

小山ダム

2018-03-13 17:00:00 | 茨城県
2015年12月04日 小山ダム
2018年  3月11日
 
小山ダムは茨城県高萩市横川の大北川本流上流部にある茨城県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
大北川は水戸藩領としては最北に位置する河川であることが名前の由来とされています。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、大北川の洪水調節、既得取水権として流域への灌漑用水の補給と安定した河川流量の保持、北茨城市への上水道用水と工業用水の供給を目的として2005年(平成17年)に竣工しました。
総貯水容量・堤頂、堤高・堤体堰ともに県内最大のダムです。
 
ダムは県道22号線沿いにありアプローチは簡単です。
ダム左岸管理事務所横に立派な駐車場と小山ダム物産所があり週末限定でダムカレーを食べることもできます。
まずは下流から
オリフィスから放流しています。
 
左岸上流から
クレストには非常用洪水吐として22門の自由越流式ゲートが並びます。
洪水調節容量が大きいためこれで常時満水位。
巨大な城壁の様ですです。
(2018年3月11日)
 
左岸の竣工記念碑(2018年3月11日)。
 
左岸から下流面(2018年3月11日)。
 
天端は歩行者のみ通行可能
堤頂長は462メートルで往復で1キロ弱。
(2018年3月11日)
 
左岸には管理事務所と小山ダム物産所が並びます
管理事務所裏からは浮桟橋へ通じる階段が伸びています。
(2018年3月11日)
 
減勢工
減勢工を跨いで『こやまダム』の植栽。
 
ダム湖(こやま湖)は総貯水容量1660万立米
職員さん曰く「歩きなら一周できるよ」。
 
右岸から(2018年3月11日)。
 
背の高い導流壁(2018年3月11日)。
 
評判のダムカレーを楽しみに行きましたが、ちょうど我が家の直前で売り切れ!!
帰宅後調べるとダム湖上流に小山調整池ダム跡があることが判明。
ダムカレーのリベンジも含めて再訪したいところです。
 
追記
小山ダムには1370万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに130万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0550 小山ダム(0088)
茨城県高萩市横川
大北川水系大北川
FNWI
65メートル
462メートル
16600千㎥/15000千㎥
茨城県土木部
2005年
◎治水協定が締結されたダム

花貫ダム

2018-03-13 04:00:00 | 茨城県
2015年12月04日 花貫ダム
2018年  3月11日
 
花貫ダムは茨城県高萩市秋山の花貫川本流中流部にある茨城県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、花貫川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、高萩市への上水道用水の供給、松久保工業団地への工業用水の供給を目的として1972年(昭和47年)に竣工しました。
ダム下は花貫さくら公園として整備され県内有数の桜の名所となっているほか、ダム湖上流は花崗岩による景勝が続く花貫渓谷となっており紅葉期には渋滞が発生するほどの観光スポットとなっています。
花貫ダムには2015年(平成27年)に訪問、2018年(平成30年)に再訪しました。
 
花貫ダムは国道461号線沿いにありアプローチは簡単です。
まずはダム下のさくら公園から
まだ冬枯れの公園は人気もなく閑散としていますが、桜の時期には多くの花見客でにぎわいます。
(2018年3月11日)
 
ゲートは中央に非常用ラジアルゲート1門、その両側に常用高圧ラジアルゲート2門を装備。
それぞれを区切る複雑な導流壁に目が行きます。
(2018年3月11日)
 
ゲートをズームアップ.
 
 
天端は職員駐在時のみ立ち入り可能。
 
減勢工。
 
海岸からわずか10キロ、海が見えます。
 
左岸上流から
中央に非常用洪水吐のラジアルゲートがあり、両側には常用洪水吐の予備ゲート。
右手は取水設備。
 
上流から遠望(2018年3月11日)。
 
追記
花貫ダムには175万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに25万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0544 花貫ダム(0087)
茨城県高萩市秋山
花貫川水系花貫川
FNWI
45.3メートル
223.6メートル
2880千㎥/2000千㎥
茨城県土木部
1972年
◎治水協定が締結されたダム

十王ダム

2018-03-12 20:00:00 | 茨城県
2015年12月04日 十王ダム
2018年  3月11日
 
十王ダムは茨城県日立市十王町友部の十王川本流中流部にある茨城県土木部が管理する多目的的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、十王川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、日立市への上水道用水及び工業用水の供給を目的として1993年(平成5年)に竣工しました。
ダム右岸は十王パノラマ公園として整備され市民の憩いの場となっているほか、毎正時に鳴るカリヨンの鐘に合わせて吹きあがる噴水は十王ダムの名物となっています。
2015年12月の訪問に続き、2018年3月に再訪しました。
 
十王市街から県道60号を西進し、常磐道を潜ると左岸ダムサイトに到着します。
ダム下に下りる遊歩道がありまずはダム直下から見学します。
ゲートは自由越流式のほかローラーゲートが3門並び、中央のゲートだけ越流面が低くなっています。
初回訪問時にはダム下左岸(向かって右手)に東京発電川尻川発電所がありました。発電所の取水は十王ダム湖をバイパスして行われダムと直接の水のやり取りはありません。
 
再訪時は折からの雨で水位が上がりローラーゲートからの放流を見ることができました。
一方前回訪問時にあった東京発電川尻川発電所はすでに撤去されていました。
(2018年3月11日)
 
左岸下流側から
背の高い導流壁が特徴です(2018年3月11日)。
 
左岸上流から
対岸高台が十王パノラマ公園になっており、その下の斜面に『十王ダム』の植栽 があります。
 
天端は十王パノラマ公園に通じる車道になっています。
真っ赤なゲートピアが特徴的で、ゲート操作室壁面には桜が描かれています。
(2018年3月11日)
 
減勢工と背の高い導流壁(2018年3月11日)。
 
反対側のゲート操作室には旧十王町の名物である海鵜が描かれています。
(2018年3月11日)
 
堤体右岸が屈曲しており、いわゆる『カド』のあるダムです。
(2018年3月11日)。
 
右岸から
堤体が屈曲しているのが分かります(2018年3月11日)。
 
ゲートをズームアップ
改修工事中です。
 
右岸から
前回は工事中だったゲートも改修を終えて奇麗に並んでいます(2018年3月11日)。
 
名物の噴水
お天気がいまいち(2018年3月11日)。
 
右岸高台から俯瞰
『カド』が俯瞰できます。(2018年3月11日)
 
最初の訪問でパスしてしまったパノラマ公園からの眺めや噴水を見ることができましたが、逆に天気がいま一つ。
 
追記
十王ダムには178万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに32万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0549 十王ダム(0086)
茨城県日立市十王町友部
十王川水系十王川
FNWI
48.6メートル
205.5メートル
2860千㎥/2100千㎥
茨城県土木部
1993年
◎治水協定が締結されたダム

楮川ダム

2018-03-12 16:00:00 | 茨城県
2015年12月04日 楮川ダム
2018年   3月11日
 
楮川(こうぞがわ)ダムは茨城県水戸市田野町の那珂川水系田野川右支流楮川にある水戸市水道部が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
約5キロ離れた那珂川の枝内取水場から取水された水を揚水して貯留し、隣接する楮川浄水場を経て市内に配水しています。
高度成長以降の水需要の増加に加えて、災害等で那珂川での取水が困難になった場合のバックアップ水源として1985年(昭和60年)に竣工しました。
ダム湖貯水量は197万立米でこれは水戸市の上水道約20日分に相当します。
 
ダム堤体は右岸側がくの字型に屈曲した『カド』のあるダムです。
またダム周辺は森林公園や市民運動場が整備され、ダム湖周回道路では多くの市民がはサイクリング・ランニング・ウォーキングを楽しんでいます。
 
水戸市成沢町で県道51号を南に折れ市道を南下すると楮川ダムを示す標識があり、これに従って左折すると楮川ダムに到着します。
ダム左岸にある楮川浄水場。
 
左岸から上流面
正面は取水設備。
 
取水設備(2018年3月11日)。
 
ジャジャンボ池と呼ばれるダム湖、総貯水容量は197万立米で水戸市上水道の20日分が貯留されています。
 
減勢工
楮川自体は小河川で実質的に河道外貯留方式のため減勢工は小規模なものとなっています。
(2018年3月11日)
 
放流設備
河川維持用の放流管に加えて常用洪水吐のバルブを備えています。
(2018年3月11日)。
 
天端は車道になっており、右岸側がくの時に屈曲しています。
(2018年3月11日)
 
さらに引いた場所から。
 
楮川ダムの『カド』(2018年3月11日)。
 
ダム下から
ダムとしては自由越流式洪水吐2門の簡易な形状です。
 
0553 楮川ダム(0085)
茨城県水戸市田野町
那珂川水系楮川
35メートル
364メートル
1970千㎥/1960千㎥
水戸市水道部
1985年

藤井川ダム(再)

2018-03-12 12:00:00 | 茨城県
2015年12月04日 藤井川ダム(再)
2018年  3月11日
 
藤井川ダムは茨城県東茨城郡城里町下古内の那珂川水系藤井川中流部にある茨城県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1947年(昭和22年)のカスリーン台風での甚大な被害をきっかけに県は藤井川の本格的な治水事業に乗り出し、1956年(昭和31年)に治水専用ダムとして藤井川ダムが竣工しました。
完成当時は全国最大規模の治水専用ダムで、普段は貯水池に水を貯めないいわゆる『穴あきダム』として完成しました。
1976年(昭和51年)に高度成長による人口増や流域氾濫原の宅地化に対処するために、建設省(現国交省)の補助を受けた多目的ダム化事業が竣工し、藤井川ダムは藤井川の洪水調節に加えて不特定利水、新規農地への灌漑用水の供給、水戸市及び城里町への上水道用水の供給を目的とする補助多目的ダムとして生まれ変わりました。
しかし1986年(昭和61年)8月豪雨を受け県は『藤井川ダム再開発事業』に着手、ダム湖掘削による貯水容量の増大を軸とした再・再開発事業が2007年(平成19年)に竣工し、現在に至っています。
 
再開発にあたり、常用洪水吐としてコンジット高圧ラジアルゲートと低水管理用バルブを増設したほか、ダム上流左岸にラジアルゲート3門を装備した非常用洪水吐を新設しました。
主堤体と洪水吐が離れているいわゆる『非越流型重力式コンクリートダム』となっており、同様のダムとしては小河内ダムや三浦ダムなどがありますが、堤体と洪水吐がここまで離れているダムは非常に珍しいのではないでしょうか?
一方ダム周辺は城里町総合野外活動センター『ふれあいの里』となっておりキャンプ場や各種レクリエーション施設、公営の日帰り入浴施設などが整備され茨城県屈指のレクリエーション施設となっています。
 
藤井川ダム主堤体と非常用洪水吐の位置関係
緑マルが主堤体、赤マルが非常用洪水吐
 
県道51号と52号に藤井川ダムや『ふれあいの里』を示す案内板があり、これに従うと藤井川ダムに到着します。
堤体下部に再開発によって増設されたコンジット高圧ラジアルゲートがあります。
直近の雨により水位が上がりゲート放流が行われています。
(2018年3月11日)
 
左岸から下流面
堤体は1956年(昭和31年)当初のまま。(2018年3月11日)
 
天端とゲート操作室
天端は町道でそこそこの通行量があります。
(2018年3月11日)
 
右岸から
写真手前には低水管理用バルブがあります。
(2018年3月11日)。
 
ダム湖はうなぎ地蔵湖
見た目は小ぶりですが、名前の通りウナギのようにくねくねと蛇行しており総貯水容量は446万2000立米あります。
 
こちらはダム湖の左岸上流にある非常用洪水吐
赤いラジアルゲートとおしゃれな機械室が並んでいます。
(2018年3月11日)
 
非常用洪水吐の天端
こちらも車道になっておりロッジ風の機械室が並びます。
 
非常用洪水吐導流部。
 
(2018年3月11日)
 
非常用洪水吐天端高覧にあるミミズクの彫刻
城里町のマスコットキャラクターです。
(2018年3月11日)
 
2度の再開発が行われた歴史的経緯、主堤体と洪水吐が離れた場所にある構造的側面、二つの点で非常に珍しいダムとなっています。
 
追記
藤井川ダム(再)375万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに45万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0545 藤井川ダム(元)
茨城県東茨城郡城里町下古内
DamMaps
那珂川水系藤井川
FNAW
37.5メートル
90メートル
4000千㎥/3750千㎥
茨城県土木部
1956年藤井川ダム竣工(治水ダム)
1976年再開発竣工(多目的化)
-------------
3162 藤井川ダム(再)(0084)
茨城県東茨城郡城里町下古内
那珂川水系藤井川
FNAW
37.5メートル
90メートル
4462千㎥/4412千㎥
茨城県土木部
2009年 再・再開発竣工
◎治水協定が締結されたダム

三野輪池

2018-03-12 09:38:53 | 茨城県
2018年3月11日 三野輪池
 
三野輪池は茨城県水戸市三野輪町の那珂川水系桜川左支流(河川名未確認)にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧では所在地が東茨城郡内原町になっていますが、これは誤りです。
現地竣工記念碑には1954年(昭和29年)より従来からあった溜池の改修工事が着手されるも、完成直前の豪雨で決壊、1964年(昭和39年)3月に復旧工事が竣工したと記されており、ダム便覧ではこの復旧事業の竣工を竣工年度としています。
池の管理は中妻地区土地改良区が行っています。
 
堤体は犬走りを挟んで2段構成、草はきれいに刈られています。 
 
左岸の洪水吐。
 
天端。
 
上流面はコンクリートで護岸。
 
洪水吐吐導流部。
 
洪水吐の越流堤は緩やかに湾曲しています
総貯水容量43万2000立米と関東の溜池としては比較的大きなサイズ。
 
天端からの眺め。
 
右岸の斜樋。
 
右岸から上流面。
 
竣工記念碑。
 
底樋は確認しませんでした。
 
0542 三野輪池(1252)
ため池コード
茨城県水戸市三野輪町
那珂川水系桜川左支流
16メートル
120メートル
432千㎥/432千㎥
中妻地区土地改良区
1964年

不動谷津池

2018-03-12 04:24:02 | 茨城県
2018年3月11日 不動谷津池
 
不動谷地池は茨城県笠間市小原の那珂川水系涸沼前川左支流(河川名未確認)にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1978年(昭和53年)に友部町土地改良区の事業で竣工と記されています。
一方現地竣工記念碑には1977年(昭和52年)に農水省及び県の補助を受けた団体営かんがい排水事業、つまり友部町土地改良区の事業によって竣工と記されています。
ここでは竣工記念碑の1977年竣工を採用することにします。
池の管理は現在も同土地改良区が行っています。
 
下流面はきれいに草が刈られています。
 
左岸から下流面
左岸に洪水吐があり導流部が流下しています。
 
堤体左岸に伸びる洪水吐導流部。
 
天端は関係者以外立ち入り禁止。
 
洪水吐越しの貯水池。
総貯水容量は22万2000立米。
 
左岸の横越流式洪水吐。
 
上流面はコンクリートで護岸
右岸に斜樋があります。
 
斜樋をズームアップ。
 
洪水吐越流面には切れ込みがあり、木板がはめ込まれています
ここで貯水量の調整を行うようです。
 
竣工記念碑。
不動谷津池のほか友部土地改良区が管理する溜池や関係した事業が記載されています。
 
ダム下の底樋は草が深く確認しませんでした。
 
0546 不動谷津池(1251)
ため池コード
茨城県笠間市小原
那珂川水系涸沼前川左支流
16.6メートル
112メートル
222千㎥/222千㎥
友部町土地改良区
1977年。

飯田ダム

2018-03-12 00:00:00 | 茨城県
2015年12月04日 飯田ダム
2018年  3月11日
 
飯田ダムは茨城県笠間市飯田の那珂川水系涸沼川右支流飯田川上流部にある茨城県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、涸沼川および飯田川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、茨城県中央広域水道(水戸市他9市町村)への上水道用水の供給を目的として1993年(平成5年)に竣工しました。
ダム湖の笠間湖は、人造湖ながら複雑な地形で水深も浅く小魚や水生動物が繁殖しやすい環境となっており、茨城県による生態系環境創造事業の効果もあり、県内有数のバードウォッチングのスポットになっています。
 
笠間市街から県道39号を北上、『飯田ダム』の標識に従って右手の側道に入ると正面に飯田ダムが見えてきます。
堤高33メートルに対して堤頂長219.5メートルと横長のダムで、クレストには11門の自由越流式洪水吐が並びます。
 
左岸から。
 
ダム下から
オリフィスゲートからの越流を正面から見ることができます。
 
同じくダム下から(2018年3月11日)。
 
天端は歩行者のみ通行可能
円形のおしゃれな管理事務所。
 
減勢工(2018年3月11日)。
 
ダム湖(笠間湖) 
総貯水容量244万立米
人造湖ですが、複雑に入り組んだ入江が形成され、結果として野生生物の生息に最適な環境になっています。
野鳥も多く、県内有数のバードウォッチングのスポットです。
 
右岸から下流面
細長い減勢工と、それを囲む堤趾導流壁が特徴的。(2018年3月11日)
 
右岸から上流面(2018年3月11日)。
 
ダム湖上流から(2018年3月11日)。
 
追記
飯田ダムには113万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに35万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0551 飯田ダム(0083)
茨城県笠間市飯田
那珂川水系飯田川
FNW
33メートル
219.5メートル
2440千㎥/2240千㎥
茨城県土木部
1991年
◎治水協定が締結されたダム

横利根閘門

2016-02-01 11:00:00 | 茨城県
2016年1月31日 横利根閘門
 
横利根閘門は利根川と霞ヶ浦を結ぶ横利根川に架かる閘門で、国交省関東地方整備局利根川下流河川事務所が管理運用を行っています。
1921年(大正9年)に完成し、280万個の煉瓦が使われた日本最大級の煉瓦製閘門で国の重要文化財に指定されています。
もちろん現在も現役で運用されています。
閘門は表裏二つの閘扉室それぞれに4枚の鋼鉄製扉があり、間にある閘室で水位を調節して船舶が通行する仕組みになっています。 
 
利根川側から
手前が表閘扉室、奥が裏閘扉室。
 
ズームアップ。
 
表閘扉室。
 
閘門を作動させるギア。
 
ゲートは観音開きでそれぞれの閘扉室は大小2枚ずつ、計4枚の鋼鉄製扉で構成されています。
 
裏閘門。
 
鋼鉄製扉は溶接ではなくリベット留めされています。
この技術はすでに廃れており、改修の際にはかなりの苦労があったようです。
 
横利根閘門
茨城県稲敷市西代
利根川水系横利根川
閘門
国交省関東地方整備局
1921年

常陸川水門

2016-01-25 09:00:00 | 茨城県
2016年1月24日 常陸川水門
 
常陸川水門は茨城県神栖市の常陸川にある関東地方整備局直轄の水門です。
常陸川は霞ガ浦から外浪逆浦を経て利根川に注ぐ利根川の支流で、常陸川水門は利根川への合流点に建設され利根川にかかる利根川河口堰と隣接しています。
常陸川水門は利根川からの逆流を防ぎ霞ヶ浦の氾濫を抑えること、海水の遡上を防ぎ塩害を抑えるを目的として建設されましたヶ、その後霞ヶ浦開発事業として霞ヶ浦の水位を調節して工水、上水、農水の水源を確保することが加えられました。
一方で本来汽水湖だった霞ヶ浦が淡水化することで、環境面への悪影響が増加し霞ヶ浦水質悪化の原因の一つになったとされています。
なお連結する利根川河口堰が堰堤であるのに対して、常陸川水門は堤防機能を持つ水門となっており河川法上の堰堤ではありません。
 
右岸下流から
主ゲート8門 閘門2門で構成されます。
 
橋上は常陸川大橋として県道260号線が通っています。
利根川河口堰の利根川大橋と一体化しており車で走ると一つの橋と勘違いします。
 
左岸の閘門。
 
閘門は大小2門となっています。
現在塗装工事中で閘門の船舶通航はできません。
 
鹿島臨海コンビナートはすぐそば
霞ヶ浦の工水利用も霞ヶ浦開発事業の目的の一つでした。
 
予習不足ですべて利根川河口堰と思っていたものが実は常陸川水門と利根川河口堰に分かれていました。
利根川下流部は高低差がほとんどなく、常陸川上流の霞ヶ浦や北浦でも水面の海抜は0メートルで、塩害や逆流による洪水の影響を受けやすくなっていました。
これらを防ぐとともに淡水化によって利水を拡大しようという計画の一端で建設されたのが常陸川水門ですが、一方で霞ヶ浦の水質悪化という副作用も生みだしてしまったのも事実です。
 
常陸水門
茨城県神栖市太田
利根川水系常陸川
水門
6.65メートル
252メートル
国交省関東地方整備局
1963年

利根川河口堰

2016-01-25 08:00:00 | 茨城県
2016年1月24日 利根川河口堰
 
利根川河口堰は茨城県神栖市と千葉県香取市東庄町の利根川にまたがる水資源機構が管理する多目的可動堰です。
利根川流域の塩害防止と、首都圏への水の供給を目的として水資源開発公団によって1971年(昭和46年)に建設されました。
利根川河口から中流域にかけては高低差がほとんどなく高潮発生時は河口から40キロ上流の香取まで塩分が遡上することもあり、流域各地で塩害が発生していましたが、河口堰の完成により塩害の発生は大幅に減少しました。
一方利根川の水を堰き止め北千葉導水路経由で江戸川に転送して東京や埼玉への送水が可能となりましたが、バブルの崩壊や人口増加の終焉により送水能力に対して10%程度の送水しか行われていません。
 
利根川河口堰と隣接する常陸川水門は県道260号線が走っています。
 
支流の黒部川水門。
 
右岸下流から
両端に調節門2門 中央に制水門7門の計9門の水門があります。
 
右岸の魚道。
 
左岸の閘門。
 
閘門と左岸側の魚道。
 
調節門。
 
制水門。
 
0552 利根川河口堰(0212)
左岸 茨城県神栖市太田
右岸 千葉県香取郡東庄町新宿
利根川水系利根川
FNAWI
FG
7メートル
834メートル
90000㎥/50000㎥
水資源機構
1970年

竜神ダム

2015-12-21 08:00:00 | 茨城県
2015年12月18日 竜神ダム
 
竜神ダムは左岸が茨城県常陸太田市下高倉町、右岸が同市天下野町の一級河川久慈川水系山田川右支流竜神川にある茨城県土木部所管の重力式コンクリートダムで、建設省の補助を受けた補助多目的ダムとして1978年(昭和53年)に竣工しました。
洪水時最大90立米/秒の洪水をカットし、山田川下流基準地点で80立米/秒の洪水調節を行うほか、河川流量の維持と山田川流域農地への不特定灌漑用水(既得灌漑用水)の補給、太常陸太田市及び日立市への上水供給、常陸太田市への工水供給を目的としています。
ダム上流の竜神峡は紅葉の名所として知られる一方、ダム湖上には本州有数の歩行者用吊橋である竜神大吊橋が架橋され人気の観光スポットとなっています。
 
左岸下流から
放流設備として非常用洪水吐のクレストラジアルゲート2門、常用洪水吐のオリフィスローラーゲート1門を装備。
赤いゲートととんがり帽子の操作室の組み合わせは、同じ茨城県土木部所管の藤井川ダムの非常用洪水吐によく似ています。


ズームアップ。


天端は徒歩のみ開放
天端を渡った右岸から竜神大吊橋への遊歩道が続いています。


ダム湖の竜神湖(総貯水容量300万立米)の上空100メートルに架かる竜神大吊橋。


右岸から下流面。

 
減勢工
副ダムにはスリットが入っています。
放流しているのは利水放流管。


竜神大橋を渡ります
一人310円。


吊り橋から
まるで航空写真のようなアングルでダムを俯瞰できます。


ゲートの右側は選択取水設備。


上流から。
手前に艇庫とインクライン
2門のラジアルゲートの間にオリフィスローラーゲートの上部が水面からわずかに頭を出しています。


(追記)  
竜神ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 

0547 竜神ダム(0116)
左岸 茨城県常陸太田市下高倉町 
右岸       同市天下野町 
久慈川水系竜神川
FNWI
45メートル
90メートル
3000㎥/2700㎥
茨城県土木部
1978年
◎治水協定が締結されたダム

水沼ダム

2015-12-05 18:00:00 | 茨城県
2015年12月04日 水沼ダム

水沼ダムは茨城県北茨城市華川町の二級河川大北川水系花園川にある茨城県土木部が管理する重力式コンクリートダムで、建設省(現国交省)の補助を受けた補助多目的ダムとして1966年(昭和41年)に竣工しました。
茨城県土木部としては最初の多目的ダムで花園川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給、上水道用水及び工業用水の供給を目的としています。
 
県道153号線を北西に走ると右手にダムが見えてきます。
初冬の残照を受けた山が湖面に映えて素晴らしい眺めとなりました。
ダム湖は総貯水容量223万立米と補助ダムとしてはかなり小ぶり。
 
クレストにローラーゲート1門。
右は選択取水設備。
 
天端は立ち入り禁止。
古いダムなので安全のために立ち入り禁止にしてるそうです。
 
堤高33.7メートルとさほど高さはありません。
ゲートが前面に張り出した作りは大内ダム大川ダムなど香川県営ダムに通じるデザイン。
取水設備から伸びたパイプは河川維持放流用に後付けしたっぽい。

追記
水沼ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。    

0543 水沼ダム(0089)
茨城県北茨木市華川町 
大北川水系花園川
FNWI
33.7メートル
140メートル
2230㎥/1660㎥
茨城県土木部
1966年
◎治水協定が締結されたダム

御前山ダム

2015-12-05 11:00:00 | 茨城県
2015年12月04日 御前山ダム
 
御前山ダムは左岸が茨城県常陸大宮市上伊勢畑、右岸が同市下伊勢畑の一級河川那珂川水系相川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
那珂川沿岸一帯は肥沃な土壌と温暖な気候を生かし、江戸期より新田開発が進み県下有数の農業地帯となっています。
しかし灌漑施設の老朽化に加え、台地上の畑地帯や中小支川沿いの水田の多くは利水に乏しく生産性向上のため灌漑施設の刷新、整備が強く求められてきました。
1987年(昭和62年)に農水省による国営農業水利事業那珂川沿岸地区が着手され、 その灌漑用水源として2012年(平成24年)に竣工したのが御前山ダムです。
ダムは2014年(平成26年)より運用が開始されていますが、農業水利事業全体はいまだ継続中のため一部受益農地への補給に留まっています。
現在の管理は農水省関東農政局が行っており、事業竣工の暁には約8500ヘクタールを超える広大な農地に灌漑用水が供給される見通しです。
事業の概要については下記リンクをご覧ください。
 
那賀川沿いの国道123号から県道39号を南に進むと右手に御前山ダムが見えてきます。
下流の相川橋から洪水吐と正対できますが、堤体と洪水吐の間に地山があるため堤体が見えません。
 
洪水吐をズームアップ。
 
ダム本体は立ち入り禁止のため、フェンス越しに見るのみ。
春秋に見学会が実施されるようです。
 
右岸に横越流式洪水吐があります。
 
総貯水容量720万立米と関東の農業用ダムとしてはかなり大規模。
管理事務所に斜樋が併設されています。
 
周辺は那珂川が大きく蛇行し北関東の嵐山と呼ばれる美しい景観が続いています。
ダムはフェンスに閉ざされていますが、開放すれば周辺の観光拠点の一つとして活用できると思うのですが。
 
追記
御前山ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

3154 御前山ダム(0082)
左岸 茨城県常陸大宮市上伊勢畑 
右岸       同市下伊勢畑 
那珂川水系相川
52メートル
298メートル
7200㎥/6500㎥
那珂川沿岸土地改良区
2012年
◎治水協定が締結されたダム