ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

協栄ダム

2023-12-05 17:00:10 | 北海道
2023年10月22日 協栄ダム

協栄ダムは北海道北見市川東の一級河川常呂川水系チャシポコマナイ川にあるある灌漑目的のアースフィルダムです。
北見市の常呂川流域では大正末期より水田開拓が着手されますが、耕作期となる4~9月の平均降水量は400ミリに留まり渇水による干ばつが頻発、稲作経営は困難を極めました。
戦後昭和30年代より灌漑用貯水池築造機運が高まり、北海道営事業により1963年(昭和38年)に着工、1965年(昭和40年)に竣工したのが協栄ダムです。
その後、北海道営のため池等整備事業による大規模改修を経て現在に至っています。
当初の管理は受益農家で組織される協栄ダム土地改良組合が受託していましたが、現在は北見市管理となっています。
ダムサイトの記念碑には完成当時の受益農家は51戸、受益農地は412町歩(416ヘクタール)と刻されていますが、現在の受益農地は75.8ヘクタールまで減少しています。
これは減反政策や高い採算性を求めての畑作や園芸農業への転作が主因と思われます。

道道122号線からチャシポコマナイ川沿いのダート道を約1キロ南下すると協栄ダムに到着します。
堤高18.6メートル、堤頂長88メートルのアース堤体。
左岸に洪水吐があります。


洪水吐斜水路と減勢工
北海道の溜池でよく見られるようにコンクリートの梁が渡されています。
減勢工わきに底樋管があるのですが、撮影ポイントがありません。


ダム下が土捨て場として盛土されているため、見た目の高さは12~3メートルほど。


天端は立ち入り禁止。


ため池等整備事業の説明板。
実際は溜池スペックなんですが、北海道のため池データベースや北見市のため池ハザードマップに記載はないので、農業用ダムという扱いなんでしょう。


水利使用標識。


ダムサイトの竣工記念碑。

隣には日本の代表的水神である『水波之女(ミズハノメ)大神』が祀られています。


総貯水容量40万立米の貯水池。
灌漑対象は水田ですでに灌漑期は終わっているため水が抜かれています。


上流面はコンクリートで護岸
対岸に横越流式洪水吐と取水設備があります。


取水設備は北海道で多く採用されている多孔式斜樋。
足元に土砂吐ゲートが見えます。

北見は北海道稲作発祥の地とも言われていますが、今や当地区の農業の主体は畑作。
受益農地は築造当初の5分の1まで減少し、協栄ダムの行く末が気になるところです。

(追記)
協栄ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

3354 協栄ダム(2020)
北海道北見市川東
常呂川水系チャシポコマナイ川
18.6メートル
88メートル
400千㎥/385千㎥
北見市
1965年
◎治水協定が締結されたダム