ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

内海ダム(再)

2022-03-31 22:00:00 | 香川県
2022年3月27日 内海ダム(再) 
 
内海(うちのみ)ダム(再)は香川県小豆郡小豆島町神懸通の二級河川別当川にある香川県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
もともと当地には旧内海町営の上水用堰堤がありましたが、1959年(昭和34年)に香川県の事業で嵩上げ再開発され洪水調節機能を持つ内海ダム(元)として生まれ変わりました。
しかし利水需要の増加に加え急流河川である別当川の洪水被害が頻発したことから、1997年(平成9年)に内海ダム再開発事業が着手され2013年(平成25年)に内海ダム(再)が竣工しました。
新ダムは旧ダムを取り込む形で建設され有効貯水容量は7倍超に拡大、旧堤体は新ダムの最低水位以下になるよう切除されダム湖に沈みました。
内海ダム(再)は国交省の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、別当川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、小豆島町への上水道用水の供給を目的としています。
 
小豆島町中心部から寒霞渓へ通じる県道29号を北上し、内海ダムの標識に従って左折すると内海ダム(再)に到着します。
再開発に合わせてダム周辺の環境整備が行われダム下やダム湖周辺各所が公園となっています。
ダム下のほたる広場から
クレスト自由越流頂2門、オリフィス1門のゲートレスダム。


ダム下広場から
実はこれでも堤体の半分程度。


左岸から
堤高43メートルに対し堤頂長は423メートル
再開発に合わせて隣の溜池も取り込んだためこのような横長堤体となりました。


上流面
ダム湖中央に切断した地山が残る珍しい構造。
地山の向こうに内海ダム(元)が、手前側には溜池がありました。


天端から 
海まではわずか2キロ 
ダム下は公園として整備され市民の憩いの場となっています。 


望遠で遠望 
内海湾越しに四国本島の阿讃山脈まで遠望できます。 


寒霞渓湖と名付けられたダム湖は総貯水容量106万立米 
文字通り背後には寒霞渓の断崖が望めます。 
条件が良ければダム湖に沈んだ旧堤体が見えるそうですが、この日は水が濁っており視認できず。 


上流から 
洪水吐が右に寄っているのがわよくわかります。 
旧堤体は地山の右手に沈んでいます。 


取水設備と洪水吐。 


実は内海ダム(再)一番の展望スポットは寒霞渓の第一展望台
ダムはもとより内海湾や四国本島まで一望できます。


内海ダム(再)をズームアップ
地山がダム湖に残る珍しい構造
右手の内海ダム(元)と左手の溜池を取り込んで建設された様がよくわかります。

2171 内海ダム(元) 
香川県小豆郡小豆島町神懸通 
別当川水系別当川 
FW 
GF 
21メートル 
143メートル 
140千㎥/125千㎥ 
1958年 
------------------- 
3289 内海ダム(再)(1777) 
香川県小豆郡小豆島町神懸通 
別当川水系別当川 
FNW 
 
43メートル 
423メートル 
1060千㎥/915千㎥ 
香川県土木部 
2013年 

粟地ダム

2022-03-31 12:00:00 | 香川県
2022年3月27日 粟地ダム 
 
粟地(あわじ)ダムは香川県小豆郡小豆島町安田の二級河川安田大川にある香川県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
年間降水量1200ミリ弱の少雨地帯に加え大河のない小豆島では慢性的な水不足に悩まされる一方、各河川は急流のため洪水が多く抜本的な利水・治水対策が急がれていました。
粟地ダムは島内3番目の補助多目的ダムとして1980年(昭和55年)に竣工し、安田大川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、旧内海町向けの上水道用水の供給を目的としています。
 
小豆島町中心部から安田大川沿いを北上するとすぐに粟地ダムに到着します。
クレスト自由越流頂2門、オリフィス1門を備えたゲートレスダムですが、1980年竣工とゲートレスダムとしては初期のダムで、ゲート部分が前面に張り出したデザインは大川ダム前山ダム大内ダムなど香川県営のゲート装備ダム特有の形状を踏襲しています。
またオリフィスゲートが扶壁にあるのもポイントです。


堤高46メートルに対し堤頂長290メートルの横長ダム。


右岸上流側にあるプラントの遺構。

 
天端から 
ダムのすぐ下流に市街が広がり、海まではわずか1.8キロ。 
減勢工の下流は花崗岩の擁壁で守られ、両岸は公園になっています。 
桜の名所なんですがまだつぼみで満開は1週間後とか… 

 
望遠で 
右手は内海湾 
半島越しに四国の阿讃山脈や剣山まで遠望できます。 

 
天端が前面にオフセットされクレスト越流部が上流側にせり出しています。


総貯水容量は78万立米
背後には観光地の寒霞渓が聳えます。

 
天端は車両通行可。 
行楽シーズンの日曜ですがここに来る観光客は皆無 
一方、近隣のシニアが何人かウォーキングをしており住民の憩いの場と言った風情。 

 
上流面
ゲートの右手が取水設備。

 
右岸の管理事務所
艇庫とインクラインが併設されています。

2185 粟地ダム(1776)
香川県小豆郡小豆島町安田
安田大川水系安田大川
FNW
46メートル
290メートル
780千㎥/700千㎥
香川県土木部
1980年

三五郎池

2022-03-30 22:48:21 | 香川県
2022年3月27日 三五郎池
 
三五郎池は香川県小豆郡小豆島町安田の安田大川にある灌漑・上水道用水目的のアースフィルダムです。
現地記念碑によれば1924年(大正13年)に受益者で組織された耕地整理組合の事業により建設され、1942年(昭和17年)の嵩上げ工事により灌漑に加え上水容量が付加されました。
管理は内海町三五郎池土地改良区が行い、約12ヘクタールの農地に灌漑用水を供給するとともに安田地区の上水道水源となっています。
1980年(昭和55年)に池直下に香川県営の粟地ダムが完成し、周辺の環境整備が行われました。

粟地ダム天端より
三五郎池堤頂部が見えます。


基部は石積みの擁壁で堤体は緩やかに畝っています。
きれいに草が刈られ、今も貴重な水源であることが伺えます。


道路下の底樋管。


右岸の越流式洪水吐。


右岸に建つ立派な記念碑。


改修によって撤去された古い石樋が残されています。


上流面には取水設備が三基あります。
右岸にあるのは山向こうの本庄地区向けの灌漑用水取水設備。


これがメインの安田縄手地区向け灌漑用水取水設備
訪問直前の工事で新しい斜樋に置き換えられました。
手前の階段は古い斜樋の遺構。


こちらは上水用取水設備。


堤頂長150メートル
上流面は花崗岩で護岸されています。


天端からの眺め
粟地ダム越しに瀬戸内海、さらには四国の阿讃山脈まで遠望できます。


総貯水容量は8万5000立米
池の背後には景勝地の寒霞渓が聳えます。


年間降水量わずか1200ミリの瀬戸内海の離島、きれいに整備された堤体から現在も貴重な水源として重用されているのがわかります。
 
3581 三五郎池 (1775)
ため池コード 373240038
香川県小豆郡小豆島町安田
安田大川水系安田大川
AW
18メートル
150メートル
85千㎥(ため池データベース93千㎥)/85千㎥ 
内海町安田三五郎池土地改良区
1924年

大洞ダム

2022-03-15 18:07:32 | 埼玉県
2022年3月13日 大洞ダム
 
大洞ダムは埼玉県秩父市大滝の荒川水系大洞川にある東京発電(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
都心に近く急流が続く荒川上流部では戦前より電源開発が進められ、これらの発電施設は日本発送電の接収を経て東京電力が引き継ぎました。
一方で戦後、荒川上流部の水利権は公営発電である埼玉県企業局が獲得、大洞ダムは同局によって1960年(昭和35年)に建設されました。
ここで取水された水は大洞第一発電所(最大出力1万1900キロワット)に送られダム水路式発電に供されます。
2008年(平成20年)に埼玉県企業局は発電事業から撤退し、同局が管理する発電施設はすべて東京発電(株)に移管されました。
同社は1928年(昭和3年)設立の姫川電力を起源とする東京電力の100%出資子会社で、主として中小水力発電やクリーンエネルギーを手掛け中小水力発電においては日本のトップ企業です。
また1995年(平成7年)に建設省(現国交省)により『荒川上流ダム再開発事業』が採択され、直轄事業により当ダム直下に堤高155メートル、総貯水容量3300万立米の大洞ダム(再)建設計画が着手されますが、こちらは2010年(平成22年)に検討対象となり2012年(平成24年)に中止が決定しました。

今回は、まず下流から大洞川を遡上しダム下に至る計画を立てましたが、大洞川の水量が予想以上に多く約2キロほどでギブアップ。
通常ルートでのアプローチとなりました。
二瀬ダムから三峰神社方面に進み、右手の雲取林道に入ると3キロほどで車止めのゲートとなります。


ゲートから1キロほど歩くとダムへの下降点。
荷揚げ用の簡易モノレールに沿った山道を標高差120メートルほど下ります。


10分ほどで眼下に大洞ダムが現れます。
ダム直下の斜面が大きく地滑りしています。
左手の取水設備からゴミ運搬用のベルトコンベアが伸びており、排出されたごみは簡易モノレールで林道まで荷揚げされます。


水利使用標識。


右岸高台のコンクリート構造物。
クレーンの台座でしょうか?


右岸取水口裏手に転がる巡視艇。
あんまり使われてなさそう。


河川維持放流。
ダム便覧の写真を見るとゲートに放流用の穴が開いています。


主ゲートは2段式ローラーゲートで上部にフラッシュボードがついています。


総貯水容量11万立米のダム湖と取水口。
この日は気温20度のぽかぽか陽気でしたが、ダム湖は半分程度凍結。
冬場は全面凍結しそう。


これは水位観測施設。
このデータは下流の二瀬ダムの運用に使われます。


ダム下の様子
地滑りの影響で巨岩が転がっています。
仮にダム下まで遡上できても、この巨岩群で立ち往生しそう。


左岸から。


ゲートを挟んで左右に2門ずつ自由越流頂があります。

0636 大洞ダム(1774)
埼玉県秩父市大滝
荒川水系大洞川
24.7メートル
45メートルメートル
110千㎥/55千㎥
東京発電(株)
1960年

秋葉ダム

2022-03-02 10:00:00 | 静岡県
2015年12月27日 秋葉ダム
2022年 2月26日
 
秋葉ダムは左岸が静岡県浜松市天竜区龍山町戸倉、右岸が同町大嶺の一級河川天竜川本流にある電源開発(株)が管理する利水多目的重力式コンクリートダムです。
包蔵電力豊富な天竜川本流では戦前より天竜川電力(のちに矢作水力)により上流部の電源開発が進められこれらの発電事業は日本発送電を経て中部電力に引き継がれました。
戦後、中部電力は大井川での電源開発に注力する一方で天竜川下流部の電源開発を行う財務・物理的余力がなく当地域の発電事業は半官半民の電源開発(株)に委ねられることになりました。
電源開発は1956年(昭和31年)に佐久間ダム・佐久間発電所を完成、次いで1958年(昭和33年)に佐久間発電所の逆調整池として竣工したのが秋葉ダムです。
秋葉ダムは佐久間発電所の出力調整による水位変動を緩和するとともに、秋葉第1発電所(ダム水路式、最大出力当初4万5300⇒のちに4万6250キロワット)および秋葉第2発電所(ダム式、最大出力当初3万4900⇒のちに3万5300キロワット)でno
発電を目的として運用が開始されました。
またダム建設には三方原用水農業水利事業の水源を求めていた農林省(現農水省)と水道事業者として静岡県企業局が事業参加し、当ダムから灌漑、上水、工水が供給されています。
さらに1991年(平成2年)には三方原用水を利用した利水従属発電を行う秋葉第3発電所(ダム式、最大出力4万6900キロワット)が完成し3発電所合わせた発電能力は最大12万8450キロワットとなっています。
 
秋葉ダムには2015年(平成27年)12月に初訪、2022年(令和4年)2月に再訪しました。
掲載写真はすべて再訪時のものです。
船明ダムから国道152号を北上、秋葉トンネルを抜けると右手に秋葉ダムが見えてきます。
ダム直下に吊橋が架かり絶好の展望ポイントとなっています。
ダムを挟んで向って右手に秋葉第2発電所、左手に第3発電所が並びます。
堤高は89メートルですがこれは基礎岩盤からの高さで、見た目の高さは40メートルほど。
ちょっとアングルを変えて
左岸側川床はコンクリートで厚く護岸されています。
 
ダム下流に架かる竜山橋。
左岸から
第2発電所の放流水はトンネル放流路で下流に放流されます。
一見余水吐のような円形の構造物は護岸施設の一つなんでしょうか?
左岸の第2発電所
昭和30年代の発電所らしくガントリークレーンなど何かと大がかり
ここではピーク発電が行われます。
 
右岸上流側の第2発電所の取水口。
 
貯水池の秋葉湖
総貯水容量は3470万3千立米ですが、堆砂が進み有効貯水容量は775万立米
ちなみにダム便覧ではダムは『あきは』と濁りませんが、ダム湖は『あきば湖』と濁ります。
 
右岸上流側にある三方原用水取水口。
右岸ダム直上にある第1及び第3発電所取水口。
スクリーンが横にずらっと並び、上に除塵機が設置されています。
左手のゲートが第1発電所の取水ゲートになります。
 
天端は車両の通行が可能。
ピア側面にダム名が記されるのは佐久間ダムと同じ。
1991年(平成2年)に増設された第3発電所。
第2発電所と異なり、今どきの発電所らしいすっきりしたつくり。
三方原用水の利水従属発電となり常時発電。
右岸から。
上流面。
 
ダム左岸上流約750メートルほどにある浮ゲート式の予備ゲート。
浮ゲートは徳島の川口ダムや島根の浜原ダムにもありますが、ゲートの大きさがけた違い。
(追記)
秋葉ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1163 秋葉ダム(0143)
左岸 静岡県浜松市天竜区龍山町戸倉
右岸           同町大嶺
天竜川水系天竜川
AWIP
89メートル
273.4メートル
34703千㎥/7750千㎥
電源開発(株)
1958年
◎治水協定が締結されたダム

船明ダム

2022-03-01 13:25:36 | 静岡県
2015年12月27日 船明ダム
2022年 2月26日
 
船明(ふなぎら)ダムは左岸が静岡県浜松市天竜区船明、右岸が同区日明の一級河川天竜川本流にある電源開発(株)が管理する利水多目的重力式コンクリートダムです。
包蔵電力豊富な天竜川本流では戦前より天竜川電力(のちに矢作水力)により上流部の電源開発が進められこれらの発電事業は日本発送電を経て中部電力に引き継がれました。
戦後、中部電力は大井川での電源開発に注力する一方で天竜川下流部の電源開発を行う財務・物理的余力がなく当地域の発電事業は半官半民の電源開発(株)に委ねられることになりました。
同社は1956年(昭和31年)の佐久間ダム・佐久間発電所を手始めに1958年(昭和33年)に秋葉ダム・秋葉第1~2発電所を稼働させ、次いで天竜川最下流部に1972年(昭和47年)から建設着手されたのが船明ダムです。
船明ダム建設事業には天竜川下流農業水利事業を進める農林省(現農水省)と水道事業者として静岡県企業局が事業参加し、1976年(昭和51年)に船明ダムが竣工しました。
ここで取水された水は電源開発船明発電所(最大出力3万2000キロワット)でダム式発電を行った後、磐田用水東部土地改良区管内約1万2000ヘクタール向け灌漑用水、静岡県企業局向け上工水として供給されます。
 
船明ダムには2015年(平成27年)12月に初訪、2022年(令和4年)2月に再訪しました。
掲載写真はすべて再訪時のものです。
右岸下流から
船明ダムの最大の特徴は純径間20メートル×扉高15.3メートル×206トンという世界最大級の9門のローラーゲート。
 
ゲートをズームアップ
天端道路を走るトラックの大きさと比較すれば、その大きさがわかるでしょう。
 
右岸ダム直下に船明発電所があり、その放流水が灌漑及び都市用水として利用されます。
左手が船明発電所の放流ゲート
手前に静岡県企業局の取水ゲート巻き上げ機が見えます。
灌漑、上工水、発電と利水は多岐に渉るため水利使用標識も多彩。
 
 
これはダム右岸の発電所の制水ゲート
これまた巨大で、至近ではカメラのフレームに収まりません。
ローラーゲートと発電所の取水口。
下流の眺め
ゲート直下シュート部分は洗堀を防ぐためコンクリでがっちり固められています。
また天竜川各ダムの堆砂に伴う河口部の海岸線後退に対処するため、各ダムで排砂された土砂を当ダム下流から流下させています。
 
総貯水容量1457万8000立米のダム湖
上流には天竜ボート場があり、東海地区の漕艇競技のメッカとなっています。
ここをホームにする地元天竜高校は高校ボート競技の強豪校です。
 
左岸から下流面
対岸に船明発電所と静岡県企業局の取水口があります。
 
天端は県道360号線が通っています。
世界最大クラスのローラーゲートを支えるピアも高い。
左岸から船明発電所の取水口を遠望。
左岸から上流面
川沿いに桜が並び、春には花見客でにぎわいます。
 
船明ダム湖上流には『月』地区があります。
この標識から、『地球で月に最も近い場所』とされています。笑
(追記)
船明ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1174 船明ダム(0142)
左岸 静岡県浜松市天竜区船明
右岸        同区日明
天竜川水系天竜川
AWIP
24.5メートル
220メートル
14578千㎥/4157千㎥
電源開発(株)
1976年
◎治水協定が締結されたダム