ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

来島ダム

2021-05-31 13:21:04 | 島根県
2021年5月22日 来島ダム
 
来島ダムは島根県飯石郡飯南町下来島の斐伊川水系神戸川上流部にある中国電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令で誕生した中国電力(株)は戦後の復興を受けた電力需要拡大に対処するため各所で電源開発を進めます。
岩見地区では江の川本流で1953年(昭和28年)に浜原ダムと明塚発電所が運用を開始、さらに1956年(昭和31年)に神戸川に竣工したのが来島ダムです。 
ここで取水された水は約11キロの導水路で美郷町の潮発電所に送られ最大3万6000キロワットのダム水路式発電を行っています。
潮発電所の放流水は江の川に放流されるため、事実上来島ダムで流域変更されることになります。
また潮発電所下流には浜原ダムがあり、潮発電所の放流水を活用することで明塚発電所の発電効率向上につながっています。
 
飯南町下来島の国道184号線に来島ダムを示す標識がありこれに従うとダムサイトに到着します。
一方ダム下流の町道から一か所だけダムの下流面を望めるポイントがあります。
クレストにはラジアルゲートが3門、緩やかに曲線を描く漸縬型堤体導流壁はゲートの数こそ異なりますが、1949年(昭和24年)の日発時代に竣工し、同じ中国電力が管理する高暮ダムに酷似しています。 
 
ダムサイトに上がります。
湖岸に突き出た半島の先端からゲートを正対できます。
 
左岸から
ゲート操作室は被覆されています。
 
親柱の銘版には『来島堰堤』の文字。
 
下流面
放流設備はクレストにラジアルゲート3門と、堤体下部の放流管1条。
放流管からは河川維持放流が行われています。
 
放流管をズームアップ。
 
天端は徒歩のみ立ち入りは可能
ゲート部分は上流側に張り出しクランクになっています。
 
ダム下の遺構。
右手の円柱形の施設は量水計っぽいけど。
 
総貯水容量2347万立米の貯水池。
潮発電所への取水口は見ることができません。
 
右岸から下流面。
 
上流面
対岸には管理事務所と浮桟橋に繋留された巡視艇が浮かびます。
 
来島ダムで取水された水は潮発電所から流域変更して江の川に放流され下流の明塚発電所の発電効率向上に貢献しています。
また神戸川は暴れ川として名高く、通水能力の高い江の川へ流域変更することで神戸川の治水にもいくばくか貢献しているようにも思えます。
 
(追記)
来島ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1735 来島ダム(1631)
島根県飯石郡飯南町下来島
斐伊川水系神戸川
63メートル
250.9メートル
23470千㎥/21180千㎥
中国電力(株)
1956年
◎治水協定が締結されたダム

浜原ダム

2021-05-31 12:06:58 | 島根県
2021年5月22日 浜原ダム
 
浜原ダムは左岸が島根県邑智郡美郷町信喜、右岸が同町上川戸の一級河川江の川本流中流部にある中国電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令で誕生した中国電力(株)は戦後の復興を受けた電力需要拡大に対処するため各所で電源開発を進め、同年着工し1953年(昭和28年)に竣工したのが浜原ダムです。
ここで取水された水は約1.1キロの導水路で明塚発電所に送られ最大2万5000キロワットのダム水路式発電を行っています。
川幅360メートルの江の川を締め切り洪水吐ゲート12門、土砂吐ゲート2門の計14門のローラーゲートがずらっと並ぶ様は西日本では余り見かけることがありません。
 
美郷町中心部から江の川沿いを南下すると浜原ダムが見えてきます。
右岸から
ずらっと並ぶゲートで川を締め切る発電ダムは木曾川や阿賀野川・只見川などでは当たり前のように見られますが、西日本では当ダムくらいではないでしょうか?(岡山の旭川ダムは多目的ダム)。
 
左岸から
扶壁前面にゲート操作建屋が乗る中国電力ではおなじみのスタイル。
 
訪問直前にまとまった雨で水位が上昇し、洪水吐ゲート3門が開けられていました。
 
右岸から
対岸に明塚発電所への取水ゲートがあります。
取水ゲート右手は河川維持放流に使われる魚道の取水口。
 
右岸に格納された巡視艇
インクラインはなくクレーンで昇降されます。
 
左岸の取水口スクリーンと魚道の取水口。
 
レールのついた除塵機。
 
天端は重量制限はあるものの車両の通行可能。
ただし左岸側は除塵機のレールが横切る「踏切」になっています。
 
左岸の魚道
河川維持放流はこの魚道と排砂ゲート1門で行われます。
 
発電所への取水ゲート。
 
左岸上流から
貯水池は総貯水容量1120万立米ですが、堆砂が進み有効貯水容量は4分の1の260万立米しかありません。
 
なお、貯水池上流側に浮ゲート式の予備ゲート格納庫がありましたが、事前の予習不足から訪問せず、その存在に帰宅後気が付きました。
全国的に見ても非常に珍しい設備なので、文字通り後悔先に立たずです。
 
(追記)
浜原ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1731 浜原ダム(1630)
左岸 島根県邑智郡美郷町信喜
右岸 島根県邑智郡美郷町上川戸
江の川水系江の川
19メートル
361.4メートル
11200千㎥/2600千㎥
中国電力(株)
1953年
◎治水協定が締結されたダム

三瓶ダム

2021-05-29 12:53:46 | 島根県
2021年5月22日 三瓶ダム
 
三瓶ダムは島根県大田市三瓶町野城の静間川水系三瓶川にある島根県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、三瓶川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、大田市への上水道用水の供給を目的として1996年(平成8年)に竣工しました。
 
三瓶ダムは県道太田佐田線沿いにありアプローチは簡単です。
ダム下流から川沿いの旧道を遡上するとダム下放流設備手前に到達できますが、ダム下からダムの全体像を見ることはできません。
 
県道からダムと正対できます。
クレストに自由越流式非常用洪水吐7門、オリフィスの自然調節式常用洪水吐1門を装備。
 
県道には「三瓶ダム」バス停があります。
 
右岸から
左右非対称でやや細身の堤趾導流壁が伸びています。
 
天端は車両通行可能で対岸に管理事務所があります。
事務所内には展示室もありますがコロナ禍ということで展示室は休業中。
 
上流面
対岸にインクラインがあります。
堤高に対してやや低めの貯水位ですが、有効貯水容量640万立米のうち洪水調節容量が467万立米ありこれで常時満水位となります。
 
ダムサイト県道擁壁の壁画
自然豊かな三瓶山の動物たちが神話風に描かれています。
牛よりでかいリスが怖い!
 
天端から減勢工と放流設備。
 
左岸から。
 
左岸ダムサイトの石碑
三つの峰が連なる三瓶山を四つの岩で表現しています。
 
『さひめ湖』と命名されたダム湖は総貯水容量712万立米。
水質に問題があるのか2種類の水質保全装置が設置されています。
手前は噴水で稼働していれば高さ30メートルの噴水を噴き上げるそうですが、訪問時は休憩中・・・・。
奥は曝気装置。
 
(追記)
三瓶ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
1759 三瓶ダム(1629)
島根県大田市三瓶町野城
静間川水系三瓶川
FNW
54.5メートル
140メートル
7120千㎥/6400千㎥
島根県土木部
1996年
◎治水協定が締結されたダム

清瀧ダム

2021-05-29 10:13:29 | 島根県
2021年5月22日 清瀧ダム
 
清瀧ダムは島根県大田市久手町刺鹿の大原川水系江谷川にある洪水調節目的のアースフィルダムです。
大原川下流域は岩見地域有数の農業地帯ですが、もともと波根湖を干拓した低地のため大原川の増水のたびに冠水被害に見舞われ大原川の治水は流域農民の悲願となっていました。
そこで島根県は1971年(昭和46年)に農林省(現農水省)の補助を受けた県営防災ダム事業に着手し1984年(昭和59年)に竣工したのが清瀧ダムです。
清瀧ダムは大原川流域の農地250ヘクタールの農地防災を目的としており、運用開始後は大田市が受託管理を行っています。
 
国道9号線沿いの『道の駅ロード銀山』から江谷川沿いを南東に進むと清瀧ダムが見えてきます。
ダム下左岸から
写真右手のトンネルは常用洪水吐吐口です。
 
アングルを変えて
左岸に非常用洪水吐導流部があります。
 
ダムサイトに上がります。
ダム管理所脇の竣工記念碑
右手の碑文にはダム建設に至る経緯が記されています。
 
こちらは常用洪水吐でいわゆるダム穴になっており、一番目写真のトンネル吐口へと続きます。
 
ダム湖は総貯水容量83万5000立米
訪問前日までの雨により常時満水位まで水が溜まっています。
湖面右手の四角い施設は利水放流設備です。
 
洪水吐導流部と減勢工。
 
天端は車両進入禁止。
 
天端からの眺め
ダムが防災を担うのはさらに下流に広がる農耕地です。
 
左岸の越流式洪水吐
珍しいL字型の洪水吐です。
 
超広角で何とかフレームに収まります。
 
ダム穴の常用洪水吐、L字型の越流式非常用洪水吐など見るべきポイントが多い清瀧ダムです。
記念碑にダム建設に至る経緯も記されているのもありがたいですね。
 
1752 清瀧ダム(1628)
島根県大田市久手町刺鹿
大原川水系江谷川
33.9メートル
124.5メートル
835千㎥/750千㎥
大田市
1974年

深山溜池

2021-05-28 15:13:55 | 島根県
2021年5月22日 深山溜池
 
深山溜池は島根県大田市波根町の波根川本流にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
現地看板には1943年(昭和18年)に建設、1987年(昭和62年)に改修と記されており、ダム便覧では1987年を竣工年度としています。
戦時中としては珍しいコンクリート造りの農業用ダムということでCランクの近代土木遺産に選定されています。
管理は大田市波根土地改良区が行っています。
 
波根地区中心部から波根川沿いを遡上すると写真の警告板が現れます。
ここに車をデポして徒歩で池に向かうことにします。
 
歩くこと20分ほどで深山溜池に到着しますが、ダムの入り口はフェンスで遮られています。
 
撮影ポイントはほとんどなくフェンス越しに上下流面を切り取るのみ。
『日本の土木遺産(改訂版)』では『粗石C重力式ダム(全面溢流式)』とのみ記されており、1943年竣工当時の姿のままなのか?改修で大きく手が入れられたのかも不明です。
 
天端。
 
上流面。
 
総貯水容量8万立米の小さなため池で撮影ポイントも限られていますが、物資人員ともに不足していた戦時中にコンクリート造りの堰堤を建設した背景なども気になるところです。

1714 深山溜池(1627)
ため池コード 322050040 
島根県大田市波根町
波根川水系波根川
15メートル
24.5メートル
80千㎥/80千㎥
大田市波根土地改良区
1943年竣工
1987年改修

稗原ダム

2021-05-28 12:00:17 | 島根県
2021年5月22日 稗原ダム
 
稗原ダムは左岸が島根県出雲市野尻、右岸が島根県雲南市三刀屋町根波別所の斐伊川水系稗原川上流部にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
2004年(平成16年)に農水省の補助を受けた島根県のかんがい排水事業によって建設され、完成後は出雲市が受託管理を行い250ヘクタールの農耕地に灌漑用水を供給しています。
ダム左岸高台が稗原ダム湖水公園として整備されているほか、湖畔にも親水公園が作られていますが山間の過疎地故かあまり利用する人は多くなさそうです。
 
県道出雲奥出雲線に稗原ダムを示す標識があり、これに従うとダムに到着します。
ダム下への道はダム手前200メートルほどにゲートがありますが徒歩での到達は可能です。
余水吐は自由越流式クレストゲートだけ、漸縮型堤体導流壁を備えたいかにも農業用コンクリートダムといった風。
 
左岸高台の稗原ダム湖水公園に上がります。
駐車場わきに立つ各種石碑。
 
公園からは眼下にダムと貯水池を俯瞰できます。
 
ダムへ続く管理道路は徒歩のみ進入可能
小雨の中ダムへと向かいます。
 
多孔式選択取水設備。
水の跡を見ると直近までクレスト放流していたようです。
 
天端。
 
下流面。
手前の金属カバーの中は電気ケーブルのようです。
 
減勢工と放流設備
ちょうど田植え時期ということで勢いよく放流されています。
 
総貯水容量121万立米のダム湖。
 
右岸から上流面。
 
(追記)
稗原ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1760 稗原ダム(1626)
左岸 島根県出雲市野尻町
右岸 島根県雲南市三刀屋町根波別所
斐伊川水系稗原川
47.3メートル
117メートル
1210㎥/1019千㎥
出雲市
2004年
◎治水協定が締結されたダム

千本ダム(千本堰堤)

2021-05-27 16:08:48 | 島根県
2021年5月21日 千本ダム(千本堰堤)
2021年5月25日 
 
千本ダムは島根県松江市西忌部町の斐伊川水系忌部川にある松江市上下水道局が管理する上水道用水目的の表面石張重力粗石コンクリートダムです。
松江市では水道事業認可の翌1914年(大正3年)から水道敷設事業が着手され1918年(大正7年)の千本ダム完成に合わせて水道事業が開始されました。 
千本ダムで貯水された水は1919年(大正8年)に完成した忌部浄水場を経て市内に配水され、1957年(昭和32年)に建設された大谷ダムと合わせて松江市水道全体の約4分の1を担うの重要な水源となっています。
千本ダムは山陰地方初のコンクリート造り水源地堰堤として高い評価を受けており、2003年(平成15年)に土木学会選奨土木遺産、2008年(平成20年)に登録有形文化財に指定されたほかBランクの近代土木遺産に選ばれています。
2018年(令和元年)から2020年(令和3年)にかけて堤体耐震化改修工事が行われており、その竣工を待って今回の千本ダム訪問となりました。
5月21日の訪問時には前日までの雨を受けて越流が見られ、25日訪問時には晴天の下美しい石積みを愛でることができました。
 
堤体耐震化改修工事に合わせてダム周辺の環境整備も進められ堰堤一帯がダム公園となっています。
右岸に天端があり、あとはすべて越流部(溢流堤)になっています。
越流部は改修工事で石が張り替えられたようで白が目立ちます。
 
21日訪問時は絶賛越流中。
これまで見た石積堰堤はすべて布積みでしたが千本ダムは谷積みです。
 
ほぼ同じアングルから
 
 
 
この建屋の裏側に取水設備があり、取水設備への入り口と思われます。
 
ダム下の4連アーチの管理橋
こちらも登録有形文化財で、橋の手前に副ダムがあります。
 
管理橋から。
 
 
左岸から。
 
これまた同じアングルで。
 
放流時の越流部。
 
こちらは25日。
丸みを帯びた下流面と対照的に上流面は直線状に切れ落ちています。
 
越流部と取水設備。
 
右岸から天端。
この先端に取水設備があり、天端はそこへの通路となっています。
 
半円形の取水設備
 
土木学会選奨土木遺産のプレート
登録有形文化財のプレートは見つかりませんでした。
 
耐震改修工事の終了を待って満を持しての千本ダム見学でした。
今回は旅行のスケジュールに余裕があり、越流と非越流を見ることができる幸運。
石積堰堤としては珍しい谷積の堰堤はこれまで見た石積みとは一味ふた味も違う表情を見せてくれました。
 
(追記)
千本ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

3587 千本ダム(千本堰堤)(1625)
国登録有形文化財
近代土木遺産Bランク
島根県松江市西忌部町
斐伊川水系忌部川
15.8メートル
109.1メートル
387千㎥/379千㎥
松江市上下水道局
1918年
◎治水協定が締結されたダム 

大谷ダム

2021-05-27 10:11:00 | 島根県
2021年5月21日 大谷ダム
 
大谷ダムは島根県松江市東忌部町の斐伊川水系大谷川にある松江市上下水道局が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
松江市の水道事業は1918年(大正7年)の千本ダムおよび忌部浄水場の完成とともに開始され、以来市域の拡大や人口増加に対応して11次の拡張事業が実施されました。
大谷ダムは1953年(昭和28年)に着手された第6次拡張事業の中核施設として1957年(昭和32年)に竣工、千本ダムに次ぐ松江市水道事業2番目の貯水池として運用が開始されました。
大谷ダムで貯留された水は千本ダムともども忌部浄水場経由で市内に給水されています。
 
千本ダムから県道松江木次線を南下し、千本バス停で左手の町道に入り大谷川沿いを南に進むと大谷ダムに到着します。
ダム撮影のスペースがなく、広角レンズで何とかフレームに収まります。
 
洪水吐はクレスト自由越流頂3門だけ
あまり放流がないのか?導流部はいい按配に苔生しています。
向かって左手(右岸)は放流設備。
 
ゲートをズームアップ。
 
 
上水用水源ということで堤体や貯水池のガードは厳しく、ここ以外に見学ポイントは見当たりません。
グーグルの空撮写真によれば昭和20年代のダムらしく堤体上流側に半円形の取水設備が設けられています。
 
(追記)
大谷ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

1624 大谷ダム(1736)
島根県松江市東忌部町
斐伊川水系大谷川
35メートル
101メートル
1422千㎥/1328千㎥
松江市上下水道局
1957年
◎治水協定が締結されたダム

新蝮谷池

2021-05-26 18:05:45 | 島根県
2021年5月21日 新蝮谷池
 
新蝮谷池は島根県松江市大庭町の斐伊川水系大庭川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1949年(昭和25年)に当時の大庭町の事業で竣工と記されていますが、竣工記念碑等もなくこれ以上は不明です。
管理は水利組合等の受益組織が行っているようですが、具体的な管理者名を確認することはできませんでした。
 
新蝮谷池へは島根県立「風土記の丘」が目印となり、公園の南西に池があります。
池の天端
轍がありますが、池の入り口にチェーンがかけられ徒歩のみ立ち入り可能です。
 
上流面
特にコンクリートなどでの補強は行われていません。
 
対岸に余水吐がありますが、木が茂りそれとはわかりません。
 
左岸の取水設備。
 
総貯水容量9万9000立米の小さな貯水池。
 
天端からの眺め
眼下には松江市大庭町の市街が広がります。
かつてこの地には出雲国の国庁が置かれ出雲の中心地でした。
 
下流面
秋に草が刈られたようですが、5月後半ともなると草が繁茂してきており池の下に降りるのは断念しました。
 
右岸余水吐の越流堤。
 
これが余水吐になりますが、草木が茂り写真を見る限りは何のことか全くわかりません。
 
風土記の丘からの遊歩道が池のそばを通っています。
 
ダム下には下りなかったので、底樋は確認できませんでした。


1726 新蝮谷池(1623)
ため池コード 322010126
島根県松江市大庭町
斐伊川水系大庭川
16メートル
80メートル
99千㎥/90千㎥
管理者未確認
1949年

山佐ダム

2021-05-26 16:13:00 | 島根県
2021年5月21日 山佐ダム
 
山佐ダムは島根県安来市広瀬町上山佐の斐伊川水系山佐川にある島根県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、山佐川及び飯梨川の洪水調節、松江市・安来市への上水道用水の供給を目的として1980年(昭和55年)に竣工しました。
1967年(昭和42年)に飯梨川に建設された布部ダムと連携した治水・利水運用が行われています。
また2020年(令和2年)には河川維持放流を利用して最大199キロワットの小水力発電を行う島根県企業局山佐発電所が増設されました。
 
安来市広瀬町で国道432号から県道安来木次線に入り南に進むと山佐ダムに到着します。
ダム下への道は関係者以外進入禁止のためダムの下流面をはこれが精いっぱい。
現地ダム案内板によればクレストにローラーゲート2門、コンジットに高圧ラジアルゲート1門を装備しています。
 
ダム湖は山美湖と書いて「やまびこ」。
 
上流面
堤体に巡視艇が繋留されています。
堤高から比べると水位が低いようですが、これで常時満水位。
 
職員さんの許可を得て管理事務所裏手から撮影させていただきました。
残念ながらここからもゲートは見えずコンジットの予備ゲートを眺めるのみ。
 
減勢工
左岸の新しい建屋が2020年(令和2年)に新設された山佐発電所。
 
ゲート操作機器。
 
洪水吐導流部
前日までの雨で水位が上がりコンジットから放流しています。
 
ダム湖は「山美湖」で総貯水容量は505万立米。
 
天端は車両通行可
ちょうど軽自動車が通りかかりました。
 
下流面。
 
同じ飯梨川水系の布部ダム同様、管理事務所の門扉親柱にダム銘板が嵌め込まれています。
 
見えそうで見えないゲートにややストレスがたまる山佐ダムです。
 
(追記)
山佐ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
1751 山佐ダム(1622)
島根県安来市広瀬町上山佐
斐伊川水系山佐川
FW
56メートル
220メートル
5050千㎥/4450千㎥
島根県土木部
1980年
◎治水協定が締結されたダム

布部ダム

2021-05-26 10:23:21 | 島根県
2021年5月21日 布部ダム
 
布部(ふべ)ダムは島根県安来市広瀬町布部の斐伊川水系飯梨川にある島根県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、飯梨川の洪水調節、松を行う飯梨川第3発電所が増設されました。江市・安来市への上水道用水の供給、中海沿岸の工場群への工業用水の供給、上工水の利水従属発電として島根県企業局飯梨川第1発電所(最大3000キロワット)及び第2発電所(最大1400キロワット)でのダム水路式発電を目的として1967年(昭和42年)に竣工しました。
その後1980年(昭和55年)に飯梨川左支流山佐川に
山佐ダムが完成し、現在は同ダムと連携した治水・利水運用が行われています。
また1991年(平成3年)には河川維持放流を利用して最大250キロワットの小水力発電を行う飯梨川第3発電所が増設されました。
 
布部ダムは国道432号沿いにありアプローチは簡単です。
国道から分かれ飯梨川沿いを遡上するとダム下にもアプローチできます。 
 
昭和40年代前半のダムらしくクレスト、オリフィスともにゲート装備。
また右岸(向かって左)には利水放流用のハウエルバンガーバルブがあります。
 
バブルをズームアップ
バルブから下に伸びるのは利水用放流管で1991年(平成3年)に増設された飯梨川第3発電所へと向かいます。
 
下流面
右岸側がわずかに湾曲しています。
 
天端は車両通行可能
湾曲した堤体に合わせ左岸は緩やかにカーブを描いています。
 
天端から洪水吐導流部と減勢工。
 
1991年(平成3年)に増設された小水力発電所の飯梨川第3発電所。
 
ダム湖は「白椿湖」と命名され総貯水容量は710万立米。
堤体に係留された巡視艇が湖面を漂っています。
 
右岸にある飯梨川第1、第2発電所の取水設備。
ここで取水された水は発電に使われたのち、上工用水に供給されます。
 
右岸から天端と管理事務所。
 
右岸から下流面
左岸側が湾曲しているのがわかります。
 
(追記)
布部ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

1747 布部ダム(1621)
島根県安来市広瀬町布部
斐伊川水系飯梨川
FWIP
55.9メートル
190メートル
7100千㎥/5000千㎥
島根県土木部
1967年
◎治水協定が締結されたダム

朝鍋ダム

2021-05-26 00:33:08 | 鳥取県
2021年5月21日 朝鍋ダム
 
朝鍋ダムは鳥取県西伯郡南部町鶴田の日野川水系小松谷川右支流朝鍋川にある鳥取県県土整備部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
国交省の補助を受けて建設された補助治水ダムで、朝鍋川および小松谷川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給を目的として2004年(平成16年)に竣工しました。
2016年(平成28年)には河川維持放流を利用した管理用発電所(最大出力77キロワット)が増設されています。
 
朝鍋ダムは県道溝口伯太線沿いにあり県道からダムと正対できます。
前日までの雨で水位が上昇しオリフィスから越流していました。
 
右岸から
2004年(平成16年)竣工と比較的新しいダムですが、襟の高いガッツリした昭和感漂うスタイル。
 
天端入り口にはバリケードが置かれていますが、徒歩での立ち入りは問題なさそう。
 
親柱の銘版。
 
減勢工と副ダム。
 
総貯水容量は138万立米。
治水ダムですが不特定利水容量が設定されていることに加え訪問直前にまとまった雨があったためダム湖は満水。
左手は管理事務所ですが、コロナの影響かゲートは閉まったままでした。
 
オリフィスゲートの取水口
流木除けのゲージが設置されています。
 
左岸の浮桟橋と巡視艇。
 
上流から。
 
左手はオリフィスゲート
右手が取水設備。
 
今回の朝鍋ダムの見学を持って鳥取県の主要ダムはすべて訪問済みとなりました。
 
(追記)
朝鍋ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
3046 朝鍋ダム(1620)
鳥取県西伯郡南部町鶴田
日野川水系朝鍋川
FN
45メートル
150メートル
1380千㎥/1190千㎥
鳥取県県土整備部
2004年
◎治水協定が締結されたダム

矢の目ダム

2021-05-09 00:47:01 | 栃木県
2015年12月19日 矢の目ダム
2021年 5月 4日
 
矢の目ダムは栃木県那須町豊原甲の那珂川水系板敷川にある灌漑目的のロックフィルダムで、1990年(平成2年)に栃木県のかんがい排水事業で建設されました。
完成後は那須町が受託管理を行い570ヘクタールの農耕地に灌漑用水を供給しています。
ダム周辺は県の水環境整備事業によってダム下公園や遊歩道などが整備され周辺住民の憩いの場となっているほか、貯水池湖面もカヌー教室などに利用されています。
矢の目ダムには2015年に初めて訪問し、2021年5月に再訪しました。
日付表記のない写真はすべて2021年5月のものです。
 
県道105号から矢の目ダムの標識に従って北に折れると、ダムが見えてきます。
ロックフィルダムですが、堤体には芝が張られ見た目はアースダムのようです。
 
ダム下流にある取水設備からの放流設備。
2種類の放流管があります。
 
ダム右岸の余水吐導流部(2015年12月19日)。
 
ダム右岸の横越流式余水吐。
 
左岸の艇庫とインクライン。
 
立派な天端ですが車両は進入禁止。
 
上流面も当然ロックフィル
奥は管理事務所。
 
総貯水容量110万立米と農業用フィルダムとしてはかなりの大きさです。
ダム湖上流は別荘地が続き自然公園になっています。
訪問時はカヌー教室が開かれていました。
 
赤が目立つ取水塔。
栃木県の農業用ダムは取水塔が多いですね。
 
ダム下は県の水環境整備事業で整備され公園になっています。
 
ダム下から。
 
周辺は定住者の多い別荘地ということもあるんでしょうが、下手な県ダムよりも環境整備が進んでいます。
湖面ではカヌー教室が開かれ、湖畔の遊歩道を何人もの住民が散歩やランニングを楽しんでいました。
 
(追記)
矢の目ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0575 矢の目ダム(0128)
栃木県那須郡那須町豊原甲
那珂川水系板敷川
29メートル
187メートル
1100千㎥/940千㎥
那須町
1990年
◎治水協定が締結されたダム

千振ダム

2021-05-09 00:32:55 | 栃木県
2021年5月4日 千振ダム
 
千振(ちぶり)ダムは栃木県那須郡那須町豊原乙の那珂川水系黒川右支流(河川名未確認)にある灌漑目的のロックフィルダムです。
ダム便覧には1971年(昭和46年)に栃木県の事業で竣工と記されており、現在は那須町土地改良区が管理を行っています。
ダムの手前200メートルほどにゲートが設置されダムに立ち入ることはできません。またダム上流側も那須ちぶり湖カントリークラブの敷地となっており、これまた立ち入り不可能です。
 
ダム手前のゲート。
 
ゲートから遠望
型式はロックフィルダムですが下流面に草が生え、見た目はアースフィルのようです。
 
こちらはグーグルの空撮写真
貯水池には取水塔、左岸に横越流式余水吐があります。
またダム下には底樋と思しき施設が見えます。
 
0566 千振ダム(1619)
栃木県那須郡那須町豊原乙
那珂川水系黒川支流
23メートル
130メートル
354千㎥/335千㎥
那須町土地改良区
1971年

沼原ダム

2021-05-07 00:54:31 | 栃木県
2021年5月4日 沼原ダム
 
沼原(ぬまっぱら)ダムは栃木県那須塩原市板室にある電源開発(株)が管理する発電目的のアスファルトフェイシングフィルダムで、揚水式発電の沼原発電所の上部調整池として1973年(昭和48年)に竣工しました。 
1960年代半ばから発電の主力は火力へと移り、さらに原子力発電の台頭もあり水力発電のシェアは低下する一方でした。しかしオイルショックによる原油高騰をうけて電力各社は水力発電に再着目、特に火力や原子力との連携が図れ余剰電力を有効に利用できる上に電力消費のピークに合わせて大出力の発電が可能な揚水発電に注目が集まりました。
電源開発(株)は農林省(現農水省)による深山ダム建設事業に発電事業者として事業参加、同ダムを下部調整池、沼原ダムを上部調整池とした沼原発電所を建設しました。
同発電所では上部ダムの沼原ダムと下部ダムの深山ダムの有効落差478メートルを利用して最大67万5000万キロワットの揚水式発電を行っています。
沼原ダムは那須山系南西端の標高1230メートルにある沼原と呼ばれる湿地帯に日本初のプール状貯水池として建設されました。
 
那須ハイランドGCから「沼原」の標識に従って北上すると正面に沼原ダムの下流面が見えてきます。
 
見えているのは自然の斜面を生かした下流面の一部で、実際の堤頂長はダム全周にわたり1597メートルに及びます。
 
ダム北側には湿原が残り、一帯は沼ッ原園地として遊歩道が整備されています。
また那須登山の起点にもなっており100台前後が駐車できる駐車場も設けられています。
 
案内板に書かれた沼原発電所概要図。
 
沼原池の石碑。
 
 
沼原ダム敷地はフェンスに囲まれ立ち入ることはできません。
ダム東側の展望台から
貯水池はいわば巨大な皿池で、上流面はすべてアスファルトにより遮水処理されています。
 
ダムの背後には男鹿山塊が続きます。
堤体の白線は水位目盛りで、この下に発電所への送受水設備があります。
 
こちらはダム堰堤北側。
 
ズームアップします
右手の草地が沼原湿原となります。
 
下部ダムである深山ダム湖範囲ある沼原電力所。
実際の発電所は地下にあるため目にすることはできません。
 
下部ダムの深山ダム
こちらもアスファルトフェイシングフィルダムです。
上下ともにアスファルトフェイシングフィルダムによる揚水発電は全国で2例しかありません。
 
下部池の深山湖。
 
0567 沼原ダム(1618)
栃木県那須塩原市板室
那珂川水系那珂川
FA
38メートル
1597メートル
4336千㎥/4220千㎥
電源開発(株)
1973年