再び大爆発！武田火山(１９)

鬼塚専務はカラオケを歌うための舞台にいらっしゃいました。

舞台と言いましても、二段高くなっているだけですが(苦笑)
スポットライトに照らされて一際目立つ場所ではありましたが、
長身の専務はは仁王立ちになっていらっしゃいました。
見上げるように加藤がそしてその後ろに赤井が、向かい合っています。

さて、加藤からどんな爆弾発言が出るのか!? 皆は固唾を飲んで見ています。

「…加藤は転勤についてクレームをするんだろうか!?」
「ああ．たぶんね…」立川部長はそばにいた下田課長に囁いていました。
新潟工場に転勤を命じられていた加藤は発令以来随分反発していたそうです。

「ああ…たぶんね…」
同調して下田課長はバカなヤツだ、と思いました。
そりゃあ転勤は家族と離れて大変だし、慣れない職場で気も使わなくてはならないし… しかし、会社の辞令には絶対服従が原則で例えそれを撤回するよう求めたところで、どうにもならないのが会社の組織でした。

今加藤が訴える内容が転勤に関する話なら鬼塚専務でもダメだろう…いや専務なら絶対ダメだと思いました。
鬼塚専務は勤続４０年間で自宅から通ったのはたった７年だと、自身の経歴を話されていたことがありました。
下田課長もその場にいたから覚えていたのです。

バカなヤツだ、もう一度下田は呟くと水割りで唇を濡らしていました。
そろそろ高村運転士にれんらくしなくては！ 携帯態の時計は１１時を示していました。