自殺者の身元が分かり警察から連絡がありました。皆はびっくりです。
一部上場企業は体面を重んじるのかこのような懸案は特に嫌います。
かといって冷淡になるわけではなく
実に丁重な取り扱いをします。
私がお世話になってから…どうでしょうか?この自殺者が五人目になります。
知っている範囲ですから聞き及ばないのもあるかも知れません。
話を戻しますが、
亀田部長は訃報を耳にして、驚いたのは当然ですが、一番に沢田さんのところにいきました。
山川課長と会った最後の人は沢田さんと亀田部長でした。
確か仲良く飲んでいたよなぁ…
あの二次会のパブの様子がまだ目に焼き付いていましたから。
ところが総務に沢田さんはいません。聞くと警察の事情聴取を受けているのでした。
自殺と断定していても、人一人亡くなったわけで、管轄の警察署から二人来ていました。 …まぁ、このパターンも会社側は慣れているようで(過去の経験談)得意のマニュアルこそありませんが、
沢田さんに総務課長が同席しているのでした。
「次は俺かな…」
山川課長の送別会から二次会に足を運んだのは沢田さんと亀田部長でした。
話を飛ばしますが、
一週間経って月次会議がありました。
重要な会議のため鬼塚専務がお越しになりました。
移動の車中で山川課長の話題になりました。従業員二万人、事業部でも数千人を誇るトップでありながら鬼塚専務はこのような訃報
をとても気にする方です。 (普段の豪快さから考えられませんが… )
「それで…」
「うんうん!」
「それで…」
車中で亀田部長の説明を熱心に聞いていらっしゃいます。
話の中で亀田部長もさすがに左遷とは言えず部署の移動をサラリと説明していましたが、
さすが鬼塚専務は聞き逃しませんでしたね。 「部署替えか…」
神妙な顔つきで考えこみました。
亀田部長には全く責任はないのでしょうが、 鬼塚専務の沈黙に押されて下を向いたまましょんぼりしています。 うん?ふりをしていたのかな(笑)
「亀田お前同期なんだって、」
「はい、私とあと丸山本部長もいらっしゃいます」
「なんだ、丸ちゃんもか…」「はい、佐川本部長も…」
「なんだよ!随分偉いさんがいるじゃあないか」
鬼塚専務は冗談とも本気ともつかない言い方をしました。
「は、はい」
亀田部長は神妙に答えますが、内心冷や汗ものだったでしょうね。 鬼塚専務は仲間意識の強い方で意地の悪い奴…つまり後輩をいじめたりする社員には容赦なき鉄槌を食らわすのです。
この場合直(じか)に殴るのではなくて左遷になりますが…
それを亀田部長は恐れていたのです。
尋問?聞き取りはあと二つ三つありお仕舞いになりました。
「結局山川は先を儚(はかな)んだのだなぁ」
独り言みたいに鬼塚専務は結論を出されました。
「あ、それと…」「はぁ…」
話題が変わります。
亀田部長はほっとしました。
感触からして、自分にはお咎めはなし!と思いました。
そりゃあ俺なんか山川をかばいこそしたが追い込むことなんかありゃあしないぜ!
ポケットから出したハンカチで額をぬぐいました。
う~んしかし鬼塚専務の訊問は警察より緊張するなぁ!(苦笑)
肩の力をぬきなからほっと一息でした。
鬼塚専務の話は次から次と変わっていきましたが、
駅に着く前でした。
「高辻さん、彼は優秀だったの?」
いきなり横の高辻役員に聞かれました。
高辻役員は苦虫を潰した顔をしながら即座に「山川ですか、彼はだめでした」 「そうか…」
短く答えて頷くと鬼塚専務は車を降りられました。
「お疲れさまでした」「お疲れさまでした」私は素早く車から出てお見送りの態勢です。無論亀田部長や高辻役員も降りました。
「じゃあ」鬼塚専務は片手を挙げていつもの通りに帰っていかれました。
そのうしろ姿…いつもと違った寂しさが漂っていました。
合掌
一部上場企業は体面を重んじるのかこのような懸案は特に嫌います。
かといって冷淡になるわけではなく
実に丁重な取り扱いをします。
私がお世話になってから…どうでしょうか?この自殺者が五人目になります。
知っている範囲ですから聞き及ばないのもあるかも知れません。
話を戻しますが、
亀田部長は訃報を耳にして、驚いたのは当然ですが、一番に沢田さんのところにいきました。
山川課長と会った最後の人は沢田さんと亀田部長でした。
確か仲良く飲んでいたよなぁ…
あの二次会のパブの様子がまだ目に焼き付いていましたから。
ところが総務に沢田さんはいません。聞くと警察の事情聴取を受けているのでした。
自殺と断定していても、人一人亡くなったわけで、管轄の警察署から二人来ていました。 …まぁ、このパターンも会社側は慣れているようで(過去の経験談)得意のマニュアルこそありませんが、
沢田さんに総務課長が同席しているのでした。
「次は俺かな…」
山川課長の送別会から二次会に足を運んだのは沢田さんと亀田部長でした。
話を飛ばしますが、
一週間経って月次会議がありました。
重要な会議のため鬼塚専務がお越しになりました。
移動の車中で山川課長の話題になりました。従業員二万人、事業部でも数千人を誇るトップでありながら鬼塚専務はこのような訃報
をとても気にする方です。 (普段の豪快さから考えられませんが… )
「それで…」
「うんうん!」
「それで…」
車中で亀田部長の説明を熱心に聞いていらっしゃいます。
話の中で亀田部長もさすがに左遷とは言えず部署の移動をサラリと説明していましたが、
さすが鬼塚専務は聞き逃しませんでしたね。 「部署替えか…」
神妙な顔つきで考えこみました。
亀田部長には全く責任はないのでしょうが、 鬼塚専務の沈黙に押されて下を向いたまましょんぼりしています。 うん?ふりをしていたのかな(笑)
「亀田お前同期なんだって、」
「はい、私とあと丸山本部長もいらっしゃいます」
「なんだ、丸ちゃんもか…」「はい、佐川本部長も…」
「なんだよ!随分偉いさんがいるじゃあないか」
鬼塚専務は冗談とも本気ともつかない言い方をしました。
「は、はい」
亀田部長は神妙に答えますが、内心冷や汗ものだったでしょうね。 鬼塚専務は仲間意識の強い方で意地の悪い奴…つまり後輩をいじめたりする社員には容赦なき鉄槌を食らわすのです。
この場合直(じか)に殴るのではなくて左遷になりますが…
それを亀田部長は恐れていたのです。
尋問?聞き取りはあと二つ三つありお仕舞いになりました。
「結局山川は先を儚(はかな)んだのだなぁ」
独り言みたいに鬼塚専務は結論を出されました。
「あ、それと…」「はぁ…」
話題が変わります。
亀田部長はほっとしました。
感触からして、自分にはお咎めはなし!と思いました。
そりゃあ俺なんか山川をかばいこそしたが追い込むことなんかありゃあしないぜ!
ポケットから出したハンカチで額をぬぐいました。
う~んしかし鬼塚専務の訊問は警察より緊張するなぁ!(苦笑)
肩の力をぬきなからほっと一息でした。
鬼塚専務の話は次から次と変わっていきましたが、
駅に着く前でした。
「高辻さん、彼は優秀だったの?」
いきなり横の高辻役員に聞かれました。
高辻役員は苦虫を潰した顔をしながら即座に「山川ですか、彼はだめでした」 「そうか…」
短く答えて頷くと鬼塚専務は車を降りられました。
「お疲れさまでした」「お疲れさまでした」私は素早く車から出てお見送りの態勢です。無論亀田部長や高辻役員も降りました。
「じゃあ」鬼塚専務は片手を挙げていつもの通りに帰っていかれました。
そのうしろ姿…いつもと違った寂しさが漂っていました。
合掌