寝転がって気ままに想う事

 世の中ってこんなもんです・・
面白可笑しくお喋りをしましょうか ^^

彼は優秀か…後日談

2011年09月30日 09時03分31秒 | 日記
自殺者の身元が分かり警察から連絡がありました。皆はびっくりです。
一部上場企業は体面を重んじるのかこのような懸案は特に嫌います。
かといって冷淡になるわけではなく
実に丁重な取り扱いをします。
私がお世話になってから…どうでしょうか?この自殺者が五人目になります。
知っている範囲ですから聞き及ばないのもあるかも知れません。
話を戻しますが、
亀田部長は訃報を耳にして、驚いたのは当然ですが、一番に沢田さんのところにいきました。
山川課長と会った最後の人は沢田さんと亀田部長でした。
確か仲良く飲んでいたよなぁ…
あの二次会のパブの様子がまだ目に焼き付いていましたから。
ところが総務に沢田さんはいません。聞くと警察の事情聴取を受けているのでした。
自殺と断定していても、人一人亡くなったわけで、管轄の警察署から二人来ていました。 …まぁ、このパターンも会社側は慣れているようで(過去の経験談)得意のマニュアルこそありませんが、
沢田さんに総務課長が同席しているのでした。
「次は俺かな…」
山川課長の送別会から二次会に足を運んだのは沢田さんと亀田部長でした。

話を飛ばしますが、
一週間経って月次会議がありました。
重要な会議のため鬼塚専務がお越しになりました。
移動の車中で山川課長の話題になりました。従業員二万人、事業部でも数千人を誇るトップでありながら鬼塚専務はこのような訃報
をとても気にする方です。 (普段の豪快さから考えられませんが… )
「それで…」
「うんうん!」
「それで…」
車中で亀田部長の説明を熱心に聞いていらっしゃいます。
話の中で亀田部長もさすがに左遷とは言えず部署の移動をサラリと説明していましたが、
さすが鬼塚専務は聞き逃しませんでしたね。 「部署替えか…」
神妙な顔つきで考えこみました。
亀田部長には全く責任はないのでしょうが、 鬼塚専務の沈黙に押されて下を向いたまましょんぼりしています。 うん?ふりをしていたのかな(笑)
「亀田お前同期なんだって、」
「はい、私とあと丸山本部長もいらっしゃいます」
「なんだ、丸ちゃんもか…」「はい、佐川本部長も…」
「なんだよ!随分偉いさんがいるじゃあないか」
鬼塚専務は冗談とも本気ともつかない言い方をしました。
「は、はい」
亀田部長は神妙に答えますが、内心冷や汗ものだったでしょうね。 鬼塚専務は仲間意識の強い方で意地の悪い奴…つまり後輩をいじめたりする社員には容赦なき鉄槌を食らわすのです。
この場合直(じか)に殴るのではなくて左遷になりますが…
それを亀田部長は恐れていたのです。
尋問?聞き取りはあと二つ三つありお仕舞いになりました。
「結局山川は先を儚(はかな)んだのだなぁ」
独り言みたいに鬼塚専務は結論を出されました。
「あ、それと…」「はぁ…」
話題が変わります。
亀田部長はほっとしました。
感触からして、自分にはお咎めはなし!と思いました。
そりゃあ俺なんか山川をかばいこそしたが追い込むことなんかありゃあしないぜ!
ポケットから出したハンカチで額をぬぐいました。
う~んしかし鬼塚専務の訊問は警察より緊張するなぁ!(苦笑)
肩の力をぬきなからほっと一息でした。
鬼塚専務の話は次から次と変わっていきましたが、
駅に着く前でした。
「高辻さん、彼は優秀だったの?」
いきなり横の高辻役員に聞かれました。
高辻役員は苦虫を潰した顔をしながら即座に「山川ですか、彼はだめでした」 「そうか…」
短く答えて頷くと鬼塚専務は車を降りられました。
「お疲れさまでした」「お疲れさまでした」私は素早く車から出てお見送りの態勢です。無論亀田部長や高辻役員も降りました。

「じゃあ」鬼塚専務は片手を挙げていつもの通りに帰っていかれました。
そのうしろ姿…いつもと違った寂しさが漂っていました。

合掌
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彼は優秀か…31

2011年09月29日 08時41分31秒 | 日記
沢田さんは言葉でません。 あれほど怒りを顕(あらわ)にしていたから
てっきり復讐に燃えている!と思ったのに… 「どうしたのよ」
仕返しを考えるのじゃあないの?
あなたはほんとに意気地無しねぇ…
沢田さんはため息混じりに言いますが、
肩を落としたまま、うなだれていました。
自分の女房を寝取られた相手にパンチのひとつも返せないなんて、あなたほんとに男なの!?
他人(ひと)事ながら沢田さんの方がエキサイトしてきました。
「ねえ、課長私と一緒に仕返ししてやりましょうよ!」
「……」
悔しくないの!?
腹が立たないの!?
役員が怖いの!?
畳み掛けるような沢田さん♪
守勢一方の山川課長…(笑)
「どうしたの?
私の言ったこと疑っているの? 」
煮えきらない態度…
男なんてこんなものなの!? それともこの男だけが例外なの!?
沢田さんの男性観からしたら男とはこんな時に怒るものでしょう!
沢田さんの男性観とは正反対の山川課長を不思議なものを見るように眺めていました。
「あぁ…」
二日酔いの頭に沢田さんからの衝撃的な暴露話…
山川課長の頭の中はウニに耳はタコになっていました(笑)

どうしろ、と言うのだ… 俺もうなにも信じられない…部屋には朝日がいっぱいに広がっています。
明るい日差しは生きるための根源かも知れませんがその陽の光さえ今の山川課長には煩わしいものになっていました。それを避けるように背を向けてスーツを着始めます。
「帰るの?」
帰るつもりじゃあないけど、とにかくここから脱出したい!
静かなところでゆっくりとしたい。
身も心もくたくたに疲れていました。
俺は所詮使い捨ての部品だよ…
上からみたら代わりなんかいくらでもいるし 俺は優秀じゃあなかったんだ!
だから女房にも愛想を尽かされたんだ。
山川課長は自嘲気味に笑いました。
結婚前からの関係だって…
そんなの俺に見る目がなかったんだよ(怒)
そんなの忘れさせるくらいの魅力が俺になかったんだ…
すべては俺に責任があるんだ!
涙すらでません…
他人に通じていた女房を嫁にもらい他人のこどもを育てて、会社からは見捨てられ…
こんな男に今さら仕返しなどをする気力などありません。
ショックは想像以上だったのです。

次の日会社を無断欠勤した山川課長…
翌日の身元不詳の飛び込み自殺が新聞紙の片隅にありました。

合掌
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彼は優秀か…30

2011年09月28日 08時42分54秒 | 日記
この男、ショックのあまり気が狂ったんじゃあかと思いました。 泣いたり呻(うめ)いたり、叫んだり(笑) 喜のない怒哀楽だけを部屋中に撒き散らかしています。
この様子を見て計画はもうすぐだと沢田さんはじっと我慢しています。
入社以来、一年下のみゆきとは何かにつけて張り合いました。
仕事、ボーイフレンドどれをとってもみゆきに勝てません。
容姿なんか絶対自分が勝っているはずなのに未だに自分だけが未婚者でいる。内情を知っているからみゆきの結婚は羨ましいとは思ったことはなかったけれど、相手のいないマンションにひとりぼっちでいる自分に比べてみゆきにはだんながいて、こどもがいて、おまけに愛人までいる、 中身は別にして(笑) みゆきに対して不快なジェラシーを絶えず抱き続けていました。
夜ひとりぼっちの部屋でいつか!みゆきが不幸のドン底に引きずり落ちる事を夢とも現実とも区別がつかない幻想を見ていたのでした。 そして、最近山川課長の左遷の話を聞いてこれは千載一遇のチャンスと思いました。
まず打ち(しお)萎れているいる山川課長に近づき心を許し合う関係を作ってみゆきの不貞を暴露する。
憤慨する山川課長を上手く煽(あお)って復讐を行わせる。
沢田さんはここまでのプランを何度も復唱してきました。
そして遂に計画は現実のものとなりつつあります。
手段を選ぶのは山川課長です。
信頼していた女房、上司に裏切られていたことがわかって…山川課長は泣いたり嘆いたり哀しんだりして、遂には笑い出す始末!そばの沢田さんはそんな姿を見ても後悔しません。ここまで漕ぎ着けたら後は復讐を誓わせるのは簡単だと確信しています。…普段大人しいだけに狂ったこの先の恐ろしさを予感せずにはいられません。

「ははは♪」
笑い声が聞こえて沢田さんはギョと振り向きました。
あまりの怒りに頭が狂ってしまったのでしょうか!?
山川課長は顔を上げていました。天井を見つめ肩を振るわせて笑っていました。

「…」沢田さんは何か言おうとしましたが、とても言葉を掛ける雰囲気ではありません。 山川課長の笑い声は続きます。
なぜ…ふと見ると顔は笑っていましたが、泣いているようです。
泣き笑いでしょうか(笑)

山川課長は笑いながら過ぎた過去を思い出していました。
走馬灯みたいに頭の中や目の前をグルグル駆け回っているのです。 まだ係長だった時代、みゆきを妻として迎えたこと長女の誕生、次女の生まれたこと、 高辻部長(当時)や同期生と飲み歩いたこと… 両親をはやく亡くした山川課長にとって今まで会社を中心とした生活が当たり前でした。
ああ… 40後半になって会社からは除け者扱いされてしまうし、帰る家庭は欺瞞に満ち溢れている。
こどもだってどうだか分からない…
山川課長は虚(むな)しさを自覚していました。

「辞めるか…」
ボソッと言葉をひとつ… 考えて出た訳ではなくて、腹の底から滲み出た言葉でした。
「ち、ちょっと待ってよ!」
今何て言ったのよ
辞める…なんてあなた悔しくないの!?
沢田さんは勢い山川課長の真正面に座ります。
「ごめん」
ごめん…ってあなたは… 一体どうするつもりなのよ!
励ますように沢田さんは肩を揺すりますが、山川課長の反応は鈍くて
「悔しくないの!?」
問い詰めますが、
力なく首を振るだけでした。
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彼は優秀か…29

2011年09月27日 08時14分44秒 | 日記
マンションの窓に朝日が差し始めて 永い夜が明けてきました。
蛍光灯の明かりと日差しが交差して山川課長の姿に陰が二重に映ります。
沢田さんから聞いた衝撃的な名前を聞いて山川課長は動かなくなりました。
まさか…まさかの名前がまだ耳の奥に残っていました。
高辻取締役か… 予想すらしなかった名前…
先週始めに事務室で少し話した記憶がありました。
しかし考えたら入社以来25年以上の付き合いになります。
兄とも慕い又上司として従い高辻部長(当時)の七奉行とうわさされるほどの時期もありました。
それが係長までは順調な歩みがいつからか高辻取締役に疎まれてしまいました。
高辻派として見られていた経過から今更他の親分を探すわけにもいかず、現在は閑職に甘んじています。
途中何度も「なぜ、なぜ」と自分に問うてみても、これといった失策もなく、どうして、どうして、と悩んでいたのでした。
高辻取締役は肩書きが上がるにつれ冷徹になっていきました。それは重責を担うために仕事の鬼になっていたのです。
実際飲み会では相変わらず子飼いの亀田などと楽しくやっていますが、いつからか山川課長はその席からも外されるようになりました。
周りの仲間は次々に昇進していきます。
そして一番辛いのは後輩に抜かれた時でしたね。 仕事の手解(ほどき)きした相手を上役として仰がなくてはならないときです…
同期生と談笑していてもつい僻(ひが)みが出てしまい、避けるようになりました。
与えられる担当部署を引き換えに課長代理を拝命しましたが弱小の得意先が多くて成績も上がりません。
愚痴る相手も見つからず、会社でめったに笑顔を見せることもなくなりました。
全く面白くない会社人生をこの10年あまり続けていたのですが、今回の転属は正に死刑宣告に近いものでした。 営業から地方工場の生産管理になるからです。
全くの未経験で誰も知った人すらいません。 「これはもう辞めてくれ」と言われているのですよ」
山川課長は寂しく笑いました。

しかし現実は娘二人の教育費などこれから世帯盛りを迎える山川家では会社を辞めるとは言えません。
「自分さえ我慢したら…」山川課長に限らずそのような絶望的な状況下にありながら、頑張っている方、多いのではないでしょうか。戦時中に流行った「滅私奉公」あの精神的です。
ただ他の人は家族が心の支えになるのが、山川課長の場合、根底から崩れていました。ただの浮気なら気の迷いとなるでしょうが、20年の永きに渡った不倫となればこれはもう出来心とは言えません。一種の犯罪行為でしょう。
連れ添った女房が確信犯なら高辻取締役も同罪です。
…とここまで考えてみて、山川課長は「はっ!」としました。
不倫が自分の結婚より前からなら…
「ああ…」
山川課長は頭を押さえて呻(うめ)きました
自分の左遷も女房の不貞もちっぽけなものです。 悪い予感が脳裏を掠めてきてだんだんと広がっていきます。
娘二人の笑顔がグルグル回りだしました。
「うわ~」
山川課長は言葉にならない叫び声を上げていました。
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彼は優秀か…28

2011年09月26日 06時09分14秒 | 日記
結婚25年を銀婚式、50年を金婚式とよびますが、結婚20周年も区切りのいい数字で陶器婚式と呼ばれています。
陶器婚式に山川課長は あと一歩でたどり着くところでした。

しかし寝耳に水とはこのことでしょう。
ここにいる沢田さんを信じるならば、女房みゆきは結婚する前から浮気をしていたことになるではないか(怒)
…? 結婚する前なら浮気とは呼べないぞ、二日酔いの頭でこの辺りを堂々巡りをしています。
それでも比較的冷静にいられるのは沢田さんのお陰でしょうね♪
彼女の温かい胸の中でくるまるように抱き抱(かか)えられていてお母さんの胎内もこんな感じだったかも知れないと思いました。
沢田さんはみゆきと近い年令なのに何故こんなに甘美な薫を放っているのでしょう♪肌は艶々と張りがあるしさすが独身者ですね。大概40台になると所帯窶(やつ)れが顔や体に現れてくると言います。
ところでみゆきは…一体誰と20年も付き合っているのだろう…
あれこれ思い巡らせてようやく核心に触れてきました。
そうすると怒りも徐々に膨れ上がってきたから可笑しなものです。
普通なら… 直ぐに相手の名前を聞くものでしょう(笑)
それが山川課長に至っては今ごろであります。
ようやく沸々と怒りがこみ上がってきたのを自覚した山川課長はスックと起き上がると沢田さんを睨み付けて言いました。
「黙って聞いていたらいい気になって!」
怒りは爆発寸前まで達していました。
「ち、ちょっと待ってよ」急変に驚いたのは沢田さんだけではありませんでした。
当の本人もあまりに大きい怒声に吃驚(びっくり)していました。 ああなぜこんな悲しいはずが、怒りを露(あらわ)にしていけなきゃあならないんだ! 怒ったり嘆いたりと情緒不安定な今の姿です。
もっと本気で怒れよ!?
山川課長は自分の心理が激しく揺れ動いているのがわかりました。
「大丈夫!?」沢田さんは心配な顔で覗き込みますが、よく考えたら沢田さんが言い出しっぺでしょうが…

なにも知らない俺に今更こんな暴露をしなくてもよかったんじゃあないか!?
しかも挫折している一番凹んでいる時期でしょ…
それを煽(あお)るだけ煽って、大丈夫?はないでしょ!?
山川課長は持って行き場のない怒りを彼女に向けていました。
冷静になれば全ては自分の責任と気がつくのでしょうが…
とにかく、沢田さんは血相の変わった山川課長に驚いていました。 しかし内心は「やれやれようやく本心が出てきたな」
と思いました。
さあ、名前を聞けよ…ここまで来たら浮気相手の名前を知りたいでしょう(苦笑)
「沢田さん!!みゆきが長い間浮気をしていたのは本当なのかい!!」山川課長の言葉がキツくなっていました。
「ほんとうよ!」
何を今更…この甲斐性なしが!!
腹で思った通り言ってやりたいのをじっと沢田さんは押さえました。 ここで内輪喧嘩しても始まらないじゃあないの。
「私は20年間見てきたのよ」
今度ははっきり言います。
「じゅあ誰なんだよ相手は!」
売り言葉に買い言葉とはよく言ったもので、 お互いの押さえていた感情が一気に破裂しました。
この辺りのテンポのいいやり取りがはじめから出来たら話しは済んでいたのに…
カールした髪を揺らして沢田さんはため息をつきました。
言うわ、言うわよ…
ただし名前を聞いて腰を抜かすなよ(笑)
沢田さんのくせでしょうか、栗色の髪をかき揚げて真っ直ぐ山川課長を見ました。
「高辻取締役よ」
言ったわ!!とうとう… ほんとうは私だってこんな形で暴露したくはなかった。 私はみゆきの立場で、高辻取締役の奥さんから叱咤されたかった!
これが私の本音なのよ!
20年来いかにみゆきから彼を(高辻取締役)奪うかと思い悩んできたけれど、とうとう私の根負けね!?
彼は一度だってこちらをチラッとも気にしなかった。
絶対私の方が上に決まっているはずなのに!! なぜか私は不可解な訳のわからない事で阻害されてきたんだゎ
だから…もう諦めたの。
あんなおじいさん、どこがよいのやら(苦笑)「沢田さん、沢田さん!!」
「え!」
我に返ってみると冴えない四十男が目の前にいました。!!
しっかりしなさいよ。 「それってマジ?」

黙って首を立てに振りました。
「ほんとうかよ」

山川課長は絶句しました
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