寝転がって気ままに想う事

 世の中ってこんなもんです・・
面白可笑しくお喋りをしましょうか ^^

旅の教え(ラスト)

2010年07月30日 06時31分02秒 | 日記
月の明りに照らされて~♪そんな歌がありましたね♪この場合は裏庭に動く影がありました。『何かな!』その方を見ますが月が雲の流れに隠れたせいか裏庭は真っ暗になりました。
『確か何か動いたぞ』臼井社長は庭先の暗闇をじっと見回しますが見つかりません。
ザワザワと樹々がざわめき出しました。 風が出て来たのでしょう。雲の流れも速くなってきました。その雲の切れ目は途切れ月明りが出て裏庭は昼間のように照らされました。大きな、そう椿の木でしょう…その辺りに白い影が見えました。平べったくなった影は人のしゃがんだ格好でいました。月明りは裏木戸のちょうど真後ろに出ていますから臼井社長の辺りは真っ暗です。雲の流れでとぎれとぎれに見えていた裏庭が真っ昼間になりました。 雲がきれいに流れていったせいでしょう。
『よし今度こそ見極めてやろう』
椿の下あたりに目を凝らしていると白い影は相変わらずじっとしているようです。
『はて、犬じゃあないし、山羊なんかいないだろうし…』好奇心旺盛な臼井社長はなんとか正体を見てやろう…と見る気満々です。
(ほんと懲りない人ですね(笑)
そして目を凝らせていれば慣れは恐い物ですね(笑) 白い影の輪郭が見えてきました。黒く動いているのが頭だと分かってきましたから…
その頭が前後に軽く動いているのが分かりました。
『はて、人のようだぞ』
白い影が身体として、頭だけが小刻みにまるで何かをつついているようです。
風が吹き出しました。生暖かい春の風です。
その風が白い影を舐めるように吹き上げました。
頭からフワッと黒い糸が湧き出したみたいになりました。髪が吹き出したのです。 『あっ!』臼井社長は思わず声が出ました。
髪が乱れた隙間から見えたその顔はあの娘です。 焦点の違った目付きでキョロキョロ、『へへへへへ』 真っ赤な口を耳まで開いて笑っていました。
『………』
見たがりの怖がり(笑)臼井社長震え上がって仰天!どうして寝室まで帰ったか分からないほどでした!
頭から布団をかぶるとガタガタ震えながら『どうぞ気がつかないように…』と念じたのです。(それ見た事じゃない♪)
何をしていたのか分かりませんが、とにかくあの顔は娘には違いありません。臼井社長の知っている無表情な少女とは思えません。まるで悪霊に取り憑かれた鬼女そのものでした…
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旅の教え(ラスト)

2010年07月29日 07時01分40秒 | 日記
昼間怪しい媚煙を吸い込み昏倒した臼井社長は見知らぬ老人と娘に助けられました。ところがその夜地酒の老酒を飲み過ぎて再び昏倒の憂き目に遭いました。(懲りない奴だね(笑) その臼井社長…目を覚ませたのは寝床のなかでした。 喉がヒリヒリした痛みで目が覚めました。 『ここは何処だろ…』
霞む頭を叩きながら起き上がりました。
周りはまだ薄暗くて夜明けにほど遠い様子です。
腕時計を見ると三時です。『そうか! あれから俺は倒れ込んでここに寝かされたのか』
ようやく昨夜の様子が思い出されました。
『なんてことなんだ…』助けてもらった挙句又迷惑を掛けちまったんだな…
シャワーを浴びて夕食をご馳走になり…あぁ~飲まなきゃあ良かったね(苦笑)あの老酒…
…臼井社長が後悔しますが後の祭りでした。
取りあえず起きるかこのまま寝ているか~ゴソゴソとベットでしていました。
静かな夜です。
枕元に花瓶みたいなものが置いてありました。『?』口をつけてみると湯冷しです。『♪』これで喉の渇きを潤すと人心地つけました。娘の心配りに昨日の出来事を思い返しました。
『俺は馬鹿だったなぁ…』
仰向けになると薄暗い中に天井がぼんやり見えました。斜め上の窓から月明りが差し込んでいます。
やがて目が馴れるに従って部屋全体が見渡せるようになってきました。 狭い寝室ですが、この窓の下から通路にかけて白いベットがありました。たぶん老人が休んでいるのでしょう。
娘の寝床は別のところなのか見渡す限りありません。 『あれ…いつの間にか娘を捜しているぞ』苦笑しながら思いました。
まだ子供かと思っていた娘でしたが、シャワーの介添えをしてくれた時垣間見た肢体には女の色気がありました…
寡黙で実直な祖父との質素な暮らしぶりは日本の昔の暮らし振りとそっくりでした。臼井社長は東京の下町育ちですが、当時(三十五年前)東京でも平屋の瓦葺きが一般的な民家でした。そばに流れる小川で魚掴みで遊んだことが昨日の事のように思い出されます。その東京は見る影もないほど変わりました…
今ここは多少の違いはあるにしても 自分が育ったあの少年時代の風景そのままでした。
『こんなところでのんびり暮らすのも悪くないなぁ』 天井に薄いしみが見えています。
こんなしみも昔だったら当たり前でしたから、たかがしみにも懐かしさが込み上げてきたのでした。
昔…まだ老け込む年でもないけど… ここ数年いや十年以上多忙を極めた人生でした。 会社から将来を嘱望されていたから忙しいことがステータスみたいに思っていたのでした。いつも将来を考え突き進んでいました。猛烈社員の代名詞でしたから、こんなのんびりした時間なんてほんと久々でしたね。
臼井社長は手枕でしみのついた天井をぼんやりと見つめていました。
『静かだなぁ』
口にして、もう時計を見たり時間を気にすることはありませんでした。朝になれば明るくなるさ~
足の爪先でリズムを取り口笛でも吹きたい気持ちです。
『ガタン!』裏の方から音がしました。
この時間に?… 起き上がって確かめるけど真っ暗で何も見えません。
部屋の外れに寝ている老人は全く微動だにしません。 臼井社長はそうっと立ち上がると音のした裏へ向かいました。 寝室を抜けて通路伝いに裏木戸から外に出ました。外は月の光に照らされて真昼のような明るさでした。夕方使ったシャワールームは簡単な囲いをあしらっているだけでムシロを取り払っていましたからありません。敷地をレンガが取り囲んで隅に 大きな木が黒々とたたずんでいるだけです。レンガ塀の片隅に小さな入口らしきものがありました!
あそこから出入りも出来るんだ♪
『こりゃあ益々うちの家にそっくりだぞ』臼井社長は自分の育った幼少の頃と同じ環境を懐かしむと暫くぼんやりと眺めていました。街灯とか余分な明かりはありませんから月の明りだけで裏庭を見渡せるのです。余分な明かりがないせいか隅々には陰翳が残り神秘さと闇の深さを感じさせています。古来いろいろな寓話が生まれたのもこんな風なところからだと頷けますね。そして不審な音はすっかり忘れていました。
その時塀の片隅に素早く動く影を見ました…
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旅の教え(ラスト)

2010年07月28日 10時05分30秒 | 日記
シャワーで身体を清めた後の一杯は格別ですね(笑) 色白の臼井社長は顔を真っ赤にさせていました。皿に盛られている料理を片付けているとシャワーを終えた娘も食卓に座りました。老人が一人手酌でグイッと飲み干すと娘にも勧めました。
娘は濡れ髪を束ねたまま茶碗酒を手にすると水でも飲むようにくっと飲み干しました。
『うーん!飲める口だね』感心していると老人が勧めてきました。 『もう結構ですよ』臼井社長はお礼を言うと頭を下げました。
娘は相変わらず無関心を装いながら黙々と箸を動かせています。さっきのサービスを施しはなんだったのか?大人の男性に肌を晒した恥じらいが彼女を硬い態度にさせるのでしょうか。無表情を装うことで臼井社長を意識しているとも思えました。箸と茶碗の音が時々する静かな時が過ぎて行きました。茶碗を置いて老人も無頓着に箸を使い始めました。
この家ではいつもこんな風に食事をしているのかな… 老人と娘はただ黙々と箸を進めています。窓にはいつの間にか月明りが差し込んでいて食卓を照らしていました。平和な食事を眺めているとやっぱり俺はここにいちゃあダメだね。 苦笑しながら残りの老酒を空けました。
娘が食べ終わったら退散することにしょう…こんな穏やかな家にいては又帰る潮を失いそうでしたから…
春先とは言えこの地方の温暖な気候のせいか少し蒸してきました。或いは老酒の酔いのせいでしょうか。臼井社長は娘が食べ終わるのを見届けると帰ることを告げました。
もう老人は何も言いません。娘は黙って下を向いていました。
食事が済むと一遍に汗がカァーと吹き出しました。酔いが身体中に回って来たようです。『それじゃ…』立ち上がったときでした。
脚がしびれている…ん?脚が…脚が 腰から下が動きません。
ゴロリ…今日二度目の転倒です。
しかし今度は頭だけは冴えていました。ただ腰からしたに力が入らないのでした。
無様(ぶさま)な格好で転がった臼井社長に猛烈な眠気が襲ってきたのはすぐでした。
『う…』天井が歪みだしました。
『だんなさん…だんなさん』娘の声が遠くで聞こえています。
うんうん頷いたのですが黒い深淵に吸い込まれるように意識を無くしていきました…
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旅の教え『ラスト』

2010年07月27日 10時43分09秒 | 日記
臼井社長は助けてもらった家でシャワー(簡易式)…全部手動です(笑)
をしていましたところその家の娘が現れました。しかも全裸です。
一瞬手が止まり、いえ…呼吸が止まるほど驚きました。 こっちだって水浴びする訳だから裸に決まっていますよね。 そこへ独身♪娘が入って来たのです。
裏庭の隅にムシロを引っ掛けただけの個室にいきなりですから臼井社長は目を丸くしていました。 娘は悪びれる様子もなく腰に小さな布きれを巻いているだけです♪肩までの髪を頭の上で束ねていました。そのせいでしょうか妙に大人びて見えたのですね。確かさっきまでは娘…子供くらいにしか思っていませんでした、女は怖い生き物ですね。
娘…彼女は臼井社長に軽く会釈をすると手桶の水を自分の肩から二三度ザザ―と浴びると 臼井社長に向かって手桶をかざしました。つまり水を掛ける仕草をします。
狭い裏庭の簡易シャワールームは臼井社長が一人入ってちょうどです。そこへ彼女がきたものですから狭いシャワールームはいっぱいです。二人は身体を入れ違うようにしながら斜めに向かい合いました。臼井社長のお尻はシャワールームを囲っているムシロに当たっていました。彼女はしゃがみ込むと 手桶の水を器用に汲み出しました。それを上から覗き込むと胸の谷間が眩しく見えています。夕暮れ時ながら裸電球に照らされた谷間の闇の深さが悩ましいのです。
男として臼井社長は彼女を意識してしまいました。
ハンカチ程度のタオルでは覆い尽くせない恥態を自覚していました。
彼女は一切を無視して両方の脚を洗い始めました。
石鹸をタオルに移してはすねからひざ、太股とタオルは上がっていきます。臼井社長はそれを我慢していました(笑)
そう、臼井社長は大のくすぐったがりでしたから…
そしてむいに股間にきました。 (ワクワクしますね(笑)
腰から下に手桶の水を掛け終えると 彼女はタオルに石鹸を丹念に擦りつけました。左手から持ち替えると黙って差し上げました。ここは自分で洗え…と言うことでしょうね。
臼井社長はタオルを受け取り後ろ向きになりながら隠すように洗いました。
さすがの臼井社長もこれは素直になるしかありません肩から背中とタオルは移動していきます。彼女は後ろ向きの臼井社長を抱き抱えるように洗い続けています。
こんなに濃かなサービスをかつて受けたことはなかったでしょう…
汗やほこりをすっかり洗い流してサッパりした臼井社長は食堂に戻りました。質素な食卓には彼女の手作りの野菜炒めが皿に盛り付けてありました。老人と差し向かいに座ると小さな茶碗に老酒が注がれました。
飲め…と身振りで示しています。
この辺りの地酒でしょうか。白磁器の茶碗に波々と注がれた老酒はあくまでも透明さを誇り老人の気品の高さを物語っているようでした。
一口含むと口の中に炎が燃え上がるくらい純度の精密な酒でした。喉を焦がす強烈な刺激を受けながら臼井社長は飲み干しました。
胃膚が燃えるような刺激がくせになりそうです。
空きっ腹のアルコールに程よい酔いを覚えて皿の野菜を一つまみ口に運びました。
それから老人の勧めれるままに茶碗を重ねました。
老酒はあくまでも気品高く純粋でありました。
四五杯も重ねた頃には臼井社長はすっかり酔いが回っていました。
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旅の教え…〓

2010年07月26日 04時34分10秒 | 日記
『………』
『だ…な…ん』
『だんなさん…』肩を揺する振動で臼井社長は気が付きました。
悪夢で目が覚めた時のように寝汗てびっしょりでした。目の前に見知らぬ女の顔があります。質素な衣装を身に着けた女は心配そうな顔で臼井社長を見つめていました。
『誰…』舌に痺れが残っているのか口がこわ張って上手く喋れません。
どれ位時間が過ぎたのか、ここは何処なのか、頭が霧にでも覆われたみたいに真っ白い状態でした…
思考能力が働かないまま目の前の若い女を見つめるだけでした。
『○×△■…』
現地語でしょう… 何かを話し掛けてくるのです。タダでさえ現地語は判りにくいのにこの状態では皆目です。臼井社長はただ早口で動く唇を眺めているだけで為す術もありません。女は呼び掛けに反応しないのを見て誰か助けを呼びに行ったのでしょう。
臼井社長は一人残されました。
目の前、いや目の上には煤(すす)けた天井が視界いっぱいに広がっていました。首を倒すと壁があり小さな窓から鈍く日差しが光っていました。ゴロリ、と反転できました。あの時自分の顔から下が痺れていてどうしょうもなかったのでした。それが這い回るだけでも自分の意思通りできたのが不思議な気持ちです。部屋をぐるりと見回してここは普通の民家だと思いました。かまどがあるし机や椅子がいくつもありましたから…
臼井社長はその土間から上がった居間に寝かされていたのでした。
『△※○×…』
『×△△■…』
現地語で交わす男女の声が近付いてきました。
ガタと音がして入口の戸板が開きました。白髪頭の老人が覗き込みながら入ってきました。後ろに介抱してくれた若い女が続いています。臼井社長は上半身を起き上がらせることができました。
老人は表情ひとつ変えずに臼井社長を見ると
『○×△∴☆』
現地語で何やら呟きます。若い女がそれに対応しますが、全く分かりません、多分臼井社長の回復状態を話していたのでしょう。
臼井社長はようよう座り直してとにかくお礼を言おうとしましたがそれを手で制した老人はたどたどしいけれどゆっくりと… 『だんなさん、エラい目に会われましたな…』日本語で話しかけてきました。
※台湾は以前日本の植民地でした。その時代の名残で今でも日本語を話せる老世代がいます。
臼井社長もそのことは知っていましたからそうは驚きませんでした。
『はい、助けて頂いてありがとうございました』
臼井社長は素直にお礼を述べると頭を下げました。
『具合はどうじゃ』まじまじと眺めてくる老人は見た感じかなりの年をいっているようでしたが、言葉や顔には好意的な雰囲気が現れていました。それでようやく臼井社長も落ち着きを取り戻しました。
『だんなさんが覗いたあの小屋は麻薬の密売所でな…』
『そうか、それで怪しげな女がいたのか…』
老人の話しによると以前は無かった麻薬の密売も最近はヤクザが入り込んで地元は大層迷惑しているのでした。
麻薬に犯された農民も大勢いて特にこの祭りでは地元の有志が目を光らせていたのでした。
臼井社長に最初絡んできたのもヤクザならその後に助けてくれたのも老人ながら最も質(たち)の悪いヤクザでした。
麻薬を嗅がせて中毒にさせた後、法外な価格で売り付けるのです。 だから日本人駐在者は格好の獲物です。あの時この娘が前を通り掛かって意識朦朧としていた臼井社長を見つけたのでした。彼女は容易ならない状態におどろいて老人を呼び自宅まで運び込んだのでした。 運のよいことにヤクザは臼井社長をさがしに祭りの獅子のあとを追っていたようで小屋には誰もいなかったのでした。
…とは言ってもヤクザ達に連れ去られた若い女が何人も麻薬を 吸い込んで昏睡していましたから臼井社長も危ないところでしたね。
老人は話を続けました。
『地元の警察も金をもらっていて動いてはくれん』
『若い女は中毒にされて売られて行くし、だんなさんは金をむしり取られ廃人になるんだよ』
淡々と話す言葉には説得力がありました。 『ヤバかったなぁ』脇の下から冷たい汗が吹き出てきました。
あの昏睡のままヤクザが帰ってきたら…そう考えたらゾッとしました。 娘が煎れてくれたお茶を一口含むと 臼井社長は改めてお礼を言いました。
『本当にありがとうございました。あなた方が助けて下さらなかったら今頃どうなっていたでしょうか』
老人は黙って手を振り静かに笑いました。
『帰りたいのですが…』お茶を飲んだら元気が出てきた臼井社長は
老人に告げました。『もう歩けるのかな』『はい』返事はしたものの立ち上がって見るとまだふらつきました。『△○※△×…』娘が何か老人に訴えています。 老人は頷くと臼井社長に向かって『ヤクザ達はだんなさんをまだ探しているらしいぞ』『そんなぁ』不満を漏らすと
『いやこの辺の連中はしつこいぞ』冗談ともつかない顔で言いました。 陽はようやく傾いてきたようで窓から差していた日差しが長い影を落としていました。
『陽が暮れて夜になれば連中も諦めるだろう』
だからそれまでここに居ろ、と言うのです。
確かにこの老人のいや娘の言うとおりかも知れない… そう思ったがここは何処だろう。
この家からは外が見えない。帰るにしても夜中なら尚更だ。臼井社長は方向音痴でしたから…(笑)
『ちょっと外を見てもいいですか』 立ち上がって戸口に向かうと娘が臼井社長の前に立ちはだかって何か言います…
『ごめん!判らないよ』通せんぼされて苦笑いせざるを得ません。
『あぁ…あれはだんなさんが帰ると思って止めているのだよ』
そりゃあそうなんだろうけど娘の必死さに初めて不審を抱いたのでした。
『ちょっと外の様子を見るだけなんだけど…』言い訳みたいにして中へ戻りました。
娘はそれでも戸口から離れません
『×△■※×…』老人が娘に告げるとようやく承知したのか戸口から離れました。
『だんなさん、まぁここへお座り下さいよ』手招きされて臼井社長は元の居間に腰を下ろしました。
テーブルに飲みさしの茶碗がポツリ…『今日は色々とあったなぁ』ぼんやりと茶碗を眺めていました。
老人はそばにいましたが静かに座っているだけです。 ここのことを尋ねて見るとどうも市場から遠くない場所のようでした。この老人聞けば話すがそちらからは話してきません。つまり会話のキャッチボールにならないのです。
娘は孫娘で親は出稼ぎに出ていること。今年は豊作になるだろう…等々をこの口の重い老人から聞き出した頃にはすっかり陽が暮れていました。途中娘がお茶のお代わりを出してくれたのを飲んだだけでしたので臼井社長もさすがに空腹を覚えました。
危ないところを助けてくれた手前無下に帰れないな… 人の良い臼井社長は最初はそう考えていました。しかし眠ったような老人を眺めていて『もういいだろう』腹の減った臼井社長は少々短気になっていました。身体はもう何ともないし…第一汗をかいていたのでシャワーも浴びたかったのでした。
もう帰ろう、と立ち上がりかけた時でした。
ジャージャーと何かを炒める音が奥からしてきました。香ばしい炒め物の匂いが流れてきます。
『だんなさん飯の前に汗を流されたらどうぞ』何か変な日本語ですが意味は分かりました(笑)
眠ったような老人が思い出したように言いました。
『…』助けてもらった挙句に飯までご馳走になるなんて…
老人と娘の予期せぬ接待に面食らったのですが、『こりゃあ参ったぞ』臼井社長は思いました。
しかし田舎の人は素朴だから仕方ないか、風呂入って飯食って…そうすればこの人達も得心するだろう。 それでお礼を言って帰ろう…そう算段をつけると
臼井社長は老人の案内で家の奥を通り裏庭に出ました。この家は入口に土間と居間がありましたが、その奥は通路をはさんで厨房…台所がありました。反対側にはテーブルと椅子が置いていますからここがキッチンとダイニングでしょう。そこを越えると寝台らしきものがあります。
つまり寝室でしょう。
風呂場は裏庭にありました。
小さな屋根の下に浅いブロックの囲いがしつらえていました。お湯は無くて水が大きな木の樽に波々と入っています。足下の手桶を使って水を掛けるんだな…勘の良い臼井社長は直ぐに気付きました。 良く見れば小さな石鹸らしきものもありました。 臼井社長は着ている物を脱ぎ捨てると手桶にいっぱいの水を頭からザブーンとかぶりました。ぼやけた頭がスカッとしました。流れ落ちる水が冷たくて顔から肩、胸へと流れ落ちていくと麻薬の毒気も一緒に流れて行くようでした。もう一杯!流れ落ちる滴で目を明けられないまま手桶を手探りで探しました。
『あれ?』確かここら辺に置いたはずだが…
『○××△※…』 娘の声がそばでしました『え!俺裸だぜ』 濡れた髪を掻き上げて見ると、なんと娘が全裸で立っていたのでした…
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