似て非なるもの５

「高村さん、時間を潰(つぶ)したいからちょっと遠回りしてくれないか」 祇園の花川まで当たり前なら一時間でした。制限速度ギリギリに走ってもまぁ１０分も稼げるかどうか…でした。
「遠回り…ですか？」私は尋ねました。「そうなのだよ。頼むから二時間くらい掛けてほしいのだよ」
「二時間！ですか」
私はビックリした拍子にしゃっくりが出てしまいましたね(笑)
まぁまぁとなだめるようにして「道は任すから…」
「…」
任すと言われても、どこをどう走ったらいいのか咄嗟に分かりません。
「市内をグルグル回ってもいいから…」
「はぁ…」
京都の市内を回って時間を稼げ、と高辻役員はおっしゃいます。
しかしそれではあまりにも見え見えすぎます。 京都の市内は碁盤の目になっています。矢鱈走ったらバレるのじゃあないかと思います。 記憶力の良い方なら気がつかれる恐れもあります。
いつかやはり韓国のお客様でしたが、
京都から移動した後夕方に戻りました。そのさいに
「この道は通りましたね」私はドキッとしました…
朝通った道は夕方ですでに暗くなっていましたから…
ルームミラー越しにチラッと見た顔は確信に満ちた表情でした。

それを思い出した私は簡単ではないぞと思いました…
そんな私の心情を察したのか高辻役員は
「まぁ市内を走るよりインターをとばしたらどうかな」
違う提案をされました。
「そうですね」
私も同感でした。
ひとつ先のインターを出れば時間を稼げます。
「それからは様子を見て決めようよ」
「わかりました」
夕方市内を向きは結構混むからです。