森達也が監督した、関東大震災の混乱の中で発生した福田村事件を描く『福田村事件』を見ました。福田村事件とは関東大震災の後、根拠のないうわさをもとに差別を増長させ、残虐な事件がおきてしまった事件です。昔の事件ではあるのですが、今の日本の状況そのものです。正しいことを正しいという勇気の必要性を強く感じる映画でした。
関東大震災のあと、混乱の中で、「朝鮮人が略奪や放火をした」「朝鮮人が集団で襲ってくる」などのデマが飛び交いました。その中で讃岐の薬を売る行商団が朝鮮人だと疑われ、福田村自警団に取り囲まれてしまう。警察に確かめている間に一部の自警団員が行商団の1人を殺してしまう。それをきっかけに多くの行商団員が殺されてしまいます。
自警団員に対して行商団員は日本人かもしれないから殺してはいけないと説得する人もいます。しかし問題の本質はそれではありません。たとえ「朝鮮人」であっても殺してはいけないのです。当時の日本人の思いあがった心情が描かれます。
現代でも中国人や韓国人に対して思い込みがあり、その思い込みを言動に表してしまう日本人がいます。その数は決して少なくありません。インターネットにはそういうコメントが数多く見えます。
物事の本質はある種の言説によって隠蔽されます。それが権力によって利用されると大変なことになります。日中戦争も、現在のジャニーズの問題も同じ構造の中にあります。
真実を追求する目が必要です。そして純粋な批判精神が必要です。そのことを要求する映画でした。
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