「羅生門」は誰もが知る通り今昔物語集の「羅城門」をベースに書かれている。「羅城門」と「羅生門」の違いに作者の何らかの創作意図が現れると考えるのは自然な読み方である。では「羅城門」と「羅生門」の違いは何か。われわれは「羅生門」のほうをよく知っているので、成立とは逆になるが、「羅生門」をベースにして「羅城門」がどう違うかを述べていく。
①「下人」は「下人」ではなく、ただ盗みをするために上京した男である。だから「盗人」という名詞で示される。
②時刻は「日のいまだ明かかりけ」る時刻であり、「暮れ方」ではない。男は明るかったので「羅城門」の下に隠れていたのである。
③男は何も悩んではいない。年齢もわからない。
④男は単に人が多かったので隠れる意味で上層に上った。雨風をしのぐためではない。
⑤媼が抜いていたのは、死んでしまった自分の主の髪の毛である。この髪の毛をぬいて鬘にしようとしていた。この鬘をどうしようとしていたのかは書いていないが、自分が使うと考えるのが自然である。だとすれば形見にしようとしていたとも考えられる。
⑥この話は、盗人が人に語ったものを伝え聞いて書き残したとある。つまり盗人の行方はわかっているということになる。
実はこの話のどこに物語性があるのかはわからない。あるとすれば死んだ主の髪の毛を抜いて鬘にしようとしていた媼の奇怪さだけである。
「羅城門」をもとに「羅生門」を作り上げた芥川龍之介は、やはりすばらしい小説家である。
①「下人」は「下人」ではなく、ただ盗みをするために上京した男である。だから「盗人」という名詞で示される。
②時刻は「日のいまだ明かかりけ」る時刻であり、「暮れ方」ではない。男は明るかったので「羅城門」の下に隠れていたのである。
③男は何も悩んではいない。年齢もわからない。
④男は単に人が多かったので隠れる意味で上層に上った。雨風をしのぐためではない。
⑤媼が抜いていたのは、死んでしまった自分の主の髪の毛である。この髪の毛をぬいて鬘にしようとしていた。この鬘をどうしようとしていたのかは書いていないが、自分が使うと考えるのが自然である。だとすれば形見にしようとしていたとも考えられる。
⑥この話は、盗人が人に語ったものを伝え聞いて書き残したとある。つまり盗人の行方はわかっているということになる。
実はこの話のどこに物語性があるのかはわからない。あるとすれば死んだ主の髪の毛を抜いて鬘にしようとしていた媼の奇怪さだけである。
「羅城門」をもとに「羅生門」を作り上げた芥川龍之介は、やはりすばらしい小説家である。