看護学校では、「倫理学 (哲学) の授業で学んだこと」 をテーマにレポートやテストを課しています。
で、この授業を受けてどれだけ考えが深まったかをレポートやテストに書き表すよう要求しています。
したがってある程度以上の分量を書くことが必要になってきます。
最低限度枚数を定めていますし、それをクリアしても最低点がもらえるだけで、
考えが深まったことを表現するためにはできるだけたくさん書くようにと伝えてあります。
もちろん書いた分量と点数が単純に比例するわけではありませんが、
ギリギリの分量で高得点をもらうというのはよっぽど素晴らしい答案を書かないかぎりムリでしょう。
というようなことを第1回目の授業の冒頭で説明してあったので、
今回のような質問が出てきたのでしょう。
特に日頃から書くのが苦手と思っている人は上記の説明を聞いたとたんに不安になるようです。
これには2つの側面からお答えしてみたいと思います。
まずは日頃の心がけから。
A-1.とにかくふだんからできるだけ文章を書くようにし、書くことに慣れることです。
日記でもラブレターでも何でもいいので、とにかく毎日何かしら文章を書くようにしてみてください。
最初のうちは長い文章が書けなくてもかまいません。
とにかく思ったこと感じたことを言葉に表してみる。
それが出発点です。
思ったこと感じたことを的確に表す言葉というのはなかなか見つからないかもしれません。
だとしてもそこですぐに諦めてしまうのではなく、
それを何とか言葉に置き換える訓練を続けてみてください。
授業でも話した通り 「表現」 というのは英語で 「express」、
自分の内側にあるものを外に向かってギュッと押し出すことです。
その努力を怠っていてはいつまで経っても書けるようにはなりません。
そして、特に授業中に配付しているワークシートの問いに対しては、
(郡山の場合はノートや振り返りシートに書いてもらっていますね)
できるだけ自分の思いや感じをたくさん書けるようがんばってみてください。
毎週のワークシートには、①当初自分が抱いていた思いや感じと、
③授業を受けてどう自分の考えが深まったかを書いてもらっています。
けっきょくそれらを集積したものがレポートやテストの答案になるわけですから、
毎週、授業のなかで自分の思いや感じを書き表す訓練をしているのだと思って取り組んでください。
だいたい毎週のワークシートや振り返りシートを見ていれば、
その人が実際のレポートやテストでどれくらい書けそうか予想がつきます。
ふだんから書く分量が少ない人がいざとなったときに急に書けるようになったりはしません。
そういう人たちの書いたものを読むと、ものすごくぶっきらぼうです。
結論しか書いていなかったり、理由があってもものすごく浅薄なことしか書いていなかったりします。
そこで2つ目のアドバイスに移りたいと思います。
A-2.とにかくよく考えましょう。
考えるとは理由や根拠を問い質すことです。
ただ思ったこと感じたことを書くのではなく、
なぜそう思ったり感じたりしたのか、その理由や根拠をできるだけ詳しく書くようにしましょう。
浅薄な答案というのはこういう感じです。
例えば、家族が脳死になったとき臓器移植に賛成しますか反対しますかという問いに対して、
「病気で苦しんでいる人を助けてあげられるので臓器移植に賛成します」 とか
「大切な家族の身体に傷をつけたくないので臓器移植には反対します」 など。
たしかにここには臓器移植に賛成したり反対したりする理由は書いてあります。
しかし、ここで思考が止まってしまっているのです。
これでは倫理学になりません。
ここからさらに理由の理由、根拠の根拠を探していってみてください。
なぜ病気で苦しんでいる人をまだ心臓の動いているあなたの家族が助けなければならないのか、
なぜ脳死になってしまった家族の身体に傷をつけたくないと思っているのか、
そのように考え進めていくと、
あなたが脳死について心の奥底でどう思っているのかがはっきりしてくるでしょう。
考えを深めるというのは、いろいろな物事の根本のところを突き詰めていくことです。
パッと思いついた最初の理由で満足してしまうのではなく、その理由の理由、
さらにその理由へとどんどんさかのぼっていってもらいたいのです。
このような考え方に慣れてくると、最初に思いついた理由というのは本当の理由ではなかった、
ということに気がつく場合も出てきます。
自分でもわかっていなかった自分の考えまで行き着くこと、それが考えを深めることなのです。
ついでにもうひとつのアドバイスも書いておきましょう。
A-3.深めていくと同時にいろいろなことへと発展させながら考えていきましょう。
そして、自分の立場からだけでなく、いろいろな人の立場に立って多角的に考えましょう。
先の例で言うならば、家族が脳死になったことを聞かれてただそれだけを考えるのでなく、
では自分が脳死になったらどうかも考えてみることです。
そうすると、けっこう多くの人が家族の場合は反対だけど、
自分が脳死になったら臓器移植してもいいと思っていたりするようです。
それにはそれなりの理由があるのでしょうが、
先ほどの理由とバッティングしないか考えてみる必要があります。
それから、脳死の場合だけではなく植物状態の場合にはどうかと考えてみるのもいいでしょう。
また皆さんはいずれ医療者になるわけですから、自分の場合、家族の場合と別に、
医療者の立場として、職場に臓器移植を待っている患者さんがいた場合にどう考えるか、
あるいは、自分もしくは自分の家族が臓器移植でないと助からないとしたらどうするか、
といったように様々な面から考えてみるようにするとどんどん深まっていきます。
人間というのは他の動物と同様、基本的には自己中心的な生き物ですが、
しかし人間には想像力が備わっていますから、
自分とは異なる立場に身を置いて考えてみることもできます。
そうやって多角的に考えることに慣れてくると、文章もたくさん書けるようになるでしょう。
あと4週間、こんなことに気をつけながら書く訓練、考える訓練を積んでみてください。
どこまで考えを深めることができたか、楽しみにレポートやテストを読ませていただきたいと思います。
で、この授業を受けてどれだけ考えが深まったかをレポートやテストに書き表すよう要求しています。
したがってある程度以上の分量を書くことが必要になってきます。
最低限度枚数を定めていますし、それをクリアしても最低点がもらえるだけで、
考えが深まったことを表現するためにはできるだけたくさん書くようにと伝えてあります。
もちろん書いた分量と点数が単純に比例するわけではありませんが、
ギリギリの分量で高得点をもらうというのはよっぽど素晴らしい答案を書かないかぎりムリでしょう。
というようなことを第1回目の授業の冒頭で説明してあったので、
今回のような質問が出てきたのでしょう。
特に日頃から書くのが苦手と思っている人は上記の説明を聞いたとたんに不安になるようです。
これには2つの側面からお答えしてみたいと思います。
まずは日頃の心がけから。
A-1.とにかくふだんからできるだけ文章を書くようにし、書くことに慣れることです。
日記でもラブレターでも何でもいいので、とにかく毎日何かしら文章を書くようにしてみてください。
最初のうちは長い文章が書けなくてもかまいません。
とにかく思ったこと感じたことを言葉に表してみる。
それが出発点です。
思ったこと感じたことを的確に表す言葉というのはなかなか見つからないかもしれません。
だとしてもそこですぐに諦めてしまうのではなく、
それを何とか言葉に置き換える訓練を続けてみてください。
授業でも話した通り 「表現」 というのは英語で 「express」、
自分の内側にあるものを外に向かってギュッと押し出すことです。
その努力を怠っていてはいつまで経っても書けるようにはなりません。
そして、特に授業中に配付しているワークシートの問いに対しては、
(郡山の場合はノートや振り返りシートに書いてもらっていますね)
できるだけ自分の思いや感じをたくさん書けるようがんばってみてください。
毎週のワークシートには、①当初自分が抱いていた思いや感じと、
③授業を受けてどう自分の考えが深まったかを書いてもらっています。
けっきょくそれらを集積したものがレポートやテストの答案になるわけですから、
毎週、授業のなかで自分の思いや感じを書き表す訓練をしているのだと思って取り組んでください。
だいたい毎週のワークシートや振り返りシートを見ていれば、
その人が実際のレポートやテストでどれくらい書けそうか予想がつきます。
ふだんから書く分量が少ない人がいざとなったときに急に書けるようになったりはしません。
そういう人たちの書いたものを読むと、ものすごくぶっきらぼうです。
結論しか書いていなかったり、理由があってもものすごく浅薄なことしか書いていなかったりします。
そこで2つ目のアドバイスに移りたいと思います。
A-2.とにかくよく考えましょう。
考えるとは理由や根拠を問い質すことです。
ただ思ったこと感じたことを書くのではなく、
なぜそう思ったり感じたりしたのか、その理由や根拠をできるだけ詳しく書くようにしましょう。
浅薄な答案というのはこういう感じです。
例えば、家族が脳死になったとき臓器移植に賛成しますか反対しますかという問いに対して、
「病気で苦しんでいる人を助けてあげられるので臓器移植に賛成します」 とか
「大切な家族の身体に傷をつけたくないので臓器移植には反対します」 など。
たしかにここには臓器移植に賛成したり反対したりする理由は書いてあります。
しかし、ここで思考が止まってしまっているのです。
これでは倫理学になりません。
ここからさらに理由の理由、根拠の根拠を探していってみてください。
なぜ病気で苦しんでいる人をまだ心臓の動いているあなたの家族が助けなければならないのか、
なぜ脳死になってしまった家族の身体に傷をつけたくないと思っているのか、
そのように考え進めていくと、
あなたが脳死について心の奥底でどう思っているのかがはっきりしてくるでしょう。
考えを深めるというのは、いろいろな物事の根本のところを突き詰めていくことです。
パッと思いついた最初の理由で満足してしまうのではなく、その理由の理由、
さらにその理由へとどんどんさかのぼっていってもらいたいのです。
このような考え方に慣れてくると、最初に思いついた理由というのは本当の理由ではなかった、
ということに気がつく場合も出てきます。
自分でもわかっていなかった自分の考えまで行き着くこと、それが考えを深めることなのです。
ついでにもうひとつのアドバイスも書いておきましょう。
A-3.深めていくと同時にいろいろなことへと発展させながら考えていきましょう。
そして、自分の立場からだけでなく、いろいろな人の立場に立って多角的に考えましょう。
先の例で言うならば、家族が脳死になったことを聞かれてただそれだけを考えるのでなく、
では自分が脳死になったらどうかも考えてみることです。
そうすると、けっこう多くの人が家族の場合は反対だけど、
自分が脳死になったら臓器移植してもいいと思っていたりするようです。
それにはそれなりの理由があるのでしょうが、
先ほどの理由とバッティングしないか考えてみる必要があります。
それから、脳死の場合だけではなく植物状態の場合にはどうかと考えてみるのもいいでしょう。
また皆さんはいずれ医療者になるわけですから、自分の場合、家族の場合と別に、
医療者の立場として、職場に臓器移植を待っている患者さんがいた場合にどう考えるか、
あるいは、自分もしくは自分の家族が臓器移植でないと助からないとしたらどうするか、
といったように様々な面から考えてみるようにするとどんどん深まっていきます。
人間というのは他の動物と同様、基本的には自己中心的な生き物ですが、
しかし人間には想像力が備わっていますから、
自分とは異なる立場に身を置いて考えてみることもできます。
そうやって多角的に考えることに慣れてくると、文章もたくさん書けるようになるでしょう。
あと4週間、こんなことに気をつけながら書く訓練、考える訓練を積んでみてください。
どこまで考えを深めることができたか、楽しみにレポートやテストを読ませていただきたいと思います。