まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

黒部の太陽

2012-08-06 02:04:22 | グローバル・エシックス
『黒部の太陽』 という映画が今、福島フォーラムで上映中です (8月10日まで)。
1968年に公開された44年前の映画です。
石原裕次郎・三船敏郎主演、石原プロ・三船プロ共同制作という、
当時においては夢のような巨大プロジェクトでした。
私はたぶん6歳、小学校に入ったか入らないかくらいだったと思います。
母親が映画公開前から驚喜していて、公開早々家族で見に行きました。
黒部ダムの建設を描いた映画と聞かされていましたが、
(当時私たちは黒部ダムではなく黒四ダム=くろよんダムと呼んでいました)
実際に見てみるとトンネル工事の話ばっかりで、これのどこがダム建設???と、
ちっちゃいまあちゃんの頭の中は疑問符だらけになったのでした。
しかも、ヒーローものが大好きな子どもに3時間を超える穴掘り映画を理解しろというのがムリで、
出水とかしてきて人がどんどん死んじゃって怖いし、
暗い画面ばっかりでひたすら眠気と戦っていた記憶しかありません。

この映画は裕次郎氏の遺言により 「映画館の大スクリーンで見てほしい」 とのことで、
これまでビデオ化、DVD化はされていなかったそうです。
で、裕次郎没後25周年を期して全国で上映されることになったそうです。
そして、来年にはDVD化されることも決まっているそうです。
とはいえせっかくの機会ですから、フォーラムでやってるうちに見に行こうかなあ?
まあ、夏休みの宿題の進捗次第ですね。
いずれにせよ、幼稚園児か小学校1年生のときにむりやり見させられたときの印象のまま、
この映画のことを評価・記憶してしまうのは酷な気がします。

ところで、今回の上映にあたって石原まき子さんは、
この映画が "敗戦後の焼け跡の中から文明を築いていく勇気の記録" として、
東日本大震災からの復興への一助となるのではと語ったそうです。
今回はチャリティ上映で、興行収入は被災者に義援金として寄付されるのだそうですから、
それはたしかにそうなる面もあるのだろうなあとは思うのですが、
福島県民としてはちょっと引っかかるものがないわけではありません。
私が小学校に入学した頃、
水力発電は資源もなく山地ばかりの日本にとって夢のエネルギー源だと教えられました。
そうやってあちこちにダムが建設されたわけですが、
あれからだいぶん経ってから、ダムによって川を堰き止めてしまい、
時によっては村落をまるごと水没させてしまうような強引なやりかたが、
自然環境にとっても人間の社会環境にとっても好ましくないということが判明してきました。
原子力発電に関しても同じようなことが喧伝され乱立されたあとに、
今回のような大事故が発生してしまったわけです。

この時期になぜ 『黒部の太陽』 のリバイバルなのか?
『黒部の太陽』 はもちろん関西電力の全面協力の下に作られた映画です。
ダム建設に携わった人々の苦闘や映画化にあたった人々の苦闘に関しては、
現在の政治的状況とは関わりなく興味がありますので、映画は見てみたいなあと思いますが、
「日本人の勇気と魂」 みたいにまったく無批判のまま一方的に美化されてしまうと、
ちょっと待ってくれよと言いたくなってしまいます。
この企画の裏にはきっと、あの大変な時期にみごとな選挙戦略で再選された、
政治家のお兄ちゃんがいるんだろうなあ。
ていうかそんな裏を穿ってみるまでもなく、今回のチャリティ上映の後援者として、
復興庁や経済産業省が名を連ねているので、やはり意図は明確なのでしょう。
見に行くにしても、そういうもんだと理解した上で見に行くことにしたいと思います。