まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

Q.哲学を学ぶのにオススメの映画は何ですか?

2009-07-15 17:00:43 | 哲学・倫理学ファック
活字は読みたくないので、とりあえず映画から入ってみようという魂胆ですか。
とてもいいと思います。
しかし、これに対する第一段階の答えはあまり皆さんのお気に召さないでしょう。

A-1.すべての映画がオススメです。

どんな映画も必ず哲学のテーマとつながっています。
ですからすべての映画がオススメです。
したがって、あなたの思考を活性化してくれて、
いろいろ考えたくなってしまうような映画を選んで見ればいいのだと思います。

とはいえ、これでは身も蓋もないですね。
もう少し限定してみましょう。
何でもいいから深く考えさえすれば哲学である、という先日の定義にしたがえば、
上記のような答えになるわけですが、
もう少し狭く、哲学者しか考えないような哲学固有のテーマについて、
考えるヒントをくれるような映画ということで、
少しだけ具体例を挙げてみましょう(今日もネタバレの可能性ありですのでご注意を)。

A-2.『マトリックス』はいいよ



みんなが当たり前と思っていることを根源的に問い直すのが哲学だとするならば、
私たちが生きているこの世界が実在するのかどうか、という問いは、
きわめて哲学的な問いだろうと思います。
私たちのまわりの外界、目の前にある机やパソコンなどは本当に実在するのか。
ただの夢や幻覚ではないと言い切れるのか。
普通の人はこんなことに悩んだりしませんが、
一度考え始めると、意外とこれを証明するのは難しいということがわかります。
デカルトやバークリーやカントといった哲学者たちが一所懸命取り組んだこの問題に、
哲学の素人をあっさり引き込んでくれたのが映画 『マトリックス』 でした。
私たちは今目の前に机やパソコンを見ているわけですが、
それはけっきょく脳の中で合成された視覚イメージにすぎないし、
机を触ってみたり、マウスを握ってみてそこにそれらがあると確信してるとしても、
その触覚や実在感すら、脳がそう感じているにすぎないのです。
だとしたら、脳のある部位に直接電気信号を与えたら、
実際に見たときと同様の視覚イメージや触覚を脳に感じさせ、
それらが実在していると信じ込ませることができるかもしれません。
そんな世界を描いてみせたのが『マトリックス』でした。
外界の存在証明というきわめて困難な哲学的問題について説明するときに、
最近では、黒板をバンバン叩きながら
「これもマトリックスで、ホントは実在しないかもしれないじゃん」と言えば、
たいがいの人が私が何を言いたいかわかってくれるようになったので、
そんな意味でも画期的な映画だったと思います。

A-3.『サマータイムマシン・ブルース』最高



時間とは何か、というのもきわめて哲学的な問題です。
実を言うと私は「悩んでもしょうがないことに悩まない」というモットーで生きているので、
先ほどの外界の存在証明の問題やこの時間の問題については、
あまり考えないようにしているのですが、
たまにSF映画とかを見るとそんな私でもちょっと思考が刺激されたりします。
タイムマシンによる時間旅行系の映画はいくらでもあるので、
鑑賞後しばらくは時間についても考えてみることになります。
大好きな映画は 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』 なんですが、
これはそこまで深く考えさせられるような映画ではありません。
でもとても面白いので、Part2Part3まで見ておいても損はないでしょう。
(ちなみに『マトリックス』の『リローデッド』と『レボリューションズ』は
 見なくてもいいかも)

オススメは本広克行監督、瑛太主演の『サマータイムマシン・ブルース』です。
この映画は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を踏まえて作られているので、
この映画を見る前に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』三部作を
ちゃんとチェックしておいたほうがいいでしょう (知らなくてもわかるけど)。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のような派手さはないんですが、
(というかむしろショボイぐらい)
でもむちゃくちゃ面白くて、しかもとてもよくできたお話です。
タイムマシンものでは「過去を変えたら大変なことになる」というのが
共通のお約束なわけですが (この映画も基本的にはそうです)、
最後の最後、その時間観に対して強烈なアンチテーゼが突きつけられます。
(たとえタイムマシンがあったとしても過去を変えることなんてできないのだ!)
うーん、よくできた話だ。
まあ哲学者は時間を語るときにタイムトラベルの話なんてまずしないので、
これが哲学的時間論だなんていうと怒られてしまうかもしれませんが、
時間について考えさせられてしまうという意味でオススメしたいと思います。

いずれも、ぜひ一度見てみて、いろいろと考えてみてください。
別の機会に別のテーマに関して、
また何かオススメの作品をご紹介することにいたしましょう。
ただし私はコメディやハリウッド大作くらいしか見ていないので、
まじめな深イイ映画は期待しないように。