がん(骨肉腫)闘病記

抗がん剤治療、放射線治療、人工関節置換手術、MRSA感染、身体障害者となっての生活の記録を残します。

『障害者雇用』の現状  “役に立つ実感”で成長

2010年01月13日 | Weblog
2010年01月12日 20時40分39秒掲載

TOKYO Web配信記事(URL http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20100101/CK2010010102000099.html  )



「◆日本社会事業大 佐藤 久夫教授に聞く



最近の民間企業の実雇用率の伸びには、さまざまな要因が考えられる。法定雇用率の未達成企業名が頻繁に公表されるようになったことに加えて、親会社の雇用率に算定されるため障害者を集中して採用できる特例子会社が増えたことなどが大きい。

 ただ、日本の障害者雇用の在り方には大きな課題がまだまだある。その一つが、法定雇用率制度のみに促進を依拠している点だ。1・8%という数字を示して雇用義務を課すだけでは、戦力というよりコンプライアンスの視点や納付金という“罰金”を逃れたいとの発想で障害者を雇ってしまう。

 能力には大して期待せず、数合わせのために採用する。「働く誇り」とは真っ向から対立する。賃金の高低よりも、自分が役に立っているという気持ちが人を成長させるし、能力も発揮できるはずだ。「期待していない。この仕事をやらせておけばよい」という人事管理では不満も出て職場の人間関係がこじれたり、やめてしまうこともあるだろう。

 また、雇用施策における障害の定義も問題だ。慢性疾患や発達障害のある人を除いており、他国より大幅に低い法定雇用率になっている。国際労働機関(ILO)も懸念を表明している。

 次に挙げられる課題は、障害者差別の禁止だろう。内閣府は二〇〇八年度、障害者団体の協力を得て、障害に基づく差別や嫌な経験に関するアンケートをした。そのうち、雇用・就業でも多くの人が差別を感じ、改善を望んでいた。

 知的障害者やその家族からは「昇給がない。最低賃金から除外され、四年勤めても時給三百五十円のまま」(二十代女性)、「命令しないで。分かりにくい説明はやめて。できないと決め付けないで」(四十代男性)、「面接だけでなく、仕事をできるか見てほしい」(二十代男性)といった声が寄せられた。〇六年に国連総会で採択された障害者権利条約の批准に向け、法整備と差別の定義規定を設ける必要がある。

 ただ、差別禁止のアプローチだけだと、働けない人は依然、働けない。障害の有無を重視した雇用率制度を進め、重度障害者にも雇用の道を開く必要がある。さらに、能力があるのに障害を理由にして採用を断るといった差別を禁止すれば、日本の障害者雇用はかなり改善するはずだ。

 民間企業が受け入れないため、障害者の労働力が授産施設などの「福祉的就労」に集中していることも問題視されている。彼らは一般労働者としてカウントされず、最低賃金や労災の補償もない。

 解決策として、企業と福祉の中間に位置する「保護雇用」という考え方を提案したい。労働能力が足りない分の賃金を国が補てんする方法で、欧州ではかなり進んでいる。総合すれば障害年金だけよりも多くなり、経済的にも心理的にも働く意欲を生み出す。

 日本の障害年金は働くか働かないかの二択しかない。年金は三~五割、足りない分を働いて補えるようにするなど選択肢を広げる。労働力は社会のためにも本人のためにも少しでも使った方がいい。

 障害者側は、現場をよく見て希望の仕事を考えることだ。興味よりも能力で判定する職業選択の考え方が根強いが「できるか、できないか」よりも「やりたいか、やりたくないか」で選んだ方が長続きする。

 社会や地域は障害者本人の意志を尊重し、彼ら自身が選んだ生活ができるような支援を提供していくことが大切だ。

 <さとう・ひさお> 1948年、群馬県生まれ。同県立高崎高校、東京大医学部保健学科卒、同大大学院医学系研究科保健学博士課程修了。研究と並行し、約70の団体が加盟する日本障害者協議会の理事として政策の分析や提言活動も推進している。



◆景気低迷が悪影響及ぼす



厚生労働省のまとめによると、二〇〇九年六月一日現在、全国の民間企業(従業員五十六人以上)で雇用している障害者は三十三万三千人(前年比2・2%増)で、うち知的障害者は五万七千人(同5・6%増)に上る。

 全体の雇用率1・63%(同0・04ポイント上昇)と法定雇用率達成企業の割合45・5%(同0・6ポイント上昇)はいずれも改善されたものの、中小企業の雇用率は低水準が続いている。百人以上三百人未満の規模では1・35%にとどまった。

 中小企業の伸び悩みについて、同省は「厳しい経済状況の中、障害者の分まで雇用を生み出すのは難しいのでは」と分析。障害者雇用促進法改正で、未達成企業から徴収する納付金の対象が一〇年七月から同二百一人以上、一五年四月から同百一人以上へと拡大することが決まっており、中小企業の雇用にも影響が出そうだ。

 また、同省の〇八年度障害者雇用実態調査結果によると、働く障害者のうち、正社員の割合は身体64・4%、知的37・3%、精神46・7%。月の平均賃金は身体二十五万四千円、知的十一万八千円、精神十二万九千円で、知的障害者の労働実態の厳しさが浮き彫りになっている。

 <法定雇用率> 障害者雇用促進法に基づく、常用労働者の数に対して障害者を雇用しなければならない割合。民間企業は1.8%、特殊法人、国、地方公共団体は2.1%、都道府県等の教育委員会は2.0%と定められている。重度の場合は1人で2人分カウントされる。未達成企業には雇い入れ計画の提出を求め、改善しない場合は企業名を公表する。従業員301人以上の企業からは納付金を徴収し、達成企業への調整金などに充てる。」

障害者:定義見直し 「社会の制約」考慮、あす初会合--政府

2010年01月13日 | Weblog
2010年01月11日 18時27分37秒掲載

毎日jp配信記事(URL http://mainichi.jp/life/health/news/20100111ddm003010173000c.html  )



「政府は、身体障害など「障害者」の定義の、抜本的な見直しに乗り出す。従来は個人の問題として心身の機能に注目する「医学モデル」だったが、社会参加を難しくしている社会の側の問題を重視し、必要な支援を把握する「社会モデル」への転換が狙い。「障がい者制度改革推進本部」(本部長・鳩山由紀夫首相)内に設置され、12日に初会合を開く「推進会議」で議論に入る。

 障害者については、障害者基本法で「身体障害、知的障害、精神障害があるため、日常生活または社会生活に制限を受ける者」と定める。さらに、身体障害者福祉法など障害ごとに福祉法令があり、それに基づき障害者自立支援法や障害者雇用促進法などが運用されてきた。例えば身体障害では、視覚や聴覚、肢体のほか、腎臓や心臓の障害、HIVは対象だが、多くの内臓や免疫系などの障害は対象外だ。

 しかし、対象外の人でも社会参加が難しい例は少なくない。見直しでは、障害者は「社会参加に支援やサービスが必要な人」との考え方を基に、経済状況や住環境などを踏まえて障害者として認定する定義のあり方を検討する。

 政府が07年に署名した国連障害者権利条約は障害者について、「障害のある人で、さまざまな障壁との相互作用で、平等に完全に参加するのを妨げられる」状態などととらえる。日本は条約を批准していないが、鳩山首相は昨年12月の改革推進本部設置の際、批准へ向け法整備を急ぐよう指示した。

 見直しは、障害福祉だけでなく雇用や教育など国内法全体に影響。推進会議メンバーで車椅子を使う尾上浩二・DPI日本会議事務局長は「障害を個人の問題でなく、移動や就労など参加を難しくしている社会の制約の面からみる。参加に必要な支援を促すもので、大きな転換となる」と指摘している。【野倉恵】」