2009年03月10日 08時33分記載
URL http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090309-OYT1T00721.htm
「岐阜県庁の裏金を巡る日本テレビ系の番組「真相報道バンキシャ!」の誤報問題で、岐阜県警は9日、番組内で虚偽の証言をしたとして同県中津川市駒場、元建設会社役員・蒲(がま)保広被告(58)(別の詐欺罪で起訴)を偽計業務妨害の疑いで逮捕した。
蒲被告は調べに対し、「謝礼が欲しくてやった」と容疑を認めているという。
発表によると、蒲被告は昨年11月中旬頃、日本テレビの関係者に「県の土木事務所では今も裏金作りをしている」「追加工事で裏金を捻出(ねんしゅつ)してくれと言われた」などと、うその証言を行い、収録した虚偽の内容を同月23日の番組で放送させた結果、県に11土木事務所の工事支出の一斉点検を行わせるなど、県の通常業務を妨害した疑い。
捜査関係者によると、蒲被告がインターネット上に開設された報道、情報機関向けの情報提供サイトに書き込みを行い、これをきっかけに問題の番組が制作されたという。
蒲被告は、過去にテレビ局の報道番組に匿名で出演し、不正などを告発する証言をしたことがあり、出演料や情報提供料として数千円から2万円程度を受け取ったことがあったという。今回、日本テレビ側とは謝礼についての交渉はしておらず、出演料も出ていなかったという。
日本テレビは今月1日の番組内で謝罪し、誤報の理由について「男性が証言を翻した」と釈明。県は男性を氏名不詳のまま偽計業務妨害容疑で県警に告訴していた。(2009年3月9日21時39分 読売新聞)」
本件については昨日も記載したが、蒲保広被疑者に岐阜県に対する業務妨害罪は成立するのだろうか。
報道されている内容が正しいとした場合、蒲保広被疑者の行為は、謝礼欲しさに架空の話を日テレ側の人間にしたということである。この行為が、日テレに対する詐欺や業務妨害にあたるというのであれば、まだ理解できなくもないが、この行為を岐阜県に対する業務妨害罪とするのは無理がないか。蒲保広被疑者に、岐阜県に対する業務妨害の故意があったと言えるのか。
次に、仮に蒲保広被疑者に岐阜県に対する業務妨害罪について未必の故意が認められるとしても、業務妨害についての原因行為と結果との間に日テレが介在することによって因果関係の中断があったと言えるのではないかとの疑問がわく。
日テレが、反対動機を形成する可能性のないただの「道具」であれば、因果関係に中断は生じないが、周知の通り、日テレは、蒲保広被疑者の発言の真偽を確認することができ、放送するかしないかは完全に日テレの自由である。このような第三者が介在しているのに、蒲保広被疑者の発言と岐阜県に対する業務妨害結果に因果関係ありと言えるのか。業務妨害結果は日テレの責任ではないのか。
おそらく、日テレには岐阜県に対する業務妨害についての故意は認められないと思うので、刑法上の業務妨害罪は成立しないと思うが、だからといって蒲保広被疑者に業務妨害罪が成立するわけではない。
本件は、刑事責任を問うのではなく、民事の損害賠償で対処すべき問題ではないか。(民事であれば、蒲保広被疑者及び日テレに賠償責任が認められるだろう。過失は認めらると思うので。)
どうも最近は、「あいつは悪い奴だから刑事罰だ。」みたいな風潮がはびこっていて、刑法の構成要件や因果関係を無視して国家刑罰権が発動されているようで心配である。
道徳的に「悪いこと」と刑事上の「犯罪」は全然別のものである。このことを再度確認しておきたい。
URL http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090309-OYT1T00721.htm
「岐阜県庁の裏金を巡る日本テレビ系の番組「真相報道バンキシャ!」の誤報問題で、岐阜県警は9日、番組内で虚偽の証言をしたとして同県中津川市駒場、元建設会社役員・蒲(がま)保広被告(58)(別の詐欺罪で起訴)を偽計業務妨害の疑いで逮捕した。
蒲被告は調べに対し、「謝礼が欲しくてやった」と容疑を認めているという。
発表によると、蒲被告は昨年11月中旬頃、日本テレビの関係者に「県の土木事務所では今も裏金作りをしている」「追加工事で裏金を捻出(ねんしゅつ)してくれと言われた」などと、うその証言を行い、収録した虚偽の内容を同月23日の番組で放送させた結果、県に11土木事務所の工事支出の一斉点検を行わせるなど、県の通常業務を妨害した疑い。
捜査関係者によると、蒲被告がインターネット上に開設された報道、情報機関向けの情報提供サイトに書き込みを行い、これをきっかけに問題の番組が制作されたという。
蒲被告は、過去にテレビ局の報道番組に匿名で出演し、不正などを告発する証言をしたことがあり、出演料や情報提供料として数千円から2万円程度を受け取ったことがあったという。今回、日本テレビ側とは謝礼についての交渉はしておらず、出演料も出ていなかったという。
日本テレビは今月1日の番組内で謝罪し、誤報の理由について「男性が証言を翻した」と釈明。県は男性を氏名不詳のまま偽計業務妨害容疑で県警に告訴していた。(2009年3月9日21時39分 読売新聞)」
本件については昨日も記載したが、蒲保広被疑者に岐阜県に対する業務妨害罪は成立するのだろうか。
報道されている内容が正しいとした場合、蒲保広被疑者の行為は、謝礼欲しさに架空の話を日テレ側の人間にしたということである。この行為が、日テレに対する詐欺や業務妨害にあたるというのであれば、まだ理解できなくもないが、この行為を岐阜県に対する業務妨害罪とするのは無理がないか。蒲保広被疑者に、岐阜県に対する業務妨害の故意があったと言えるのか。
次に、仮に蒲保広被疑者に岐阜県に対する業務妨害罪について未必の故意が認められるとしても、業務妨害についての原因行為と結果との間に日テレが介在することによって因果関係の中断があったと言えるのではないかとの疑問がわく。
日テレが、反対動機を形成する可能性のないただの「道具」であれば、因果関係に中断は生じないが、周知の通り、日テレは、蒲保広被疑者の発言の真偽を確認することができ、放送するかしないかは完全に日テレの自由である。このような第三者が介在しているのに、蒲保広被疑者の発言と岐阜県に対する業務妨害結果に因果関係ありと言えるのか。業務妨害結果は日テレの責任ではないのか。
おそらく、日テレには岐阜県に対する業務妨害についての故意は認められないと思うので、刑法上の業務妨害罪は成立しないと思うが、だからといって蒲保広被疑者に業務妨害罪が成立するわけではない。
本件は、刑事責任を問うのではなく、民事の損害賠償で対処すべき問題ではないか。(民事であれば、蒲保広被疑者及び日テレに賠償責任が認められるだろう。過失は認めらると思うので。)
どうも最近は、「あいつは悪い奴だから刑事罰だ。」みたいな風潮がはびこっていて、刑法の構成要件や因果関係を無視して国家刑罰権が発動されているようで心配である。
道徳的に「悪いこと」と刑事上の「犯罪」は全然別のものである。このことを再度確認しておきたい。