2009年03月01日 16時11分記載
アメブロブロガーであるHN明日天気さんのブログ「骨肉腫の息子☆明日天気☆時々ぼやき」(URL http://ameblo.jp/ashitawatenki/ )で私は初めてその存在を知ることになったのだが、アンスラサイクリン及びイホスファミド治療後に増悪を来した切除不能・転移性の軟部肉腫に効果が見込める薬剤として、掲題のトラベクテジン(海外販売名:Yondelis/一般名:trabectedin/治験成分記号:ET-743)がある。(なお、アンスラサイクリン系の抗がん剤で、骨肉腫患者に投与されるのは、アドリアマイシン(=アドリアシン=ADR)であり、イフォスファミドは、イフォマイド・IFOとも言う。)
もちろん、軟部肉腫と骨肉腫は細かな分類をすれば別のがんであるが、大まかな分類で言えば、同系統のがんであり、かつ、骨肉腫患者にとって、アドリアマイシンやイフォマイドを使い切ってしまった後に使える有効な抗がん剤が存在しない現状に鑑みれば、トラベクテジンに期待を寄せたいところである。(アドリアマイシンには、副作用として心筋毒性があり、投与量には上限がある。)
平成20 年1 月7 日の厚生労働省ワーキンググループ検討結果報告書にはこうある。(URL http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/01/dl/s0125-8b.pdf )
「現時点でkey drug であるアンスラサイクリン系薬剤、およびifosfamide の前治療歴を有する切除不能・転移性の軟部肉腫に対して、trabectedin は、第II 相試験の結果より、単剤での有効性が示唆される。また、主な有害事象は骨髄毒性と肝毒性であり、従来の抗がん剤と比較して有害事象への対応が大きく異なる可能性は少ないと思われるが、現段階では未だ確定的な評価ができるものではなく、今後のデータ発表等を注意深く見守ることが適当であると考える。」
確定的な評価ができるまで時間があれば、確定的な評価ができるまで待てばいいが、潤沢な待ち時間を持つがん患者は少ない。ましてや、進行が早い肉腫の患者には持ち時間は潤沢にはない。
また、肉腫患者は、罹患者数が圧倒的に少ないため、確定的な評価ができるほどのデータが集まるまで、気の遠くなるような時間がかかる。
私は当初、本記事を次の結論でまとめようと考えていた。
「上記検討結果報告書の結論に至る過程で紹介されている欧州の対応を見習って、疾患の希少性を踏まえ、アンスラサイクリン及びイホスファミド治療後に増悪を来した肉腫に対して、トラベクテジンを例外的に承認してはどうであろう。」と。
しかし、下段「参照URL」で示したサイトの内容を読んでみると、現時点で承認するというのはいささかリスキーであるように思われた。EUでトラベクテジンが条件付で承認された際の臨床試験では、小児は対象となっておらず、小児に投与した場合にどのような副作用が出るか予断を許さない。肝毒性は致命的結果を招きかねない。
ただ、そうは言っても、肉腫患者に残されている時間が潤沢にはないことは既に述べた通りである。
従って、本記事の結論としては、「トラベクテジンの開発に政府は支援を」ということにしたい。
これも既に述べたことだが、肉腫の患者数はかなり少ない。従って、臨床試験にも相当の時間がかかるし、民間の製薬会社が開発して、採算が取れる可能性も高くない。
そこで、他のオーファンドラッグ(orphan drug)と同様に、トラベクテジンの開発に政府は支援をしてもらいたい。
出来るだけ早急に。そして力強く。
[用語解説]
コンパッショネート・ユース:Compassionate Use、人道的使用
基本的に生命に関わる疾患や身体障害を引き起こすおそれのある疾患を有する患者の救済を目的として、代替療法がない等の限定的状況において未承認薬の使用を認める制度。アメリカ、ヨーロッパ(EU)などではすでに導入されており、日本では現在、実施のための検討が行われている。導入に際しては、現行の治験制度との兼ね合い、対象となる医薬品や患者の選定、未承認薬提供者の限定(製造販売業者、医師、その他)、未承認薬の安定供給の確保、安全性の確保(副作用報告の責務、副作用被害救済制度、感染症被害救済制度の対象の是非などを含む)などが課題となっている。
オーファンドラッグ:Orphan drug、希少疾病用医薬品
医療上の必要性は高いが、薬を必要とする患者数が少ない病気に使う医薬品のこと。
以下参照URL
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/01/txt/s0125-1.txt
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/dl/s0326-10m.pdf
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/10/dl/s1029-7h.pdf
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/01/dl/s0125-8o.pdf
アメブロブロガーであるHN明日天気さんのブログ「骨肉腫の息子☆明日天気☆時々ぼやき」(URL http://ameblo.jp/ashitawatenki/ )で私は初めてその存在を知ることになったのだが、アンスラサイクリン及びイホスファミド治療後に増悪を来した切除不能・転移性の軟部肉腫に効果が見込める薬剤として、掲題のトラベクテジン(海外販売名:Yondelis/一般名:trabectedin/治験成分記号:ET-743)がある。(なお、アンスラサイクリン系の抗がん剤で、骨肉腫患者に投与されるのは、アドリアマイシン(=アドリアシン=ADR)であり、イフォスファミドは、イフォマイド・IFOとも言う。)
もちろん、軟部肉腫と骨肉腫は細かな分類をすれば別のがんであるが、大まかな分類で言えば、同系統のがんであり、かつ、骨肉腫患者にとって、アドリアマイシンやイフォマイドを使い切ってしまった後に使える有効な抗がん剤が存在しない現状に鑑みれば、トラベクテジンに期待を寄せたいところである。(アドリアマイシンには、副作用として心筋毒性があり、投与量には上限がある。)
平成20 年1 月7 日の厚生労働省ワーキンググループ検討結果報告書にはこうある。(URL http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/01/dl/s0125-8b.pdf )
「現時点でkey drug であるアンスラサイクリン系薬剤、およびifosfamide の前治療歴を有する切除不能・転移性の軟部肉腫に対して、trabectedin は、第II 相試験の結果より、単剤での有効性が示唆される。また、主な有害事象は骨髄毒性と肝毒性であり、従来の抗がん剤と比較して有害事象への対応が大きく異なる可能性は少ないと思われるが、現段階では未だ確定的な評価ができるものではなく、今後のデータ発表等を注意深く見守ることが適当であると考える。」
確定的な評価ができるまで時間があれば、確定的な評価ができるまで待てばいいが、潤沢な待ち時間を持つがん患者は少ない。ましてや、進行が早い肉腫の患者には持ち時間は潤沢にはない。
また、肉腫患者は、罹患者数が圧倒的に少ないため、確定的な評価ができるほどのデータが集まるまで、気の遠くなるような時間がかかる。
私は当初、本記事を次の結論でまとめようと考えていた。
「上記検討結果報告書の結論に至る過程で紹介されている欧州の対応を見習って、疾患の希少性を踏まえ、アンスラサイクリン及びイホスファミド治療後に増悪を来した肉腫に対して、トラベクテジンを例外的に承認してはどうであろう。」と。
しかし、下段「参照URL」で示したサイトの内容を読んでみると、現時点で承認するというのはいささかリスキーであるように思われた。EUでトラベクテジンが条件付で承認された際の臨床試験では、小児は対象となっておらず、小児に投与した場合にどのような副作用が出るか予断を許さない。肝毒性は致命的結果を招きかねない。
ただ、そうは言っても、肉腫患者に残されている時間が潤沢にはないことは既に述べた通りである。
従って、本記事の結論としては、「トラベクテジンの開発に政府は支援を」ということにしたい。
これも既に述べたことだが、肉腫の患者数はかなり少ない。従って、臨床試験にも相当の時間がかかるし、民間の製薬会社が開発して、採算が取れる可能性も高くない。
そこで、他のオーファンドラッグ(orphan drug)と同様に、トラベクテジンの開発に政府は支援をしてもらいたい。
出来るだけ早急に。そして力強く。
[用語解説]
コンパッショネート・ユース:Compassionate Use、人道的使用
基本的に生命に関わる疾患や身体障害を引き起こすおそれのある疾患を有する患者の救済を目的として、代替療法がない等の限定的状況において未承認薬の使用を認める制度。アメリカ、ヨーロッパ(EU)などではすでに導入されており、日本では現在、実施のための検討が行われている。導入に際しては、現行の治験制度との兼ね合い、対象となる医薬品や患者の選定、未承認薬提供者の限定(製造販売業者、医師、その他)、未承認薬の安定供給の確保、安全性の確保(副作用報告の責務、副作用被害救済制度、感染症被害救済制度の対象の是非などを含む)などが課題となっている。
オーファンドラッグ:Orphan drug、希少疾病用医薬品
医療上の必要性は高いが、薬を必要とする患者数が少ない病気に使う医薬品のこと。
以下参照URL
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/01/txt/s0125-1.txt
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/dl/s0326-10m.pdf
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/10/dl/s1029-7h.pdf
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/01/dl/s0125-8o.pdf