新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

1月22日 その2 「ドナルド・トランプ氏の回顧」の補足

2024-01-22 15:16:27 | コラム
何故、ドナルド・トランプ氏はアメリカの支配階層に支持されなかったか:

この件については、トランプ大統領が候補者だった頃から「20年以上も勤務していたアメリカの大手企業の中では、先ず出会う事がない型の品位に欠けた企業社会の常識を知らない人物である」と言って批判し続けてきた。この点を補強する意味でも、嘗ての上司と同僚に加えて知人たちのドナルド・トランプ氏を嫌悪するとの弁も引用して伝えてきた。

さらに、アメリカの有名私立大学のビジネススクールの教員だった友人のYM氏が「彼の周辺にいる経済学者と知り合いの政治家たちの中には、トランプ氏の支持者などいない」と語っていた事も引用して、トランプ氏がそういう世界でどのように(低く)評価されているかも伝えてきた。このような言わばインサイダー情報は、余り我が国のマスコミが挙って採り上げるような性質ではなかったと思う。だが、歴とした事実である。

要するに「トランプ氏は知識階級やアッパーミドルクラスからは支持されておらず、人口から見れば圧倒的多数に近い非インテリ階層と労働者階級と恵まれざる少数民族等を支持基盤にしておられた」という事なのだ。私は1970年代前半に「アメリカの給与所得者で年俸が5万ドルを超えている者は全体の5%程度である」と教えられていた。故に、常に知識階級や高額な年俸を取っている層はアメリカ全体の精々5%だろうと言ってきたのだった。

ドナルド・トランプ氏はIvy Leagueの一校であるペンスルベイニア大学(University of Pennsylvania)の経済学部(Wharton school)の出身ではあるが、MBAは取得しておられない。という事は、歴としたアメリカの知識階級の方なのである。

それにも拘わらず、トランプ氏は大統領としての地位を固めていくのに伴って、本来の共和党の地盤であるインテリ階層ではなく、民主党の支持基盤だった労働者階層とそれ以下に向かって語りかけられるようになった、敢えて企業社会などでは絶対使う事を許されないswearwordの類いの下品な言葉遣いを厭わずに。私は「アメリカの大統領がそういう言葉を遣うとは、到底考えられない品位の欠如」とまで言って非難した。

だが、現実にはトランプ大統領の言葉遣いは労働者階級とそれ以下の層には受け入れられたのだった。何故かと言えば、今日までに繰り返して指摘してきた事で「トランプ氏の支持層には識字率に問題もあれば、英語を良く理解できていない者も多いのである」から、トランプ流のスピーチは彼らに良く通じたのだろう。アメリカの労働者階級には英語が解らない移民たちが当たり前のように属しているのだ。こういう現象は我が国では考えられないだろうと思うが、紛れもない事実だ。

しかも、南アメリカ等から流入した者たちは容易にアメリカでは正業に就けないのだ。2010年1月にLAのKorean townの(韓国)レストランでの経験では、ヒスパニックの者たちが雑役夫に雇われていて、客が食い残した残飯を賄い食として宛がわれていた。換言すれば、韓国人に雇用されて働き口を得ていたという事。これは譬え話であるが、そういう日の当たらない階層がトランプ氏の支持層になると言えば、解りやすいかと思う。

アメリカの人口は1990年頃から6~7千万人も増加していた。その増加分を支配階層やアッパーミドルクラスが占めている事などあり得ないだろうから、その増加分を占拠した連中がトランプ氏の支持基盤に加わっただろう事は、容易に推定できると思う。即ち、トランプ氏の支持層の人口は強化されても、減少する事は考え難いのではないか。

マスディアは「アメリカの二極化」と言い募る。だが、上層にいる人たちがトランプ氏支持派の対局を為す程数が多く、来るべき大統領選挙に影響を与えるとは、私には想像できない。昨日だったか、あるジャーナリストがリンドン・B・ジョンソン大統領(LBJとして知られていた)が1968年の選挙を前にして突如不出馬声明を出した例を挙げて「バイデン大統領にもその危険性があるのでは」と述べていたのは印象的だった。


ドナルド・トランプ大統領を回顧してみると

2024-01-22 07:44:14 | コラム
デサンテイス・フロリダ州知事の撤退で:

ドナルド・トランプ氏の当選が、これまでにも増して確実になったと見て間違いではあるまいと思う。先日も取り上げた事で「もしトラ」から早々と「もし」を取り除いても良いのかも知れない事態ではないのか。

私は2011年にカリフォルニア州で1週間程過ごしたのが最後のアメリカ行きだったので、トランプ大統領の下で変わってしまったアメリカの実態は、伝聞でしか語れない状態だ。でも、トランプ氏が立候補を表明した頃には泡沫扱いだった彼は、私が長年慣れ親しんだアメリカを私が知らなかったような国に変えてしまったと悲観的に捉えている。

そこで、トランプ氏が大統領の就任された前後に、彼をアメリカの元の上司や同僚たちと友人知己から教えられた事に基づいて批判していた諸々の事柄を回顧して、2025年2月からのアメリカどうなって行くかを気楽に想像してみようと思う。トランプ氏を見ると「途方もない人が出てきたようだ」と感心したと同時に寒心に堪えなかった。

ドナルド・トランプ氏について先ず驚かされた事は「無知は力なり」と失礼にも批判した「不動産業界やプロレスに関してはご存じでも、経済それも輸出入の業務は言うに及ばず、実情を全くご存じではなかった事」だった。もしかするとご存じだったのかも知れないが、アメリカに物を売り込んでいる中国、日本、東南アジアの諸国、南アメリカの国々が怪しからんのであると、あっけらかんと指弾されたのだった。

トランプ氏はアメリカという国は基本的に「輸出」に依存しないで、内需に大幅に頼っている実態を認識されているとは到底見えなかった。

だから南アメリカからの輸入には高率の関税委をかけるという政策を打ち出された。すると、当時の報道官は「これで南アメリカ諸国は高額な関税を支払う事になって、アメリカの財政が潤う」と記者会見で語って、関係者を慌てさせた。大統領は「日本は連日のように数百万台の乗用車を輸出して、アメリカの自動車産業を危うくするのを止めないと、禁輸にするぞ」と全く自動車産業界の内容と車の輸入の実態を知らないと告白しているような宣言をされたという具合だった。

トランプ大統領は習近平率いる中国に対しては強腰の姿勢で臨まれたのは宜しかったと思う。だが、その姿勢の表れで中国からの輸入品にも高率の関税をかける方針を打ち出され、中国との壮烈な貿易戦争を開始されたのだった。その関税の結果でアメリカの財政当局には連日のようにあった入金に喜ばれた「中国から資金が入ってきた」と解釈する発言をされて、側近を慌てさせた。

この強硬策はトランプ大統領の看板の方針である「アメリカファースト」の表れだと解釈できるので、それは結構なのだと思った。だが、関税とは自国の輸入業者か需要家が国庫に納付するものだと知らなかったのは「一寸宜しくないのでは」と言わずにはいられなかった。そういう欠陥があってもトランプ大統領は強気で「アメリカファースト」と「MAGA」の旗を高く掲げて、労働者階層以下の支持を我が物として揺らぐ事なき地盤を固めていった。

トランプ大統領は特に合法/非合法(密入国)を問わず、南アメリカから、それこそ毎日のように流入してくる者たちを嫌って、強制送還の挙に出られたし、メキシコとの国境に壁を建造する政策も推し進められた。その流入してくる移民たちが、アメリカの少数民族たちが属する階層の職を危うくするとして彼らの間での争い事が多かったので、既存の少数民族はトランプ氏の支持に回ったのだと見ていた。

トランプ大統領がその岩盤の支持層の連中の前で演説をする時には、敢えて彼らに分かりやすくまた共感を得られるようにと意図されたのだろうが、到底アメリカの大統領が使うとは思えない理知的ではない表現や、汚い言葉を使ってまでも語りかけておられた。彼の支持層になった階層は元はと言えば民主党の地盤だったのだが、トランプ氏はこういう手法で彼らを鮮やかに取り込んで行かれたのだと解釈していた。

あの選挙結果を覆そうとばかりに、トランプ氏の支持者たちが国会議事堂に乱入したのが、トランプ氏の意向だったかどうかなどは知る由もない。だが、彼の単純明快で解りやすい「MAGA」だとか「アメリカファースト」の標語は、彼の支持層の理解力に強烈に訴えかけたのだろうと見ている。全て内向きの事ばかりではあるが。

仮に、再登場される頃には国際情勢はあの頃とは比較しようがない程、複雑且つ難しく変化しているので、低層の支持者に気を遣っている暇などないと思う。喫緊の課題としてはウクライナ支援、イスラエル対ハマス=中近東対策、プーチン/金正恩連合、対中国政策、台湾問題等々目白押しである。MAGAの帽子をかぶって支持層に訴えかけているだけでは事が済まない時期になっているのでは。

そういう情勢下にあるとご承知で乗り出したのだろうから、準備万端整っているのだろうと察する以外にない。「貴方は世界史をキチンと勉強なさったのですか。キリスト教対イスラーム教対ユダヤ教の2千年の争い事を確かに把握しておられますか」などと質問されないように、宿題をこなしてこられたのだろうか。現在の世界情勢に直面しても、快刀乱麻を断つように収めてしまうような備えが出来ているのだろうか。