空想組曲 番外公演vol.1「女王の盲景」@シアター風姿花伝
脚本・演出 ほさかよう
出演 : 和田琢磨/鍛治本大樹/小玉久仁子/青木志穏/大門伍朗
小さな島に建つ一軒家。そこに盲目の少女が住んでいた。 主人とメイドは彼女を「女王様」と呼び、ここが彼女の治める王国のように振る舞っていた。 そこに使用人として雇われた神谷がやってきて、四人の奇妙な共同生活がはじまった。 だが、平和だった空想の王国は次第に綻びを見せはじめる・・・・。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
かじもとさん客演ということで観てきた。
1/11(土)13:30 下手の後方席にて。
最初に告白しておくと。たぶん私はこの物語を受けとれなかったと思う。
何より、あの女の子が秘密の語られた場面でそれほど特別な女の子に見えなかったのだ。
それでも、語るけど。
暗転後、最初に客席後方から登場する和田琢磨さんがかっこよくて、びっくりした。
この見栄えの良さはときめくね。ちょっと、ジャニーズのいくたとーまくんに似てる。
舞台にたどり着いて語る時に、なるべく多くの人と目を合わせようとしているのか
客席の一人一人と視線を合わせながら話してたような感じ。
この目があった感覚にしてやられる。
この物語は私の為に語られる物語と思える。
彼は受け取った手紙を不審に思いながらも島にやってきた青年。神谷ハイジ。
私にとって男性のハイジは三浦しをんさんの「風が強く吹いている」で胸を熱くした
清瀬灰二を連想させて、足が早いのはなんかそれ繋がりなのかなと思ったりしたのだけど
アルプスの少女ハイジ関連のあれこれは楽しかったです。
や。でも。知らないってあなた、それ嘘でしょって最初に思った。
子供の頃、からかわれてるはずだって思ったもの。
だからこれは知らないということで自分を守る嘘、と思ったり。
普通の青年の格好と執事姿。格好良くて素敵でした。
あの、エア着替えのぱんつ履いたりチャックあげたりなシーンて
ファンの方にどう見えるんだろうなどと思ってしまいました。
ハイジのニセ慶一郎より、昔の慶一郎姿の時の方が艶っぽかったように思う。
そして登場するだんな様。時任慶一郎役、大門伍朗さん。穏やかと不機嫌。
小さな切り取られた密な空間での瞬時に変わる主従関係
前に観た「眠れない羊」でも思ったけど。
旦那様と執事の力関係というか圧というか。
ほんの短いやり取りで
言葉と態度であっという間に組み伏せる力の見せ方がすごいなと思ったり。
理不尽でいて逆らえない絶対性みたいな圧力。
屋敷という密室の中で行われているいやらしい権力の横行みたいなもの。
これは彼のための物語。
次なる登場人物はロッテンマイヤーさんなコスブレっぽい草壁役の、小玉久仁子さん。
美人さんなのに面白くて、ちょっと元AKBのあきもとさやかちゃんに似てる。
女中頭だったり奥様だったりコックだったりもういろんな役を演じるのだけれど。
ここで演じ分けの時に女の子の右に立ったり左に走ったりするの。
芝居ならでは見せ方としてばたばたしてるのが面白いんだけど違和感があって。
目の見えない人が、こんなに身近で人が動いて気付かないわけがないと思ってしまって。
だから、目の見えないあの女の子は見えない訳じゃなく、
嘘に気付かない振りをしているのかなと思って観てた。
その、目の見えない女の子。ほのか役。青木志穏ちゃん。
小さい人だったので子供なのかと思っていたら1994年生まれということははたち?
大人の女性だったのですね。
彼女が特別に見えなかったというか、
彼女を特別に扱う慶一郎の心情が納得出来なかったとも言えるか。
椅子に座って眠りに落ちる姿の時は特別な女の子に見えたんだけど
途中から普通の女の子に見えてた。それでいいかなと思ったのだ。
好きな男の子のそばにずっといたがる普通の女の子。
とはいえ、年老いた慶一郎の手に悲鳴を上げる残酷さ。
かつて彼女の慶一郎だった旦那様の用意した男ハイジを慶一郎と信じ込む無邪気さ
彼女は慶一郎の差し出したどんな嘘もたちまちのうちに信じて嬉しそうに頷く。
そのくせ、飛んでるものを慶一郎が言った鳥でなく
本と言ったりして自分で物語を作っていく強情さもある。
場を主導する力というか。
その本というか、日記がもたらす
彼女が年老いた慶一郎と同じ年という事実にあまり驚くことが出来ず
かじもんの医者とハイジがここへ流れてきた理由が予想の範囲内で
これ彼女の目が見えなくなった理由はっきり明かさないんだったら
この辺も曖昧で想像に任せるくらいでよかったんじゃ…と思ってしまったり
でも、理由を語る時の3人で入れ替わり立ち替わりの構図は面白かったけど。
最後に揺り椅子の無くなった部屋の向こうの何もない景色を前に立つ二人の背中を見た時に
これが彼女の目に映る世界なんじゃないかなと思ったりして。
完全な暗闇でなく、骨組みは見えているのに
その中身を見ようとしていない。もしくは空白であることを知っている。
だから彼女は嘘を信じていたのでなく、彼女のまわりの全員が嘘を付いていることを
わかってて騙されているという嘘を演じていたのかなと。
なので慶一郎の嘘が破綻しそうになったり、彼が嘘を諦めようとした時に
拒絶したり、求めたりして嘘を持続させたのかなと。
彼女のことを大事に語る慶一郎の方こそ目隠しの布を捲いているようだったな、と。
慶一郎がもう嘘を付けない、このままだと病気で死んでしまうなら
その嘘を昇華させようと一緒に死ぬことにしたのかなとか。
なんかぐるぐる考えてみたけど。うーん。全然的外れな方へ流れてしまった感じだ。
そうだ。最初はその暗闇に吸い込まれてしまうようだと思ったのだった。
それと。冒頭の風もないのに揺れる揺り椅子。
ちょっとホラー。ウーマンインブラックを思い出してしまった。
でも。見終えて振り返ってみると不思議に懐かしいような気がする。
かじもとさんの演じる高遠というお医者さんについて。
なにもかも諦めたような表情が印象的で。
コミカルに語るほど悲しい感じ←滑ってるって意味じゃないよ。
彼の持つ何かから逃げてきた雰囲気が明るいほど悲しいって感じ。
UターンとIターンはご本人のネタなんだろうか。あれ。誰にも真似出来ないと思う。
あれ思いだし笑いでしばらくにやにやできる。
彼の言葉の中で不思議に思ったのは、どうして「水」でなく「お湯」なのか。
最後に慶一郎が具合悪くて倒れた時に抱きかかえながらハイジに
「水」を持ってくるようにと言った後「お湯」と言い直す。
そのお湯を持ってきたハイジが誤って草壁に掛けてしまう場面で
彼女は「熱い」と言ってソファに倒れ込む。そのダメージ。
これは水でなくお湯だからこその痛み。動けなくなるほどの驚き。
このシーンがとても意地が悪いなと思って見てた。
水なら彼女は驚いただけで立ち尽くすぐらいだったんじゃないかなと思うのだけど
倒れて動けなくなるほどの状態になる程熱いお湯だったのかと心配になった。
草壁がここにいる理由は痛々しくて悲しいもんだから
余計にひどく思う。
物語の前半に開けてはならない部屋が登場する。
彼女がいる部屋だ。
そして彼がいうのだ。物語には開けてはならない扉がある。
それは日記だったり箱だったりする。←うろ覚えだけど。
とてもきれいな場面だった。これから起こるであろう出来事を連想させる不吉な言葉。
そして彼女のいる部屋のドレープがかかった天蓋のちいさなお部屋がまたきれいだった。
りんごの夢を共有したり、回想シーンの慶一郎を演じたり。
ひょっとしてハイジが慶一郎を受け継ぐことが出来たら
彼女の王国は続いていたのかもしれないな。
最後に彼が語る。物語の登場人物達の行方を
その時の暗闇の長さ。
暗転のようでいていつまでも暗く、更に目がなれない不安になる暗さ。
語り終えて真ん中にたたずむ姿を見せてまた暗転、幕。
というのもきれいだったな。
終演後舞台に近寄って見てみた。
まき散らされた日記のひとつひとつ。裏返っているものもあったけど
たぶん全てに彼女のことが綴って合ったのだろうな。
私が目にしたいくつかは
熱が出た彼女を心配している慶一郎だったり
どうにかしようとしている慶一郎だったり。
やっぱりこれは彼の物語。彼女は彼の為だけにあの姿で存在していたのだ。
慶一郎がいなくなる時に彼女も元の姿に戻って息絶えたのかな。
それともこうして語られたことにより、
慶一郎も彼女もまだどこかの誰かの妄想の中に生き続けていくのかも。
まぁ。ぐだぐだと書いてしまいました。
わからないということは、どういうことだったのかなと考えるということだ。
そういえば、草薙の下の名前ってなんだったんだろう。
帰り道駅に向う途中で見つけた。
……つい。
脚本・演出 ほさかよう
出演 : 和田琢磨/鍛治本大樹/小玉久仁子/青木志穏/大門伍朗
小さな島に建つ一軒家。そこに盲目の少女が住んでいた。 主人とメイドは彼女を「女王様」と呼び、ここが彼女の治める王国のように振る舞っていた。 そこに使用人として雇われた神谷がやってきて、四人の奇妙な共同生活がはじまった。 だが、平和だった空想の王国は次第に綻びを見せはじめる・・・・。
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かじもとさん客演ということで観てきた。
1/11(土)13:30 下手の後方席にて。
最初に告白しておくと。たぶん私はこの物語を受けとれなかったと思う。
何より、あの女の子が秘密の語られた場面でそれほど特別な女の子に見えなかったのだ。
それでも、語るけど。
暗転後、最初に客席後方から登場する和田琢磨さんがかっこよくて、びっくりした。
この見栄えの良さはときめくね。ちょっと、ジャニーズのいくたとーまくんに似てる。
舞台にたどり着いて語る時に、なるべく多くの人と目を合わせようとしているのか
客席の一人一人と視線を合わせながら話してたような感じ。
この目があった感覚にしてやられる。
この物語は私の為に語られる物語と思える。
彼は受け取った手紙を不審に思いながらも島にやってきた青年。神谷ハイジ。
私にとって男性のハイジは三浦しをんさんの「風が強く吹いている」で胸を熱くした
清瀬灰二を連想させて、足が早いのはなんかそれ繋がりなのかなと思ったりしたのだけど
アルプスの少女ハイジ関連のあれこれは楽しかったです。
や。でも。知らないってあなた、それ嘘でしょって最初に思った。
子供の頃、からかわれてるはずだって思ったもの。
だからこれは知らないということで自分を守る嘘、と思ったり。
普通の青年の格好と執事姿。格好良くて素敵でした。
あの、エア着替えのぱんつ履いたりチャックあげたりなシーンて
ファンの方にどう見えるんだろうなどと思ってしまいました。
ハイジのニセ慶一郎より、昔の慶一郎姿の時の方が艶っぽかったように思う。
そして登場するだんな様。時任慶一郎役、大門伍朗さん。穏やかと不機嫌。
小さな切り取られた密な空間での瞬時に変わる主従関係
前に観た「眠れない羊」でも思ったけど。
旦那様と執事の力関係というか圧というか。
ほんの短いやり取りで
言葉と態度であっという間に組み伏せる力の見せ方がすごいなと思ったり。
理不尽でいて逆らえない絶対性みたいな圧力。
屋敷という密室の中で行われているいやらしい権力の横行みたいなもの。
これは彼のための物語。
次なる登場人物はロッテンマイヤーさんなコスブレっぽい草壁役の、小玉久仁子さん。
美人さんなのに面白くて、ちょっと元AKBのあきもとさやかちゃんに似てる。
女中頭だったり奥様だったりコックだったりもういろんな役を演じるのだけれど。
ここで演じ分けの時に女の子の右に立ったり左に走ったりするの。
芝居ならでは見せ方としてばたばたしてるのが面白いんだけど違和感があって。
目の見えない人が、こんなに身近で人が動いて気付かないわけがないと思ってしまって。
だから、目の見えないあの女の子は見えない訳じゃなく、
嘘に気付かない振りをしているのかなと思って観てた。
その、目の見えない女の子。ほのか役。青木志穏ちゃん。
小さい人だったので子供なのかと思っていたら1994年生まれということははたち?
大人の女性だったのですね。
彼女が特別に見えなかったというか、
彼女を特別に扱う慶一郎の心情が納得出来なかったとも言えるか。
椅子に座って眠りに落ちる姿の時は特別な女の子に見えたんだけど
途中から普通の女の子に見えてた。それでいいかなと思ったのだ。
好きな男の子のそばにずっといたがる普通の女の子。
とはいえ、年老いた慶一郎の手に悲鳴を上げる残酷さ。
かつて彼女の慶一郎だった旦那様の用意した男ハイジを慶一郎と信じ込む無邪気さ
彼女は慶一郎の差し出したどんな嘘もたちまちのうちに信じて嬉しそうに頷く。
そのくせ、飛んでるものを慶一郎が言った鳥でなく
本と言ったりして自分で物語を作っていく強情さもある。
場を主導する力というか。
その本というか、日記がもたらす
彼女が年老いた慶一郎と同じ年という事実にあまり驚くことが出来ず
かじもんの医者とハイジがここへ流れてきた理由が予想の範囲内で
これ彼女の目が見えなくなった理由はっきり明かさないんだったら
この辺も曖昧で想像に任せるくらいでよかったんじゃ…と思ってしまったり
でも、理由を語る時の3人で入れ替わり立ち替わりの構図は面白かったけど。
最後に揺り椅子の無くなった部屋の向こうの何もない景色を前に立つ二人の背中を見た時に
これが彼女の目に映る世界なんじゃないかなと思ったりして。
完全な暗闇でなく、骨組みは見えているのに
その中身を見ようとしていない。もしくは空白であることを知っている。
だから彼女は嘘を信じていたのでなく、彼女のまわりの全員が嘘を付いていることを
わかってて騙されているという嘘を演じていたのかなと。
なので慶一郎の嘘が破綻しそうになったり、彼が嘘を諦めようとした時に
拒絶したり、求めたりして嘘を持続させたのかなと。
彼女のことを大事に語る慶一郎の方こそ目隠しの布を捲いているようだったな、と。
慶一郎がもう嘘を付けない、このままだと病気で死んでしまうなら
その嘘を昇華させようと一緒に死ぬことにしたのかなとか。
なんかぐるぐる考えてみたけど。うーん。全然的外れな方へ流れてしまった感じだ。
そうだ。最初はその暗闇に吸い込まれてしまうようだと思ったのだった。
それと。冒頭の風もないのに揺れる揺り椅子。
ちょっとホラー。ウーマンインブラックを思い出してしまった。
でも。見終えて振り返ってみると不思議に懐かしいような気がする。
かじもとさんの演じる高遠というお医者さんについて。
なにもかも諦めたような表情が印象的で。
コミカルに語るほど悲しい感じ←滑ってるって意味じゃないよ。
彼の持つ何かから逃げてきた雰囲気が明るいほど悲しいって感じ。
UターンとIターンはご本人のネタなんだろうか。あれ。誰にも真似出来ないと思う。
あれ思いだし笑いでしばらくにやにやできる。
彼の言葉の中で不思議に思ったのは、どうして「水」でなく「お湯」なのか。
最後に慶一郎が具合悪くて倒れた時に抱きかかえながらハイジに
「水」を持ってくるようにと言った後「お湯」と言い直す。
そのお湯を持ってきたハイジが誤って草壁に掛けてしまう場面で
彼女は「熱い」と言ってソファに倒れ込む。そのダメージ。
これは水でなくお湯だからこその痛み。動けなくなるほどの驚き。
このシーンがとても意地が悪いなと思って見てた。
水なら彼女は驚いただけで立ち尽くすぐらいだったんじゃないかなと思うのだけど
倒れて動けなくなるほどの状態になる程熱いお湯だったのかと心配になった。
草壁がここにいる理由は痛々しくて悲しいもんだから
余計にひどく思う。
物語の前半に開けてはならない部屋が登場する。
彼女がいる部屋だ。
そして彼がいうのだ。物語には開けてはならない扉がある。
それは日記だったり箱だったりする。←うろ覚えだけど。
とてもきれいな場面だった。これから起こるであろう出来事を連想させる不吉な言葉。
そして彼女のいる部屋のドレープがかかった天蓋のちいさなお部屋がまたきれいだった。
りんごの夢を共有したり、回想シーンの慶一郎を演じたり。
ひょっとしてハイジが慶一郎を受け継ぐことが出来たら
彼女の王国は続いていたのかもしれないな。
最後に彼が語る。物語の登場人物達の行方を
その時の暗闇の長さ。
暗転のようでいていつまでも暗く、更に目がなれない不安になる暗さ。
語り終えて真ん中にたたずむ姿を見せてまた暗転、幕。
というのもきれいだったな。
終演後舞台に近寄って見てみた。
まき散らされた日記のひとつひとつ。裏返っているものもあったけど
たぶん全てに彼女のことが綴って合ったのだろうな。
私が目にしたいくつかは
熱が出た彼女を心配している慶一郎だったり
どうにかしようとしている慶一郎だったり。
やっぱりこれは彼の物語。彼女は彼の為だけにあの姿で存在していたのだ。
慶一郎がいなくなる時に彼女も元の姿に戻って息絶えたのかな。
それともこうして語られたことにより、
慶一郎も彼女もまだどこかの誰かの妄想の中に生き続けていくのかも。
まぁ。ぐだぐだと書いてしまいました。
わからないということは、どういうことだったのかなと考えるということだ。
そういえば、草薙の下の名前ってなんだったんだろう。
帰り道駅に向う途中で見つけた。
……つい。