タイトルだけだと違うことのようだわ。(笑)
「アスファルト・キス」の余韻つらつら。
ラストの上手前方で見たのが面白い位置で
とても端っこだったのですが、
とても舞台に近くて、
アランディールに向けて発せられた言葉を
自分に向けられた言葉のように受け止められた気がするのだ。
とてもつよく、とてもいたかった。
門の音に振り向くところが好きだった。
張り詰めた緊張、気配に敏感になりすぎてて
臆病で、弱気だ。
あの時の、高い、キィーという音。
暗く嫌なものが音もなくすぐ近くまで来ているような錯覚。
来て、いたのかも知れないけれど。
この人は本当に優しい人だったのかも知れない。
本当はずっと、妹が自分を好きなことに気付いていたのかも知れない。
けれども、応えられないから。
やわらかく、やさしく、拒絶し続けていたのかも知れない。
あきらめてくれるように、接し続けていたのかも知れない。
拒絶し過ぎないよう、刺激してしまわないよう。
そう思うと、カギを開けていたのは姉なのかも知れないなと思ったのだ。
いつまでも変わらない妹の気持ちに焦れて
はっきりと拒絶しない夫を疑ってしまいそうで
いつまでたっても均衡の崩れない三角関係に疲れて。
前半の彼女の妙にはしゃいで押しつけがましい愛らしさは
そういう気持ちの表れなのかな。
そう思うと、ステージ上の三角は人間関係なのかな。
仕掛けられた妹は、裸を見られて、彼の表情を見て
それでも、応えてもらえないことを悟ったのだろう、
諦めて出て行くことにしたのに。
あんな顛末に。
彼の罪滅ぼしは、妹に欲情したことでなく、
応えられずにいることじゃないかなと思ったのだ。
だから、路上で倒れたその人がキスを求めてきた時に
応えることにしたのだ。
最期だから。
その人の最期の望みだったから。
最期の表情をいちばん近くでみたのは、彼だ。
だから、うつくしことだった思うと彼が言うなら
たぶん、轢かれた男は幸せに死んでいったのだと思う。
よいことをしたのだと思うよ。
どこで、間違えたのかな。
警察になんか行かなきゃよかったのに。
帰宅して妻と妹に話して聞かせて、終わればよかったのに。
新聞記者がいて、カメラマンがいた。
そして、何より、父がいた。
いくつもの嘘と、たくさんの愛があった。
赤い傘の女は、愛の象徴ならば、父の愛だと思うのだ。
ゆがんではいたけれど、
少しの嘘と止まらない回り出した歯車と
人々の口に乗せられた噂のスピードによって
ねじれにねじれたけれど
やわらかい愛情だったなと思ったのだ。
彼がどこまでも落ちていく、追い詰められていくのを
受け止めることは出来ない。
娘達のように一緒に死んで上げることも出来ない。
だから、ころしてあげたのかな。
彼が妻と死んだのならそれでもよかった。
妹が彼と死ねたならそれでもよかった。
でも、どちらも適わなかった。
一人でどこにも行けない彼をころしてあげた。
憎まれてもよかったのだ。
名前を呼んで触れることが出来た。
アランディールに眠りを与えてあげることが出来た。
そんな風に思ったりもした。
ジャケットを脱いで、座り込み、話せと言う時の父の
どうしようもないかわいらしさと
彼を抱きしめた時のどうしようもないせつなさを
愛しいと思う。
幾度となく、彼らの背中にぱかりと訪れる落胆。
諦めと絶望。何度も何度も悲しみがやってくる。
妻を待つアランディールが
妻を思うシーンは
やっぱり初めての夜のシーンなのかな。
あんなに明るく楽しそうで
むっちゃセクシーでせまってて、
表情が色っぽくて、きゅーんとするのだが
ものすごく、曲が悲しくて胸が苦しい。
あんなに好きで好きで大好きでってなってるのに。
すごくかなしくて苦しい。
アランディールが夢の中で会いたい人に会えるとよいなと思う。
彼の安らぎは妻だろうな。
愛してるのだろうな。
ジャケット脱がせるとこのいちゃいちゃかわいかったな。
娘にビタミンだというとこの父の愛情がたまらなく好きでかなしい。
雷にうたれたような衝撃だったのだろうな、あのキスは。
父の登場は一番最初に、影が家の中に入ってくるようだった。
乾杯のシーンは、誰かがハッピーに過ごす横で
誰かがとても不幸になっている。
その不平等さかなー。
会社のシーンで、ちっちゃい人いちばんエライのツボだったな。
けんか、仕切ってたように思うのですが。
そして身体のバネすごくてびっくりした。
それから、上手端っこから見たせいで見えた。
畑中さんの働き。なんか机に乗っけて椅子出ししてたな。
この舞台を
雨のように、思い出せたらいいな。
赤い傘を見たらジュディーティを思い出して
彼女が最後に彼に差し出した赤い傘を思おう。
他の傘の人も何かの象徴だったのだろうな。
やっぱり傘のこと質問したらよかったって今頃思う。うまくいかない。
でも、わからなくてもいいのかもしれない。
わからないうちは、わかりたいと思って考えているだろうから。
そして、今気付いたけど
轢かれた男を演じられた近藤さん
パンフのお名前字が違ってたのね。
樹→輝ですね。
それから、パンフ見て父の名前を初めて知った。
誰も彼の名前を呼ばないのね。
妻が電話持ってぐるぐるしながら、きっとこれ近所の人よって
言うところが悲しくて仕方なかった。
ラストステージは誰が嘘を付いているか
何が本当でこれは何かとかもたくさん考えながら見たけど。
たぶん、そこにいる彼ら彼女達がただただ悲劇に飲み込まれていくのが
かなしくてこわくてくるしかったように、思う。
ワンツーワークスさんのメール読み返したりして、まだまだひたひた思い返してます。
本当にうつくしい舞台でした。
追記。
妹が隣の人に文句言ってやったわ。っていうところの
アランディール。
そんなやさしく笑い返したりしたら
諦められなくなるじゃないのよって、思うかわいさだったわ。