湯の字にっき

日々の日記をつらつらと綴っております

「彼」と「彼女」の話のこと。

2016-08-21 | キャラメルボックス辺りのこと
さてと。物語についていくつか。
「彼は波の音がする」「彼女は雨の音がする」
こんがらがりそうなタイトルではありましたが
舞台を観てみると、なるほどなタイトルではございました。
正直なことを申せば、物語として、どう、だったんでしょうね。
個人的に前半はちゃんとみられる心理状態ではなかったので
ちゃんと舞台を見たなと自分で思えるのは
後半の3回だけなんですけれども、感想書きます。

えー。これを新作として初見の方は
素直に物語を受け止められたかもしれませんが
わたくしは個人的に「グッドナイト将軍」が大好きで
再演を熱烈に希望しておりましたので、初見はかなり不満でございました。
温井さんの巴御前と、畑中さんの服部の同期の微妙な関係が見たかった。
(今回の彼の話にも彼女の話にも登場しない)
貴ちゃんのわたると、筒井さんの杉山でラストシーンにときめきたかった。
(今回は男女逆でした)
そうなんだよ。グッドナイト将軍を期待していた身としては
「彼女」のあのラストでは、天使の奇跡がひとさじ足りないんだよー。
最後の最後に思いだした、わたる役の大森さんが
杉山役の上川さんに話しかけるとこ大好きだったんだよー。
畑中さんの新宮にも、ホントはちゃんと思いだして欲しかった、
そこにいるのは新しい彼だけども、
過去と現在と未来を繋げて欲しかった。
たぶん、この先あの二人は恋をするだろうし
彼の記憶を何度か新宮さんがかすめるだろうし、
若菜ちゃんは彼の中に彼を探すだろうし、
なんというか、
清水玲子さんの「ノアの宇宙船」思いだしました。
過程は違うけど、ラストに感じる
そこにいるのに、目の前にいるのに、違うひとで同じ人のあのもどかしさ。
まぁ、今となってはそのじれったさも、よいのかなーとも思うけど。
というか、天使が重そうに階段上って行く姿と、
大きく大きく手を振る姿でいいかなと思えた。

今回の話でいちばん不幸なのは夏目さんじゃないのと思うのですが。
畑中さん演じる新宮と同じ年で、神様のお決めになった寿命とはいえ
心残りもたくさんあるだろうに、さらに新宮さんのっとりオッケーてことは、
この先彼の中身が入れ替わってもたいした支障はないと烙印押されたようなもんじゃないすか。
彼の人生なんだったのかしらー。とせつない気持ちになりました。
だって彼のまわりの人達は、彼がしんだこと気付かないままなのよ。
誰にも弔ってもらえずいなくなるなんて、すごくさびしいかなしいコトの気がする。

逆に新宮さんにのっとられてよかったなー思うのは仁一さんですね。
(のっとられたのは仁一さんの父ですけど)
おかげで2時間ドラマの犯人のようにならずに済みましたからね。
あれ、絶対「僕はなんてことを…」な展開だよ。
というか、あっさりつかまったことでしょーよ。あの穴だらけの犯行。
自白早いし。ホントに事件起きてたら妻はどうしたのかしら。
あの二人、見合いなのかしら恋愛?
父が式に出席しない言うくらいだから恋愛かと思ったりしたけど
でも仁一さんにあんな素敵な女性見つける気概があったのかしら
優花さまの猛烈アタックで落とされたのかしら。
ありかもしれない。

優花さま素敵過ぎてな。
庭で芝居の練習している父(中身は新宮さん)に向かって
役名ちゃんと言えてないとか、人気ぴみょー言って去るとことか
父に対しての態度豹変し過ぎなんだけど、
あのキャラクターで全てオッケーなところがすごいわ。

彼と彼女の話はつっこみどころいろいろあるんだけど
それにまさる役者のパワーみたいなモノがあったなーと思ったりしてる。
物語を運ぶ役者さんがみんな生きてたなーと。
あと、畑中さんが今回よく書いてる全力感。あれかな。
全身全霊で芝居が好きで、大好きで。串本が好きで彼女が好きで。
出会ったばかりのアルさんも好きで、浦神家の人のことも大好きで。
だから仁一さんが犯人じゃないってなった時に、浮遊してる新宮さんも
夏目さんの中にいる新宮さんも良い顔するのかなって。
好きなコトのために全力で、その為に他の部分空っぽにしてるような感じがあって
その彼が浦さんの身体を出てもらうと言われた時に出すマイナスの感情。
ここ好きだったな。こことアルさんに記憶を消されて
真っ白というか空白になってるっぽいところの畑中さん。
ここの表情見てて、なんかこの人信じられるって思ったりした。変なの。

つづく。