製作地 タイ・イサーン地方南部 スリン
製作年代(推定) 20世紀前期
民族名 クメール系タイ人
素材/技法 絹(カンボウジュ種)、天然染料 / 綾地・緯絣
クラン(ラック)の赤、マジュ・カエの山吹(橙)を主染料とする”オレンジ掛かった朱赤”及び藍と黄を掛け合わせた”緑”を基調色に、菱格子と燭火状の花文が端整かつ力強く描き出された20世紀前期作の絹絣作品。上下に配された手の込んだ絵柄のボーダー文様を併せ、天然染色を駆使した独創的な色表現の美しさ、絣の完成度の高さに目と心を奪われる一枚です。
ラック赤と黄・藍を交えた巧みな色彩表現、綾地の織り、イサーン南部に生活するクメール系の人々が手掛けたマットミー古手作品の特徴を兼ね備えたもので、上質なカンボウジュ種の絹糸と天然染料の土地の素材を用いていた時代の貴重な残存作例となります。
本スリン作マットミーは、シャム(タイ)王国が嗜好した火焔花弁文”ライ・カノック(lai kanok)”の染織作品(とくにシャム向けインド更紗)を彷彿させる意匠の作品であり、作り手が仏教儀礼用の特別な腰衣を意図して手掛けたものと考察できます。
●参考画像 シャム王国向けインド更紗
※上画像は平凡社刊「別冊太陽 更紗」より転載いたしております