(写真 インド・グジャラート州 カッチ地方ブージにて)
製作地 パキスタン・スィンド州
製作年代(推定) 20世紀前期
この“ラリ”は、タール砂漠エリアに生活する遊牧民が、移動生活の中で掛け布、敷き布、人・動物の防寒用布など多目的で用いるために手掛ける伝統を有してきたものとなります。表はコットン色布のパッチワーク及びアップリケにより幾何学文様が描かれ、裏地には染め布やプリント布が配され、内部に古着や古布を挟み込んで刺し子状のキルティングが施されます。
パッチワークは遠目と近目でデザインが異なって見える、独自の視覚効果を与える技巧が加えられており、裏地に配された古手の茜染めの更紗とともに、見飽きることの無い表情の豊かさと生命感が感じられます。印パ分離独立前の時代に手掛けられた貴重な作例です。
製作地 インド北西部 グジャラート州若しくはラージャスタン州
製作年代(推定) 19世紀半ば~後半
素材/技法 経糸:絹、緯糸:木綿、天然染料 / 朱子織、経絣、経紋織
宗教上の理由により、動物性の糸(素材)が直接肌に触れることの無いよう、肌に触れる内面は木綿、外面は絹となるよう絹綿を朱子織で織ることを始めたのが、この”マシュルー(=許されるの意)”の起源と考えられております。
独特の滑らかさと光沢感を有する絹朱子織布の美しさは、本来の主旨とは別に、後世に世界中の人々を魅了し、17世紀頃、インド北西部は上質なマシュルー布の主産地となりました。
絹・木綿の素材感、天然染料の色味、織りの緻密さ、グレードの高さが保たれたのは20世紀初頭までであり、経絣(バンダ)を加えて織り上げた19世紀当時のマシュルーからは、得も言われぬ色香と気品が感じられます。
本品は経典(写本)のカバーとして装丁・保存されていた19世紀のマシュルー裂となります。