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製作地 日本 ※地域不詳
製作年代(推定) 19世紀 江戸時代
素材/技法 苧麻平糸(経緯とも)、天然染料、天然顔料 / 平地、筒描き、友禅染め
本品は麻の単衣としての着物(=帷子)で、経・緯に苧麻平糸が配された平織の布地が、薄い色味ながらも華やぎと暖かみのある”淡黄色(たんこうしょく)”で染められ、身頃・袖の全面に散りばめられるように様々な形姿の”鶴”と”松竹梅”模様が筒描きと友禅染めの技法により多彩に瑞々しく染め描かれたもの、振袖型の着物形状及び吉祥感溢れる色柄構成から、婚礼をひかえた若年女性の祝着として手掛けられたことが推察されます。
特筆すべきは、織り染めの元となる苧麻に極めて白く・透明感のある晒し糸(繊維)が用いられている点で、経・緯平糸の均質感及び織りの端整さ、布地の柔らかみ、さらには色染まりの美しさを併せ、特別上質な部類の”上布(じょうふ)”で仕立てられた祝着帷子となります。
組織の拡大画像で確認できる単繊維・経緯平糸の表情及び織り密度具合等から、江戸期に”麻の最上といふは南都なり...”とうたわれた「奈良晒」が使用されている可能性を指摘できます。
華美に堕さずひそやかな洗練・気品が感じられる筒描き&友禅染めで、ウコン染めと思われる”淡黄色”をはじめ、藍・ベンガラ等の天然染料・天然顔料を駆使して染め描いた”鶴松竹梅模様”の完成美が見事、合成(化学)染料・顔料の用いられない天然染色の時代の麻地・友禅として、織り・染めの意匠は調和が乱れず、着物全体から気品と格調の高さが薫ってまいります。
澄んだ空気感と清楚な色香を薫らせる作品の世界に深く惹き込まれる古の染織衣裳です。
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●参考画像 奈良晒 顕微鏡写真
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※上画像は平凡社刊「別冊太陽 日本の自然布」より転載いたしております