アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

古渡り”鋸歯模様・白地胡麻地染め分け手”更紗裂

2015-05-30 02:11:00 | 染織




製作地 インド南東部 コロマンデル海岸エリア  
製作年代(推定) 17-18世紀半ば
渡来地・使用地 インドネシア・スマトラ島 ランプン  
素材/技法 木綿、天然染料 / 手描・両面染め、明礬・鉄漿の媒染(茜)、描き染め(藍) 
裂サイズ 35cm×42cm















布端ではなく本体部分に”鋸歯模様”が配され、白地部分と密な地描き部分が染め分けとなったこのデザイン様式のインド更紗は、主にインドネシア・スマトラ島最南部の”ランプン”の王侯・貴族にもたらされたタイプのものであることが残存する作例により確認されております。

細く紡がれ密に織られた”上手”の木綿地が用いられ、布両面から高度な手描きの媒染が施され両面染めで仕上げられたもの、鋸歯模様により描かれるのは王侯・貴族礼拝用の菱状文”ドドット(dodot)”であることが多い点も本タイプの古渡りインド更紗の特徴として挙げることができます。

この”上手木綿””鋸歯模様染め分け””白地とゴマ地”の繊細かつ流麗な手描きの意匠は、江戸時代の大名・貴族・茶人にも愛玩され、名家伝来品や裂帖中にその姿を見出すことができます。

17~18c半ば、350~400年を遡る時代に手掛けられ、交易品として海を渡り王侯・貴族にもたらされた”Sacred Heirloom(聖なる伝世品)”としての古渡りインド更紗の薫り高き部分裂です。



●(参考画像)同種デザインのランプン向けインド更紗の布全形

製作年代 17-18世紀 サイズ 210cm×275cm

※上参考画像はnational gallery of australia刊「SARI TO SARONG」より転載いたしております

ママサ・トラジャの織物の村で

2015-05-29 00:19:00 | 旅の一場面





経紋織”サッカ”の布をひごの紋綜絖を操り、織り進めていく女性

ママサでは今もカード織”パラワ”とともに、経紋織”サッカ”と緯紋織”スンキ”の布を腰機により織り続けている。






少し古い時代に織られた経紋織”サッカ”の布で仕立てられた”キンマ入れ袋(セプ)”




(写真 インドネシア・スラウェシ島 ママサ・トラジャにて)

ママサ・トラジャのカード織帯

2015-05-28 06:26:00 | 染織



製作地 インドネシア・スラウェシ島 ママサ・トラジャ  
製作年代(推定) 20世紀初め
素材/技法 木綿 / カード織(ダブルフェイスト織、経捩織)

祝祭時のスカート(サロン)の裾に付される裾飾り帯。カード織帯はママサでは”パラワ”、サダンでは”カマンダン”と呼ばれる。”パラワ”はキンマ入れ袋の紐としても伝統的に用いられてきた。

数十のカード(タブレット)を駆使して複雑な文様が表現される、本品のような作品は今では失われし技術のもの、サダンのカード織は途絶えてしまったとされます。














●現在も織り続けられるママサ・トラジャのカード織帯(パラワ)

用いられているカード(タブレット)は16枚。カードはプラスティック製、糸はアクリル製。部屋内の梁や柱を用いて整経され腰機で織り進められる。








●パラワが紐として付されたキンマ入れ袋(セプ)






木造高床の家屋は昔ながら。街(ママサ)から村々への山道はおおむね未舗装。

(写真 インドネシア・スラウェシ島 ママサ・トラジャにて)