●糸巻き シルベ
製作地 朝鮮
製作年代(推定) 19世紀 李氏朝鮮時代
儒教が国教とされた李氏朝鮮時代、女性の社会活動には大きな制限が加えられましたが、その反面、「閨房工芸(キュバンコンエ)」の言葉に象徴されるように、女性たちの家庭内手芸においては顕著な発展が見られました。巧みな縫い刺しで意匠付けがされ、現在ひろく知られるポジャギ(風呂敷)やチュモニ(袋物)も、李朝時代の閨房工芸の中で伝統が培われたものとなります。
「閨房工芸」の中心は針仕事であり、針・糸・物差し・ハサミ・指貫等の裁縫道具は”閨中七友”と呼ばれ当時の女性にとって最も大切な生活調度品とされたもの、使用する糸が絡まないように巻きつけ整えておく、この”糸巻き(シルベ)”もそのひとつに数えられ、これ自体に手仕事による意匠の凝らされた品モノが用いられました。糸・糸巻きには吉祥・長寿等の祈りが込められます。
●書状入れ コビ
製作地 朝鮮
製作年代(推定) 19世紀 李氏朝鮮時代
この木製の書状入れ”考備(コビ)”は伝統家屋の韓屋(ハノク)において男性居間の舍廊房(サランバン)等の壁に掛けて使用される伝統を有してきた小家具・調度品となります。
儒教思想の浸透により、”男女七歳不同席”の言葉にも象徴されるように、社会生活・家庭生活における男女の別がはっきりと付けられましたが、この点は手工芸文化にも色濃く反映されました。
この時代の生活の光景や華美を廃し質朴を好んだ時代精神に思いを寄せながら作品を鑑賞することにも面白みが感じられるように思います。