アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

祭事装飾品に付されたサダン・トラジャのカード織帯

2016-03-14 00:20:00 | 装飾

●祭事装飾品”カンダウレ”(幟として使用)の先端に付されたカード織帯
(19世紀末~20世紀初め作)





(写真 インドネシア・スラウェシ島 タナ・トラジャの王族私設博物館にて)



●カンダウレに用いるために代々保存・継承されてきたカード織帯”カマンダン”裂
(19世紀末~20世紀初め作)



ビーズ・ワークによる意匠の凝らされた円錐形の組み物”カンダウレ(kandaure)”は、サダン・トラジャ人の祝祭儀礼(結婚式等)及び葬祭儀礼の双方で欠かすことのできない装飾品であり、古来より家族(氏族)に代々継承される宝物(聖布マアに準ずるもの)として扱われてきました。

個性的な形状に目を惹かれる”カンダウレ”ですが、個性的なのは外観のみでなく、これが柱の高いところに掲げ飾られる”幟”として、さらに祭事盛装女性の”肩掛け”として、二通りの方法でかつ天地を逆さにして用いられる点は独創的で、他に類を見ない特殊な装飾品と言えます。

この”カンダウレ”の先端には、サダン・トラジャ人自身の手によって製作されたカード織の文様帯”カマンダン(kamandang)”が付されるのが古くからの慣わしですが、現代作のカマンダンでは代替品として木綿の縞織物が付されたものを目にする場合があります(下写真参照)。

”カマンダン”は、20世紀初め頃には製作の伝統が失われており、サダン・トラジャ人の間でも、早々本物を用いることの出来ない貴重品となりつつある現代的な事情が伺われます。



●カード織帯を代替する縞布が付された現代物の”カンダウレ”(肩掛けとして使用)





(写真 インドネシア・スラウェシ島 タナ・トラジャにて)