製作地 インド中西部
製作年代(推定) 20世紀前期
民族名 バンジャーラ族 Banjara
素材/技法 木綿、絹 天然染料主体、一部化学染料 / クロスステッチ、ハーフクロスステッチ
サイズ 幅8cm、長さ79cm
バンジャーラ族はラージャスタンのタール砂漠を出自とし、牛車により塩や小麦を始めとする交易品を、広大なインド亜大陸(西部乾燥地帯)を移動しながらネットワークにより土地土地へと運び届ける陸路運送の役割を担ってきました。
ムガル帝国後期(オーランガゼブ治世)には牛車運搬役に編成され、部族によっては宮廷に仕える仕事も行ないましたが、帝国の没落と英国植民地下の鉄道の敷設等により徐々に職域を失い、現在ではインド中西部~南西部の各地に散らばりその多くは定住生活を行なっています。
本作品に見られる高度かつ洗練された染織・刺繍技術は、古い時代の移動生活の中で、他民族・他文化との交流のうちに培っていったものと考察されます。
天然の茜染めと藍染めの木綿織物、手引きの絹糸と手紡ぎの木綿糸... 素材遣いからも土地と時代に由来する濃密な色香が感じられる、バンジャーラ・アンティーク刺繍の逸品です。
(光学顕微鏡による画像)