アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

インド・ビハール ミティラー画

2017-03-24 00:14:00 | 絵画







製作地 インド・ビハール州 ミティラー地方(Mithila)
作者 バーティ・ダヤル(Bharti Dayal)
製作年 2000年
素材 紙、天然水彩絵の具

「ミティラー画(マドゥバニ・ペインティング)」は、インド・ビハール州北東部とネパール南東部にまたがって位置する”ミティラー地方”(マドゥバニは、主たる製作地の村々を擁するインド側にある街の名前)で、3千年にわたって母から娘へと継承されてきた伝統的民俗絵画です。

本来は家の泥土壁を彩色する”マッド・ウォール・ペインティング”として伝えられてきたモノであり(紙に描かれるようになったのは比較的近年)、農牧生活の豊穣・家族の幸せ等を神々に祈りながら描かれてきました。絵のモチーフは、神々や人・動物・太陽や月など自然と創造に関わるものが中心となります。

本画はミティラー画家の”バーティ・ダヤル”がビハールの牧歌的風景を描いたもので、彼女はこの絵を製作した2000年に「Bihar State Award」、2001年には「Millennium Award from All India Art and craft」を始めとする数多くの美術・伝統工芸賞を受賞したのち、2006年にインド政府から「National Award」を授与されました。






























●本記事内容に関する参考(推奨)文献
  

ラヴィ・ヴァルマー・プレス 20c初インド石版画

2017-03-12 12:27:00 | 絵画







製作地 インド マハーラーシュトラ州ロナウラ
製作年代(推定) 20世紀初め
素材/技法 紙製、厚紙(台紙)に貼られたもの / 多色刷り石版プリント
サイズ 二点ともほぼ同一 横幅:約26cm×縦:約37cm

現在インドで目にするヒンドゥの神々のカラフルかつポップな(大衆化された)イメージは、画家”ラージャー・ラヴィ・ヴァルマー”(1848-1906)が描いた宗教画と、その時代の印刷技術の向上・大量印刷の汎用化によるところが大きいと考察されています。

ラヴィ・ヴァルマーは神話の世界の神々を人間の姿で洋画の技術によりリアルに描き、英国植民地下のナショナリズムの高まりの中、これがインドの神々のヒロイズム像及びアイドル像として民衆に受容され、後世定着していくこととなります。

本ポスター画二点は、ラヴィ・ヴァルマーがドイツの石版印刷技術を導入し19世紀末に開いた石版印刷所”ラヴィ・ヴァルマー・プレス(RAVI-VARMA-PRESS)”が発行したもので、ボンベイからマハーラーシュトラ州ロナウラに印刷所が移された20世紀初めの作品です。

ラヴィ・ヴァルマー・プレス製作のこの種のプリント画は20世紀初めに大量生産されたものではありますが、第二次世界大戦とインド独立運動の混乱期に多くが失われ、残存するものは貴重な資料と言うことができます。インド・コロニアル時代の空気感と色香が薫る多色石版画です。





























20c初ラージプト絵画 コロニアル様式 二点

2017-03-08 07:01:00 | 絵画










製作様式 インド細密画 ラージプト絵画 (コロニアル様式)
製作年代(推定) 20世紀初め
素材 紙、顔料、ガラス入り額装
サイズ 二点ともほぼ同一 額全形:横24.5cm×縦30.0cm、画部分:横13.3cm×縦18.8cm

宮殿のテラスで憩う女性たちの姿が描かれたラージプト絵画の流れを汲む20世紀初め頃のインド細密画二点。音楽を絵画化する”ラーガ・マーラ(Raga Mala)=楽曲絵”的要素が垣間見られる作例で、絵が奏でる音と独自のロマンチシズムに惹き込まれます。

絵の筆致にはコロニアル様式(カンパニー派)及びラージャー・ラヴィ・ヴァルマーのバザールプリント(石版画)等の影響が色濃く感じられ、英国植民地時代末期から戦争・独立運動の時勢の退廃感が薫ってくるようにも思われます。








































●本記事内容に関する参考(推奨)文献
 

18cラージプト絵画 メワール派「神話の場面」

2017-03-02 00:13:00 | 絵画




製作地 インド メワール王国(現ラージャスタン州ウダイプール)
製作年代(推定) 18世紀
製作様式 ラージプト絵画・メワール派(Mewar school)
素材 紙、顔料
サイズ 横46.8cm×縦45.6cm

聖なる牛がリンガに乳を垂らす場面を中心とする神話の場面がパノラマ的に描かれた“ラージプト絵画・メワール派(Mewar school)”の18世紀作インド細密画。

モチーフ表現・筆致、群青の空と赤・黄の濃厚な色味、木々の描き方等からウダイプール地方(メワール王国)の作品と推定できる一枚で、19世紀に入ってからの絵の形骸化が進む以前、ラージプト絵画全盛期ならではのバイタリティ・気の充実が感じられる、大判パノラマ神話画の秀逸なマスターピース作品です。

画像で確認できるように裂け・絵の剥離・シミ等の欠損箇所はあるものの、虎に跨る女神・女性たち・無数の牛及びヒンドゥ寺院の建造物と背景のモチーフひとつひとつに見応えがあり、作品には欠損を補って余るほどの魅力・完成美が感じられます。

取り分け人物(女性)の目・眉・巻き毛等の顔相には格調の高さと神秘性が備わっており、マスターピースのみが有する精神性の深みに惹き込まれる想いがいたします。















































●本記事内容に関する参考(推奨)文献
 

19cラージプト絵画 「聖者から護摩祈祷を受ける女性」

2017-02-12 10:43:00 | 絵画





製作様式 インド細密画 ラージプト絵画
製作年代(推定) 19世紀
素材 紙、顔料、金彩
サイズ 紙全形:横12.2cm×縦19.8cm、画部分:横9.2cm×縦15.7cm

隠遁修行する聖者を訪ね、護摩祈祷を受ける貴婦人の姿が描かれた“ラージプト絵画”としての19世紀作インド細密画。

漆黒の闇夜に護摩を焚き祈祷を受ける聖者と女性の姿が、背景は華飾を廃し人物表現は緻密に描かれた秀逸な場面構成と空気感を有する一枚です。
























●本記事内容に関する参考(推奨)文献