アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

お目出鯛(よい)年を祈って 鯛の筒描き馬掛け

2015-12-28 00:30:00 | 染織











製作地 日本・山形県 庄内地方  
製作年代(推定) 19世紀末 明治時代初中期
素材/技法 木綿、天然藍、天然顔料(ベンガラ) / 筒描き
サイズ 幅:35cm、全長:266cm

来る年の吉祥・平安を祈りつつ、年末最後に「鯛模様・筒描き馬掛け布」をご披露させていただきます。荒波を乗り越え、良い年となりますように。












17-18c古渡り 手描きインド更紗裂

2015-12-26 14:55:00 | 染織




製作地 インド南東部 コロマンデル海岸エリア  
製作年代(推定) 17-18世紀
素材/技法 木綿、天然染料 / 手描き、媒染、防染、片面染め
裂サイズ 幅:60cm、縦:65cm(最長部)

本品は細手の手紡ぎ糸を素材に目の詰んだ平滑な織りがなされた上手木綿地に、カラムカリ(手描き)の媒・防染染めによって手の込んだ絵柄が表わされたもの、イスラーム様式(アラベスク模様)を香らせるデザイン構成の作品で、インドネシア・スマトラ島ランプン交易向けのインド更紗として知られるものとなります(※ただし同手でトラジャ交易向けや日本交易向けも確認される)。

茜媒染染めの赤・紫・黒及び藍染めの縹(空藍)の色味の力強さ、カラムカリによる緻密な絵付けが見事、更に2百数十~3百年の時を経て色褪せず深くかつ鮮麗に残る色彩の堅牢度は驚嘆に値するもので、いまも生命を失わない色・柄の意匠とその完成美に目と心を奪われます。

江戸時代初中期の日本にももたらされ、大名・貴族・茶人等に愛玩された手のもの、歴史の浪漫を薫らせる古渡りインド更紗の名品裂です。
























江戸中後期 縞木綿 二景

2015-12-24 23:30:00 | 染織






製作地 日本 ※地域不詳  
製作年代(推定) 18世紀後期~19世紀初め 江戸時代中後期
素材/技法 木綿、天然染料 / 平地、経縞









製作地 日本 ※地域不詳  
製作年代(推定) 18世紀後期~19世紀初め 江戸時代中後期
素材/技法 木綿、天然染料 / 平地、経絣、経緯縞(糸脱落あり)

18世紀に入ると日本の国産木綿栽培は各地で軌道に乗りはじめ、渡り木綿(奥嶋唐桟・渡り嶋物等)に刺激された和物”縞木綿”の生産及び需要熱が高まっていく(庶民層にも広がっていく)様子が、歴史書・日記等の記載及び浮世絵等絵画の描写により確認することができます。

取り分け、享保の改革(18c前)と寛政の改革(18c後)での衣の倹約令は、絹偏重の上層階級衣装モードに変革をもたらし、相対的に”国産木綿織物の地位向上”へと繋がっていきます。

画像上、茶藍”万筋嶋”の縞木綿裂は、明らかに舶来”唐桟留(とうざんどめ)”の影響が色濃く感じられる織り意匠のもので、目の詰んだ織りと一見すると絹と思えるような光沢感のある藍糸の入った平滑な布表情が特徴的、武家の袴地として使用されたものの解き裂となります。

画像下、タテ絣入り縞木綿裂は、本来は絹繻子で色光沢ともに鮮やかに織られた舶来の交織布(インドのマシュルーとする説あり)を祖型とし、これが木綿に写されたものと考えられており、18世紀後半以降、庶民層(町人女)の日用着として流行した様子の記録が残されております。

経と緯の糸抜け箇所は、鉄媒染の濃茶染め糸が腐蝕脱落したものですが、部分的に絹糸が配されていた可能性も考えられます。

2015年 現地で入手に至らなかった一枚

2015-12-22 00:15:00 | 染織



(写真 インドネシア・スラウェシ島 タナ・トラジャにて)

17c古渡りインド更紗。オランダ東インド会社が香辛料交易用としてトラジャにもたらし、この地で聖なる布”マア”として300余年にわたり伝世されてきた一枚。藍地キンマ模様が印象的です。

2015年、旅先で出会いがありながらも入手の縁には恵まれなかったモノのうちの一つです。

あたり前のことですが、入手したものしかご披露することができない... 入手・ご紹介の喜びの陰に、ご紹介に至らなかった残念な(心残りの)品モノたちもあります。

17cのインド更紗を無造作にコンクリの床に広げ、トラジャコーヒーを飲みながら数十分間あれこれ和やかに会話を交わしながらも、肝心の商談は不調に終わりました。

江戸後期 絣入り縞木綿裂

2015-12-20 00:35:00 | 染織






製作地 日本 ※地域不詳  
製作年代(推定) 19世紀 江戸時代
素材/技法 木綿、天然染料 / 平地、経縞、緯絣

本品は薄茶(淡灰)染めの木綿糸を経緯とする地に、茶経糸の太縞、両脇に藍経糸の細縞を配する”子持ち縞”として織られた経縞の織物で、その中に黒(濃灰)染めの緯(ぬき)の絣糸が散りばめられた”絣入り・多色縞木綿布”となります。

繊細に紡がれた細手の木綿で密に織られており布表情・手触りは平滑、短繊維の国産木綿を紡ぎ・染め・織った江戸期の絣入り縞木綿としては上手(じょうて)と呼べるもの、高級な袴地等として手掛けられたことが推察されます。

国産木綿を素材に、紡ぎ・染め・織りに職人手仕事の技が駆使された、古き良き日本の木綿染織の時代が偲ばれる、江戸期縞木綿古裂の薫り高き逸品です。