アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

17c 呉州染付”蝦蟇仙人図”小皿(平盃)

2022-05-13 05:15:00 | 古陶磁













製作地 中国 福建省民窯
製作年代(推定) 17世紀 明末清初
渡来地・使用地 日本 江戸時代初期
サイズ 5枚 口径9.3cm~10cm、高さ2.6cm~3cm、重さ56g~77g

後ろ足が一本の”三足蝦蟇”を操る”蝦蟇仙人”の姿が、勢いのある筆遣いで大らかかつ躍動的に描かれた呉州染付小皿(平盃)5枚揃。

日本では画題として、また古典芸能の登場人物としても人気を博してきた蝦蟇仙人は、発祥の地中国においては知名度が低く、八仙とは異なり陶磁絵付の主題とされることはさほど無かったと考えられております。

上記及び絵図の蝦蟇・鉄拐の混交具合を鑑みると、本染付小皿は日本から送られた絵手本により製作されたことが特定でき、呉州手ならではの下手(げて)な絵付、釉の白濁具合と絵の暗青色がかもす粗朴な風情も発注者の狙い通りであったものと推察されます。

釉・呉須・砂高台の表情と虫喰が見られない点は呉州染付の特徴に符合し、少ない筆数で素早く描かれ絵もダミの入れ方も器毎に自由奔放なところに呉州手の持ち味と魅力が感じられます。

一枚一枚に施された丁寧な金繕いに数寄者の愛蔵ぶりが伺え、飄逸な仙人の絵図を愛でながら盃としたであろう光景も浮かびます。






















江戸時代 志野柚香合

2022-03-07 00:55:00 | 古陶磁




製作年代(推定) 江戸時代
サイズ 外径約5.3cm、内径約3.5cm、高さ約5cm
付属品 仕覆(※別途掲載の記事参照)、箱

貫入と小孔を交えた柚肌の長石釉は和らぎをまとい、蓋と身を跨ぐ火色がつくる景色ひとつひとつに味わいのある、細部まで行き届いた作行の志野柚香合。

香合・仕覆・箱の調和具合は好ましく、愛玩され伝世した茶道具に特有の典雅が感じられます。



















19cシャム渡り 色絵磁器”ベンジャロン”碗

2021-01-06 07:39:00 | 古陶磁



製作地 中国・江西省 景徳鎮 Jingdezhen ※上絵付け及び錦窯焼成は広州の可能性あり
製作年代(推定) 19世紀初頭
渡来地・使用地 シャム王国 チャクリー王朝期
素材/技法 白磁胎、五彩(上絵付け)、金属製の覆輪(※後年付されたと推察されるもの)
サイズ 口径11.5cm、高さ6.0cm、重さ184g

この色絵磁器”ベンジャロン(Bencharong)”は、大航海時代の到来・陸海交易路の発達をもとに海外との交易により国の繁栄を築き上げ4百余年にわたる覇権を維持した“アユタヤ王朝(1351年~1767年)”が、当時高度な製陶技術で世界をリードしていた中国に発注し製作が始まったもので、“ベンジャロン”の名称は中国名の”五彩”がサンスクリット語に訳されたものとなります。

19世紀の早い時期に景徳鎮で製作されたと考察される本品は”初期ベンジャロン”に分類される上手物で、仏教・ヒンドゥの神話に由来する”天人テパノン(thepanom)””半人半獣の守護神ノラシンハ(Norasingh)”を主要モチーフに、多様な火焔状・花状モチーフにより器全体が繊細かつ華やかに彩られたもの、シャム王国オリジナルと考察されるデザインのひとつで、この系統の作品は宮廷儀礼・宗教儀式の際に用いられるとともに来賓への贈呈物とされたことが知られます。

上質な素材と高度な製陶技術を駆使した上絵付けの巧緻な完成美が見事、シャム更紗(シャムロ染め)の意匠とも繋がるシャム王国固有の仏教美術の格調の高さ、作品から溢れる芳醇な香り・濃密な精神性に惹き込まれる一品です。




















●本記事内容に関する参考(推奨)文献


17-18c清代 東南アジア渡り 赤絵豆皿

2018-04-21 00:09:00 | 古陶磁




製作地 中国
製作年代(推定) 17~18世紀 清代
渡来地・使用地 タイ
種類 色絵磁器
サイズ 口径:約7cm、高さ:約1.6cm、重さ:28g ※二点ともほぼ同サイズ

清代の中国で手掛けられ交易品としてタイにもたらされた、口径7cmほどの赤絵豆皿。

同手のものが東南アジア全域にひろくもたらされており、明末~清代の数世紀にわたり当地で愛好された様子を伺うことができる品モノです。


















17c明朝末期 古染付”魚花波頭文青花碗”

2018-03-07 00:57:00 | 古陶磁













製作地 中国・江西省 景徳鎮民窯
製作年代 17世紀前期(明朝末期) 在銘 崇禎年製
種類 青花(染付)磁器
サイズ 口径:約12cm、高さ:約6cm、重さ:143g

中国・江西省の景徳鎮民窯で手掛けられた、古染付”魚花波頭文青花碗”、明朝末期(崇禎年製の在銘)の作品です。

外面に”魚・花・波頭”の主模様が回遊文として優美に描かれ 見込み中央に”雲文”が大ぶりに配され、内口縁に”菱格子帯文”が端整に線描きされた作品、筆致は丁寧で穏やかな表情があり、目にしていると気持ちも穏やかな心地となるような一品です。

全体に繊細な地貫入が見られますが、濃淡(ダミ)を生かした巧みな文様描写と青花の濃厚な発色と調和しており、茶陶寄りの滋味が感じられるように思われます。





























●本記事内容に関する参考(推奨)文献