アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

琉球王国 苧麻”白地斜格子に桜檜扇模様”紅型裂

2017-06-29 23:30:00 | 染織



●両面染め 大模様-大柄





製作地 琉球王国 沖縄島首里 (現日本国・沖縄県)
製作年代(推定) 19世紀 琉球王朝期
素材/技法 苧麻、天然顔料、天然染料 / 型染、糊防染、両面染め
サイズ 横:14cm、縦:32cm

琉球王朝期の沖縄島首里で手掛けられた「苧麻”白地斜格子に桜檜扇模様”紅型」裂。

苧麻地・両面染めの紅型裂で、地はほんのりと生成りに染められているものの”白地”の範疇に入れられる作例、斜格子を地模様に”檜扇””桜花”等が大ぶりなモチーフ構成で多彩に染め描かれた一枚です。

上から5cmあたりに型紙の送り線(継ぎ目)を確認できますが、縦寸32cmの中に絵柄の繰り返しは無く、実際の縦寸は50cm~60cm程度、横寸は約40cmの”大模様・大柄”の白地型(紙)が用いられたものと考察されます。

”檜扇””飾り紐””桜花””葉”(最上部の見切れた部分は葉の形から”橘”と思われる)ひとつひとつのモチーフが、巧みな色の掛け合わせや色グラデーションを交えて緻密に表わされており、両面で破綻の無い彩色技術の高さは圧巻のもの、多彩ながらも落ち着きと調和のある色味も秀逸で、19c王朝期紅型の完成度の高さと固有の世界観に深く惹き込まれます。

極めて繊細に手績みされた上質な苧麻遣いの上布、手の込んだ彩色、意匠から伝わる格調の高さから、本紅型は尚王家及び宮廷者(女官等)が用いた夏衣裳”タナシ(ンチャナシ)”とされた布の可能性を指摘できます。裂から衣裳を想像することにも愉しみを見い出せる一枚です。

































●本記事内容に関する参考(推奨)文献
 

琉球王国 木綿”花色地蜀江文格子に鶴桜模様”紅型裂

2017-06-27 00:27:00 | 染織








製作地 琉球王国 沖縄島 (現日本国・沖縄県)
製作年代(推定) 19世紀 琉球王朝期
素材/技法 木綿、天然染料、天然顔料 / 型染、糊防染、片面染め
サイズ 横:12.5cm、縦:25cm

琉球王朝期の沖縄島で手掛けられた「木綿”花色地蜀江文格子に鶴桜模様”紅型」裂。

片面染めの袷衣裳用と思われる紅型裂で、”花色地(ハナイルジー)”と呼称される地色染めのもの、これは朱で下地を染め、動物染料の臙脂を上掛けし色彩を生み出すもので、外来の色料が主素材とされた海洋交易時代・琉球染色の特徴が良く顕われた作例と言えます。

蜀江格子と鶴・葉が群青で表わされ、白抜きされた部位には”黄””朱赤””紅””茶””藍”の多色で桜の花が染め描かれ、”緑(黄と藍の掛け合わせ)”で鶴が染められた箇所も確認できるなど、一見する以上にディテイルの手が込んでいることが判ります。

華やかでありながら色彩に一定の落ち着きと調和が感じられるのが本作品の最大の特徴であり魅力、”天然朱””臙脂””蘇芳”等、王朝期にのみ調達可能であった素材及び特殊な媒染法等の高度な職人技術が加えられた結果と考察されるもの、今では失われし古の染織作品です。
































●本記事内容に関する参考(推奨)文献
 

琉球王国 木綿”水色地紗綾形に桜散し模様”紅型裂

2017-06-25 10:45:00 | 染織



●両面染め 染地型・白地型併用





製作地 琉球王国 沖縄島首里 (現日本国・沖縄県)
製作年代(推定) 19世紀 琉球王朝期
素材/技法 木綿、天然顔料、天然染料 / 型染、糊防染、両面染め
サイズ 横:15cm、縦:18cm

琉球王朝期の沖縄島首里で手掛けられた「木綿”水色地紗綾形に桜散し模様”紅型」裂。

染地型・白地型併用の両面染め作品で、水色の地に太くかつ伸びやかに紫色の紗綾形が唐草状の白抜き桜模様入りで配され、その上から多彩な”桜の花”が散りばめられたもの、鮮やかさと深みを兼ね備えた”水色地”と、天然顔料・染料を駆使したモチーフひとつひとつの色彩の完成度が高く、色柄に息づく瑞々しい生命感に目と心を奪われる一枚です。

那覇市歴史博物館が所蔵する尚王家の衣裳、「黄色地松雪持竹梅模様衣裳」(18-19c作・国宝指定)の裏地・返し衿に用いられているのが、本品と同手型紙で染め色違いの”黄色地紗綾形に桜散し模様”紅型であり、これと同時代作と特定することはできないものの、布・型紙・彩色の完成度の高さから、王朝期・王府首里の正統な職人の手によるものと考察することができます。

古き良き琉球王国の染め布の時代が偲ばれる、19c”古紅型”裂の薫り高き逸品です。

































●参考画像 同手型紙による黄色地紅型が用いられた尚王家の衣裳






国宝「黄色地松雪持竹梅模様衣裳(裏・返し衿:黄色地紗綾形に桜散し模様)」
18-19世紀 那覇市歴史博物館蔵

※上画像はサントリー美術館刊「紅型 琉球王朝のいろとかたち」より転載いたしております







●本記事内容に関する参考(推奨)文献