(写真 ラオス・フアパン県 サムタイにて)
(写真 ラオス・フアパン県 サムヌア~サムタイにて)
荷揚げ荷降ろし、地すべりの道路復旧、エンスト時の押しがけ、皆で協力するみんなのバス。
製作地 ラオス北東部 フアパン県 Houaphan Province
製作年代(推定) 20世紀初め
民族名 タイ・デーン族(Tai Daeng)
素材/技法 絹、木綿、天然染料 / 平地、緯紋織、縫取織
サイズ 横幅(緯)43cm、全長(経)72cm(フリンジ部分除く)
ラオス北東部のフアパン県に生活する「タイ・デーン族(Tai Daeng)」の手による、シャーマン(巫師)儀式用布”パー・サバイ(phaa sabai)”、20世紀初めのアンティークの作品です。
“ヒーリング・クロス”と訳される“パー・サバイ”は、アニミズム(精霊信仰)色の強い仏教或いはアニミズムそのものを信仰する民族グループの多いフアパン県(サムヌア・サムタイ等)を中心につくられてきたものであり、無病息災・長寿を祈る(祝う)高齢者の祝祭時、またシャーマン(巫師)が病気の治療を行うための布として用いられてきました。
タイ・デーン族の手による本パー・サバイは、生成り(白)絹細糸を経緯とする地織に、絹赤糸を用いた緯紋織(浮文)により多重の菱状文様が無数のモチーフ構成で描かれ、中央部分には9つの多色縫取織による菱形文、上下のボーダー部分には藍木綿により“双頭の蛇龍神(ナーガ・ナーク)”、多色絹により”聖鳥””小紋”等が描き出された作品です。
特筆すべきは地織の繊細さ、そしてこの地織がほぼ覆い隠されるほどの密度で織り込まれた緯紋織&縫取織”浮文”の圧倒的な手の込みようで、絹と木綿、細糸と太糸を混在させ織りパターンを多様に変化させながらも、全体としては破綻の無い完成美を呈する織物の技術の高さは並々ならぬものと言えます。
また絹・木綿・天然染料のすべてに土地の素材が用いられており、手引き絹と手紡ぎ木綿の質感の豊かさ、ラック染め絹と藍木綿の濃厚かつ深みのある色彩、天然色染め絹の一色一色の美しさと調和の高さ、伝統染織の地”フアパン”たる素材の秀逸さが随所から薫ってまいります。
シャーマン(巫師)が儀式で使用する布としての濃密な精神性に惹き込まれる一枚です。
●本記事内容に関する参考(推奨)文献
●技法 平地、緯絣、経紋織、緯紋織、縫取織 (経糸:絹、地緯糸:木綿、絵緯及び絵経:絹)
「シン・ムック・コー・ミー(sin muk koh mii)」と呼ばれる特別な正装用の腰衣。伝統技術を継承するタイ・デーン族やタイ・ダム族の熟練した染め織り手のみが手掛けることができるもの。
(写真 ラオス・フアパン県 サムタイにて)
●参考画像 20c初めに織られた「シン・ムック・コー・ミー」
●技法 平地、緯絣、経縞、経紋織、緯紋織、縫取織 (経糸:木綿及び絹、地緯糸:木綿、絵緯及び絵経:絹)
緯絣、経紋織、緯紋織、縫取織にプラスして木綿×木綿の地織に紅赤絹糸が交織されている