製作地 ラオス北東部 シェンクワン県 Xieng Khouang Province
製作年代(推定) 19世紀後期
民族名 タイ・プアン族(Tai Phuan)
素材/技法 絹、木綿、天然染料 / 平地、緯縞、縫取織及び緯紋織(浮文・昼夜織)
サイズ 横幅(緯)82cm(二枚接ぎ)×縦(経)145cm
ラオス北東部のシェンクワン県に生活する「タイ・プアン族(Tai Phuan)」の手による、絹・木綿交織の縞&紋織布、19世紀後期のアンティークの作品です。
本布は経糸にラック染めの絹、緯糸は絹を主体に紺色の縞を構成する藍糸に木綿が配された”絹・木綿交織”の縞織物で、下裾と縞の間に多色の絹を用いた”浮文・縫取織&緯紋織”の技法により立体的な幾何学文様が織り込まれたもの、紋織は表裏で文様が反転する”昼夜織”によって両面で破綻無く巧みに織り上げられております。
中央二枚接ぎで幅82cm×長さ145cmの大判に仕立てられており、サイズ及び仕様から寒冷期に肩から掛けて(巻いて)用いる“パー・トゥーム(phaa tuum)”に分類されるものと思われますが、上質な素材をもとに通常とは異なる意匠が凝らされた作品であり、日常使用のものではなく、祝祭行事や宗教行事等の特別な機会のために製作されたことが伺えます。
特筆すべきは絹・木綿交織による縞の繊細さ、縫取織・緯紋織の絹糸の色彩の豊かさで、細・太の多様な筋(縞)が端整かつ落ち着いた表情で引かれ、その間に金銀の色感を呈する浮文・緯紋織がほんのりとした光沢感を伴って織り込まれ、下裾には多彩な天然色染め絹を用いた高度な技巧の浮文・縫取織により緻密な幾何学文様が織り描かれており、織物全体がかもす雰囲気に得も言われぬ気品と格調の高さが感じられます。
タイ・プアン族の古い時代の織物は、天然染色の技術の高さと色彩の明瞭さに際立つ特徴が見られ、本布においても華やかさと落ち着きを兼ね備えた交織縞を筆頭に、ベニノキのアナトー色素で染める鮮やかなオレンジ、蘇芳の紺紫と藍の紺青、ウコンの黄と樹皮を用いるオリーブ掛かった黄の色の繊細な染め分け等が何とも見事、金銀の色表情と光沢を浮文で表出させた縞間の緯紋織を併せ、作品全体の色彩の完成度の高さに目と心を奪われます。
古の時代に日本に舶載された「間道(かんとう・かんどう)」を彷彿する表情のラオス織物です。
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