アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

美しき道具 機織用ブラシ  

2010-06-24 07:04:00 | 生活と祈りの道具







製作地 カンボジア南部  
製作年代(推定) 20世紀初め~半ば

仏教に縁の聖鳥”ハムサ(ヒンタ)”と、豊穣の蛇龍神”ナーガ”が力強く表現された機織用ブラシ。経糸に糊付けを行なったり、糸の状態を整えるために使用されてきた伝統道具です。

生命感溢れる手彫りの”ハムサ””ナーガ”は、ラッコールの黒・茶の漆で彩られ、棕櫚(シュロ)を素材とするブラシが付され、単なる道具を超えた”生命”が作品の内に宿ります。

機から始まり、道具の一つ一つにまで”祈りの意匠”が込められた時代がありました。

美しき道具 ビンロウジ・カッター

2010-06-22 06:38:00 | 生活と祈りの道具






製作地 ミャンマー  
製作年代(推定) 20世紀半ば








(写真:ミャンマー・シャン州及びマンダレー地方にて)

半人半鳥の天女”キンナリー”の意匠を纏った真鍮製の道具。これは”檳榔の実(ビンロウジ)=ベテルナッツ”をはさみ割るためのもので、”ビンロウジ(ベテル)・カッター”と呼ばれます。

ベテル・カッターにより細かく割ったビンロウジの内核を石灰・香辛料とともに”キンマの葉”で包み、口の中に入れガムのように噛む、この”清涼剤”は南アジア・東南アジアを中心とする広い地域で嗜好されており、道具もそれぞれの地域で様々な種類のものを目にすることができます。

インドやビルマでは、古来よりヒンドゥや仏教の宗教儀礼や結婚式の際にも、この”蒟醤(キンマ)”は欠かすことの出来ない品モノであり、そのため信仰の意匠を纏った道具(カッターや容器など)が手掛けられてきました。祈りとともに生み出された美しき道具です。