(写真 インド・ラージャスタン州 ジャイサルメールにて)
製作地 インド・グジャラート州
製作年代(推定) 19世紀後半~末
素材/技法 絹、天然染料 / 経緯絣
「popat kunjar bhat(鸚鵡と象文様)」は、取り分け高度に熟達した括り・染め・織りの技術と手間隙を要するものとして、本来高位な織物である絹経緯絣パトラの内で、さらに高位な存在として、インド国内及び海外において数百年にわたり珍重されてきました。
ブラーミン階級のヒンドゥ及び富裕階級のジャインが、この具象文様パトラをステータスとして所有しましたが、この絣の製作者である”サルヴィ共同体”自体が、ブラーミンのヒンドゥとジャインを中心に構成されているという点でも、この染織作品は特殊な品モノと位置付けられてきました。
染織の多くはムスリム及び低位カースト所属の共同体の職域に属するものであったからです。
他に類を見ない多色遣いの精緻な絹経緯絣としての技術の素晴らしさ、意匠の完成美はもちろんですが、神々や王族に近しい立場の者が生み出す”神聖”かつ”呪術性”を備えた特殊な布として、大航海時代にパトラは海外の数多の王族・貴族階級を魅了したと考えられております。
取り分け”パトラ崇拝”の強かったインドネシアにおいては、王族の葬祭を含むあらゆる宗教儀礼でこれが用いられ、パトラ片を燃やした灰は煎じ薬とされた記録が残っております。
●本記事内容に関する参考(推奨)文献
※上画像はRoli Books刊「SILK BROCADES」より転載いたしております
インドの農牧民にとって、最も身近で親しみの強いヒンドゥの神様が”クリシュナ神”です。
牛飼いの養母に育てられ、牛飼いの娘と恋をして、大人(神)になったあとも庶民の味方として、農牧民の憧れの存在(ヒーロー)であり続けてきました。
”笛を吹くクリシュナと牛”の姿が繊細な打ち出しと彫金により表わされた、この銀パーツと木綿巻き紐のネックレス(チョーカー)は、クリシュナへの篤き信仰とともに農牧民が身に着けた”アムレット(お守り)”であり、牛に付けられる”牛鈴”の意匠ともイメージが重なるものです。
作品からは、農牧民のクリシュナ神への尊敬と祈り、そして牛への愛情が伝わってまいります。
製作地 インド・ラージャスタン州
製作年代(推定) 19世紀~20世紀初頭 ※シルバーパーツの製作年代、紐成型は20世紀半ば
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