アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

ウズベキスタンの縞物

2010-01-29 06:54:00 | 染織





製作地 ウズベキスタン・ブハラ 
製作年代(推定) 20世紀初め

日本の縞木綿とも共通する薫りのある、どこか懐かしくなるような表情・雰囲気の縞物の上着。縞物(嶋物)というと海洋交易の時代がまず頭に浮かびますが、それ以前からシルクロードを通じて繋がっていたことを想起させるような作品でもあります。

アラチャ(本品)・クァラミ・ベカサブ... ウズベキスタンには素材・技巧・意匠の違いにより様々なタイプの縞物があり、砧打ちで光沢を付けることも一般的です。そして裏地を”チラ見せ”する美意識・美学も... 本上着の鬼更紗とバイアス縞の裏地、飾り紐風の刺繍、何とも粋な風情です。








ブハラの鍛冶工房

2010-01-28 06:55:00 | 旅の一場面



(写真 ウズベキスタン・ブハラ州 ブハラにて)

ブハラ・ハーン国興隆の時代、シルクロード交易の中枢として栄えた時代の空気感を今に伝える工房。交易商人(キャラバン隊)の行き交ったタキ(商店街)の中で火を灯し続けてきました。

ウズベキスタン更紗

2010-01-27 07:17:00 | 染織







製作地 ウズベキスタン・ブハラ 
製作年代(推定) 19世紀前期
素材/技法 木綿、天然染料 / 木版捺染、媒染、防染








木綿染め布の”更紗”というと、インド更紗とペルシャ更紗があまりに大きな存在であったためか、また交易商品として他の土地(国)に渡る機会が少なかったためか、この”ウズベキスタン更紗”は、これまで一般にはほとんど知られてこなかったように思います。

しかしながら、画像をご覧いただくことでもお判りいただけるよう、この”ウズベキスタン更紗”は、インド更紗やペルシャ更紗の系譜を引き(影響を受け)つつも、それとは異なる独自のデザイン様式・雰囲気を有する素晴らしい染織作品であることは確かなように感じます。

本品は19世紀前期、今から150~200年前に古都ブハラで手掛けられたもので、”クルパ”と呼ばれる敷き布・掛け布(火燵掛け等)として用いられた品モノとなります(130cm四方のサイズ面・デザイン面から敷居布・壁掛けの可能性も有り)。

鬼手(糸目の粗い手紡ぎ木綿地)の木版更紗で、茜媒染を主体に藍が描き染めで加えられております。本作品は表の大柄の花文と裏の小紋とのコントラストが何とも味わい深い一枚です。



●本記事内容に関する参考(推奨)文献


トルキスタンの絣と太子間道

2010-01-26 06:32:00 | 技巧・意匠・素材



ウズベキスタン アドラス地(絹×綿)経絣布 19世紀




「太子間道(赤地間道)」 7世紀法隆寺に伝来 東京国立博物館所蔵(重文)

中央アジアの地、新疆ウイグルを含む広義のトルキスタンで織られ、唐の時代7世紀後半に日本にもたらされたと考えられる経絣の裂が”太子間道(赤地間道)”として、法隆寺に伝えられてきました。(現在は東京国立博物館が所蔵(重文))

ウズベキスタンの絣は、中世~近世のイスラーム宮廷により技巧・意匠上の大きな発展をみますが、イスラーム的なデザイン様式として完成されたわけではなく、それ以前から脈々と培われてきた”古代絣”の面影を同時に内包するものであることを伺うことができます。



●本記事内容に関する参考(推奨)文献