アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

モン族 ”錠”デザイン シルバー彫金アムレット

2017-10-11 20:05:00 | 装身具




製作地 ラオス北部
製作年代(推定) 20世紀中期
民族名 モン族 Hmong
素材 シルバー
サイズ 幅(底辺)3.5~4.2cm、縦(最長部)4.5~4.7cm

ラオス北部に生活する「モン族(Hmong)」の手による、”錠”デザインのシルバー彫金アムレット、20世紀中期の準アンティークの作品です。

インドシナ北部(ラオス・ベトナム・タイ・ミャンマー)の山岳地帯を中心に生活する“モン族”は、中国・西南部からの移民(中国での呼称はミャオ族)であり、ラオス北部には19世紀初め頃より移住が始まったものと考えられております。

優れた染織・刺繍技術を有するモン族(ミャオ族)ですが、それを駆使して手掛けられる民族衣装にとって欠かすことの出来ない装飾品が銀製の装身具であり、祝祭時の盛装衣装では、頭を飾る冠・かんざし・大きな首飾りを筆頭に多数の装身具で身を飾るとともに、日常生活においても、吉祥・守護、また豊穣への祈りの込められた“護符(アムレット)”として、ペンダント・リング・イヤリング・ブレスレット等を身に着ける慣習を有します。

この”錠”デザインのアムレットは、病や魔を体内に入れず身を守る(ロックアウトする)という意味合いが込められたもの、表面に施された繊細な彫金からは祈りの精神性が伝わってまいります。






















カシュミール エナメルワーク&ヤクボーン・ネックレス

2016-07-25 00:37:00 | 装身具




製作地 インド ジャンムー・カシュミール州 シュリーナガル
製作年代(推定) パーツ:19世紀~20世紀初め ※ネックレスの成型(再成型)は後年
素材 合金製、エナメルワーク、ヤクボーン・ビーズ

本ネックレスは、三角形のアムレットとボテ(ペイズリー)型のカザリの合金製パーツを主体に組まれたもので、この三角形パーツ”トゥモル”は中央アジア~カシュミールのシルクロード交易圏に生活するムスリム民の間で広く使用されてきた意匠のものとなります。

三角形パーツ”トゥモル”は箱状に成型・ろう付けされており、内部にはコーラン(クルアーン)の一節等、守護・吉祥のものを内部に収めることが一般的となります。

アムレットには”生命樹”を表わすモチーフが彫金され、ラピス顔料によるエナメルワークが施され、チェーンにはボテ(ペイズリー)のカザリとともにヤクの骨を削ってつくられたビーズが配されたもの、素材面と意匠からヒマラヤ地方カシミールで手掛けられた装身具に固有の特徴を見出すことができます。祈りの込められたお守り装身具としての濃密な精神性が伝わる一品です。

















●本記事内容に関する参考(推奨)文献
 

18-19cカシュミール 合金製・彫金アムレット

2016-07-14 07:51:00 | 装身具



製作地 インド ジャンムー・カシュミール州 シュリーナガル
製作年代(推定) 18-19世紀
素材 合金製、色ガラス

アムレット本体は”ボテ(ペイズリー)”と”鳥”を表わすモチーフが彫金され、下部に多数の垂れカザリが付され、紐(チェーン)上には打ち出し・透かし彫りにより”菩提樹の実(ルドラークシャ)”を象ったと考察される珠パーツが配されたカシュミール様式のアムレット・ネックレス。

吸い込まれそうな深みを湛えた赤色ガラス、銅合金に現れたパティナ(緑青)の古色表情には滋味があり、本体とカザリパーツを併せた意匠の完成美に魅了される一品です。


















●本記事内容に関する参考(推奨)文献