アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

20c初 多弁花&瓔珞文様 織機綜絖吊り・木製滑車

2018-04-19 00:29:00 | 生活と祈りの意匠




製作地 カンボジア南部
製作年代(推定) 20世紀初め
素材 木製、鉄(吊りパーツ・車軸)
サイズ 滑車部分の外形サイズ:直径約5.2cm、鉄製の吊りパーツ含む全長約9.5cm

カンボジアやタイ・ミャンマーなど、古くから染織品が宮廷儀礼や仏教儀礼に纏わる装束や装飾のものとして製作が盛んであった土地では、部品の一つ一つに美しい装飾が施された木製及び金属製の織機が用いられていました。

織機を構成する部品(綜絖(そうこう)・筬(おさ)を吊る装置の部品)として使われていた、この手の込んだ”装飾滑車”からは、敬虔な仏教信仰を背景とする、古き良きインドシナ伝統染織の時代が偲ばれます。

本品は多弁花と瓔珞状の吉祥文様が端整かつ流麗に彫り描かれた作品で、深みのある色合いの木肌をあわせて、仏教に縁の工芸品としての格調の高さと荘厳美が薫ってまいります。






















遍在するクリシュナ神

2017-03-14 13:16:00 | 生活と祈りの意匠




●シルバー製アムレット
製作地 インド ラージャスタン州
製作年代(推定) 19世紀~20世紀初め




●水彩画
製作地 インド ビハール州
製作年代 20世紀末




●多色刷り石版画
製作地 インド マハーラーシュトラ州
製作年代(推定) 20世紀初め




●木綿地絹刺繍
製作地 インド ヒマーチャル・プラデッシュ州
製作年代 20世紀後半

幸運の使い”ふくろう”の真鍮製香炉

2015-02-12 07:00:00 | 生活と祈りの意匠



製作地 インド・オリッサ州(或いはマディヤプラデッシュ州・ビハール州)
製作年代(推定) 20世紀前期

”ふくろう”は、ヒンドゥの最高神の一人”ヴィシュヌ”の妻であり、美と幸運を司る女神”ラクシュミー”の乗り物、インドでは古来より幸運をもたらす鳥として様々な工芸品の意匠とされ人々に愛好されてきました。

本品は蓋部と器部からなる真鍮製の香炉で、この地方の金属鋳造職人”ドクラ(dokra)”が“脱蝋法(ロスト・ワックス法)”をベースに一部鑞付けや彫金を加えて手掛けた種類のものとなります。

信仰に纏わる調度品(香炉)として作られたアンティーク作品、伝統手仕事の造形の完成美、そして祈りのものゆえの瑞々しく息づく精神性に惹き込まれます。










吉祥の動物に込められた豊穣・平安の祈り

2014-10-01 05:38:00 | 生活と祈りの意匠

●薬や裁縫道具を収めるボックス(うさぎ)


製作地 タイ東北部  
製作年代(推定) 19世紀後半~20世紀初め



●薬や裁縫道具を収めるボックス(カエル)


製作地 タイ東北部  
製作年代(推定) 20世紀前期



●織機の綜絖を吊る滑車(鹿)


製作地 カンボジア南部  
製作年代(推定) 20世紀初め



●織機の綜絖を吊る滑車(うさぎ)


製作地 タイ東北部  
製作年代(推定) 20世紀初め

仏教説話に登場する様々な動物たちは、インドシナ諸国の仏教信仰圏において、農作物・家畜の豊穣をもたらしてくれる吉祥の動物として崇められ、手工藝品のモチーフとされてきました。

雨を降らしてくれる”カエル”、多産と豊穣をもたらしてくれる”うさぎ”、長寿や子供の健やかな成長を象徴する”鹿”... いずれも単なるデザインではなく、祈りそのものとして製作され、生活の中で用いられてきたものとなります。


●月うさぎ(アジアの仏教信仰国を中心に広く伝わるもの)


(写真 タイ北部にて)





●本記事内容に関する参考(推奨)文献