アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

ラオス 生活と祈りの染織 蚊帳装飾布

2010-09-24 02:11:00 | 染織
























製作地 ラオス・フアパン県 サムヌア  
製作年代(推定) 20世紀半ば~後半
民族名 タイ・デーン族

蚊帳(かや)の上縁周囲を装飾するため、全長(経)4mを超える長さで、多様な紋織り文様を加えて織り上げられる、ラオス固有の伝統染織作品があります。

蚊帳にまで、かくも華やかな装飾を施すとは何と贅沢なことかと思われるかもしれませんが、ラオス北部の山岳地帯では、近年まで(現在においても)マラリアやデング熱などの、蚊が媒介する病気により乳幼児が亡くなる率が他国に比べかなり高く、実際には、赤ちゃんや家族の健康と生命を守るため、神仏への切実な祈りを込めて手掛けられてきたものとなります。

ラック染めの臙脂色のシルク織り地をベースに、天然色染めシルク糸を用いた緯紋織と縫取織により、象と鳥の混交モチーフ“サーン・ホーン(saang hong)”、双頭の蛇龍神“ナーク(ngeuak)”、精霊、精霊を背に乗せた神獣等の様々な吉祥・守護モチーフが、全長4m超の布上に、一つ一つ文様を変えて、極めて精緻に織り込まれます。

手間隙を掛けて自前の糸・染料等の素材を準備し、祈りとともに丹精を込めて染め・織りをおこなう作品からは、瑞々しい生命感と家族への愛情ゆえの温かみが伝わってまいります。

蚊帳を装飾するための手織り布、まさに”生活と祈り”の染織作品です。





※上画像はStudio Naenna Co.Ltd.刊「Lao-Tai Textiles」より転載いたしております

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