アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

江戸時代後期 右肩上がり吉祥模様・型染裂

2021-11-19 04:30:00 | 染織




製作地 日本 ※地域不詳
製作年代(推定) 19世紀初期 江戸時代後期
素材/技法 木綿、天然染料、天然顔料 / 型染、片面染め
サイズ 幅(緯)32cm、長さ(経)175cm

鶴亀の丸紋と松竹梅及び唐草で構成される吉祥模様が多色遣いで緻密かつ躍動感豊かに染め描かれた、今から2百年を遡る19世紀初期作の木綿型染布。

本記事の最下掲載の「参考画像」のように、布を横並びに接ぎ合せると唐草の細部が繋がり、模様は右肩上がりに途切れることなく続くよう巧みに構成されており、デザイン・モチーフに込められた”繁栄の祈り”がより具体的に伝わってまいります。

特筆すべきは唐草模様の細部の手の込み方と白の輪郭を伴った色付けの明瞭さで、通常型染の唐草は総じて抽象化が進んでおりますが、本作品は手描き(筒描)で表される模様に相似するほど繊細さと力強さが際立っております。

当時としては特別上質な木綿糸が用いられていることを併せ、本型染布が武家・貴族等の上流階級向けに手掛けられたものであることは明らか、幕末前の充実した江戸期染織に固有の密度の濃い精神性と色香、染め職人の技巧の粋と”いき”が随所から感じ取れる一枚です。






































(光学顕微鏡による画像)



(参考画像)
本布が横並びに接ぎ合された際のイメージ図


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