ぼくは版画が好きな方だから、それに”半地元”の横浜美術館であるというし、早々と出掛けた。たしか大阪の春場所に行く前の日だったから、もう一か月も前。その後、横浜高島屋で川瀬巴水展をみて、それはすぐブログ記事にしているのにどうしたことか。この展覧会は幕末から現代までの木版画の歴史みたいなもので、まとめづらいということもあったかもしれない。
それぞれの時代、どの作家が選ばれているかという観点でみてみよう、なんて書き出したが、もともとそんなに知識があるわけでもないから恥をかくだけ。じゃあ、自分の好みの作家がどれだけ入っていたか、それなら問題なかろうずら。
第1章は幕末・明治/生活を彩る木版画。ここではまず、歌川豊国(三代)がお相撲さん”生月鯨太左ェ門/当十八才”登場でにんまり。国芳は”ほおづきづくし”が2点だけ。そしてお弟子さんの芳年は、ぼくの好みの美人が出演する”風俗三十二組”から4点も。そのまたお弟子さんの清方は文芸倶楽部の口絵、1点のみ。そして光線画、小林清親が”両国花火の図”ほか3点。
第2章:大正から昭和/木版画の復活。大正といえば、渡邊庄三郎率いる「大正新版画」でござんすが、まずは恩地孝四郎や川上澄生。先日、恩地の”ダイビング”が朝日新聞の美術欄に取り上げられていましたね。ぼくも印象に残った作品の一つ。そして、お馴染み新版画家、橋口五葉のいい女三人組(笑)。化粧の女、浴後の女、髪梳る女、どれも最高傑作。巴水は控えめに、”東京十二題”から4点のみ。そして、深水は名作”口紅”と”涼み”。竹久夢二の木版による便箋、千代紙、ポチ袋などのデザインも目を見張る。
第3章:1950年代以降/国際的な舞台へ。ここでは、まさに世界的な版画家。わだばゴッホになる、の棟方志功。”華狩頌”の一点のみ。一点突破全面展開だ! 川上澄生は”南蛮調十題”から。深水は”髪”で再登場。知らない画家が多いが、斎藤清の”凝視”(ネコ)とか、吉田千鶴子の”谷間の蝶”も良かったですね。
第4章:現代/新たな木版画の表現へ。2000年代以降の作家。木版技法を生かしての制作。湯浅克俊の”3:05 am》”木々を映す水辺の風景、青と緑がうつくしいこと。桐月沙樹は版木の木目は、そのままで絵、だから絵を重ねるつもりで制作した。”ナミマノダンサー”。描かれるバレリーナは木目の一部になったり、切り取られたり。風間サチコ”噫!怒涛(ああ どとう) の閉塞艦”。吉田亜世美は”YEDOENSIS”。
まさに、魅惑のニッポン木版画で、とても楽しい展覧会だった。その上、常設館には大きなカラスが戻っていたし、新入生のあの子もいたし。
今朝は、仙台郊外からの投稿です。昨日の福島の花見山は、これまで一番の見頃だったです。南東北の桜旅もいよいよ最終日となりました。