ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

歴史編(34)お日さん東 月西に

2009年11月30日 | 歴史編
■平成21年11月30日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★人麻呂の かぎろい名歌 生んだ野は 今も静かに 夜明け待つ

やすみしし わが大王おほきみの たからす 皇子みこ 
かむながら かむさびせすと 太敷ふとしかす みやこをおきて

天皇おおきみ御子おこ 皇子おうじさん 立派に成長 しなさって 天皇おおきみ治める みやこ出発ち》
隠口こもりくの 泊瀬はつせやまは 真木まき立つ あら山道やまみちを いは 禁樹さへきおしなべ
初瀬はつせの山の 山道を 岩よじ登り 木を分けて》
さかとりの 朝越えまして たまかぎる 夕さりくれば み雪降る 安騎あき大野おおのに 
旗薄はたすすき 小竹しのをおしなべ 草枕 旅宿りせす いにしへ思ひて

《朝越えなさり 夕方ゆうべには 雪の降ってる 安騎野あきの着き
 ススキや竹を  敷きつめて 父君偲んで 旅宿り》
―柿本人麻呂―〔巻一・四五〕 
 
阿騎あきの野に 宿やどる旅人 うちなびき らめやも いにしへおもふに
阿騎あきまで 狩りに来たのに 昔来た 草壁皇子みこ思い出し みなられへん》
―柿本人麻呂―〔巻一・四六〕 
ま草刈る 荒野にはあれど 黄葉もみぢばの 過ぎにし君が 形見かたみとぞ
《ここ阿騎野 荒れ野やけども 草壁皇子みこさんが はかのうなった 追慕ついぼの場所や》
―柿本人麻呂―〔巻一・四七〕 
ひむかしの 野にかぎろひの 立つ見えて かへり見すれば 月かたぶきぬ
《日が昇る 月沈んでく 西空に 草壁皇子みこの面影 浮かんで消える》
―柿本人麻呂―〔巻一・四八〕 
日並ひなみしの 皇子みこみことの 馬めて 御猟みかり立たしし 時はむか
《今はない 草壁くさかべ皇子みこが 馬並べ 狩に出たんも いまこの時分》
―柿本人麻呂―〔巻一・四九〕 






【ひむがしの】へ


日めくり万葉集<9月>(その1)

2009年11月27日 | 日めくり万葉集
■平成21年11月27日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★空を見て ロマンの思い 浸るんは 今も昔も 一緒なんやな

あめの海に 雲の波立ち 月の舟 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ
《天  海や 雲は波やで 月船や 星林やで 漕いでん見える》
                         ―柿本人麻呂歌集―〔巻七・一〇六八〕 


★お座成りな 言葉残して 人麻呂は 戻らず鴨の 山辺で罷かる

な思ひと  君は言へども 逢はむ時 いつと知りてか 我が恋ひずあらむ
《安心し  また逢えるやん 言うたけど 逢われんかったら どないするねん》
                         ―依羅娘子よさみのをとめ―〔巻二・一四〇〕


★越中の 宴主うたげあるじの はからいの かずら頭に がる家持

油火あぶらひの 光りに見ゆる 吾がかづら さ百合の花の まはしきかも
灯明ひあかりに くっきりえる わがかずら 微笑ほほえみかける 百合花蘰ゆりばなかずら
                         ―大伴家持―〔巻十八・四〇八六〕 


歴史編(33)あの児いまごろ・・・

2009年11月26日 | 歴史編
■平成21年11月26日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★都居り 瞑目めいもくすれば 潮騒が 聞こえる伊勢の 行幸みゆき風景

鳴呼見乃浦あみのうらに 船乗ふなのりすらむ 孃嬬おとめらが 珠裳たまもすそに 潮つらむか
《あみの浦  船遊びする あの児らの 裾を濡らすか 潮満ちてきて》
                         ―柿本人麻呂―〔巻一・四〇〕 


くしろ  手節たふしさきに 今日けふもかも 大宮人おおみやびとの たまるらむ
《喜々として 手節たふしの崎で きれえな藻 ってるやろか 今日もあの児ら》
                        ―柿本人麻呂―〔巻一・四一〕 


潮騒しほさゐに 伊良虞いらご島辺しまへ 漕ぐ船に 妹乗るらむか 荒き島廻しまみ
《波荒い  伊良湖の島の 島めぐり 喜んでるか あの児も乗って》
                        ―柿本人麻呂―〔巻一・四二〕 






鳴呼見乃浦あみのうらに】へ


日めくり万葉集<8月>(その3)

2009年11月24日 | 日めくり万葉集
■平成21年11月24日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★新婚の 嫁さん料理 上手やで しただみレシピ 歌で歌とてる
香島かしまねの 机の島の しただみを いひりひ持ち来て 
石もち つつきやぶり 速川に 洗ひすすぎ 
辛塩からしおに こごとみ 高杯たかつきに盛り 机に立てて 
母にあへつや 目豆児めづこ刀自とじ 
父にあへつや 身女児みめこ刀自とじ

《机の島の シタダミひろろて
 石で砕いて きれえにあろろて
 塩もみしてから うつわに盛って
 おかあにあげたか お嫁さん
 おとうにやったか 嫁さんよ》
                         ―作者未詳―〔巻十六・三八八〇〕 


★清楚花 悩むみたいに 見えへんが 人知られんと 堪えとるのんか
夏の野の 繁みに咲ける ひめ百合ゆりの 知らえぬ恋は 苦しきものそ
《知られんで  ひとり思てる 恋苦し 夏の繁みで 咲く百合みたい》
                       ―大伴坂上郎女―〔巻八・一五〇〇〕 


★最愛の お前残して あぢま野の 配流たび先暮らし 長ごなってもた
ほととぎす あひだしまし置け が鳴けば 我がふ心 いたもすべなし
《ホトトギス  引っ切り無しに 鳴きないな 聞いたら心 締め付けられる》
                       ―中臣宅守なかとみのやかもり―〔巻十五・三七八五〕


★親や妻 生きてるうちに 孝行こうこせな 墓に布団は 掛けられへんで
世間よのなかは まこと二代は 行かざらし 過ぎにし妹に 逢はなく思へば
《人生は 二度ないらしい 死んでもた うちのあいつに 逢われへんがな》
                         ―作者未詳―〔巻七・一四一〇〕 

歴史編(32)神さんみんな仕えてなさる

2009年11月20日 | 歴史編
■平成21年11月20日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★山や川 ひれ伏すように 声響く 人麿詠う 宮殿みやどの讃歌

やすみしし わご大君 神ながら 神さびせすと 
吉野川 たぎ河内かふちに 高殿を 高知りまして 登り立ち 国見をせせば

《天皇さんは 神さんや 吉野の川の かわふちに 御殿やかた造られ 登りみる》
たたなはる 青垣山あおかきやま 山神やまつみの まつ御調みつきと 
春べは 花かざし持ち 秋立てば 黄葉もみちかざせり
 
《山の神さん かざりやと 春には花を 咲かせはり 秋には黄葉もみじ 作りはる》
ふ 川の神も 大御食おほみけに つかまつると 
かみつ瀬に 鵜川うかはを立ち しもつ瀬に 小網さでさし渡す
 
《川の神さん 御馳走ごちそうと 上流かみで鵜飼を 楽しませ 下流しもで網取り さしなさる》
山川も りてつかふる 神の御代かも
《山や川 みんな仕える 天皇おおきみさんに》
                          ―柿本人麻呂―〔巻一・三八〕 

山川も りてつかふる 神ながら たぎつ河内かふちに 船出せすかも
《山川の 神もつかえる 天皇おおきみが 逆巻く川に 船出ふなでしなさる》
                          ―柿本人麻呂―〔巻一・三九〕 






【依りて仕ふる】へ


日めくり万葉集<8月>(その2)

2009年11月19日 | 日めくり万葉集
■平成21年11月19日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★賞金の 懸った戯れ歌 見事やと 銭二千文 手に入れたんや
我妹子わぎもこが ひたひふる 双六すごろくの ことひの牛の 鞍の上のかさ
《うちの女房かか でこに生えてる 双六の 牡牛おうしの鞍の 上のかさぶた
                        ―阿倍子祖父あへのこおおじ―〔巻一六・三八三八〕


★早春の カタクリの群れ 綺麗やな 集まる乙女 これまた綺麗
もののふの 八十娘子やそをとめらが 汲みまがふ 寺井の上の 堅香子かたかごの花
《娘さん  ようけ集まり 水汲みや 傍で咲いてる かたかごの花》
                         ―大伴家持―〔巻十九・四一四三〕 


★思いやる うちの心根 受け止めて うちの父ちゃん 沓履いたかな
信濃道しなぬぢは 今のり道 刈りばねに 足踏ましむな くつはけ我が背
信濃しなのみち 新し道や 切り株で 足痛めなや あんた沓履き》
                         ―東歌・信濃国歌―〔巻十四・三三九九〕 

歴史編(31)吉野宮滝ええとこでっせ

2009年11月18日 | 歴史編
■平成21年11月18日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★大海人の 思い出深い 宮滝に 離宮作りて 行幸みゆき重ねる
やすみしし わご大君の きこす あめの下に 国はしも さはにあれども 
山川の 清き河内かふちと 御心を 吉野の国の はならふ 秋津の野辺のへに 
宮柱 ふときませば

天皇おおきみの お治めなさる 国々は 仰山ぎょうさんあるが
 山川の 綺麗きれえなとこと 気に入りの 吉野の国の 秋津野あきつの
 宮殿みやどの作り おわしまし》
百磯城ももしきの 大宮人は ふねめて 朝川渡り ふなこそひ 夕河渡る 
《お連れの人は 朝となく ゆうべとなしに 船遊び》
この川の 絶ゆることなく この山の いや高知らす 
みずたぎつ たぎの都は 見れどかぬかも

《流れ続ける 川水と たこたこうに 茂る山 その滝の宮 見飽けへん》
                         ―柿本人麻呂―〔巻一・三六〕 

見れど飽かぬ 吉野の河の 常滑とこなめの 絶ゆることなく また還り見む
《見飽けへん  吉野の川に また来たい またまた来たい ずうっとずっと》
                         ―柿本人麻呂―〔巻一・三七〕 





【見れど飽かぬ】へ


日めくり万葉集<8月>(その1)

2009年11月17日 | 日めくり万葉集
■平成21年11月17日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★移り行く 季節麗し 移れへん ものも麗し 素晴らし自然
立山たちやまに 降りける雪を 常夏とこなつに 見れどもかず 神からならし
《立山に 積もった雪を 夏じゅうに 見てて飽けへん 山 神さんや》
                         ―大伴家持―〔巻十七・四〇〇一〕 

★いつの世も 男強引 女待つ その気させんの どっちなんかな
上野かみつけの 安蘇あそのま麻群そむら かきむだき れどかぬを あどかがせむ
《飛びついて  お前を抱いて 寝たけども まだまだ足らん ワシどないしょう》
                         ―東歌・上野国歌―〔巻十四・三四〇四〕 

★真面目顔 してるくせして 家持は 人を茶化して 喜んどおる
石麻呂いはまろに 我物申す 夏痩せに 良しというものぞむなぎ取り
おせたろか 石麻呂いわまろさんよ 夏痩せに 鰻ええ言う 食うたらどうや》
                         ―大伴家持―〔巻十六・三八五三〕 


歴史編(30)湖淋しに日が暮れる

2009年11月16日 | 歴史編
■平成21年11月16日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★草茂り 霧が流れる 古宮は 雲を霞と 消え果て流る
玉襷たまだすき 畝火うねびやまの 橿原かしはらの 日知ひじり御代みよゆ れましし かみのことごと 
つがの いやつぎつぎに あめした らしめししを
 
《畝傍の山の 橿原の 神武じんむ御代みよを 始めとし
 引き継ぎきたる 大君おおきみの 治め給いし 都やに》
そらにみつ 大和やまとをおきて あをによし 奈良山ならやまえ いかさまに おもほしめせか 
《何をおもたか 大和捨て 奈良山越えて はるばると》
天離あまざかる ひなにはあれど いはばしる 淡海あふみくにの 
楽浪さざなみの 大津おおつみやに あめした らしめしけむ
 
《近江の国の 大津宮おおつみや 都移しを したんやろ》
天皇すめろぎの かみみことの 大宮おおみやは こことけども 大殿おおとのは こことえども 
春草はるくさの しげひたる かすみ立ち 春日はるひれる ももしきの 大宮処おおみやどころ 見れば悲しも

《それや言うのに  その都 目当ての場所は 草繁り 大宮大殿 見当たらん
 どこ行ったか 雲霞かすみ 悲しさ募る 大宮処》
                         ―柿本人麻呂―〔巻一・二九〕 

ささなみの 志賀の辛崎からさき さきくあれど 大宮びとの 船待ちかねつ
《唐崎は そのまんまやが 待ってても 古都人ふるみやひとも 船も来えへん》
―柿本人麻呂―〔巻一・三〇〕 

ささなみの 志賀の大わだ よどむとも 昔の人に またもはめやも
せんいな よどみずみたいに とどまって 昔の人に おうおもても》
                         ―柿本人麻呂―〔巻一・三一〕 

いにしへの 人にわれあるや ささなみの ふるみやこを 見れば悲しき
《この古い 都見てたら 泣けてくる 古い時代の 自分ひとやないのに》
                         ―高市黒人たけちのくろひと―〔巻一・三二〕

淡海あふみうみ 夕浪ゆうなみ千鳥ちどり けば こころもしのに いにしへおもほゆ
《おい千鳥 そんなに啼きな 啼くたんび 古都みやこ思うて たまらんよって》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三―二六六〕 





【ささなみの】へ


日めくり万葉集<7月>(その5)

2009年11月13日 | 日めくり万葉集
■平成21年11月13日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★「吾子あこ」と呼ぶ 郭公鳥に 呼びかける 声聞くたびに 誰思うのか
答へぬに  な呼びとよめそ 呼子鳥 佐保の山辺を 上り下りに
《カッコウよ 返事も無いのに 呼びないな 佐保のお山を あちこち行って》
                         ―作者未詳―〔巻十・一八二八〕 

紀郎女いらつめは 本気なんかい 構うんか ぼんち家持 気が揉めるがな
昼は咲き よるは恋ひる 合歓木ねむの花 君のみ見めや 戯奴わけさへに見よ
《昼咲いて 夜は恋見る 合歓ねむの花
 ねえさま見たで ぼんちも見いや》
                        ―紀郎女きのいらつめ―〔巻八・一四六一〕

★天皇も 都移りが 寂しいか 新都平城ならへの 道黄昏たそがれ
飛ぶ鳥の 明日香あすかの里を 置きてなば 君があたりは 見えずかもあらむ
《明日香里 捨てて新都へ 行ったなら あんた居るとこ 見えんになる》 
                         ―元明天皇―〔巻一・七八〕 

★大仏の 造営進む 奈良の宮 天皇すめろき詔に 感涙むせぶ
天皇すめろきの 御代みよ栄えむと あずまなる 陸奥山みちのくやまに くがね花咲く
陸奥みちのくの 山できん出た 天皇てんのうの 御代みよの栄の しるしやきっと》
                         ―大伴家持―〔巻十八・四〇九七〕 

★老いの身に 病重なる 憶良なお 気概旺盛 この意気を見よ
をのこやも 空しくあるべき 万代よろづよに 語りくべき 名は立てずして
丈夫ますらおと 思うわしやぞ のちの世に 名ぁ残さんと 死ねるもんかい》
                         ―山上憶良―〔巻六・九七八〕 


歴史編(29)誰もがみんなぼっとして

2009年11月12日 | 歴史編
■平成21年11月12日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★舎人らの すすり泣き声 聞こえてる 皇子の御殿は 寂しゅうなった
ひさかたの あめ見るごとく あふぎ見し 皇子みこ御門みかどの 荒れまくしも
《慕いつつ 仰いで見てた 皇子みこ御殿みや 人住まへんで 荒れて行くんや》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・一六八〕 

★日は天皇てんの 月は皇子さん 二人いて この国御代は 栄え行くのに
あかねさす 日は照らせれど ぬばたまの 夜渡る月の かくらくしも
《明るうに 日は照るけども 月みたい ひかってられた 皇子みこ見られへん》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・一六九〕 

★鳥かても ご主人探し 泳いでる いくら待っても 出でなさらんに
島の宮 まがりの池の 放ちどり 人目に恋ひて 池にかづかず
皇子みこがいた 宮の池住む 放ち鳥 人恋しいと 水にもぐらん》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・一七〇〕 




【池に潜かず】へ


日めくり万葉集<7月>(その4)

2009年11月11日 | 日めくり万葉集
■平成21年11月11日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★片恋や 言うて恋文 送るんは 言い訳構え するプロポーズ
ますらをや 片恋ひかたこいせむと 嘆けども しこのますらを なほ恋ひにけり
《片恋は 男のするもん ちゃうけども 仕方しょうないやっちゃ ワシ恋してる》
                         ―舎人皇子とねりのみこ―〔巻二・一一七〕

★空を見て ロマンの思い 浸るんは 今も昔も 一緒なんやな
あめの海に 雲の波立ち 月の舟 星の林に 漕ぎかくる見ゆ
てん うみや 雲は波やで 月船や 星林やで 漕いでん見える》
                         ―柿本人麻呂歌集―〔巻七・一〇六八〕 

★可愛い子の 手ぇ撫でながら 頬ずりし 抱きしめ男 目に見えるよう
多摩たまがはに さらす手作り さらさらに なにそこのの ここだかなしき
《多摩川で 手りの布を さらに さらに一層 このいとおし》
                         ―東歌・武蔵国歌―〔巻十四・三三七三〕 

★衝動の 買いもんいつも こうなるで 何度やっても 懲れへん児やな
西の市に ただひとりでて ならべず 買ひてし絹の あきじこりかも
《西の市 ひとり出掛けて 絹うた よう比べんで 買いぞこないや》
                         ―作者未詳―〔巻七・一二六四〕 

★意味のない 歌を詠えの 問いかけに 応え即座の ナンセンス歌
我が背子せこが 犢鼻たふさきにする つぶれいしの 吉野の山に 氷魚ひをさがれる
《うちの人 ふんどしにする 丸い石 吉野お山で 鮎稚魚ちぎょさがる》
                         ―安倍子祖父あへのこおおじ―〔巻十六・三八三九〕


日めくり万葉集<7月>(その3)

2009年11月09日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月9日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★鮑貝 可哀想やで いつまでも 片恋してたら 結ぶんいつや
伊勢の海人あまの 朝な夕なに かづくといふ あはびかひの 片思かたもひにして
《朝夕に  伊勢の漁師が 潜り捕る 鮑貝やで ワシ片恋や》
―作者未詳―〔巻十一・二七九八〕 

★筑紫から 帰ってきたが ワシ独り 木ィ繁ってて いっそ寂しい
いもとして 二人ふたり作りし わが山斎しまは たかしげく なりにけるかも
《その昔 お前と作った うちの庭 木ィ鬱蒼うっそうと 繁ってしもた》
―大伴旅人―〔巻三・四五二〕 

★ほっといて ワシどう鳴こと 勝手やろ 人のことまで 考えてない
からすとふ おほをそ鳥の まさでにも 来まさぬ君を ころくとそ鳴く
《烏めは 大間抜けやで 絶対に あの児来ないに コロク〔児ろ〕と鳴くよ》
―東歌―〔巻十四・三五二一〕 

★あの船も 大和帰るか ワシももう そろそろ家が 恋しなったは
旅にして 物恋ものこほしきに 山下やましたの あけのそほ船 沖へぐ見ゆ
《なんとなく 物の恋しい 旅やのに あか塗り船が 沖通ってく》
―高市黒人―〔巻三・二七〇〕 


歴史編(28)なんでやねん!

2009年11月06日 | 歴史編
■平成21年月日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★政敵を 葬り去って わが子(草壁皇子)をば やっと帝位に 就かそとしたに

天地あめつちの はじめの時 ひさかたの あま河原かはらに 
八百万やほよろづ 千万神ちよろづかみの 神集かむつどひ 集ひいまして 神分かむあがち あがちし時に
 
あまの河原に 世の始め 神々多く 集まって 統治おさめの国の 定めした》
あまらす 日女ひるめみこと あめをば 知らしめすと 
葦原あしはらの 瑞穂みづほの国を 天地の 寄り合ひのきはみ 知らしめす 神のみことと 
天雲あまぐもの 八重かき別けて かむくだし いませまつりし

天国あまくに統治おさめる 天照あまてらす 国の極みの 瑞穂みずほくに 治め給えと みこさんを
 雲かき分けて くだらせる》
高照らす 日の皇子は 飛鳥とぶとりの きよみの宮に かむながら ふときまして 
天皇すめろぎの きます国と 天の原 石門いはとを開き 神あがり あがりいましぬ

みこ子孫そのみこ 天武帝 飛鳥の宮に 国作る
 作った天皇おおきみ 身罷みまかって てんくにへと のぼられる》
わごおほきみ 皇子みこみことの 天の下 知らしめしせば 
はるはなの たふとからむと 望月もちづきの たたはしけむと 
天の下 四方よもの人の 大ふねの 思ひたのみて 天つ水 あふぎて待つに 
いかさまに 思ほしめせか 

《天武みかどの その御子おこが 治め給えば この国は
 春は花咲き 望月は つベきものと
 世の人の 望み頼みて その時が 今に来るかと 思いしに》 
由縁つれもなき 真弓まゆみをかに 宮柱 太敷きいまし 御殿みあらかを 高知りまして 
朝ごとに 御言みこと問はさぬ 日月ひつきの 数多まねくなりぬる 
そこゆゑに 皇子の宮人 行方知らずも 

《縁無き里の 真弓まゆみおか 築いた御殿みやは 殯宮あらきみや
 お言葉なしの 日数ひかず過ぎ 仕える宮人みやびと 途方にくれる》 
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・一六七〕 
               ※殯宮あらきのみや―埋葬に先立つ新城あらきでの祀り





【仰ぎて待つに】へ


日めくり万葉集<7月>(その2)

2009年11月05日 | 日めくり万葉集
■平成21年11月5日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★防人に 出向く夫を 気遣こうて 新妻こころ 悲してならん
今年行く 新島守にひしまもりが 麻衣あさごろも 肩のまよひは たれか取り見む
《新任の 若い防人 着てる服 ほつれてもたら 誰直すやろ》
                         ―作者未詳―〔巻七・一二六五〕 

★弟よ どうか無事でと 祈る姉 明日の成り行き 共に知らんで
我が背子せこを 大和へると さ夜更けて あかときつゆに 我が立ち濡れし
《お前だけ  大和帰して 夜明けまで 夜露に濡れて 立ち尽くしてた》
                         ―大伯皇女―〔巻二・一〇五〕 

★漕ぎ隠る 小舟の行方 案ずるが わしの心も 波に漂う
いづくにか 船泊ふなはてすらむ 安礼あれの崎 漕ぎ廻こ たみ行きし 棚無たなな小舟をぶね
《あの小舟 どこで泊まりを するんやろ さっき安礼崎あれさき 行ったあの舟》 
                         ―高市黒人―〔巻一・五八〕 

★恋やつれ してる姿は 見せとない でも見て欲しな この胸の内
恋にもそ 人は死にする 水無瀬川みなせがは 下ゆあれす 月に日に
《恋したら  人死ぬんやで うちもそや あんた分かるか 日に日に痩せて》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〔巻四・五九八〕

★霧出ても ええけど雨は 降らんとき 水嵩増えたら 船漕がれへん
牽牛ひこぼしし つま迎へぶね 漕ぎらし あま川原かはらに 霧の立てるは
《彦星の  迎えの船が 出たんやな 天の川原に 霧出てるがな》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五二七〕