ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

人麻呂編(12)わしは死んでくお前逢わんと

2010年02月08日 | 人麻呂編
■平成22年2月8日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★歌聖なる 名前呼ばれし 人麻呂の 死処しどころ何処いずこ 鴨山何処いずこ

鴨山かもやまの 岩根いはねける われをかも 知らにといもが 待ちつつあるらむ
《鴨山で  わしこのままで 死ぬのんか 何も知らんと お前待つのに》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二二三〕 

な思ひと 君は言へども 逢はむ時 何時いつと知りてか わが恋ひずあらむ
《安心し また逢えるやん うたけど 逢われんかったら どないするねん》 
                         ―依羅娘子よさみのをとめ―〔巻二・一四〇〕

ただの逢ひは 逢ひかつましじ 石川に 雲立ち渡れ 見つつしのはむ
《雲あがれ  逢いたなったら 雲あがれ 逢われへんけど 雲雲あがれ》
                         ―依羅娘子よさみのをとめ―〔巻二・二二五〕

今日けふ今日けふと わが待つ君は 石川の かひまじりて ありといはずやも
《どこおるん 今か今かと 待ちよるに 貝と一緒に るてうんか》
                         ―依羅娘子よさみのをとめ―〔巻二・二二四〕

荒波に 寄りくる玉を まくらに置き われここにありと たれか告げなむ
《ここにる 波を枕に ここ居ると みんなに言うてや ここ居るよって》
                         ―丹比笠麿たじひのかさまろ―〔巻二・二二六〕

天離あまざかる ひな荒野あらのに 君を置きて 思ひつつあれば 生けりともなし
《どう思う こんな田舎に 眠らして あんたどないや うちつらいけど》
                         ―作者不詳―〔巻二・二二七〕 






【鴨山の】へ


人麻呂編(11)手向けの歌を歌うてあげる

2010年02月01日 | 人麻呂編
■平成22年2月1日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★身寄り無い 人の捧げる 手向け草 人麻呂挽歌 心に沁みる

■香久山での行き倒れ人
草枕くさまくら 旅の宿やどりに つまか 国忘れたる 家待たまくに
《誰やろか  こんなとこ来て 死んではる 国はどこやろ 家で待つやろ》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・四二六〕 

■吉野川で溺れた出雲の娘子
八雲やくもさす 出雲いづもの子らが 黒髪くろかみは 吉野の川の おきになづさふ
《出雲から 出て来たこの児 可哀相かわいそや 川で溺れて 沈んでるがな》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・四三〇〕 
山のゆ 出雲いづもらは きりなれや 吉野の山の みねにたなびく
《出雲の児  霧になったか 山の上 雲と一緒に 棚引いとおる》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・四二九〕 






【国忘れたる】へ


人麻呂編(10)帰って来たで大和の国に

2010年01月25日 | 人麻呂編
■平成22年1月25日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★夢に見た 大和島山 滲んでる 霞の所為せいか 涙の所為か

稲日野いなびのも 行きぎかてに 思へれば 心こほしき 可古かこしま
《退屈な 印南野いなみのつづく おお見えた 加古の港や 待ってたんやで》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・二五三〕 

飼飯けひの海の にはくあらし 刈薦かりこもの みだづ見ゆ 海人あまの釣船
飼飯けひうみは いだみたいや つり船が いっぱい出てきた こら大漁や》 
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・二五六〕 

天離あまざかる ひな長道ながぢゆ 恋ひれば 明石のより 大和島やまとしま見ゆ
《長い道 恋し恋しと 明石来た 海峡かいきょう向こうに 大和の山や》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・二五五〕 






【大和島見ゆ】へ


人麻呂編(09)海の藻見たらお前懐かし

2010年01月19日 | 人麻呂編
■平成22年1月19日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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旅道たびみちは 死別れ覚悟 辛い道 見る海落ち葉 皆妻恋に

つのさはふ 石見いはみの海の ことさへく からの崎なる 
海石いくりにそ 深海松ふかみるふる 荒磯ありそにそ 玉藻はふる

からみさきの 海底うみそこの 岩にはミルが 生えている 磯には玉藻 育ってる》 
玉藻なす なびし児を 深海松ふかみるの 深めておもへど 
し夜は いくだもあらず つたの 別れしれば
 
《靡く藻みたいに 寝たあの児 深い心で おもてたが
 寝た夜なんぼも あれへんに 置いて出て来て しもたんや》 
きも向かふ 心をいたみ 思ひつつ かへりみすれど 
大船の わたりの山の 黄葉もみちばの 散りのまがひに 妹がそで さやにも見えず
 
《せつうなって 振り向いた 落葉えらいに 降ってきて お前振る袖 見えやせん》 
嬬隠つまごもる 屋上やがみの山の 雲間より 渡らふ月の しけども かくろひ来れば 
《お前住んでる 屋上やがみ山 照ってる月を 隠すよに 隠れてしもて さみしなる》
あまつたふ 入日さしぬれ 大夫ますらをと 思へるわれも 敷栲しきたへの ころもの袖は 通りて濡れぬ
《お日さん沈んで わびしなり なんぼわしでも 泣けてきて 袖を濡らして 仕舞しもたんや》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・一三五〕 
青駒あおごまの 足掻あがきを早み 雲居くもゐにそ いもがあたりを 過ぎてにける
《馬のやつ 足早いんや 早すぎて お前の家を 通り過ぎたで》 
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・一三六〕 
秋山に 落つる黄葉 しましくは な散りまがひそ 妹があたり見む
《ちょっとの 落ち葉るのん 待ってんか お前の家が 見えへんよって》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・一三七〕 






【つのさはふ】へ


人麻呂編(08)邪魔する山よ飛んでまえ

2010年01月14日 | 人麻呂編
■平成22年1月14日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★妹置いて 都へ上る 人麻呂に 石見の烈風かぜが 吹き付ける

石見いはみうみ つの浦廻うらみを 浦しと 人こそ見らめ かたしと 人こそ見らめ 
よしゑやし 浦は無くとも よしゑやし 潟は無くとも 

《石見の国の 都野つのの浦 よろし湊も 浜もない
 かまへんえで 湊なし 浜はうても この海は》
鯨魚いなさ取り 海辺をさして 和多豆にきたづの 荒磯ありその上に か青なる 玉藻おきつ藻 
朝羽振あさはふるる 風こそ寄せめ ゆふ羽振はふる 浪こそ来寄れ

《魚捕れるし  磯の上 朝には風が 夕べ波 青い玉藻を 持って来る》
浪のむた か寄りかく寄り 玉藻なす 寄り寝し妹を 露霜つゆしもの 置きてしれば
《その藻みたいに 寄りうて 寝てたお前を 置いてきた》
この道の 八十隈やそくまごとに よろづたび かへりみすれど
いやとほに 里はさかりぬ いや高に 山も越え来ぬ

《振り向き振り向き 来たけども お前る里 遠なるし 山たこなって へだたるし》
夏草の 思ひしなえて しのふらむ いもが門かど見む
《胸のつぶれる 思いして お前のるとこ 見たなった》
 なびけこの山
《邪魔する山よ  飛んでまえ》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・一三一〕 
石見いはみのや 高角山たかつのやまの より わが振るそでを いも見つらむか
《恋しいて 高角たかつの山の あいだ 袖振ったけど 見えたかお前》
小竹ささの葉は み山もさやに さやげども われは妹思ふ 別れぬれば
《笹の葉が  ざわざわ揺れる ざわざわと わしの胸かて 風吹き抜ける》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・一三二、一三三〕 






【靡けこの山】へ


人麻呂編(07)浜辺で死んでる哀れな人よ

2010年01月08日 | 人麻呂編
■平成22年1月8日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★船旅は 明日あした命は 波の上 今日の手向けは 人事やない
玉藻たまもよし 讃岐の国は 
国柄くにからか 見れどかぬ 神柄かむからか ここだたふと
 
《讃岐の国は  ええ国や 見飽けへんほど ええ国や》
天地あめつち 日月とともに りゆかむ かみ御面みおも 
《日に日にうなる 別嬪べっぴんさん》
ぎ来たる なか水門みなとゆ 船けて わが漕ぎれば 時つ風 雲居に吹くに
《そこの湊を  出た船は 突如吹き出す 風に会い》
沖見れば とゐ浪立ち 見れば 白浪さわく いさな取り 海をかしこ 
《沖は大波 岸も白波なみ 怖い恐ろし 荒れる海》
行く船の かじ引き折りて をちこちの 島は多けど 名くはし 狭岑さみねの島の 荒磯面ありそもに いほりて見れば
《船梶止めて さみねじま なんけ船を 寄せたなら》
浪のの 繁き浜辺を 敷栲しきたへの 枕になして 荒床あらとこに 自伏ころふす君が 
《波音高い  浜の陰 一人の人が 死んでいる》
家知らば 行きても告げむ 妻知らば も問はましを 玉桙たまほこの 道だに知らず 
《知らしたいけど  家分からん どこの誰やら 知らん人》
おほほしく 待ちか恋ふらむ しき妻らは
《奥さんさぞかし  待ってるやろに》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二二〇〕 

妻もあらば みてたげまし 佐美さみの山 野ののうはぎ 過ぎにけらずや
よめると んでそなえて やったやろ えてるヨメナ とう立ってもた》 
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二二一〕 
沖つ波 よる荒磯ありそを 敷栲しきたへの まくらきて せる君かも
《波寄せる さみしい磯に 横なって 死んでる人は どこの誰やろ》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二二二〕 







【野ののうはぎ】へ


人麻呂編(06)都離れて田舎の国へ

2010年01月05日 | 人麻呂編
■平成22年1月5日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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歌人うたびとの 任解かれたか 石見いわみへと 下る人麻呂 侘しさ募る

たま刈る 敏馬みぬめを過ぎて 夏草の 野島のしまの崎に 舟近づきぬ
《にぎやかな 藻を刈る敏馬みぬめ 後にして 草ぼうぼうや 野島の岬》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・二五〇〕 

留火ともしびの 明石あかし大門おほとに らむ日や ぎ別れなむ 家のあたり見ず
《日ィ沈む 明石の大門おおと 目を返しゃ 大和とおなる 家も見えへん》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・二五四〕 

淡路あはぢの 野島の崎の 浜風に いもむすびし ひも吹きかへす
《無事でねと  お前結んで くれた紐 野島の風が 吹き返しよる》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・二五一〕 

荒拷あらたへの 藤江ふぢえの浦に すずき釣る 白水郎あまとか見らむ 旅行くわれを
《藤江浜 すずき釣ってる 漁師りょうしやと 見られんちゃうか わし旅やのに》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・二五二〕 

名くはしき 稲見いなみの海の 沖つ波 千重ちへかくりぬ 大和島根は
稲見いなみうみ 次から次と 来る波に 隠れてしもた 大和の山々やまは》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・三〇三〕 

大君おほきみの とほ朝廷みかどと ありがよふ 島門しまとを見れば 神代かみよおもほゆ
《にぎやかに 筑紫行きの 船とおる じま見たら 神秘的やな》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・三〇四〕 






【漕ぎ別れなむ】へ


人麻呂編(05)一緒来た磯懐かし限り

2009年12月24日 | 人麻呂編
■平成21年12月24日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★紀州路を たどる人麻呂 ひとり旅 おどる黒潮 躍らぬこころ

玉津島たまつしま いそ浦廻うらみの 真砂まさごにも にほひて行かな いもふれけむ
《玉津島 海辺の磯の 砂きれえ 昔にお前 さわったからか》
                         ―柿本人麻呂―〔巻九・一七九九〕 

いにしへに いもとわが見し ぬばたまの 黒牛くろうしかたを 見ればさぶしも
《前のとき お前と見たな 黒牛くろうしかた 独り見るんは 淋しいこっちゃ》
                         ―柿本人麻呂―〔巻九・一七九八〕 

黄葉もみちばの 過ぎにしと たづさはり 遊びしいそを 見れば悲しも
《手ぇつなぎ お前と一緒に 来た磯や 見たら悲して どうにもならん》
                         ―柿本人麻呂―〔巻九・一七九六〕 

のち見むと 君が結べる 磐代いはしろの 子松こまつがうれを また見けむかも
有間皇子おおじさん あんた結んだ 松の枝 帰りの道で また見たやろか》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・一四六〕 

潮気しほけ立つ 荒磯ありそにはあれど 行く水の 過ぎにしいもが 形見かたみとそ
さみし磯 思うたけども お前との 思い出場所と おもうて来たで》
                         ―柿本人麻呂―〔巻九・一七九七〕 







【形見とそ来し】へ


人麻呂編(04)遠慮してたら逢えんよなった

2009年12月21日 | 人麻呂編
■平成21年12月21日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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軽郎女いらつめを 死なせ人麻呂 うろたえる なり振りなしに 人目もなしに

あまぶや かるみちは 吾妹子わぎもこが 里にしあれば ねもころに 見まくしけど 
まず行かば 人目を多み 数多まねく行かば 人知りぬべみ
 
《あの児の家は 軽の里 逢いたい気持ち いっぱいや 度々たびたび行ったら うわさ立つ》
狭根葛さねかずら のちはむと 大船の 思ひたのみて
玉かぎる 磐垣淵いはかきふちの こもりのみ 恋ひつつあるに
 
あとで逢える日 来るおもて 恋しさ我慢で 送る日に》
渡る日の れぬるが如 照る月の 雲かくる如 沖つ藻の なびきし妹は 
黄葉もみちばの 過ぎてにきと たまづさの 使つかひの言へば
 
《照る日や月を 隠すよに もみじの葉っぱ 散るみたい お前ったと 言う知らせ》
梓弓あづさゆみ おとに聞きて はむすべ むすべ知らに おとのみを 聞きてありねば 
《どない言うたら えんやろ どしたらえか 分かれへん》
わが恋ふる 千重ちえ一重ひとえも なぐさもる こころもありやと 吾妹子わぎもこが まず出で見し 
軽のいちに わが立ち聞けば
 
えた気持ちを しずめよと お前のった 軽の市 行ってたずねて 探したが》
玉襷たまたすき 畝火うねびの山に 鳴く鳥の こゑも聞えず 
玉桙たまほこの 道行く人も 一人だに 似てし行かねば
 
《行き交う人中ひとなか 声聞こえん 人多数よけるに 影見えん》
すべをみ 妹が名びて そでぞ振りつる
うろてしもて 名ぁ呼んで わめき回って 袖振りまわす》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二〇七〕 

秋山あきやまの 黄葉もみちしげみ まとひぬる いもを求めむ 山道やまぢ知らずも
《茂ってる 黄葉もみじの山へ まよてもた お前探すに 道分れへん》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二〇八〕 
黄葉もみちばの りゆくなへに 玉梓たまづさの 使つかひを見れば ひし日思ほゆ
《あの使い 黄葉もみじ時分じぶんに また見たら 一緒った日 思いすんや》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二〇九〕 






【妹が名呼びて】へ


人麻呂編(03)初心(うぶ)なあの児に惚れたがどした

2009年12月17日 | 人麻呂編
■平成21年12月17日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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初心うぶな子を 見染め人麻呂 作る歌 初心うぶが移って 純情あふる 
み熊野の 浦の浜木綿はまゆふ 百重ももへなす こころへど ただはぬかも
浜木綿はまゆうの 葉いっぱいに 茂ってる 思いもそやが よう逢い行かん》
                         ―柿本人麻呂―〔巻四・四九六〕 

いにしへに ありけむ人も わがごとか いもに恋ひつつ ねかてずけむ
おんなじか 昔の人も ワシみたい 焦がれ恋して 寝られへんのは》
                         ―柿本人麻呂―〔巻四・四九七〕 

★純情 作った自分 照れくさく 返し歌まで 自分で作る
今のみの 行事わざにはあらず いにしへの 人そまさりて にさへ泣きし
《今だけの こととはちごて 昔かて 恋して泣いた 今よりもっと》
                         ―柿本人麻呂―〔巻四・四九八〕 

百重ももへにも 来及きしかぬかもと 思へかも 君が使つかひの 見れどかざらむ
何遍なんべんも 来て欲し思う あんたから 使い来るたび 見るたびずっと》
                         ―柿本人麻呂―〔巻四・四九九〕 






【浦の浜木綿】へ


人麻呂編(02)かわいい女房亡くしてしもた

2009年12月15日 | 人麻呂編
■平成21年12月15日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★巻向の 郎女恋し 引手山 草分け探す 乳飲み子連れて

うつせみと 思ひし時に たづさへて わが二人見し 
走出はしりでの つつみに立てる つきの木の こちどちのの 
春の葉の しげきが如く 思へりし いもにはあれど 
たのめりし らにはあれど
 
《元気でる時 二人で見たな 若葉のいっぱい 茂ったけやき
 そんないっぱい 好きたお前 末おもてた お前やけども》
世の中を そむきし得ねば かぎろひの 燃ゆる荒野あらのに 
白拷しろたへの 天領巾あまひれがくり 鳥じもの 朝ちいまして 入日いりひなす かくりにしかば
 
《世の中ならいに 逆らいできず 陽炎かげろう消えて 天行くみたい
 鳥飛び立って 帰らんみたい  太陽ィ沈むよに 隠れてしもた》
吾妹子わぎもこが 形見かたみに置ける みどり児の ひ泣くごとに 
取りあたふ 物し無ければ をとこじもの わきはさみ持ち
 
《残った赤ん 泣くたびごとに 乳もんのに 胸抱きかかえ》
吾妹子わぎもこと 二人わが宿し まくらつく 嬬屋つまやの内に 
昼はも  うらさび暮し 夜はも 息づき明し 嘆けども せむすべ知らに 
恋ふれども よしを無み

《お前と暮らした 住まいにこもり 昼間ひるまぼっとし よるためいきし 
なげいてみても どうにもならん 恋しがっても うことでけん》
大鳥おほとりの 羽易はがひの山に わが恋ふる いもすと 
人の言へば 石根いはねさくみて なづみ

《後ろの山で お前の姿 見たと聞いたら いわみち分けて
 らんもんかと 探しに行った》
けくもそなき うつせみと 思ひし妹が 玉かぎる ほのかにだにも 見えぬ思へぱ
《生きてるはずと おもてたお前 影も形も 見えんよなった あってえんか こんなこと》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二一〇〕 
衾道ふすまぢを 引手ひきての山に いもを置きて 山路やまぢを行けば 生けりともなし
引手ひきて山 お前まつって 降りてきた ひとり生きてく 気ィならんがな》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二一二〕 
去年こぞ見てし 秋の月夜つくよは 照らせども あひ見しいもは いや年さかる
去年きょねん見た 秋のえ月 今もええ 一緒いっしょ眺めた お前らんが》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二一一〕 





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人麻呂編(01)新婚女房待ってるよって

2009年12月11日 | 人麻呂編
■平成21年12月11日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★新妻の 待つ巻向は 雨もよい 気はくけども 馬足のろい

巻向まきむくの 檜原ひばらに立てる 春霞 おぼにしおもはば なづみめやも
《霧みたい すぐ消えるよな 思いちゃう そんな気ィなら 無理して来んわ》
                       ―柿本人麻呂歌集―〔巻一〇・一八一三〕 

痛足川あなしがは 川波立ちぬ 巻目まきもくの 由槻ゆつきたけに くも立てるらし
《穴師川 波立ってるで ざわざわと 由槻ゆつきたけに 雲出てるがな》
                       ―柿本人麻呂歌集―〔巻七・一〇八七〕 

あしひきの 山川やまかわの瀬の るなべに弓月ゆつきたけに 雲立ち渡る
《山筋の 川瀬鳴ってる やっぱりな つきたけに 雨雲あめぐもでてる》
                       ―柿本人麻呂歌集―〔巻七・一〇八八〕 

ぬばたまの 夜さりれば 巻向まきむくの 川音かはと高しも 嵐かも
よるけた 川の水音 こなった 今に一荒ひとあれ じき来るみたい》
                       ―柿本人麻呂歌集―〔巻七・一一〇一〕 





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