ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

黒人編(6)湖西を辿り越しへと向かう

2010年03月25日 | 黒人編
■平成22年3月25日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★漂泊の 魂連れて 黒人は 近江湖西と 越へと辿る

いそさき 漕ぎみ行けば 近江あふみうみ 八十やそみなとに たづさはに鳴く
《磯の崎 漕いで回ると うみひらけ あちこち湊に 鶴の群鳴く》 
                         ―高市黒人―〔巻三・二七三〕 

かくゆゑに 見じといふものを 楽浪ささなみの ふるみやこを 見せつつもとな
《そうやから 嫌やたのに 近江京ふるみやこ 見せたりしたら 寂しいやんか》 
                         ―高市黒人―〔巻三・三〇五〕 

わが船は 比良ひらみなとに 漕ぎてむ 沖へなさかり さ夜更よふけにけり
《夜も更けた  沖へ出らんと この船は 比良の湊で 泊まりにしょうや》 
                         ―高市黒人―〔巻三・二七四〕 

あともひて 漕ぎ行く船は 高島たかしまの 阿渡あと水門みなとに てにけむかも
《連れ立って 漕ぎ行った船 高島の 安曇あどの湊で 泊まったやろか》 
                         ―高市黒人―〔巻九・一七一八〕 

何処いづくにか われは宿やどらむ 高島たかしまの 勝野かちのの原に この日れなば
《日ィ暮れる 何処どこで泊まれば 良えんやろ 原っぱ続きの 高島たかしま勝野かちの》  
                         ―高市黒人―〔巻三・二七五〕 

婦負めひの野の すすき押しべ 降る雪に 宿やど借る今日し 悲しく思ほゆ
《降る雪が 薄を倒す 婦負めひの野で 宿を借るんは 悲してならん》 
                          ―高市黒人―〔巻十七・四〇一六〕 







【この日暮れなば】へ


黒人編(5)鶴が鳴いてく干潟向け

2010年03月15日 | 黒人編
■平成22年3月15日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★漂泊の 歌人なりや 黒人は 心ばかりか 身も漂うよ

四極しはつ山 うち越え見れば 笠縫かさぬひの 島漕ぎかくる たな小舟をぶね
四極しはつ山 越えたら見えた 笠縫かさぬひの 島に隠れた 棚なし小舟》 
                         ―高市黒人―〔巻三・二七二〕 

住吉すみのえの 得名津えなつに立ちて 見渡せば 武庫むことまりゆ づる船人ふなびと
武庫むこどまり 船を漕ぎ出す 船頭ら よう見えてるで 住吉浜で》 
                         ―高市黒人―〔巻三・二八三〕 

とくても 見てましものを 山城やましろの 高の槻群つきむら 散りにけるかも
《もっと早よ 来たらかった 山城の 多賀のつきもり 黄葉はァ散ってもた》 
                         ―高市黒人―〔巻三・二七七〕 

いももわれも 一つなれかも 三河みかはなる 二見ふたみの道ゆ 別れかねつる
《二見道 男と女の 別れどこ 離れるもんか お前とわしは》 
                         ―高市黒人―〔巻三・二七六〕 

三河の 二見の道ゆ 別れなば わが背もわれも 独りかも行かむ 《三河国  ここの二見で 別れたら あんたもうちも 一人旅やで》
                         ―高市黒人―〔巻三・二七六、一本云〕 

桜田さくらたへ たづ鳴き渡る 年魚市潟あゆちかた 潮干しほひにけらし 鶴鳴き渡る
年魚市潟あゆちかた 潮引いたんや 桜田へ 鶴鳴きながら 飛んで行くがな》 
                         ―高市黒人―〔巻三・二七一〕 

旅にして 物恋ものこほしきに 山下やましたの あけのそほ船 沖へぐ見ゆ
《なんとなく 物の恋しい 旅やのに あか塗り船が 沖通ってく》 
                         ―高市黒人―〔巻三・二七〇〕 







【鶴鳴き渡る】へ


黒人編(4)棚無し小船寂しゅう行くよ

2010年03月08日 | 黒人編
■平成22年3月8日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★三河から 行幸戻りの 従駕人 作りし歌の 自慢の披露

引馬野ひくまのに にほふ榛原はりはら 入り乱れ 衣にほはせ 旅のしるしに
《引馬野の はんの林で 木にさわり 衣に色を 染めて土産に》 
                         ―長忌寸奥麿ながのいみきおきまろ―〔巻一・五七〕

大夫ますらをが 得物矢さつや手挿たばさみ 立ち向かひ 射る円方まとかたは 見るに清潔さやけし
的方まとかたの 海はえなあ え男 弓構えたに 清々すがすがしいて》 
                         ―舎人娘子とねりのをとめ―〔巻一・六一〕

ながらふる 妻吹く風の 寒きに わが背の君は 独りからむ
《長い旅 ころもの端に 風吹いて 寒いあんた 一人やろか》 
                         ―誉謝女王よさのおほきみ―〔巻一・五九〕

よひに逢ひて あしたおもみ なばりにか ながき妹が いほりせりけむ
《長旅を  続けたお前 名張来て ここで泊まりの 宿を取ったか》 
                         ―長皇子ながのみこ―〔巻一・六〇〕

何処いづくにか 船泊ふなはてすらむ 安礼あれの崎 漕ぎ廻こ たみ行きし 棚無たなな小舟をぶね
《あの小舟 どこで泊まりを するんやろ さっき安礼崎あれさき 行ったあの舟》 
                         ―高市黒人―〔巻一・五八〕 







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黒人編(3)呼子鳥鳴いて行くのん寂しゅう見える

2010年03月01日 | 黒人編
■平成22年3月1日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★朗々と 詠う人麻呂 付いてけず 夜陰に詠う 独り黒人
持統天皇  吉野宮滝行幸
夕刻 宮滝の淵 独りたたずむ 黒人
郭公かっこうが 一羽 鳴き去ってゆく

大和やまとには 鳴きてからむ 呼子鳥よぶこどり  きさの中山  呼びそ越ゆなる
郭公鳥かっこどり きさの中山 鳴き越えた 大和へ行って 鳴いてんやろか》 
                         ―高市黒人―〔巻一・七〇〕 





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黒人編(2)近江旧都に昔を偲ぶ

2010年02月22日 | 黒人編
■平成22年2月22日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★古都寂し 渡る湖上の 風寂し 立つ黒人の 背影も寂し

いにしへの 人にわれあれや ささなみの ふるみやこを 見れば悲しき
《この古い 都見てたら 泣けてくる 古い時代の 自分ひとやないのに》 
                         ―高市黒人―〔巻一・三二〕 

ささなみの 国つ御神の うらさびて 荒れたるみやこ 見れば悲しも
《ここの国 作った神さん 心え みやこ荒れてる 悲しいこっちゃ》 
                         ―高市黒人―〔巻一・三三〕 








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黒人編(1)遊覧行幸お前と一緒

2010年02月15日 | 黒人編
■平成22年2月15日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★黒人は 彼女を連れて 遊覧に 猪名野景勝 心は弾む

吾妹子わぎもこに 猪名野ゐなのは見せつ 名次山なすぎやま つのの松原 いつか示さむ
《あの児には 猪名野いなのは見せた 名次山なすぎやま つのの松原 次に見せたろ》 
                         ―高市黒人―〔巻三・二七九〕 


いざども 大和やまとへ早く 白菅しらすげの 真野まの榛原はりはら  手折たをりて行かむ
《さあみんな 早よう大和へ 帰ろうや 榛原はりはらすげを 土産に採って》 
                         ―高市黒人―〔巻三・二八〇〕 


白菅しらすげの 真野まの榛原はりはら くささ 君こそ見らめ 真野の榛原
《行く時と 帰る時とに あんたはん 見たんやろうな あの榛原はりはらを》 
                         ―黒人の妻―〔巻三・二八一〕 



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