ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

坂上郎女編(12)今ひとつ その気湧かんな 身内の恋は

2011年05月30日 | 坂上郎女編
■平成23年5月30日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★一族が 交す相聞 遣り取りは ほんに恋かや 歌修練か
~大伴稲公の田村大嬢への相聞〈郎女代作〉~ 
あひ見ずは 恋ひずあらましを 妹を見て もとなかくのみ 恋ひばいかにせむ
《せえへんで 逢わんかったら こんな恋 うたこの胸 どう仕様しょうもない》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・五八六〉 

~大伴駿河麻呂と坂上郎女との相聞~ 
大夫ますらをの 思ひびつつ たびまねく なげく嘆きを はぬものかも
わびしゅうに 男嘆くか 何べんも 女のあんた どうなんやろか》
                         ―大伴駿河麻呂―〈巻四・六四六〉 
心には 忘るる日なく おもへども 人のことこそ しげき君にあれ
《いついつも 心にかかる あんたはん 他人ひとうるそうて 逢われへんがな》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六四七〉 
あひ見ずて 長くなりぬ この頃は いかにさきくや いふかし吾妹わぎも
《この頃は なごう逢わんと るけども あんたどしてる ちょっと気になる》
                         ―大伴駿河麻呂―〈巻四・六四八〉 
くずの 絶えぬ使の よどめれば 事しもあるごと 思ひつるかも
《絶えず来た 使いこのごろ 来えへんな あんたに何か あったんちゃうか》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六四九〉 

~安倍虫麻呂と坂上郎女との相聞~ 
向ひて 見れどもかぬ 吾妹子わぎもこに 立ち別れ行かむ たづき知らずも
《一緒て 見飽きん お前別れるて そんな方法 思い着かんで》
                         ―安倍虫麿―〈巻四・六六五〉 
あひ見ぬは 幾ひささにも あらなくに ここだく我れは 恋ひつつもあるか
《このあいだ うたとこやに なんでまた 逢いたなるんや 恋しなるんや》
恋ひ恋ひて 逢ひたるものを 月しあれば こもるらむ しましはあり待て
《久し振り うたんやから ゆっくりし 夜明けまだやし 道暗いから》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六六六~七〉 




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坂上郎女編(11)神さん頼む この恋叶え

2011年05月26日 | 坂上郎女編
■平成23年5月26日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★都ぶる 平城ならに戻った このうち、、は 恋に生きるで 女やからに

故郷ふるさとの 飛鳥あすかはあれど あをによし 平城なら明日香あすかを 見らくし好しも
故郷ふるさとの 飛鳥ええけど ここ平城ならの 明日香もええな なんぼ見てても》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻六・九九二〉 
尋常よのつねに 聞けば苦しき 呼子鳥よぶこどり 声なつかしき 時にはなりぬ
《いつもなら 聞く気せえへん 郭公鳥かっこどり 気持ち聞ける 季節なったで》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一四四七〉 

こころぐき ものにそありける 春霞 たなびく時に 恋のしげきは
《恋心 つのってるとき 春霞 ぼやっと棚引たなびき うっとしなるわ》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一四五〇〉 
いとまみ ざりし君に 霍公鳥ほととぎす 我れかく恋ふと 行きて告げこそ
ひまいて ん人に ホトトギス 恋しがってる 言うて来てんか》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一四九八〉 
五月さつきの 花橘を 君がため たまにこそけ 散らまく惜しみ
《散らすんが 惜しい橘 花つなぎ 薬玉たまにしてるで あんた思うて》 
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一五〇二〉 
夏の野の  繁みに咲ける 姫百合の 知らえぬ恋は 苦しきものぞ
《知られんで  ひとり思てる 恋苦し 夏の繁みで 咲く百合みたい》 
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一五〇〇〉 

ひさかたの あまの原より たる 神のみこと 奥山の 賢木さかきの枝に 
白香しらか付け 木綿ゆふ取り付けて 斎瓮いはひべを いはひほりすゑ 竹玉たかだまを しじき垂れ 
猪鹿ししじもの ひざ折り伏して 手弱女たわやめの 襲衣おすひ取り懸け
 
《雲分けて はるかな天の 高みから くだりこられた 神さんに 山からった 榊枝さかきえだ
 白髪しらが木綿ゆうと 取り付けて 清い酒壷 掘ってえ 竹玉いっぱい つり下げて
 けものみたいに ひれ伏して か弱いうちが 祈布ぬのを掛け》
かくだにも 我れはひなむ 君に逢はじかも
《こんないっぱい  祈ります どうかあの人 逢わして欲しい》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻三・三七九〉 
木綿畳ゆふだたみ 手に取り持ちて かくだにも 我れはひなむ 君に逢はじかも
木綿布ゆうぬのを 手にし祈るよ 懸命に どうかあの人 逢わせて欲しい》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻三・三八〇〉 



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坂上郎女編(10)気丈や云ても うちかて女

2011年05月23日 | 坂上郎女編
■平成23年5月23日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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故郷くに帰り 旅人亡くした 寂しさに 移ろう季節ときは 皆侘びしいわ

霍公鳥ほととぎす いたくな鳴きそ ひとり居て らえぬに 聞けば苦しも
《ホトトギス そないに鳴きな 聞いてたら ひとり悶々もんもん 寝られへんがな》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一四八四〉 
咲く花も をそろはいとはし おくてなる 長き心に なほかずけり
見頃みごろ前 あわて咲く花 きらいやな おそに咲くんが うちええ思う》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一五四八〉 
妹が目を 始見はつみの崎の 秋萩は この月ごろは 散りこすなゆめ
《よう咲いた 始見はつみの崎の 秋萩よ ここ一月ひとつきは 散らんといてや》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一五六〇〉 
隠口こもりくの 泊瀬はつせの山は 色づきぬ 時雨しぐれの雨は 降りにけらしも
泊瀬山はつせやま 黄葉もみじの色に 染まってる 時雨しぐれも降って 秋くんやな》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一五九三〉 
吉隠よなばりの 猪養いかひの山に 伏す鹿の 妻呼ぶ声を 聞くがともしさ
猪養山いかいやま んでる鹿が 妻呼んで 鳴くの聞いたら けてくるがな》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一五六一〉 
沫雪あわゆきの この頃ぎて かく降らば 梅の初花はつはな 散りか過ぎなむ
沫雪あわゆきが 続き毎日 降って来る 咲いた梅花 散って仕舞まううがな》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一六五一〉 
松蔭まつかげの 浅茅あさぢの上の 白雪を たずて置かむ ことはかも無き
松蔭まつかげの かやに積もった 白雪を そっと置いとく すべないやろか》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一六五四〉 
しかとあらぬ 五百代いほしろ小田をだを 刈りみだり 田廬たぶせれば 都し思ほゆ
ひろもない 田圃たんぼ耕し 暮らしてる 田舎ったら 都懐かし》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一五九二〉 





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坂上郎女編(09)何処に居っても うち人気(もて)るんや

2011年05月19日 | 坂上郎女編
■平成23年5月19日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★筑紫来て 同族言うて 言い寄りな うちはそち殿 従妹いとこやねんで

事も無く 生きしものを おいなみに かかる恋にも 我れはへるかも
《平凡に  生きてきたのに 年取って こんなせつない 恋するかワシ》
恋ひ死なむ のちは何せむ ける日の ためこそ妹を 見まくりすれ
《恋狂い  して死んだかて 意味ないで 生きてるうちに 逢いたいもんや》
おもはぬを 思ふと言はば 大野おほのなる 三笠のもりの 神し知らさむ
《嘘ついて 愛してるやて 言うたなら 三笠の神さん ばち当てはるで》
                       〈嘘やないから  罰当たらんで〉
いとま無く 人の眉根まよねを いたづらに かしめつつも 逢はぬ妹かも
《人のまゆ しょっちゅかせて その気させ うてくれんと 悪いひとやで》
                         ―大伴百代おおとものももよ―〈巻四・五五九~六二〉

黒髪に 白髪しらかみまじり ゆるまで かかる恋には いまだ逢はなくに
《黒髪に 白髪しらがじる 年なって こんな恋した ことあれへんわ》
山菅やますげの 実成らぬことを 我れにせ 言はれし君は たれとからむ
《うちのこと  思てるなんて 嘘言いな あんた誰かと 寝てるくせして》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・五六三~四〉 

大汝おほなむち 少彦名すくなひこなの 神こそば 名付けめけめ 
名のみを 名児山なごやまひて 我が恋の 千重ちへ一重ひとへも 慰めなくに

大汝おおなむち 少彦名すくなひこなの 神さんが 名前を付けた 名児山は
 名前倒れや うちの恋 万に一つも なごめへんがな》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻六・九六三〉 
我が背子に 恋ふれば苦し いとまあらば ひりひて行かむ 恋忘貝こひわすれがひ
《貝拾ろお  あんた思たら 胸苦し 恋を忘れる 片貝拾ろお》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻六・九六四〉 

今もかも 大城おほきの山に 霍公鳥ほととぎす 鳴きとよむらむ 我れ無けれども
《ホトトギス 今も大城山おおきで 鳴いてるか うち平城こっちきて もうらんのに》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一四七四〉 
何しかも  ここだく恋ふる 霍公鳥 鳴く声聞けば 恋こそまされ
《ホトトギス 鳴く声なんで 待つんやろ 聞いたら余計よけい 恋しなるのに》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一四七五〉 




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坂上郎女編(08)あんた ほんまに 妹みたい

2011年05月16日 | 坂上郎女編
■平成23年5月16日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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従姉妹いとこやが 田村大嬢たむらいらつめ 面倒めんど見た 大嬢おおいらつめを 終生慕う

そとて 恋ふれば苦し 吾妹子わぎもこを ぎて相見む ことはかりせよ
《別々の 暮らしはつらい ねえあんた 会える手だてを 考えてえな》
遠くあらば わびてもあらむを 里近く りと聞きつつ 見ぬがすべなさ
《遠いとこ るんやったら 仕様しょうないが 近く住んでて 会えんの淋し》
白雲の  たなびく山の 高々に 我が思ふ妹を 見むよしもがも
《首のばし  あんた会える日 待ってるが 会える手だては 無いもんやろか》
いかならむ 時にか妹を 葎生むぐらふの 汚なき屋戸やどに 入りいませてむ
《むさくるし このあばに あんたをば いつになったら 迎えられんや》
                         ―大伴田村大嬢―〈巻四・七五六~九〉 

茅花ちばな抜く 浅茅あさぢが原の つほすみれ 今盛りなり 我が恋ふらくは
《ツボスミレ  花がいっぱい 咲いとおる うちもいっぱい あんた会いたい》
                         ―大伴田村大嬢―〈巻八・一四四九〉 
故郷ふるさとの 奈良思ならしの岡の 霍公鳥ほととぎす ことりし いかに告げきや
奈良思ならし岡 さとホトトギス らしたが ちゃんとあんたに 伝えたやろか》 
                         ―大伴田村大嬢―〈巻八・一五〇六〉 

我が屋戸やどの 秋の萩咲く 夕影ゆふかげに 今も見てしか 妹が姿を
《夕暮れの  咲いた秋萩 見とったら あんたの姿 見とうなったわ》
我が屋戸やどに 黄変もみ鶏冠木かへるで 見るごとに 妹を懸けつつ 恋ひぬ日は無し
《庭先の 赤いかえでを 見るたんび あんたのことを いっつも思う》
                         ―大伴田村大嬢―〈巻八・一六二二~三〉 

沫雪あわゆきの ぬべきものを 今までに 流らへぬるは 妹に逢はむとぞ
《雪みたい 消えになって 生きてるは あんたに会おと 思うよってや》
                         ―大伴田村大嬢―〈巻八・一六六二〉 




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坂上郎女編(07)手塩に掛けた 娘やけども

2011年05月09日 | 坂上郎女編
■平成23年5月9日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★宮仕え 出す親の気は 複雑や まるで嫁出す みたいやないか

うちひさす 宮に行く児を まがなしみ むれば苦し ればすべなし
宮処みやどこへ 幼気いたいけない子 出すのんは 行かせたいけど 行かせともない》
難波潟なにはがた 潮干しほひ波残なごり くまでに 人の見る児を 我れしともしも
いとに 見飽きるほども 逢える奴 うらやましいで ワシ複雑や》 
                         ―大伴宿奈麿―〈巻四・五三二~三〉 




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坂上郎女編(06)うちはほんまに 悔しいで

2011年05月05日 | 坂上郎女編
■平成23年5月5日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★麻呂様と 交した言葉 侘びしいな うちはこんなに 慕うてたのに

押し照る 難波なにはすげの ねもころに 君がきこして 年深く 長くし言へば 
まそ鏡 ぎしこころを 許してし その日のきはみ 波のむた なびく玉藻の 
かにかくに 心は持たず 大船の 頼める時に 

こまやかな 心づかいで 声掛けて ずっと長うに 付きおと
 言うた言葉に 警戒心けっしんを ゆるめてしもた その日から
 あんた一人と 心決め 頼りに仕様しょうと 決めたのに》
ちはやぶる 神やくらむ うつせみの 人かふらむ 
かよはしし 君も来まさず 玉梓たまづさの 使も見えず なりぬれば

《神さん見放みはなし 世間ひと邪魔し てたあんたも 遠離とおざかり 使いの人も ん始末》
いたもすべみ ぬばたまの よるはすがらに 赤らひく 日も暮るるまで 
嘆けども しるしみ 思へども たづきを知らに
 
《どう仕様しょうて 夜は夜 昼は日中ひなかを 泣き暮らす
 嘆いてみても らちあかん 思案をしても 手弦てづる無い》
幼婦たわやめと 言はくもしるく 手童たわらはの のみ泣きつつ 
たもとほり 君が使を 待ちやかねてむ 

《か弱い女  そのままに 子供みたいに 泣き続け
 うろたえしつつ あんたから 使い来んかと 待ち続けとる》   
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六一九〉 
初めより 長く言ひつつ 頼めずは かかるおもひに 逢はましものか
《ずっとやの 言葉まともに 受けんときゃ つらい思いは せんかったのに》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六二〇〉 

まそ鏡 ぎし心を ゆるしなば のちに言ふとも しるしあらめやも
《張り詰めた 警戒けいかいごころ 緩めたら 後でいても もう遅いがな》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六七三〉 
真玉またま付く をちこち兼ねて ことは言へど 逢ひて後こそ くいにはありと
心地ここちえ 言葉並べて 口説かれて 許して仕舞たら 悔い残るだけ》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・六七四〉 





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坂上郎女編(05)うち もう知らん

2011年05月02日 | 坂上郎女編
■平成23年5月2日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★諦めて そっぽ向きつつ 待っている 男不実は 戯れかとも

むと言ふも
  ぬ時あるを
    じと言ふを
      むとは待たじ
        じと言ふものを


うて
   ん時もある
     ない
       るの待たんで
         ない言うんを》
                         ―大伴坂上郎女おおとものさかうえのいらつめ―〈巻四・五二七〉



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