ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

日めくり万葉集<2月>(その1)

2009年08月31日 | 日めくり万葉集
■平成21年8月31日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★家持はんも さみしんやろな 水にたわむれ 心をいや
妹にはず 久しくなりぬ 饒石川にぎしがは 清き瀬ごとに 水占みなうらはへてな
《置いてきた お前どしてる うらなおか きれえな水の 饒石にぎしの川で》
                    ―大伴家持―〔巻十七―四〇二八〕

★旅の歌人うたひと 黒人はんは 寂しい心 自然に託す
何処いづくにか われは宿やどらむ 高島たかしまの 勝野かちのの原に この日れなば
《日ィ暮れる 何処どこで泊まれば えんやろ はらっぱ続きの 高島たかしま勝野かちの
                    ―高市黒人―〔巻三・二七五〕

★貧窮問答 憶良は詠う 人生じんせ恨んで 悲しい叫び
天地あめつちは 広しといへど        《世間せけんひろても  
ためは くやなりぬる      わしには狭い
日月ひつきは あかしといへど         明るい日や月
ためは 照りや給はぬ       わしには照らん 
人皆か                   みんなそやろか
のみや然る              ワシだけやろか
わくらばに 人とはあるを        ワシも人間ひとやで
人並ひとなみに あれれるを        人並みやのに》 

                      ―山上憶良―〔巻五・八九二〕

但馬皇女たじまひめみこ 恋仲裂かれ 世間を捨てて 何処どこ行くやろか
ことしげき 里に住まずは 今朝けさ鳴きし かりたぐひて なましものを
《人の口 うるさい里捨て 今朝鳴いた 雁と一緒に てしまいたい》
                    ―但馬皇女たじまのひめみこ―〔巻八・一五一五〕

赤兄あかえ恨めし 中大兄おおえは憎し 岩代松よ 察しておくれ
磐代いはしろの 浜松がを 引き結び 真幸まさきくあらば またかへり見む
《松の枝 結んで祈る 無事ならば 礼に寄ります 岩代いわしろの神》
                  ―有間皇子―〔巻二・一四一〕

歴史編(5)どっちの恋がホンマもんやろ

2009年08月28日 | 歴史編
■平成21年8月28日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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中大兄皇子なかのおおえのおおじ 純な鏡王女かがみのひめみこに 恋をする


妹が家も ぎて見ましを 大和なる 大島のに 家もあらましを
高安山たかやすに お前の家が あったらな お前おもうて ずっと見られる》
                         ―中大兄皇子―〔巻一・九一〕 

秋山の の下かくり く水の われこそさめ 御思みおもひよりは
《木の下を くぐって流れる 水みたい うちの思いが 深いであんた》
                         ―鏡王女―〔巻一・九二〕 




【われこそ益さめ】へ


日めくり万葉集<1月>(その4)

2009年08月27日 | 日めくり万葉集
■平成21年8月27日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します いわく「大阪弁万葉集」
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★昔 おもうんは 年取った 言うこっちゃ
鹿ししを つな川辺かはへの 和草にこぐさの 身の若かへに さ寝し子らはも
《射た鹿を 追う川縁かわべりの 若草が 思い出させた 昔に寝た子》
                    〔巻十六・三八七四〕―作者未詳― 

★この男 この歌 思う相手に 送ったやろか
しるしなき 恋をもするか ゆふされば 人の手まきて らむ児故に
《しょういな 他人ひとの恋人 思うやて あの児今夜も あいつと一緒》
                    〔巻十一・二五九九〕―作者未詳― 

★恋に狂うた 女は 怖い
人言ひとごとを しげ言痛こちたみ おのが世に いまだ渡らぬ 朝川渡る
《あんまりに やかましよって 心決め 一線越えた うちのせいちゃう》
                    〔巻二・一一六〕―但馬皇女たじまのひめみこ

★あせって 逃げたら こういうこっちゃ
むささびは 木末こぬれ求むと あしひきの 山の猟師さつをに あひにけるかも
《むささびは こずえ登って 逃げぼと したけど猟師てきに つかまってもた》
                    〔巻三・二六七〕―志貴皇子しきのみこ

★憶良はん ほんまは 覚えているくせに
あまざかる ひな五年いつとせ 住まひつつ 都のてぶり 忘らえにけり
きょうはなれ ここの田舎に 五年り みやこ風情ふぜいを 忘れてしもた》
                    〔巻五・八八〇〕―山上憶良― 

★この口説き 相手に 届いたことやろか
紫は 灰さすものそ 海石榴市つばいちの 八十やそちまたに 逢へる子やたれ
紫色ええいろを 出すの灰る〔ええ女 男次第や〕 海石榴市つばいちの 道で逢うた子 名前をおせて》
                    〔巻十二・三一〇一〕―作者未詳― 

歴史編(4)朝狩りするんは戦の稽古

2009年08月26日 | 歴史編
■平成21年8月26日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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中皇命なかつすめらみことは 皇后との説 皇女間人皇女はしひとのひめみこ説があるが 皇女説が 微笑ましい

やすみしし わご大君の あしたには とりでたまひ ゆふへには いせ立たしし らしの あづさの弓の 中弭なかはずの 音すなり
とうさんが 朝の早よから でさすり ゆうおそくに 引き寄せる ご自慢弓の つるの音》
朝猟あさかりに 今立たすらし 暮猟ゆふかりに 今立たすらし らしの 梓の弓の 中弭なかはずの 音すなり
朝猟あさかり行くとき 響いてる 夕狩り出るとき 聞こえてる ご自慢弓の つるの音》
                         ―中皇命なかつすめらみこと―〔巻一・三〕

たまきはる 宇智うちの大野に 馬めて 朝ますらむ その草深野くさふかの
とうさんが 宇智の大野で 狩してる 馬けさせて 朝露あさつゆ踏んで》
                         ―中皇命なかつすめらみこと―〔巻一・四〕




【宇智の大野に】へ


日めくり万葉集<1月>(その3)

2009年08月25日 | 日めくり万葉集
■平成21年8月25日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★俗姓笠麻呂かさのまろ こんな歌も詠うけど 女好き?でもあったんやて
世間よのなかを 何にたとへむ 朝びらき にし船の あとなきごとし
《人生は たとえてうと 船みたい 行ってしもたら 何んも残らん》
                    〔巻三・三五一〕―沙弥満誓さみまんぜい

★天武はん 年の離れた奥さんに からかい歌を 出したけど・・・
我が里に 大雪降れり 大原の りにし里に 降らまくはのち
《わしの里 大雪降った お前る そっちの田舎 まだまだやろな》
                    〔巻二・一〇三〕―天武天皇―

★これは 一本取られた みたい
我が岡の おかみに言ひて 降らしめし 雪のくだけし そこに散りけむ
《そらちゃうで うちの神さん 願いして 降らしてもろた 雪のカケラや》
                    〔巻二・一〇四〕―藤原夫人ふじはらのぶにん

★国誉めるのは 政治のイロハ 誰かさんかて 見習みなろたらどやろ <歴史編(3)>見てね 
大和やまとには 群山むらやまあれど とりよろふ あめの香具山 登り立ち 国見をすれば 
国原くにはらは けぶり立ち立つ 海原うなはらは かまめ立ち立つ うまし国ぞ あきづ島 大和の国は

《大和には ぎょうさん山ある その中で とりわけ綺麗きれえな 香具山に 登ってあちこち 見てみたら
 おかでは炊煙けむり 昇ってる 水辺に水鳥 飛んどおる なんとえ国 大和の国は》
                    〔巻一・二〕―舒明天皇じょめいてんのう

★娘子は遊女? 服染めたって どないするんや?
草枕 旅行く君と 知らませば 岸の黄土はにふに にほはさましを
《もう会えん 旅の人やと 知ってたら 黄色きいろの土で 服染めたのに》
                    〔巻一・六九〕―清江娘子すみのえのおとめ

歴史編(3)国誉めるんは政治のはじめ

2009年08月24日 | 歴史編
■平成21年8月24日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
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★春立つその日 天皇さんは 国見する
り物豊穣ほうじょう き物長寿ちょうじゅ 祈って行う 国誉め行事




大和やまとには 群山むらやまあれど とりよろふ あめの香具山 登り立ち 国見をすれば
《大和には ぎょうさん山ある その中で とりわけ綺麗きれえな 香具山に 登ってあちこち 見てみたら》

国原くにはらは けぶり立ち立つ 海原うなはらは かまめ立ち立つ うまし国ぞ 蜻蛉島あきづしま 大和の国は

おかでは炊煙けむり 昇ってる 水辺に水鳥 飛んどおる なんとえ国 大和の国は》
                         ―舒明天皇―(巻一・二)




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日めくり万葉集<1月>(その2)

2009年08月22日 | 日めくり万葉集
■平成21年8月22日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★天平五年(733)遣唐大使丹比たじひ真人まひと広成ひろなりの求めに応じ
 憶良「好去こうきょ好来歌こうらいか」に託し 任務の無事を祈り奏上

神代より 言らく 
そらみつ 大和の国は  皇神すめかみの いつくしき国 
言霊ことだまの さきはふ国と 語り継ぎ 言ひ継がひけり・・・ 

《大和の国は 神代から 威厳あふれる 神の国 
 言霊ことだまかなう さちの国 語り継がれて 言い継がれ ・・・》 
                    〔巻五・八九四〕―山上憶良― 

★悟りを開いたかに見える元興寺の僧 投げ遣りに修行不足が垣間見える
白玉しらたまは 人に知らえず 知らずともよし
          知らずとも 我し知れらば 知らずともよし 

《真珠貝 人知られんと 海底うみそこひとり
           ええやんか 自分知ってりゃ 人はどうでも》 
                    〔巻六・一〇一八〕―元興寺の僧― 

★織り込み短歌の上手な長意吉麻呂ながのおきまろ ひしほ 酢 ひる たひ 水葱なぎ を織り込めと言われて
ひしほに ひるてて たひ願ふ 我にな見えそ 水葱なぎあつもの
酢醤油すじょうゆに ネギきタレの 鯛欲しに なんで出すんや 水葱ねぎの吸いもん
                    〔巻十六・三八二九〕―長意吉麻呂ながのおきまろ

おみなにおお持て家持さん 今宵は一寸都合が付かず 言い訳作りに占いしてる
月夜つくよには かどに出で立ち 夕占ゆふけ問ひ 足占あしうらをそせし かまくを
《ええ月夜つきよ 玄関立って 夕占ゆううらや 足占あしうらしたで 行きたいおもて》
                    〔巻四・七三六〕―大伴家持― 

★そう 自分を信じなくては と思いながらも・・・
ひ恋ひて のちに逢はむと なぐさもる 心しなくは 生きてあらめやも
《恋焦がれ いつかこの恋 成るもんと 思わんことに 生きてられるか》 
                    〔巻十二・二九〇四〕―作者未詳― 


歴史編(2)天皇さんかてナンパする

2009年08月22日 | 歴史編
■平成21年8月22日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
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★春の野原は 心が浮くよ 天皇さんも まだ若い 通りすがりの 娘に惚れた


もよ み        《ええかごさげて
 くしも みくし       ぐし持って             
  この岡に ます      みしてはる 娘はん
   いえかな らさね        あんたるとこ 教えて欲しい

そらみつ 大和やまとくに        ここの国 
 おしなべて われこそ      治めてるんは このわしや 
  しきなべて われこそませ        仕切ってるんは このわしや
   われこそはらめ 家をも名をも   わしも教える 名前と家と     
                            (あんた教えて 名前と家と)》 
                            ―雄略天皇―〔巻一・一〕 




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日めくり万葉集1月(その1)

2009年08月21日 | 日めくり万葉集
■平成21年8月21日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★蒲生野の薬狩り 久しぶりに会う かつての恋人 大海人皇子おおあまおうじ額田 王ぬかたのおおきみ
 近づく皇子に おおきみは うたい懸ける
 
あかねさす 紫野行き 標野しめの行き 野守は見ずや 君が袖振る
《春野摘み 野守りが見るで して こっちを向いて 袖振ってたら》
                         (巻一・二〇)―額田 王ぬかたのおおきみ

★委細構わず 近づき 詠い返す 大海人皇子
紫の にほへる妹を 憎くあらば 人妻故に 我恋ひめやも 
《そういな 可愛かいらしお前に 連れ合いが るん承知で さそたんやから》
                         (巻一・二一)―大海人皇子おおあまのおうじ

★因幡赴任の 大伴家持 新春の寿ぎ歌を詠う 万葉集最終歌
あらたしき 年の初めの 初春の 今日降る雪の いやしけ吉事よごと
《新年と 立春はる一緒来た 雪までも こんなえこと ぎょうさん積もれ》
                         (巻二十・四五一六)―大伴家持おおとものやかもち

恭仁京くにきょうが一望される高台 都移り後 三年みとせ 新春の宴での 寿ぎ歌
一つ松 幾代かぬる 吹く風の 声のきよきは 年深みかも
《風の音 爽やかなんも そのはずや この一本松まつのきの 年輪とし見た分かる》
                         (巻六・一〇四二)―市原 王いちはらのおおきみ

★山部赤人の代表歌 薩埵峠さったとうげからの景観は まさにこの歌が 詠まれた景色
田子の浦ゆ うち出でて見れば ま白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りける 
《田子の浦 回って見たら パッと富士 山のてっぺん 雪降ってるで》
                         (巻三・三一八)―山部赤人やまべのあかひと

ねた女の 可愛いい心と見るか これでは行く気もえるか すべては男しだい
来むと言ふも 来ぬ時あるを 来じと言ふを 来むとは待たじ 来じと言ふものを 
《来るても ん時もある てる るかと待たん んて言うんを》
                         (巻四・五二七)― 大伴坂上郎女 おおとものさかうえのいらつめ

歴史編(1)嫉妬しまっせ皇后はんも

2009年08月21日 | 歴史編
■平成21年8月21日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
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★浮気心旺盛な仁徳に 嫉妬する 磐姫いわのひめ
 恋しい思いに 心は揺れる 



●焦躁●
君が行き 長くなりぬ 山たづね むかへか行かむ ちにか 待たむ
《あんたはん 行ってしもうて なごうなる うちから行こかな それともとか》
                         ―磐姫皇后いわのひめこうごう―(巻二・八五)
あきらめ●
かくばかり ひつつあらずは 高山の 磐根いはねきて 死なましものを
《いっそ死の こんなくるして 悩むなら 奥山行って 岩枕して》
                         ―磐姫皇后―(巻二・八六) 
●執念●
ありつつも 君をばたむ 打ちなびく わが黒髪に しもくまでに
《死ぬもんか 生き続けたる あんた待ち うちの黒髪 しろうなるまで》
                         ―磐姫皇后―(巻二・八七) 
●絶望●
秋の田の 穂のらふ 朝がすみ 何処辺いづへかたに わがこひまむ
《こんな恋 消えてもえで 霧みたい 行くとこうて ただよう恋は》
                         ―磐姫皇后―(巻二・八八) 



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