ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

赤人編(16)やがて枯れるか わが歌の旅

2011年04月14日 | 赤人編
■平成23年4月14日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★枯れ枝に 止まる鶯 何を待つ 冬越す春を 何処で待つやら

百済野くだらのの 萩の古枝ふるえに 春待つと 居りしうぐひす 鳴きにけむかも
《百済野の 萩の古枝 止まってた 春待ちどりは もう鳴いたかな》
                         ―山部赤人―〔巻八・一四三一〕 

あしひきの  山谷越えて 野づかさに 今は鳴くらむ うぐひすの声
《山や谷  越えて野の岡 来て今は 鳴いてるやろな 鶯の声》
                         ―山部赤人―〔巻十七・三九一五〕 

恋しけば 形見にせむと わが屋戸やどに 植ゑし藤波 いま咲きにけり
郭公かっこうを 偲ぶよすがに 植えといた うちの藤花 今咲いたがな》
                         ―山部赤人―〔巻八・一四七一〕



【萩の古枝に】へ


赤人編(15)この嬉しさよ 手児名よ 手児名

2011年04月11日 | 赤人編
■平成23年4月11日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★惹かれ来た 真間の手児奈の 伝説に 今こそ逢えた 歌人冥利みょうり

葛飾かづしかの 真間まま手児奈てこなを まことかもわれに寄すとふ 真間の手児奈を
《ほんまかな 真間の手児名が わしのこと 思てる言うが うそちゃうやろか》
                    ―下総国歌―〔巻十四・三三八四〕 
葛飾かづしかの 真間まま手児奈てこなが ありしばか 真間の磯辺おすひに 波もとどろに
《葛飾の 真間の手児名が 生きてたら 波騒ぐよに ひと騒ぐやろ》
                    ―下総国歌―〔巻十四・三三八五〕 
鳰鳥にほどりの 葛飾かづしか早稲わせを にへすとも そのかなしきを に立てめやも
新嘗にいなめの 男子おとこ禁制はっとの 最中さなかやが 外であんたを 待たすのでけん》
                    ―下総国歌―〔巻十四・三三八六〕 
おとせず 行かむ駒もが 葛飾かづしかの 真間まま継橋つぎはし やまずかよはむ
《足音の てん馬欲し 知られんと 真間の継橋 ずっと来れるに》
                    ―下総国歌―〔巻十四・三三八七〕 

いにしへに りけむ人の 倭文幡しつはたの 帯きかへて 伏屋ふせや立て 
妻問つまどひしけむ 葛飾かづしかの 真間まま手児名てこなが おく
 
《その昔 ここに住んでた 男ども 一緒にもと 小屋立てて
 次から次と 結婚えんぐみを 申し出た言う 葛飾の 真間の手児名の 墓処はかどころ
こことは聞けど 真木まきの葉や 茂りたるらむ 松の根や 遠く久しき 
ことのみも 名のみもわれは 忘らえなくに

《ここと聞いたが 何処どこやろか 真木まきの葉茂り 松の根も 古びてしもて 分かれへん
 分からんけども 真間の地の 伝え話や この名前 心掛かって 忘れられん》 
                         ―山部赤人―〔巻三・四三一〕 
われも見つ 人にもげむ 葛飾かづしかの 真間まま手児名てこなが おくどころ
《わし見たで 皆におせたろ 葛飾の 真間の手児名の 墓あるあたり》
                         ―山部赤人―〔巻三・四三二〕 
葛飾かづしかの 真間まま入江いりえに うちなびく 玉藻刈りけむ 手児名てこなし思ほゆ
《葛飾の  真間の入江で 藻ぉ刈った 手児名のことが 偲ばれるがな》
                         ―山部赤人―〔巻三・四三三〕 


【真間の手児奈が】へ


赤人編(14)これや これやが この富士山や

2011年04月07日 | 赤人編
■平成23年4月7日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★目の前に かぶさるような 富士姿 思わず絶句 赤人唖然あぜん

天地あめつちの わかれし時ゆ かむさびて 高く貴き 
駿河なる 布士ふじの高嶺を あまの原 ふりけ見れば 
渡る日の 影もかくらひ 照る月の 光も見えず  
白雲も い行きはばかり  時じくぞ 雪は降りける  
語りつぎ 言ひつぎ行かむ 不尽ふじの高嶺は

天地てんちのできた その昔 神が作った その山は 
 駿河の国の 富士の山  振り仰いでも 高過ぎて 
 お日さん隠れ よう見えん  月の光も 届かへん 
 白雲漂い よう行かん  雪はいっつも 降っている 
 威容すがた尊い この山は 国の誇りや 富士の山》 
                         ―山部赤人 ―(巻三・三一七)

田児の浦ゆ うち出でて見れば ま白にぞ 不尽の高嶺に 雪は降りける 
《田子の浦 回って見たら パッと富士 山のてっぺん 雪降ってるで》 
                         ―山部赤人 ―(巻三・三一八)



【田児の浦ゆ】へ


赤人編(13)わしもとうとう ここ迄来たぞ

2011年04月04日 | 赤人編
■平成23年4月4日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★人麻呂の 吉野賛歌の 彷彿と 湧き出る如し 赤人の声

やすみしし わご大君おほきみの し給ふ  吉野の宮は 山高み 雲そたな引く 
川速み 瀬のそ清き かむさびて 見れば貴く よろしなへ 見ればさやけし
 
天皇おおきみの お治めなさる 吉野宮 山が高こうて 雲なび
 流れ速うて 音清い 神々こうごうしいて とうとうて 清らかなんは 当然や》
この山の きばのみこそ この川の 絶えばのみこそ 
ももしきの 大宮所おほみやどころ む時もあらめ

《山の姿が  消えるなら 川の流れが 絶えるなら
 その時こそは 大宮の うなる時や それは無いけど》
                         ―山部赤人―〔巻六・一〇〇五〕 

神代より 吉野の宮に ありがよひ たからせるは 山川をよみ
《昔から 吉野の宮に かようんは 山と川とが 素晴らしからや》
                         ―山部赤人―〔巻六・一〇〇六〕 




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赤人編(12)おおらか赤人 寛(くつろ)ぎお供

2011年03月24日 | 赤人編
■平成23年3月24日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★のどやかな 難波行幸は 遊興気分 皆それぞれに 楽しみ詠う

大夫ますらをは 御猟みかりに立たし 少女をとめらは 赤裳あかもすそ引く 清き浜廻はまび
《男らは 狩りに行ったで 女官おとめらは 赤い裳裾すそ引き 浜辺遊びや》
                         ―山部赤人―〔巻六・一〇〇一〕 

住吉の  粉浜のしじみ 開けも見ず 隠りてのみや 恋ひ渡りなむ
《殻閉めた 粉浜シジミの 貝みたい わしめ恋を し続けるんか》
                         ―作者未詳―〔巻六・九九七〕 

まよごと 雲居くもゐに見ゆる 阿波あはの山 かけて漕ぐ舟 とまり知らずも
《眉のな 雲の向こうの 阿波山あわやまを 目指し漕ぐ舟 何処どこ泊まるやろ》
                         ―ふなの おほきみ―〔巻六・九九八〕

血沼廻ちぬみより 雨そ降りる 四極しはつ白水郎あま 網手あみてしたり 濡れにあへむかも
血沼浦ちぬらから 雨降ってきた 網を干す 四極しはつの漁師 濡れたんちゃうか》
                         ―守部王―〔巻六・九九九〕 

子らがあらば 二人聞かむを 沖つに 鳴くなるたづの あかときの声
ったなら おまえと二人 聞きたいな 沖鳴く鶴の 夜明けの声を》
                         ―守部王―〔巻六・一〇〇〇〕 

馬のあゆみ おさとどめよ 住吉すみのえの 岸の黄土はにふに にほひて行かむ
手綱たづな引き 馬止めてんか 住吉の 岸の黄土はにゅうを 服に付けてこ》
                         ―安倍豊継―〔巻六・一〇〇二〕 




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赤人編(11)明日香の地こそ 歌の里

2011年03月17日 | 赤人編
■平成23年3月17日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★赤人は 明日香訪ねて いにしえを 辿りて歌の 心に触れる

三諸みもろの 神名備かむなび山に 五百枝いほえさし しじひたる つがの木の いやぎに 
玉かづら 絶ゆることなく ありつつも まず通はむ 明日香あすかの ふる京師みやこは 山高み かは雄大とほしろ
 
神名備かんなび山に 生えとおる 枝次々と やすつが つる長々と 伸ばすつた
 次々長々 通いたい ふるい都の 明日香宮 山は高こうて 河広い》
春の日は 山し見がほし 秋のは 河しさやけし 朝雲あさぐもに たづは乱れ 夕霧ゆふぎりに 河蝦かはづはさわく 
見るごとに のみし泣かゆ いにしへ思へば

《春の日ィには  山見たい 秋の夜には 河清い 朝立つ雲に 鶴飛んで 夕霧立つと 蛙鳴く
 こんな景色を 見るたんび しきりと泣けて しょうがない 昔栄えた この都》
                         ―山部赤人―〔巻三・三二四〕 
明日香あすか河 川淀かはよどさらず 立つ霧の 思ひ過ぐべき 恋にあらなくに
《立ち淀む 明日香の川の 霧みたい ずっと思うで 旧宮あすかへの恋》
                         ―山部赤人―〔巻三・三二五〕 
いにしへの ふるき堤は 年深としふかみ 池のなぎさに 水草みぐさ生ひにけり
《昔見た 古い堤は 年たで 池に水草 生えてしもてる》
                         ―山部赤人―〔巻三・三七八〕 



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赤人編(10)歌人の わしもとうとう ここ来たぞ

2011年03月14日 | 赤人編
■平成23年3月14日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★こここそは 伊予の伊佐爾波いざにわ 天皇おおきみが 訪ね来られた 歌聖地

皇神祖すめろきの 神のみことの きいます 国のことごと はしも さはにあれども 
《神であられる 天皇おおきみの お治めなさる この国に で湯仰山ぎょうさん あるけども》
島山の よろしき国と こごしかも 伊予いよ高嶺たかねの 射狭庭いさにはの 岡に立たして 
おもひ 辞思ことおもはしし み湯のうへの 樹群こむらを見れば
 
《島山立派な 伊予国いよくにの けわしい峰に うち続く  射狭庭いさには岡に その昔 天皇すめらみことが お立ちなり
 かつての昔 みし歌 捧げし言葉 思われた で湯の木立ち 眺めたら》
おみの木も ぎにけり 鳴く鳥の 声も変らず とほき代に かむさびゆかむ 行幸処いでましどころ
もみの木ずっと え続け 鳥鳴く声も 変わらへん 後の世までも 神秘やで 天皇おおきみられた この地こそ》
                         ―山部赤人―〔巻三・三二二〕 
ももしきの 大宮人おほみやびとの 飽田津にきたつに 船乗ふなのりしけむ としの知らなく
何時いつやろか 大宮人が 飽田津にきたつを 船出ふなでしたんは はるか昔や》
                         ―山部赤人―〔巻三・三二三〕 



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赤人編(09)鵜になりたいで このわしも

2011年03月10日 | 赤人編
■平成23年3月10日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★目に入る 景がそのまま 歌となり 歌がそのまま 景なり変わる

あぢさはふ いもれて 敷栲しきたへの まくらかず 
桜皮かにはき 作れる舟に 真楫まかじき わがれば
 
《お前の顔も  見られへん 安らか眠りも 出けん旅
 桜の皮を 張った船 梶いっぱいに 漕いできた》 
淡路あわじの 野島のしまも過ぎ 印南都麻いなみつま 辛荷からにの島の 島のゆ 吾家わぎへを見れば 
青山の 其処そことも見えず 白雲も 千重ちへになり
 
《淡路の島の 野島過ぎ 印南都麻島いなみつましま 後にして 唐荷の島の 間から 家のあるほう 見たけども
 山つらなって 分かれへん 雲重なって 見えやせん》
むる 浦のことごと 行きかくる 島の崎々 くまも置かず 思ひぞわが来る 旅の長み
《漕ぎまわり行く 浦々や 通りすぎてく 島々で お前のことを 思い出す 旅の日数ひかずが なごなったんで》
                         ―山部赤人―〔巻六・九四二〕 
たま刈る 辛荷からにの島に 島廻しまみする にしもあれや 家おもはざらむ
辛荷島からにしま エサ捕る海鵜うみう 島めぐる 呑気でええな わし家恋し》
                         ―山部赤人―〔巻六・九四三〕 
がくり わがれば ともしかも  大和やまとへのぼる 熊野くまのふね
《島伝い 船で来たなら 熊野くまのぶね 大和行くんや うらやましいで》
                         ―山部赤人―〔巻六・九四四〕 
風吹けば 浪か立たむと 伺候さもらひに 都太つだ細江ほそえに うらがく
《風が出て  浪立ってくる 風待ちに 細江の浦で 船足止めや》
                         ―山部赤人―〔巻六・九四五〕 



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赤人編(08)気分爽快 船路旅

2011年03月07日 | 赤人編
■平成23年3月7日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★穏やかな 瀬戸内廻る 赤人に 湧く歌心 紡ぎて結ぶ

なはの浦ゆ 背向そがひに見ゆる 沖つ島 漕ぎる舟は つりしすらしも
《縄の浦 そのこ見える 沖の島 漕いでる船は 釣りしてるらし》
                         ―山部赤人―〔巻三・三五七〕 
武庫むこの浦を 漕ぎ小舟をぶね 粟島あはしまを 背向そがひに見つつ ともしき小舟
《武庫の浦 漕いでく小船こぶね うらやまし 淡路背にして 都へ行くよ》
                         ―山部赤人―〔巻三・三五八〕 
阿倍あべの島 の住むいそに 寄する波 なくこのころ 大和やまとし思ほゆ
《阿倍島で  磯にしょっちゅう 波寄せる ひっきりなしに 大和が恋し》
                         ―山部赤人―〔巻三・三五九〕 
潮干しほひなば 玉藻め いへの妹が 浜づとはば 何を示さむ
《潮たら 綺麗な藻刈り 持ち帰ろ 家で待つ妻 土産はたら》
                         ―山部赤人―〔巻三・三六〇〕 

秋風の 寒き朝明あさけを 佐農さぬをか 越ゆらむ君に きぬさましを
《佐野の岡  越えてくあんたに 服貸そか 秋風寒い 夜明けやよって》
                         ―山部赤人―〔巻三・三六一〕 
みさごゐる 磯廻いそみふる 名乗藻なのりその 名はらしてよ 親は知るとも
海草かいそうも 言うてるやんか 名告なのりやと あんたも名告り 親に露見ばれても》
                         ―山部赤人―〔巻三・三六二〕 
みさごゐる 荒磯ありそふる 名乗藻なのりその よし名は告らせ 親は知るとも
荒磯あらいその なのりそみたい 名告ってや 親知ったかて かめへんやんか》
                         ―山部赤人―〔巻三・三六三〕 



【縄の浦ゆ】へ


赤人編(07)辿る海路に 思うは誰か

2011年03月03日 | 赤人編
■平成23年3月3日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★赤人は 人麻呂歌の 跡追うて 敏馬みぬめへ須磨へ 海路を辿る

御食みけむかふ 淡路あはぢの島に ただ向ふ 敏馬みぬめの浦の 
沖辺おきへには 深海松ふかみるり 浦廻うらみには 名告藻なのりそ刈る
 
供御くごを生み出す 淡路の島の 真向いにある 敏馬みぬめの浦の
 沖の海底うみでは 海松みる採っとおる 浦の浅瀬で 名告藻なのりそ刈るよ》
深海松の 見まくしけど 名告藻なのりその おのが名惜しみ 
間使まつかひも らずてわれは けりともなし

海松みると聞いたら お前が見たい 名告藻なのりそ〔なりそ=名を言うな〕言うに 名前は言えん
 言うたら他人ひとに 知られるよって 使い出せんで わし気ィえる》
                         ―山部赤人―〔巻六・九四六〕 
須磨の海人あまの 塩焼衣しほやきぎぬの れなばか 一日ひとひも君を 忘れておもはむ
《身に馴染なじむ 塩焼き海人あまの 服みたい 心馴染なじんだ あんた忘れん》
                         ―山部赤人―〔巻六・九四七〕 



【敏馬の浦の】へ


赤人編(06)印南野景色 心は弾む 

2011年02月28日 | 赤人編
■平成23年2月28日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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印南野いなみのの 行幸楽しや 君と臣 共の慰楽に 海波光る

やすみしし わご大君おほきみの かむながら 高知らしめす 印南野いなみのの 大海おほみの原の 
荒拷あらたへの 藤井の浦に しび釣ると 海人船あまふね散動さわき 塩焼くと 人そさわにある
 
天皇おおきみが おおさめなさる 印南国いなみくに 大海原の 藤井浦
 まぐろ釣ろうと 船出てる 塩を焼こうと 人出てる》
浦をみ うべつりはす 浜をみ うべも塩焼く 
ありがよひ 見ますもしるし 清き白浜しらはま

《浦がえんで 釣りをする 浜がえんで 塩を焼く
 絶えず来なさる もっともや 見るに綺麗きれえな この白浜よ》
                         ―山部赤人―〔巻六・九三八〕 
沖つ波 辺波へなみを安み いさりすと 藤江の浦に 船そさわける
《沖と岸  波穏やかや 藤江浦 漁に出ている 船いっぱいや》
                         ―山部赤人―〔巻六・九三九〕 
印南野いなみのの 浅茅あさぢ押しなべ さの 長くあれば 家ししのはゆ
《印南野の 茅萱ちがやを敷いて ねむが 続いたよって 家恋しいわ》
                         ―山部赤人―〔巻六・九四〇〕 
明石潟あかしかた 潮干しほひの道を 明日あすよりは 下咲したゑましけむ 家近づけば
明日あしたから 干潟の道も 楽しいで お前待つ家 ちこなるよって》
                         ―山部赤人―〔巻六・九四一〕 



【藤江の浦に】へ


赤人編(05)難波の宮は またまた光る

2011年02月24日 | 赤人編
■平成23年2月24日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★難波宮 従駕の歌に 海の幸 野島漁師の 賑わい乗せて

天地あめつちの 遠きがごとく 日月ひつきの 長きが如く 押し照る 難波なにはの宮に わご大君おほきみ 国知らすらし
《いつまでも 遠くなごうと 続いてく 難波の宮に 天皇おおきみが 行幸みゆきなされる その時に》
御食みけつ国 日の御調みつと 淡路あはぢの 野島のしま海人あまの わたの底 
おく海石いくりに 鰒珠あわびたま さはにかづ 船めて 仕へまつるし 貴し見れば

供御くごを生み出す 淡路あわじくに お上がり召せと 野島漁師あま
 海に潜って 鮑貝あわびがい いっぱい取って 船並べ みつぐ様子を 見る見事さよ》
                         ―山部赤人―〔巻六・九三三〕 
朝凪あさなぎに かぢおと聞ゆ 御食みけつ国 野島のしま海人あまの 船にしあるらし
《朝の海 梶音してる 供御くごくにの 野島漁師の 船やできっと》
                         ―山部赤人―〔巻六・九三四〕 




【野島の海人の】へ


赤人編(04)成程な そうであったか 歌の道

2011年02月21日 | 赤人編
■平成23年2月21日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★悟り得た 吉野行幸の 赤人は 長歌離れた 反歌を詠う

やすみしし わご大君おほきみの たからす 吉野の宮は たたなづく 青垣隠あおかきごもり 
なみの 清き河内かふちそ 春べは 花咲きををり 秋されば 霧立ち渡る 
 
天皇おおきみが おおさめなさる 吉野宮 かさなる山に 囲まれて 水の清らな 川淵かわふち
 春には花が 咲きあふれ 秋に川霧 立ちこめる》
その山の  いやますますに この川の 絶ゆること無く 
ももしきの 大宮人は 常にかよはむ

《山益々に 繁るに 川滔々とうとうと 絶えんに 大宮人ひとはずうっと かよてくる》
                         ―山部赤人―〔巻六・九二三〕 
み吉野の 象山きさやまの 木末こぬれには 許多ここだもさわく 鳥の声かも
《吉野山 象山きさやま木立ち こずえさき 鳥がいっぱい さえずる朝や》
                       ―山部赤人―〔巻六・九二四〕 
ぬばたまの けぬれば 久木ひさきふる 清き川原に 千鳥しば鳴く
よる更けた 久木えてる 川原かわはらで 千鳥鳴き声 しきりと響く》
                         ―山部赤人―〔巻六・九二五〕 


【千鳥しば鳴く】へ


赤人編(03)我こそと詠う赤人 ここに有り

2011年02月17日 | 赤人編
■平成23年2月17日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★君臣が 和して集える 紀伊行幸 赤人詠う たづ鳴き渡る

やすみしし わご大君おほきみの 常宮とこみやと 仕へまつれる 雑賀野さひかのゆ 背向そがひに見ゆる 沖つ島 
天皇おおきみの づうっと続く 宮処みやどこと みんな仕える 雑賀野さいかのの 向こうに見える 沖の島》 
清きなぎさに 風吹けば 白波さわき  潮れば 玉藻たまも刈りつつ 
神代より しかたふとき 玉津島山たまつしまやま

《そこの清らな  渚では 風が吹いたら 波立って 潮が引いたら 玉藻刈る
 神代からして 尊いで ほんまええとこ 玉津島山たまつしま
                         ―山部赤人―〔巻六・九一七〕 

沖つ島 荒磯ありその玉藻 潮干しほひ満ちて いかくりゆかば 思ほえむかも
《沖の島 荒磯ありその玉藻 満潮しお来たら 隠れてしまう 惜しいこっちゃで》
                         ―山部赤人―〔巻六・九一八〕 
若の浦に 潮満ち来れば かたを無み 葦辺あしへをさして たづ鳴き渡る
《潮満ちる 干潟うなる 若の浦 葦ある岸へ 鶴鳴き渡る》
                         ―山部赤人―〔巻六・九一九〕 


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赤人編(02)我れこそが 人麻呂様の後継ぐ者ぞ 

2011年02月14日 | 赤人編
■平成23年2月14日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★秋津野の 帝の行幸の 狩の場で お召しに応え 赤人詠う

やすみしし わご大君おほきみは み吉野の 秋津あきづ小野をのの 
野のには 跡見とみすゑ置きて み山には 射目いめ立て渡し
 
天皇おおきみは 吉野秋津あきづの 野に出られ 足跡追人おいを 野に置いて 待ち伏せ弓を 山に置き》
朝猟あさかりに 鹿猪ししおこし 夕狩ゆふかりに 鳥み立て 馬めて 御猟みかりそ立たす 春の茂野しげの
《朝は獣を  追いたてて 夕べは鳥を 飛び立たせ 狩りをなされる 春の野原で》
                         ―山部赤人―〔巻六・九二六〕 
あしひきの 山にも野にも 御猟人みかりびと 得物矢さつや手挟たばさみ 散動さわきたり見ゆ
《山や野に 弓矢を持った 狩り人が あちこちって 働いとるぞ》
                         ―山部赤人―〔巻六・九二七〕 


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