ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

日めくり万葉集<11月>(その1)

2010年02月25日 | 日めくり万葉集
■平成22年2月25日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★幼いが 可愛かいらしなあと 坂上大嬢いらつめを 思た初恋 月見て気付く
振りけて 三日月見れば 一目見し 人の眉引まよびき 思ほゆるかも
《振り仰ぎ  三日月見たら 一目見た おまえの眉を 思い出したで》
                         ―大伴家持―(巻六・九九四) 

但馬皇女たじまひめ 穂積に惚れて 高市皇子たけちみこ 監視くぐって 恋へと走る
秋の田の 穂向きの寄れる 片寄りに 君に寄りなな 言痛こちたくありとも
《なにやかや うるそう言われ つらいけど あんたに寄りたい 稲穂みたいに》
                         ―但馬皇女―(巻二・一一四)> 

但馬皇女ひめみこの 悲報を聞いて 穂積皇子 避けたあの日を 今更思う
今朝けさ朝明あさけ かり聞きつ 春日山 もみちにけらし 心痛こころいた
《雁の声 明け方聞いた 春日山 黄葉こうようしたんや 胸締めつける》
                         ―穂積皇子―(巻八・一五一三) 



黒人編(2)近江旧都に昔を偲ぶ

2010年02月22日 | 黒人編
■平成22年2月22日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★古都寂し 渡る湖上の 風寂し 立つ黒人の 背影も寂し

いにしへの 人にわれあれや ささなみの ふるみやこを 見れば悲しき
《この古い 都見てたら 泣けてくる 古い時代の 自分ひとやないのに》 
                         ―高市黒人―〔巻一・三二〕 

ささなみの 国つ御神の うらさびて 荒れたるみやこ 見れば悲しも
《ここの国 作った神さん 心え みやこ荒れてる 悲しいこっちゃ》 
                         ―高市黒人―〔巻一・三三〕 








【古の人にわれあるや】へ


日めくり万葉集<10月>(その10)

2010年02月18日 | 日めくり万葉集
■平成22年2月18日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★憶良はん 秋の七草 詠む前に 先ずは七つと 説明しとる
秋の野に 咲きたる花を およびり かき数ふれば 七種ななくさの花
《秋の野に 咲いてる花を 数えたら 秋ずる花 種類は七つ》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五三七〕 

★季節毎 自然が造る 花黄葉 ほんに仙女の 為せる技やな
たてもなく よこも定めず 娘子をとめらが 織る黄葉もみちばに 霜な降りそね
《霜降るナ 縦横糸も 無いのんに 仙女の造る 見事黄葉もみじに》
                         ―大津皇子―〔巻八・一五一二〕 

★宅守を 行かせてなるか 娘子の 悲痛の叫び 後追うて行く
君が行く 道の長手ながてを たたね 焼きほろぼさむ あめの火もがも
《燃やしたる あんた行く道 手繰たぐり寄せ そんな火ィ欲し 神さん寄越よこせ》
                         ―狭野弟上娘子―〔巻十五・三七二四〕 


黒人編(1)遊覧行幸お前と一緒

2010年02月15日 | 黒人編
■平成22年2月15日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★黒人は 彼女を連れて 遊覧に 猪名野景勝 心は弾む

吾妹子わぎもこに 猪名野ゐなのは見せつ 名次山なすぎやま つのの松原 いつか示さむ
《あの児には 猪名野いなのは見せた 名次山なすぎやま つのの松原 次に見せたろ》 
                         ―高市黒人―〔巻三・二七九〕 


いざども 大和やまとへ早く 白菅しらすげの 真野まの榛原はりはら  手折たをりて行かむ
《さあみんな 早よう大和へ 帰ろうや 榛原はりはらすげを 土産に採って》 
                         ―高市黒人―〔巻三・二八〇〕 


白菅しらすげの 真野まの榛原はりはら くささ 君こそ見らめ 真野の榛原
《行く時と 帰る時とに あんたはん 見たんやろうな あの榛原はりはらを》 
                         ―黒人の妻―〔巻三・二八一〕 



【猪名野は見せつ】へ


日めくり万葉集<10月>(その9)

2010年02月11日 | 日めくり万葉集
■平成22年2月11日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★落ち着いた 通いの出来る 家持は 喜びつつも 別れ切ない
夜のほどろ  我がでて来れば 我妹子が 思へりしくし 面影に見ゆ
よる明けて 帰る途中で 浮かんだで 思い切ない お前の顔が》
                         ―大伴家持―〔巻四・七五四〕 

★軽の里 降って湧いたる 悲しみに うろ来て惑う 人麻呂あわれ
秋山の 黄葉もみぢを茂み まどひぬる 妹を求めむ 山道やまぢ知らずも
《茂ってる 黄葉もみじの山へ まよてもた お前探すに 道分れへん》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二〇八〕 

★竜田越え 山道伏せる 行き倒れ 太子思わず もらい泣き
家にあらば 妹が手まかむ 草枕 旅にやせる この旅人あはれ
《家ると あの児手枕 寝るのんに 旅先死んでる 可哀想かわいそやなあ》
                         ―聖徳太子―〔巻三・四一五〕 



人麻呂編(12)わしは死んでくお前逢わんと

2010年02月08日 | 人麻呂編
■平成22年2月8日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★歌聖なる 名前呼ばれし 人麻呂の 死処しどころ何処いずこ 鴨山何処いずこ

鴨山かもやまの 岩根いはねける われをかも 知らにといもが 待ちつつあるらむ
《鴨山で  わしこのままで 死ぬのんか 何も知らんと お前待つのに》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二二三〕 

な思ひと 君は言へども 逢はむ時 何時いつと知りてか わが恋ひずあらむ
《安心し また逢えるやん うたけど 逢われんかったら どないするねん》 
                         ―依羅娘子よさみのをとめ―〔巻二・一四〇〕

ただの逢ひは 逢ひかつましじ 石川に 雲立ち渡れ 見つつしのはむ
《雲あがれ  逢いたなったら 雲あがれ 逢われへんけど 雲雲あがれ》
                         ―依羅娘子よさみのをとめ―〔巻二・二二五〕

今日けふ今日けふと わが待つ君は 石川の かひまじりて ありといはずやも
《どこおるん 今か今かと 待ちよるに 貝と一緒に るてうんか》
                         ―依羅娘子よさみのをとめ―〔巻二・二二四〕

荒波に 寄りくる玉を まくらに置き われここにありと たれか告げなむ
《ここにる 波を枕に ここ居ると みんなに言うてや ここ居るよって》
                         ―丹比笠麿たじひのかさまろ―〔巻二・二二六〕

天離あまざかる ひな荒野あらのに 君を置きて 思ひつつあれば 生けりともなし
《どう思う こんな田舎に 眠らして あんたどないや うちつらいけど》
                         ―作者不詳―〔巻二・二二七〕 






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日めくり万葉集<10月>(その8)

2010年02月04日 | 日めくり万葉集
■平成22年2月4日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★娘らが 稲を搗きつつ 歌うてる 若殿さんに 届くんやろか

稲つけば  かかる我が手を 今夜もか 殿の若子わくごが 取りて嘆かむ
《稲を搗く  うちのあかぎれ 今晩も 若さん撫ぜて かわいそ言うかな 》
                         ―東歌―〔巻十四・三四五九〕 

★香と塔 厠と屎と 鮒付けて 奴も付けて 歌詠め言われ

香塗れる 塔にな寄りそ 川隈の 屎鮒くそぶなめる いたき女奴めやっこ
《香塗りの  塔近寄るな 屎食うた 鮒を食うてる 臭い女奴》
                               (川は今の水洗トイレ)
                         ―長意吉麻呂―〔巻十六・三八二八〕 

★粟の種 蒔いたよってに 粟成った そやけど 粟無い どうなってんじゃ

足柄の 箱根の山に あはきて 実とはなれるを あはなくもあやし
《箱根山  粟の種蒔き 実ィなった あんた逢わ〔粟〕れん どう言うこっちゃ》
                         ―東歌―〔巻十四・三三六四〕 



人麻呂編(11)手向けの歌を歌うてあげる

2010年02月01日 | 人麻呂編
■平成22年2月1日■
万葉集に詠われた歌を 作者別に採り上げ 人となりを「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★身寄り無い 人の捧げる 手向け草 人麻呂挽歌 心に沁みる

■香久山での行き倒れ人
草枕くさまくら 旅の宿やどりに つまか 国忘れたる 家待たまくに
《誰やろか  こんなとこ来て 死んではる 国はどこやろ 家で待つやろ》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・四二六〕 

■吉野川で溺れた出雲の娘子
八雲やくもさす 出雲いづもの子らが 黒髪くろかみは 吉野の川の おきになづさふ
《出雲から 出て来たこの児 可哀相かわいそや 川で溺れて 沈んでるがな》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・四三〇〕 
山のゆ 出雲いづもらは きりなれや 吉野の山の みねにたなびく
《出雲の児  霧になったか 山の上 雲と一緒に 棚引いとおる》
                         ―柿本人麻呂―〔巻三・四二九〕 






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